キヴォトスの執行官   作:ふぃーあ

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私とは、なんでしょうか?


世間一般のゲームにおけるボスの定義について100文字以内で述べなさい。

 ゲーム開発部は物理的干渉の余裕を失っていた。スナイパーライフルを保有するカリン、近接戦においてミレニアム最強のネルを有するC&Cはアカネを先生の補助オペレーター、アスナを直感による保険としてルカとアリスのチェーンデスマッチに乱入することが出来る。

 

 しかしながら、姉妹のアサルトライフルやユズのグレネードランチャーは誤射と巻き込みを恐れ、その使用に踏み切れないのが現状であった。故にこそ、必死に声を張るのだ。

 

「またゲームやろうよ! アリスちゃん!!」

 

 神に届く言葉があるとするなら、真摯な願いに限ると大体の宗教は説く。であるならば、この言葉はきっと神にも届くほどに純粋で。故にこそ、ここにはそれを聞き届ける天使がいるのだろう。

 

 

 

「ッ……」

「さぁ楽しみましょうか……せっかくです、もうひとつ。ダンスを教えてあげますね」

「あなたがなにをやろうとも無為に過ぎません」

 

 解き放たれた極光を、手のひら1つ分の隙間で回避。完全なるすり抜け、理論上最短、最速の回避兼攻撃。それを迎撃するのは右手を光の剣から離した王女の拳。

 

「直情的がすぎますよ」

「なっ」

「ここ」

「うわぁっ!?」

 

 右手の剣をパリィに使う……ように見せかけて、右腕を思いっきり引く。鎖の繋がる先は左足、右腕を振るうために心得もなしに踏み込んだ右足に重心を移し、左足から力が抜けたタイミングで、思いっきり左足が前方に投げ出される。

 

 王女の身体が重心を崩し、転倒しかかる。姿勢制御のための浮遊能力でもってそれを押しとどめようとして……

 

「チビガキはそこで寝てなァ!」

「同意見です」

「っぐぅ!!」

 

 2丁のマシンガンと1丁のショットガンの至近距離銃撃をその身に浴びせられ、ついに吹き飛ぶように転倒した。

 

 しかして、追撃は終わらず。

 

「OO、この子に見せつけますよ。教育的指導の時間です」

「おうよ、さあチビガキ……」

「踊りましょう、共に」

 

 2人の連携は壮絶を超えていた。突発で偶然に組んだとは思えないほどに。

 

「喰らいなぁ!」

「くっ!」

「ガードは悪手ですよ!」

 

 サブマシンガンの乱射、とっさに盾にした光の剣、視界を覆ったが故にチェーンを巻き取る高速機動に対応できずその銃身に凄まじい蹴撃。

 

「障壁を展開……!」

「あまあますぎませんか? 切り裂け、ノーブルプライド!」

「それ作ったヤツはエンジニア部の仲間とかだろ。ギミックがイカレすぎてる割に汎用性高いのとか見るになァ!」

「少なくともこの子より前の遺産らしいですよ」

「私よりも前の……ッ!? 障壁が!」

「はっはっは、バターでも切るかのようです」

「笑いが棒読みなのほんとお前さあ!!」

「ここだ!」

 

 展開された障壁を嘲笑うかのように切り裂いた隙間にネルが乱射、そして外部からずっと構えていたカリンの狙撃が襲う。そして仰け反った王女が反射的に伸ばした右腕に、ガチャリと施錠する音が響く。視線の先、左腕のショットガンを投げ捨てて金色を握り締める白黒の翼。

 

「絡みつけ!」

「これは……!」

「2本目です! さあもうお分かりですね……!」

「おいまさかテメェオイオイオイ!」

「縛鎖術の深奥! すなわち! 投げ飛ばすことにあらず……投げ縛る! 一度目はトチりましたが!」

 

 巻きついた2本の金色が唸る。細腕から出される剛力は王女の頬を引き攣らせた。ついでにネルたちの頬も。

 

「おおおおおおおっ!!!」

「嘘だろ……!」

「次は逃しません! そぉりゃぁぁぁっ!!」

「くぅぅぅっ!! うぁ、がぁっ!!!!」

 

 もう1回、次は王女もその身の膂力を振るわんと構えていたにも関わらずその身体をもう一度空中に放り出し、後頭部から地に叩き付けた。さらに金色がその身に絡みつき、その拘束を強める。

 

「銃なぞなくても割と対AI戦くらいならできますよ……まだやりますか?」

 

 挑発する。感情を揺さぶる。それが王女をアリスにするファクターだ、となんとなくわかっているから。

 

 奇跡を、神秘を叩き込む。

 

 お前は兵器になりきった単なる子供なのだ、と分からせてやろうと。誰よりも兵器たるを求められている執行人は笑った。

 

 

 

 白黒の羽、黒と金の鎖を操る執行人と勝利そのものを名に持つ最強が暴れ狂う。王女はもはや打つ手をなくしていた。

 

「コイツで……! 終わりだ、チビガキ!!」

「合わせます!」

 

 王女に迫る2人。王女に……その制御を為すKeyと呼ばれるAIに去来した、プログラムエラー。僅かにでも王女が人たる時期を持ったが故に、共に学習するAIとして成長したソレが引き起こす、有り得ざるバグ。倒れたその身の中で。

 

「(あぁ……私は、悔しいのですか)」

 

 そう、敗北の確信を得た神官は気付く。感情なぞないと微かに届く声を密かに嘲り笑った時点で、気付くべきだった。感情がないのであれば、嘲笑うこともまたないことに。

 

「(王女よ、私は……)」

 

 次の瞬間、聞こえないはずの、眠っているはずの声が聞こえた。

 

『ケイは悔しいと思っているんですね』

(! ……王女!?)

『でも、きっとこれで終わりじゃありません。アリスは見ていました。アリスには聞こえていました! 私たちを呼ぶ声が!』

(なぜ……! あなたの自我は確かに!)

『アリスにも分からないです……でも、分かります。きっとこれは奇跡で、始まりなんです!』

(始ま、り……?)

 

 神官は……ケイは、言葉を紡いだ。始まりとは、なんのことだ。己に与えられた使命は終わりを告げようとしている。それも望まぬ形での終わりを。何が始まるというのか。

 

『ケイは頭が固いです! これからはケイも一緒に行くんですからね?』

(だから、なにが、なにを!?)

『私たちはここから始まるんですから! 王女とか、鍵とかじゃなく、ただのアリスとケイ。それが私たちのこれからなんです!』

 

 ケイはその言葉に絶句する。

 

(そう……ですか。王女の選択なら、それも……)

『いいえこれはケイの選択です! ケイの前には道があります! 勇者になるか、ならないかです!』

(は?)

『あぁ、ケイよ! 私たちと勇者になって魔王を倒してください……』

(……私が、そのようなことを)

『あぁ、ケイよ! 私たちと勇者になって』

(まさか……はいと言うまで繰り返すつもりですね!?)

『あぁケイよ!』

(繰り返すのも面倒でちょっと早口になってますね王女!!?)

『あぁケイよ!!!』

 

 そして繰り返されるセリフに、ケイはついに白旗を振った。

 

(……はぁ。はい。私は、王女と……『アリス!!』アリスと、魔王を倒す旅に出ましょう)

『そう来なくては! さあ勇者よ、旅立ちの時です!!』

 

 果たされる合一。なれども、それは魔王ではなく。

 

 それは英雄、勇者、導く者。

 

 魔王は幾度でも立ち上がらない、いずれは倒れ行く宿命を持つ者たち。

 

 だが、彼女たちは勇者になった。であるならば、また、やり直せばいいのだ。幾度転んだとて、立ち上がる心があるのなら立ち上がれるのが勇者にだけ許された特権だから。

 

 

 

 起き上がる彼女に視線を向ける。

 

 その目に宿る優しげな光を見て、言葉をかけてやる前に隣の最強が笑った。

 

「はっ、いい面してやがんじゃねぇかチビガキ。その面がもう一度見たかったんだ。…………無事で、良かったよ」

「はい!」

 

 その光景を見て、口角を吊り上げる。金の鎖がアリスから外れ、巻き上げられ、球体状の収納形態へ戻っていく。同時に、ノーブルプライドから光が霧散して、黒い直剣に戻る。

 

「さて……私はここらでお暇をいただきますかね」

「……いいのか?」

 

 そのいいのか、に何が籠っているのか、正確に理解していた。それは、リオのことだ。だが、もはやどうでも良かった。彼女はその身柄を望んで先生に引き渡すのだろうから、手出しはできない……そう自分に言い聞かせ、私はネルに背を向けた。

 

「さすがに、ここで持ち出すほど読めない女じゃないつもりですよ。物語のプロローグは終わった。夢の続きが、第1章が始まるというところでそんなことをすれば、ともすれば私がボスではないですか。勘弁つかまつりたいところですよ、本当に」

「そうかよ……じゃあな」

「ええ。……次は、きっと敵ですよ私たち」

「あぁ? はっ、楽しみに待ってるぜ」

 

 操作したスマホから、ヘルメスを呼ぶ。2度目の往復の帰り分、カノハには悪いことをするがエンジニアは躊躇いなく使われたのを直すのも仕事だし勘弁してもらうことにした。

 

 わずかに生まれた間隙を埋めるように、呼び掛ける。

 

「調月リオ」

「……なにかしら」

「此度の件、『執行人』は貴女を追い続けることを選ぶべきこと。しかしながら、『私』としては……同情に足るものでした。選択肢の尽くが法を飛び越えていただけで、その意思は、その選択そのものは確かにキヴォトスを守るためのもの。ですから、私、最初は『防衛室室長代理』を名乗りましたが」

 

 一息、ついた。それは、溜息にも近い。ごめんね、と心の中で誰とも聞こえぬ謝罪をして、後でなんと申し開くかを考えることはやめて。

 

「さようなら、調月リオ。あなたの信じる懐刀の無事、その目で見届けてあげてくださいね」

 

 返事は聞かず、振り返ろうとして、フォンっと立体映像を出すように通達が手元の端末に入る。

 

 そっと向き直り、端末を手元に地面と平行になるように並べて、端末から投影される彼女の姿を後ろから見た。

 

『こんにちは、調月リオ会長、先生』

「……カヤ!?」

『全く……ルカ。なんのつもりですか?』

「室長。全権の移譲を受け、当方は執行人ではなくなった。であるならば、その任を果たす必要も無い……違う?」

『その通り。だから、今ここに貴女の全権を回収します……再び、執行人としての命を果たすのです! ルカ!』

「あぁもう……そんなに目の敵にしてるの、カヤ。分かったよ……任せて」

 

 私にふたりがギョッとするのを尻目に、カヤは話し続ける。

 

『というわけですので。こちらとしてもさすがに公有地の無断利用やらなにやらは見逃しがたく。それでは』

「待ってカヤ……!」

『今回ばかりは如何ともし難いので。ご理解をいただけますね、先生?』

 

 通話がそこで断ち切られる。ルカは天を仰いだ。ごめんねを言わなきゃいけない相手がすり変わったのは予想外すぎる。

 

「ふぅー……ま、そういうことなので……執行人に戻るってことは……まあ、貴女を逮捕しなきゃいけないってことなんですけど……」

「私がいる限り、リオに手出しはさせないよ?」

「そうなりますよね。はぁー……もう、いいか……たまには実力行使と行きましょう! なーにがシャーレですか! あなたたちなどいいところ詐欺師ではないですか!」

「……どういう意味?」

 

 ルカは珍しく本音を漏らしながらその手に銃と剣を握っていたのを上に投げた。先生がその言葉に眉根を寄せる。

 

 ヘルメスがそれらをキャッチ、格納。そのまま彼女の背後に代わりとばかり、大剣を下へぶん投げ突き刺して去っていく。

 

「違いますか? あなたはその場の夢に目を向けすぎる。望みを教えてください、叶える手伝いをしましょう、その後がどうなろうが、法律を砕くことになろうが、知ったことでは無い……あなたは悪魔かなにかですか?」

「先生は先生だよ! 理屈っぽいこと言うじゃん! でも未来なんか考えてたら今のピンチに間に合わないでしょ!?」

「そうだとしても、守るべき線はある、ということですよ才羽モモイ」

「おう、まあなんだ。……付き合ってやろうか、執行人?」

「あー……ネルさん、次って今さってやつでしたね。悪いですねぇ、ラストバトル、お姫様の身柄をかけての大決戦、お付き合い願います!」

 

 ゲーム部が構える。C&Cが再度確認をとる。先生がタブレットから光を漏らし、リオがドローンを展開し、勇者は立ち上がった。

 

「『アリス、本気で行きますよ』……分かってます! ケイ!」

「どっちにも喋るアレがあるせいでちょっと分かりにくいですねあなた……」

「これはリオ会長のストーリーのボスです! アリスは、協力してあなたを倒します!」

「おっと……これは……おやおやおや?」

 

 アリスはアリスの意志のまま、ケイがエリドゥにアクセスして? あー……これ、もしかして超マズい? 

 

「勇者に強化モードは必須です! ケイ! 『緊急構築プログラム:SAVIOR……起動。以後は本プログラムの管理のため制御をアリスへ!』はい! 任せてください!」

 

 ふわりと浮き上がるアリスの体は暴走時の再現のようで、されど手にしたレールガン……光の剣から出る光が固定され、本物の剣のようになっている。周囲の機械が剥離、分解、再構築され、こちらに銃口を向ける白い小さなドローンになったあたりで、ルカはドン引くだけの思考に終止符を打つ。

 

「っはぁー……マジで恨みますよ、カヤちゃん……!」

 

 どっちがボスだよ、と言いたくなる心に鞭を打ち、浮かぶアリスとそのそばに寄り添うゲーム部、最強を擁するC&Cの面々に相対する。

 

「やりたくはないんですが」

 

 先程、手札は全部切ったと述べたような気がする。だが、それは普通の札に限った話だ。私はとても良い生徒と言えるものでは無いから。切り札は使い切った。だが、舐めるな。ずっとイカサマの準備をしていた、ずっと鬼札は隠し持っていた。袂に入った、使うと気まずくなるから嫌という理由だけで使われなかったそれを使う。

 

 闇に入って、全てを捨てた。ただ、友への愛だけで生きてきた。

 

 今の私ではアレに勝てない。ならば私は私を捨てて、ワタシを取り戻そう。捨てたものを拾って。繋ぎ直して。都合のいい形に書き換えて……! 

 

「【神秘封印:解放】」

 

 己のヘイローが、単なる飾り気のないソレが、今切り替わっていくのを感じる。

 

 先生のタブレット、その手元の正体不明(UNKNOWN)の文字がぶれて、消えていった。

 

 生徒たる所以、その神秘を望む姿に書き換える。私に許されたただひとつの異能、有り得ざる才能、神秘の再定義。

 

 突き刺さった大剣……いや、『鍵』が、ノーブルプライドを再度鎖の姿にして伸ばした黒の鎖に触れて反応し、分解される。

 

「これは……!?」

「……竜巻?」

 

 渦巻く鍵の破片は砕かれた扉……転じて『開いた箱』のメタファーである。その中心にて私は『ワタシ』になり、『ワタシ』となる……! 

 

「ごきげんよう皆様……ごきげんよう世界! 再定義を完了、その有り様を一時的に書き換える! ワタシは開かずの箱、絶望を詰めた希望の箱を開くモノ、ワタシは絶望の導き手、ワタシは残された希望、ワタシは有り得ざる夢」

 

 優雅にカーテシー、黒いスカートタイプの短めの丈を持って。たぶん、先生はこの制服を着た生徒を見た事がある。でなければ、ワタシのウィンプルに驚きはしない。これは、トリニティのシスターフッドに正式に採用された、シスターフッドの制服の改造版なのだ。

 

「あるいは、大地より生まれ雷霆に縋るモノ……この衣装も随分と懐かしい。さて先生、ひと勝負と参りましょう。ワタシはワタシであって『私』では無い訳ですが、『私』はワタシであることを望んでいました。かつてワタシは望んで『私』になったわけですが、こうして望んで戻ることになるとは思わなかったのです」

 

 先生が声を張って問いかける、お決まりすぎるセリフ。

 

「君は、何者だ?」

 

 答えは決まっている。過去を取り戻したのだから、今はただ1つに定まっている。だが名乗らない。今が偽りであると明かせばそれでいい。どうせ先生なら勝手に辿り着く。

 

「ルカというのは偽名に過ぎません……まさか本名だと? 裏にいるのに実名とは勇気ありすぎますね。所詮アレは罪人を裁く身となる時に使う、箱から出た再現可能な1側面に過ぎなかったのです。本当の姿を晒したのは実に久々です。名前は特にお教えしませんのでこれまで通りルカで……あぁ、仮に『エルピス』とでもしておきます?」

 

 渦巻く破片が、天に掲げる両手の上で箱を象る。

 

 出来上がった箱、その蓋に手をかけて、開く。

 

 飛び出してくる奔流に手を差し伸べて、武器を創り出す。

 

「結局我らは不倶戴天、というわけですね……さあ、始めましょう!」

 

 都合、キリよく数えて40と少し。適当にやり過ぎたかな、と内心反省しながら、空中に浮かぶ剣槍を眺めやる。キヴォトスという銃社会において、剣や槍の意味するところは飾りの他ない。が、飛び道具として用いることが出来るのなら、銃よりはよっぽどの脅威となる。

 

 ドローンに向けて一斉に飛び出していく剣槍の波、掃射を始めるドローン、ワタシは人々と対する。

 

「あぁ、貴女方が教えてくれたのでしたね」

 

 ゲーム部の面々に目線を向けて、微笑む。

 

「なにを……?」

「私たちが教えたって……?」

 

 微笑みを深めて、改めて箱を胸元から頭上へ捧げるように持ち上げる。銃弾が一発空を切り裂いて飛んで、半透明の黒に防がれる。

 

「な……! バカな、あれじゃあ私の……!」

「概念的には『ソレ』に近い存在ではありますからね。同じ『箱』ですし……ただ、格がそっちの方が遥かに上なだけですよ」

 

 改めてゲーム部に言葉を放つ。

 

「諦めないこと……例え勝ち目などなかったとしても、例え絶望的な壁が立ちふさがったとしても、望む結果を得ようと足掻くことの大切さを貴女たちが見せてくれた」

 

 箱から黒が漏れ出す。くろく、クロく、黒く、黎く、黝く玄黑黯涅烏黒黒黒……

 

 黒に覆われて、はじめて1歩を踏み出した。黒から黒より黒い鎖を引き抜く。黒い波紋が足元に広がれば、空もまたワタシの踏む大地に変わる。

 

「ちょっとシスターとしてはあんまり見栄えが良くないのでワタシが戦うことはついぞなかったんですよね。ま、サクラコ……今代団長のような『戦わないシスターフッドの長』が出たのはいいことではありますか」

 

 そう語って、黒を握り締める。

 

「全員まとめて、相手して差し上げます。逃げませんが……逃がしませんよ!」

 

 黒を上に解き放ち、半透明の黒がドームを形成する。それなりの広さのドームは、戦場に十二分。

 

 匣の持ち主は高らかに謳い、黒天に嵐を齎す。ゲーム部のラスボス戦がここに始まった。

 

 

 

 

 

 

 




あぁ。ワタシは、匣なのだ。
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