ラスボス枠ののじゃロリ系美少女になってしまった転生者の話 作:かぐやま
あのおっさんがやっと引き剥がして拘束してくたから、これで主人公くん蘇生に集中できるわ…。
そもそも何やねんあのヒロインの発狂具合。
ゲームじゃ描写不足だったのかも知れないけど明らかに、ゲーム上の表現より凄かったぞ。ヒロインの目とか主人公見てるようで、虚空を見てたからな。ヤバすぎる。
「離して…!離してぇえええ!!リレイが奴に何かされちゃう…そんなの嫌ぁ…。」
「静かにしておくのじゃ。其方は少々うるさかろうて。姫様が憤慨なされたらどうする。」
いや、怒らんよ?俺今リレイの事見とるけど、そっちの会話普通に聞こえとるで。つーかそん時にチラっておっさん見てみたけど、地面石畳なのにそんな上から本気で抑えんの畜生すぎじゃね?
そもそも幼馴染兼将来の恋人が殺されて発狂してる女に『 うるせぇ!!お前!!!黙ってろ!!!』とか言う胆力、俺にはない!
俺でも同情してしまうわなんなら。
「何するつもりなの!リレイに何するの!!リレイに…リレイを……りれいを離せ!!!」
すまんヒロインが余りにもうるさいからやっぱり同情すんのはなし。 こうなったら希望持たせて、落ち着かせるしかない。こういう時は甘い飴ってはっきり分かんだね。
まぁまぁ落ち着けって、発狂ヒロイン。俺はコイツが気になってんだよ。俺、蘇生できる方法知ってるけどどうしようかな。
こんな感じのニュアンスで言ってみた。すると発狂ヒロインの顔に少しだけ生気が宿った気がするし、心做しか静かになった。それだけでも大分、助かる。酷だけど静かにしといてくれ本当に。
そもそもこんな適当に言っても相手に違和感持たせずに翻訳してくれるのって自動翻訳機能もしかして有能なんじゃないか説。俺の中で浮上中。
自分が思った事が翻訳されて出てくるの相当気持ち悪いけどな…。でもこういった雰囲気が重要な場面じゃ考える必要なしだから便利でもあるのか。
「姫様、その秘術には
おっそうだぞ。勘がいいなこのおっさん。俺は主要キャラと重要キャラしか覚えてないから、お前が誰だか知らんけどすげぇなお前。
そんなおっさんの問いに、発狂ヒロインは────
「私の命で良いから…!」とか「私の全てを差し出すから…!」とか言ってる。
その内容でも代償として足りる訳がないというのを知らないのは発狂ヒロインが可哀想だ。それをしっかり言ってあげるというのが本当の大人としての優しさなのだろう。本当に俺紳士すぎないか?
残念。お前の全てでも、お前とコイツでは釣り合わないから無理なんだよ。蘇生の秘魂は。おっコイツの記憶を代償にとか丁度いいじゃーん?やっちゃう?
うんうん…
発狂ヒロインの顔が苦痛に歪んでるよ。迷ってるよ。ゲームの描写じゃイマイチだったけどこんなに最高なシーンだったとはな…曇らせって改めて最高だと再認識できたわ。
「そ…蘇生して…下さい。リレイを…返して下さい。」
おっ覚悟決まったようで何よりだ。やっぱり原作の展開からは逃れられないのか…そこに愉悦を感じる俺も俺だが。
フハハハ!!!じゃあ蘇生させてやろう。ここで俺が一つ神の御業とやらを見せてやるぜ!!
ここはしっかり原作通り、俺が上感を出しておこう。格付けは大事だってばっちゃが言ってた。
後はリレイを蘇生させるだけ…でもそんな覚えてないしなぁ…詠唱内容。まぁ…大体合ってればいいだろ!
八百万の神!お前力貸せや!そして目の前のやつを蘇らせろ。俺の願いはただ一つだ!!。代償は、目の前のやつの記憶。契約者はリレイラ・フォールンや!
最後のとこ含めてもう適当。大筋の詠唱みたいなんは唱えたから、あとは翻訳がなんとかしてくれる筈。ヒロインの名前言えたとこは完璧じゃね?俺もうのじゃロリマスターしたかもしれん。
えっ!?詠唱みたいなの終わったら手に光みたいなんが集まり出したぞ。これ普通にヤバくね。
なんか発狂ヒロインがブツブツ何か言ってるの聞こえるけど、何も言えんし、そもそも内容が聞き取れん。こっちはお前さんの幼馴染の蘇生に集中しとるんや。
蘇生の秘魂は意外と本当に難しい。これ体が覚えてなかったら、俺が破裂してたかもしれん。それくらい力というのを感じる。何であんなゲーム内じゃ簡単にやってたんだか…。
少し暇な時間ができた。体が魔力の使い方知ってるからマジ便利快適。今なら頭を使わずに体だけでも出来る範囲。よし、そうと決まれば休憩しよ。
「本当にリレイの…記憶は消えるんですか?」
…?それは本当だよ。話の大筋を変えたら物語が変わっちまうからな。
……やっべ!頭空っぽにたら、深く考えずにヒロインに意味深な事言っちゃった。まぁいいや…良いのか?でも自問自答する事でもないな。
…これ以上考えてたら制御出来ねぇな…主人公の蘇生に集中しよ。
「え…?」
◇
私はリレイから引き離された。
抵抗は拘束されてたから出来なかった。だから必死に叫んだ。リレイが殺されちゃうって。リレイから離れろって。私は無我夢中で叫んだ。
そんな私がうるさかったのか、拘束してきたクソ野郎から注意が下った。
「静かにしておくのじゃ。其方は少々うるさかろうて。姫様が憤慨なされたらどうする。」
そんなの関係ない。私は…私は────
私がまた叫ぼうとした時だった。
リレイの傍に立っていたアイツが私の目の前に立って、戯言を言い始めたのだ。
「まぁ…落ち着くが良い。発狂女。妾はアイツを気に入った。妾は蘇生の秘魂を知っておるし、使い方も知っておるぞ?さて、どうするかの。」
私にとっては確かに戯言に聞こえた。けれどリレイは目を開いたまま動いてくれない。私の方を見てくれない。死んでるのかも知れない。
そう考えたら目の前の女の言ってることは、私にとって魅力的な提案に思えて来た。
けれど私を上から拘束しているクソ野郎からとんでもない話が飛び込んできたのだ。
「姫様、その秘術には
私はそれを聞いて藁にも縋る思いで、目の前の女にリレイを助けるように言った。この女は確かに蘇生という有り得ない現象を可能とするようだった。
頭では薄々分かってた。リレイが死んでるって。けどこの女には蘇生が出来る。
そう考えたら私の事はどうでも良くなった。
私じゃなくてリレイが生きてたら、もっと彼は強くなって目の前の元凶を一人で倒してくれたのかもしれない。私の方が先に死んでたら彼は持ち前の戦闘センスで目の前の元凶を倒せたかも知れない。私じゃなくて彼が────
そんなリレイが生きてたらという
だけどその女が言ってきた現実は残酷だった。
「ふぅむ…どうやら貴様の全てを持ってしても、蘇生の秘魂を可能とするには到底敵わん。じゃがアイツの
どうやら女によるとリレイの記憶を代償にしないと彼は生き返らないらしい。
でもリレイには自分の事を忘れて欲しくないし、リレイと一緒に歩んだ私との冒険譚も忘れて欲しくない。リレイが歩んだ足跡を私は消したくない。記憶が消えるという事は全てが真っ白になるという事。
リレイにとってそれは自分の大切な宝物を、他者にレ〇プされたのと一緒だろう。私はそんな事をしたくない。私はそんな事をしたくない筈なのに────
「そ…蘇生して…下さい。リレイを…返して下さい。」
口が勝手にそう動いてしまった。
「フハハハ!!良かろう蘇生してやろうとも。ここで一つ妾が神の御業とやらを見せてやろう!!」
女がそう言った。もう止める事など出来ない。
頭では分かってても体が正直に言ってしまった。私が思っているよりも体はリレイという人物を求めていた。これではリレイは記憶喪失になってしまう。
「八百万の神よ。妾に力を貸せ。妾の願いはただ一つ、彼の者を蘇らせることこの上なり。代償は彼の者の記憶。契約主は
私は女に名前を名乗っただろうか?そんな事、今はどうでもいい。私は最後に彼の記憶が消えていないのかもしれないという僅かな希望を抱いて、リレイの蘇生をしている女に向けてその事を言った。
「彼の者の記憶が消えるのは致し方ないと思え。この世界の筋道に影響が出ては叶わんからのう…。」
その答えは私の中の
世界の筋道…?
「え⋯?」
それって何────
「フム…力がもう十分集まったようじゃな?さて、ひと仕事するかのう…。」
私は頭の中の疑問を女に言おうとしたが、リレイの蘇生の為の力とやらが集まったらしい。気になるけどリレイの蘇生と比べれば些細な事だ。今はリレイが復活する事を祈ろう。
女は光が集まった手をリレイに向け、胸の中に入れた。光は不思議な事にリレイを貫通し馴染むようにして広がり、どんどんリレイが光で見えなくなる。
次に目を開けた瞬間には
体に死んだような青白さはなく、目は瞳孔が開きっ放しでもない。呼吸もしっかりしており今は眠っているようにも見える。
私は泣きそうになった。
リレイが生きている。それだけでどんなに嬉しいか…。また彼の軌跡を共に歩めるのがどんなに喜ばしい事なのか。私はそれを噛み締める事しかできない。
「フン…ようやく発狂女も正気に戻ったようで何よりじゃ。妾も久方振りに頑張った甲斐があろう。」
敵な筈なのに何故か、感謝という意味不明な感情が生まれる。リレイが死んだのも元はと言えばコイツらのせいなのに、今じゃ感謝をしてしまっている。
どうしてこんな感情を持ってしまうのか私には不思議だった。けれど私がリレイに恋心を抱いていたからと思ったら納得できた。
私にとってリレイは────
「そろそろ…潮時かのう。
女がそう言った瞬間。
私の視界が暗くなった。
◇
目が覚めると木が沢山生い茂っている場所に居た。この場所が何処か不明で不安だが、少なくともアイツらの近くでない事は確かだ。それだけでも安心────
「あれ?リレイは…どこ…?」
だが私はリレイが近くにいない事に気付き、急いでリレイを探し始めた。
「リレイ…!?リレイはどこ!?!?リレイ!!!」
呼び掛けるが返事がない。
私はまたリレイが死んでしまったのかという不安が胸中を襲い、気が気じゃなかった。胸が痛いし、頭痛もする。もしかしたら今の私はリレイが居ないと心に平穏は訪れないのかもしれない。そう思うくらいリレイが居ないと体調が悪くなっている。
「あっ、居た!!」
彼は私から少し離れた場所で眠っていた。呼吸もしており、顔にも生気が宿っている。これは幻覚でも何でもなくリレイは生きているのだ。
「う…うぅ…リレイ。」
私はリレイを抱き締めてこの事実を噛み締める。
周りには敵がいるかもしれないし、魔物もいるかもしれない。そんな事が頭によぎりつつも、体が勝手にリレイを求めていた。
「ん…ん…!?」
そんな事をやってたら遂にリレイが目を覚ましたらしい。私の胸の中でジタバタしている。いつもはリレイが目を覚ましたら恥ずかしくてハグなんかすぐやめてしまうけど…。今だけは辞められない。
「ご…ごめん!つい…嬉しくて…。」
私はリレイに謝罪をする。
流石に抱き締めすぎたのだろう。リレイの顔が恥ずかしさで真っ赤になってる。それすら今の私には愛おしい。
「そ…その…言い難い事が有るんだけど。」
だけど覚悟は出来ている。
次にリレイの口から出る言葉は想像できる。
私はそれを代償として生きていかなければならない。私が弱かったという戒めと、身分不相応な相手と戦おうとした私の蛮勇さ、そして私の
それは────
「ええと…誰だっけ?何で僕に抱き着いていたの?いっ、いや…言い難いなら良いんだけどさ。」
私はそれを聞いて何を思っただろうか。でもそれは仕方ない事だ。私への罰として受け取るしかない。
「私は大丈夫よ。さっさと行きましょう!
彼の顔はキョトンとしている。今、リレイは自分の名前が呼ばれた事に気付いていない。そう、
「私と一緒に冒険しようって言ってるの!私はリレイラ・フォールン。貴方が道から外れた場所で倒れていたから助けたの。私、丁度一人だからさ…パーティーを組まない?私と一緒なら百人力よ!」
私は嘘をつく。
私はリレイにとって
私はただ、またリレイと冒険したいだけだ。
「わっ、分かったけど…どうして僕と一緒に行ってくれるの?リレイラさん一人でも強そうに見えるけど…。」
またキョトンとした顔で彼は言った。今度は私を
「────ッ!!」
「え!?どうしたのリレイラさん!?リレイラさん…?」
私はこれから記憶を失くした彼と一緒に居なければならない。現実を見なければならない。リレイと一緒に冒険したという事実は遠い昔。新しい現実を見て、上を向くしかない。
今はきっと、リレイとまた新しく冒険できるという事実に私は喜ぶべきなのだろう。
でも、やっぱり
私と今まで冒険をして来た記憶と、私に関する記憶が全部消えているのは────
「…どうして泣いているんですか?」
辛いなぁ…。
◆
???『 何なのじゃ!妾がサポートしておるからって好き勝手しおって。おかげで苦労しかせんわい!コヤツ何者なのじゃ!?まぁ良い⋯これからも妾がサポートしてやるしかないのう⋯。』
???『⋯⋯はぁ⋯
転生者「八百万の神!お前力貸せや!そして目の前のやつを蘇らせろ。俺の願いはただ一つだ!!。代償は、目の前のやつの記憶。契約者はリレイラ・フォールンや!」
???「何じゃその詠唱???大方は知っておるが、そのままで言っておったら神への冒涜じゃったぞ。さてはコヤツ馬鹿者じゃな?」