双子の片割れを失って覚醒するのって良いよね!   作:入魂ロフス

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1話

 俺たちは継国家に双子として生まれた。

 兄の俺は子供とは思えないほど力が強く、弟の縁壱は体が弱くて俺や両親には見えないものが見えていた。

 

 そんな俺たちでも母さんと父さんは普通に育ててくれた。

 

 父さんは悪戯好きで体が大きく、筋トレが趣味でよく縁壱と二人で父さんの逞しい腕にぶら下がって遊んでいた。

 

 母さんは小柄だが気が強く、大柄な父さんが悪戯した時にも怯むことなく叱っていた。

 

 俺たちの2歳年上のペットのモンちゃんも力が強い俺に対しても怖がらずに接してくれたし力の弱い弟を気遣っていつもそばにいてくれた。

 

 俺は力が強いので家での力仕事を任されることが多かった。父さんに足の速さで勝った時は父さんがショックを受けていた。

 

 弟は体が弱かったが、俺が開発した呼吸の仕方を教えると少しマシになり、今も日に日に体の動きがマシになってきている。

 

 俺たちは理想的な家族そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちは新潟県の山の中の古民家をリフォームして住んでいた。近所の人と言えるのは隣の家に住む名前も知らない爺さんだけだった。

 

 俺たちが7歳の時。

 ある秋の日の朝、近所に住んでいた爺さんが家にやってきた。

 

「はーい…お、喜作爺さんじゃねえか!」

「喜作爺さん来たの?まってまって………おはよう喜作さん!」

「おはよう、二人とも朝から元気じゃな〜」

 

 あの爺さんの名前は喜作らしい。

 

「久しぶりじゃなあ…そんでちと頼みがあってな、わしこれからちょっと遠出するんじゃがお前らだけでは心配でな、安全祈願のおまじないしといたからこれ玄関に貼っといてちょ」

 

 なんかすごく怪しい札を取りだしたので縁壱と俺はちょっと警戒モードに入ったが父さんは気にすることなく話を続けた。

 

「おお!喜作さんのおまじないは良く当たるからなあ!ありがとうな喜作さん!喜作さんも事故とか気をつけてくれよ!」

「ほいほいわかっとるわい…ちゃんと玄関に貼っとくんじゃぞ〜〜」

「はーい!気をつけてねおじいちゃーん!」

 

 ……父さんも母さんもあの爺さんを信頼しているようだ。

 

「あの爺さん怪しいね」

「そうだね…でも父さんが楽しそうに話してたし良い人なんじゃない?」

「そうかな…」

 

 その日はなんだか嫌な予感がした。

 

 

 

 その日の夜中、縁壱が布団の中でモゾモゾしているのに気がついた。

 

「ん…どうした縁壱…?」

「お兄ちゃん…おしっこ…」

「おう…トイレ連れてってやるよ…」

 

 縁壱はまだ一人で階段を降りることができないので、トイレに行けなかったようだ。

 縁壱の肩を持ちながら階段を降りてトイレに着く。

 

「一人でできるか…?」

「手伝って…」

「わかった…」

 

 トイレを終えて手を洗っている途中、縁壱の様子がおかしくなった。

 

「お兄ちゃん……!」

「……どうした?」

「なんか…変な感じがする…!いつもいる小さいおばけがいない…隠れてる…」

「……お父さんに聞いてみよう」

 

 なんだか怖くなった俺たちが息を潜めてゆっくりと階段を登ろうとしたその時。

 

「「っ!!!」」

 

 俺の鼻が濃厚な血の匂いを感じ取り、縁壱の目線の先にあった札が爆散した。

 

「縁壱!お母さんが危ない!」

「お兄ちゃん!先に行ってて!」

「わかったっ!」

 

 弟の言葉に従い、異常に高い身体能力を駆使して階段を飛び登り、両親が寝ている部屋に……

 

「……………は?」

 

 扉の下からあり得ない量の血が流れ出ている。

 嫌だ止めろなんで父さんは強いから負けないはず…。

 

 恐る恐る扉を開ける。

 

 

 

 

「……がっ!…みちかつ…にげろ……」

「ふーっ…ふっ…ふっ…いっ!!あぁ……!」

 

 母さんの両腕が無い。父さんの両脚が無い。父さんが腕を失った母さんの傷口を必死に押さえているが血がドバドバと流れ出ていく。母さんはあまりの痛みに白目を剥いて呻いている。

 よく見ると二人の傷口に何かが"いる"気配がする。

 なんでだよこれまでこんなの分からなかったのに…!

 

「……父さん…!」

「ダメだこっちに来るな!…ぐっ!…今すぐ縁壱を連れて逃げろ!」

「…っ!」

 

 なんでだよ父さんは強いんだろ…なんで…父さんが負けた奴に勝てるわけ………っ!!縁壱が危ない……!!!

 

「縁壱っ!」

「……そうだ…にげろ…!」

 

 全速力で階段を飛び降りて玄関に向かったはずの縁壱を……

 

「嘘だ…嘘だ…!」

「ハッ…ハッ…兄ちゃん…逃げて…おばけが…!」

 

 縁壱が外で胸から血を出して倒れていた。

 近くにモンちゃんが額に風穴を開けて亡くなっている。

 縁壱だけでもと思い、縁壱の元に駆け寄り抱き抱えた俺の手を縁壱の熱い血がべっとりと包み込む。

 胸に穴が開いていた。

 

「縁壱!縁壱!…ああ……やめろ……嘘だ…」

「お兄ちゃん…!後ろ…!」

「っ!」

 

 咄嗟に縁壱を抱えたままその場を飛び退く。頬を何かが掠った。

 ……見えないがそこに何か"いる"。

 …あれが母さんと父さんと縁壱とモンちゃんを傷つけたのがわかった。

 

「殺す…殺す…」

「…見えてるの?」

「殺す!」

 

 瞬間、ドス黒い怒りが俺を突き動かした。

 宙に浮くヤツの上空に飛び上がり踵落としで地面に叩きつける。

 

『ギョッ!?』

「あああああああああ!!!!」

 

 ヤツに馬乗りになり縁壱の血に包まれた拳を叩き込み続けた。

 

「死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねぇぇぇぇ!!!」

『ギョッ!ギィッ!?』

 

 24発目で奴が動かなくなり、ふわっと煙のように消えてしまった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………縁壱…」

「ハハ…お兄ちゃんすごいや…!」

 

 極限の集中状態故か縁壱の体が透けて見え、縁壱がもう助からないのがわかってしまった。

 

「縁壱……嫌だ…死ぬな…生きろ…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」

「お兄ちゃ……」

「……ぁ」

 

 縁壱の心臓が止まったのがわかってしまった。

 

 

 

 

 

 

縁壱side

 

 その晩は少し肌寒かった。

 お兄ちゃんの教えてくれた呼吸法でマシになったとはいえ僕の体はまだまだ弱く階段を降りることが難しかったのと、小さい頃から見えるおばけが怖くて夜中に一人でトイレに行けなかった。

 

 その晩もいつものようにお兄ちゃんにトイレを手伝ってもらった。お兄ちゃんも本当はこんなことをしなくはないだろう。

 もっと呼吸法を続けて体力をつけなくてはと思って手を洗っていると先程から感じていた違和感に気づいた。

 おばけが隠れている。

 

「お兄ちゃん……!」

「……どうした?」

「なんか…変な感じがする…!いつもいる小さいおばけがいない…隠れてる…」

「……お父さんに聞いてみよう」

 

 そうだ、お父さんはでっかくて強いんだ、お父さんならどんな悪いやつがやってきてもやっつけてくれるはず!

 それでもやっぱり怖いものは怖くて二人でゆっくりと階段に向かったその時、ふと今朝喜作爺さんが貼っていったお札が目に入った。

 ……お札から出ていたモヤモヤが弱くなってる…?

 そう思った次の瞬間、お札が一回ブルッと震えた後爆散した。

 

「「っ!!!」」

 

 僕と同じようにお兄ちゃんも異変を感じ取ったみたいで焦った声で僕に叫んできた。

 

「縁壱!お母さんが危ない!」

 

 僕を連れて行ってたら手遅れになるかもしれない!お兄ちゃんとお父さんがいれば勝てない奴はいない!

 それにモンちゃんが無事かも気になる…!

 

「お兄ちゃん!先に行ってて!」

「わかったっ!」

 

 僕の声に応じてお兄ちゃんが目にも止まらぬ速さで階段を飛び登って行った。すごいやお兄ちゃん…!

 

 急いで玄関から出てモンちゃんを……

 

「………………は?」

 

 モンちゃんが額に穴を開けて死んでいた。

 

「モンちゃん…?嘘だ…どうして…………がっ!?」

 

 突然モヤモヤを近くに感じ咄嗟に飛び退こうとするが、足がもつれて避け切ることができなかった。

 

「あがぁ…ぐっ…!?」

 

 胸に焼けるような痛みを感じて頭がガンガンと痛みを訴える。今のはおばけの攻撃……!?

 玄関からお兄ちゃんが駆け寄ってきた。

 

「嘘だ…嘘だ…!」

「ハッ…ハッ…兄ちゃん…逃げて…おばけが…!」

 

 まだおばけは上空にいる、このままではお兄ちゃんもやられてしまう…!

 僕を抱き抱えたお兄ちゃんが狼狽える。

 

「縁壱!縁壱!…ああ……やめろ……嘘だ…」

「お兄ちゃん…!後ろ…!」

「っ!」

 

 僕の声に即座に反応したお兄ちゃんが僕を抱えたままモヤモヤのビームを避け切った。すごい速かった…!

 

「殺す…殺す…」

「…見えてるの?」

 

 お兄ちゃんはこれまでおばけが見えていなかったはずなのに…!

 

「殺す!」

 

 次の瞬間、おばけが凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。

 速い…!これがお兄ちゃんの全力…!

 地面に這いつくばるおばけに馬乗りになったお兄ちゃんは手にモヤモヤを纏わせながらおばけを殴り始めた。

 

「死ねっ!死ねっ!死ねっ!死ねぇぇぇぇ!!!」

『ギョッ!ギィッ!?』

 

 すごい…なんでモヤモヤがないのにおばけに傷が入ってるんだ…?

 ……僕の血が手についてるから…?僕の血がおばけに傷をつけているのか…?

 なんでか分からん。

 しばらく殴り続けられたおばけは煙となって消えてしまった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………縁壱…」

「ハハ…お兄ちゃんすごいや…!」

 

 本当にすごいや…あんなに恐ろしい見た目をしたおばけをやっつけちゃった……!

 ……ああ……なんだかふわふわしてきた…

 

「縁壱……嫌だ…死ぬな…生きろ…嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」

「お兄ちゃ……」

 

 自分の鼓動が止まったのが分かった。

 

 

 

 

 

 ……………目が開いた。

 ここはどこ…?なんだかふわふわして…温かい…。

 って血の海!?グッロなんで臭くないの!?

 しかも空が無駄に爽やかな快晴!

 

「「縁壱」」「ワンッ!」

 

 …っ!!父さん…母さん…モンちゃん…なんで…?皆死んじゃったの…?

 ああ…僕も死んだのか……?

 

「「生きろ」」「ワフ…!」

 

 ……分かった。僕、頑張って生きてみるよ…!

 父さんと母さんとモンちゃんが消えて、ビー玉みたいなものが血の海に落ちて行った。

 

 

 ……………何も起こらない。

 なんで?こう…なんかこう言うやりとりの後にふわぁ〜〜って意識が覚醒するものだよね??

 

「あれ?」

 

 そういえば僕の中にあったモヤモヤがなんだかモヤモヤしてない。なんだか水みたいにスーッと澄み渡ってる感じだ。

 

「うわっ!?」

 

 さっき落ちて行った父さんと母さんとモンちゃんのビー玉のことを考えると手元に突然現れた。

 ………これどうすれば良いんだろう。

 なんとなく思いついた方法に従って母さんのビー玉を血の海に浸けてサワサワしてみる。

 

「おお……?」

 

 なんかビー玉の周りに血がこびり付いてネズミの人形みたいになった。

 父さんとモンちゃんのビー玉も試してみるとそれぞれ牛頭の大男と狼の人形になった。

 

 ………これをどうしろと?

 

 とりあえずちょうど良いサイズだったので三つまとめて食べてみた。自分の血だし大丈夫でしょ。

 

 意識が吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

巌勝side

 

 縁壱が死んだ。

 モンちゃんも死んだ。

 二階に行ったら父さんと母さんが苦悶の表情で死んでいた。

 

 俺は一人になった。

どっち死なせる?

  • 巌勝
  • 縁壱
  • 両方書いて
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