璃月の奇人   作:喫茶

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三話

「あっ、みんな!そういえば新しいメニューを開発したんだけど、食べたい人いる?」

「えっと、とりあえず料理名を言ってくれるかい?僕は重雲みたいになりたくないからね」

「ふっふっふー、今回のは自信作だからね!名前は“超激辛☆絶雲の唐辛子と炎スライムのヒリ辛ソテー”だよっ!」

「ふぅむ、何故一つの料理の名前に“超激辛”と“ピリ辛”が同居してるのかい?」

「あ、“ピリ辛”じゃなくて“ヒリ辛”ですよ?食べると強烈な、ガツン!とした辛さと、ヒリヒリした辛さで熱くなれます!」

「なんでそんな料理作ったの……?」

「寒い日に食べたら、あったかくなれていいかなって!」

「ねえ、いま夏なんだけど!そんなの食べたら死んじゃうよ~」

「まあ、私も遠慮しておこうか」

「重雲なら食べたいって言いそうなんだけど……いま重雲は冒険者の任務だとかで、璃月港にいないからね、残念だよ」

「えー、誰も食べないの?そんなこと言わずに、ほらこれっ!美味しそうでしょ?」

 

 

そう言って出されたのは、赤黒いスライムのようなものに、赤黒い唐辛子をそのまま載せて、さらに上から赤黒いソースがかかった赤黒くおぞましい何か……ではなく、香菱曰く新料理である。

 

 

「「「グロい」」」

「……食べる?」

「「「いらない」」」

「なんでよー!」

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ねー、香菱ってば、いい加減機嫌直しなよー」

「……」

 

「えっと、世の中にはあれが好きな人もいるんじゃないかな?僕は違うけど」

「……」

 

「ふぅむ、私は辛い物は結構好きなんだが。今回みたいに料理から滲み出ている赤黒い何かを嗅いだだけで、喉が焼けたように痛むのは無理だねぇ。

まあ、今度は辛さを控えめにしておいてくれよ。それなら、試食に行こうじゃないか。君の料理は基本美味しいからねぇ」

「!っ~……」

「あー!ちょっと褒められたからって機嫌直しちゃってるー!

香菱ったらチョロいんだからー!」

「ふ、ふん、私は大人だからね。そんなことでなるわけないじゃない」

「へー……って、あれってさっき話してたタルタリヤ?って人じゃない!?」

「ちょっと胡桃、声が大きいって!あっちに聞こえちゃってるかもしれないでしょ!?」

「僕はそういう香菱だって声が大きいと思うんだけど……」

「ん?三人ともどうしたんだい?」

「おや、昨日ぶりだねタキオン殿」

 

後ろから現れたのは、某戦闘狂である。

 

「また勝負を断られてしまったからね、今度は一緒に来てくれるかい?」

 

そう言って、ポン、と肩に手を置く。

さて、この時タキオンの手元には、さっき匂いを嗅いだ“超激辛☆絶雲の唐辛子と炎スライムのヒリ辛ソテー”が置いてあったのだ。

そして彼女が普段からうざったがっている男の登場。

彼女は半ば反射的にこれを彼の顔に投げ――

 

「うおっと」

 

――避けた。

すると当然、料理は床に落ちるわけで――

 

 

ボンッ!

 

 

――爆発した。

 

 

「ってええっ!?」

「ちょっとタキオンさん何してるんですか!」

「え、今のは私が悪いのかい?……全部そこの戦闘狂のせいだと思うのだが」

「って俺のせいでもないだろ、というかなんでそんな危険物が食堂にあるんだい」

「危険物じゃないもん!新作料理だもん!」

「……僕は早く火を消したほうがいいと思うけどね」

 

 

「「「あっ」」」

 

 

「ここは俺が消すよ……はあっ!止水の矢!」

「ってでっかい鯨!?」

「おい!何をしているんだい君は!」

「ハハッ、水は多いほうがいいと思ったんだが……」

「水が多すぎますよ!?」

「おーい、君達ー!早くこっちに来ないと危ないよー!」

「あっ!坊ちゃんだけ逃げてる!ずるい!」

「そんなことどうでもいいから早く走ってぇぇぇぇぇ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

――バッシャーン。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「――で、一体どういうこと?」

 

 

彼女――璃月七星の“玉衡”刻晴は、ちょうど昼休憩に出かけていた時であった。

 

昼休憩、といっても「刻晴様や甘雨様が働きすぎて、月海亭がブラック職だと広まってしまって、求人の募集に人が全然来ないんですよ!いい加減休んでください!そうじゃないと私たちの仕事が大変なことに――」と部下に言われ、半分追い出されるような形で街に出てきたのであるが。

 

出てきてしまったものはしょうがないと、彼女は休憩をすることにしたようだ。

 

ちょうど昼ということで、昼食を取ろうと、久しぶりに万民堂に向かう。

 

道中通行人から「ゆ、玉衡様が昼に街へ!?あ、明日は大雨が降るぞ……」と言われたような気がしたが、気のせいだということにしておいた。

 

誰が何と言おうと気のせいである。

 

 

さて、万民堂がもうすぐ見えてくるというところまできた。何やら騒がしいようだな、と近づいてみると――

 

 

「水元素で作られた巨大な鯨が空から落下してきて、この辺り一帯を水浸しにした、と」

「ああ、そうさ」

「馬鹿じゃないの?一体どうするって言うのよ」

「えっと、北国銀行にツケておいてくれ。金なら俺が払うから」

「だ、か、ら!お金の問題じゃないって言ってるでしょ!

市民の! 平穏な! 生活が! 脅かされてるって言ってるの!

……はぁ、タキオンにしろそこのいけ好かない男にしろ、何でそんな考えの人が多いんでしょうね」

「まあまあ、いいじゃないか。結果火は消えたんだし。そんなことより玉衡様が昼休みかい?珍しいこともあるものだねぇ」

「部下達に休めって言われて仕方なくよ。そういえば貴方、昨日は部屋を爆破しなかったみたいじゃない。……毎日そうだと嬉しいんだけどね」

「ふん、好きでやってるわけじゃないと、いつも言っているだろう。

……昨日はそこの胡桃君が勝手に家に泊まりに来てしまってねぇ、実験ができなかったのさ」

「へぇ、毎日泊まってもらえばいいんじゃないかしら」

「!!!!!!~っ、やっぱりそうでしょ!ほらタキオンさん、玉衡様もこう言ってるし、私がタキオンさんの家に住めば――」

「胡桃君には堂主の仕事もあるし、それは無理だろう」

「まあ、それもそうね。無理を言って悪かったわ」

「うぅぅぅぅぅぅ~っ!」

「うるさいよ胡桃」

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「おっと、もうこんな時間じゃないか。私は用事があるから先に失礼させてもらおう」

「あら、もう行っちゃうの?それじゃ」

「ええ、また」

「えー、もう行っちゃうの?……もっとお話ししたかったのに―」

「ハハハ、また今度頼むよ。それでは」

「おや、タキオン殿がいなくなるなら俺がいる意味はないな。俺ももう帰ろうか」

「そういえば先程は此処を通りがかったようでしたけど、何か用事があったのではないですか?」

「ん?……アッ………ッスゥーー……ま、報告書なんて遅れてなんぼだろう?それでは!」

 

急いで去っていくタルタリヤ。

 

「……彼の部下は大変そうね」

「ええ、本当に」

「そういえば私、ここには昼食を摂りに来たのだけど……無理そうね」

 

びしょびしょに濡れた店内を見まわしながら言う。

 

「えーっと、あはは……ま、まあ厨房のほうは濡れていないので料理を出すことはできると思いますけど、こんなに濡れていたら流石に――」

「そう、それなら大丈夫よ。早く料理を出してちょうだい」

「無理――って大丈夫なんですか!?」

「別に周りが濡れているからと言って料理が不味くなるわけじゃないでしょ?問題ないわ」

「わ、分かりました!急いで作ってきますね!」

 

慌てて厨房に飛んでいく香菱。

 

「はー、それにしてもタキオンさんって玉衡様とも知り合いなんてねー。

どうやって知り合ったの?」

「あら、気になるかしら?別に聞かせてあげてもいいわよ?私も時間がないから、料理を食べ終わるまでになってしまうけどね」

「え?聞きたい聞きたーい!」

「僕も、そのことを聞いてみたいですね」

「そう。それじゃ、まずはあの時のことから――」

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