遊戯王LIFE   作:首領ぶり

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こんな遊戯王があっても良いよな。

可愛い女の子キャラが主人公になったり、ラッシュデュエルをしなかったり。
本当に人が死んで、2度と戻らなかったり、デュエルがかなり高度で、リアルの遊戯王に近かったりしても、いいよな。
そんな思いつきで、作ってみた作品です。

もしデュエルがわかりにきぃよ!とか、この展開はつまんねぇよ!とかご意見いただけると、参考にするかもしれません。よろしくお願いします。

尚、なるべく投稿頻度は週一を心掛けますが、そうはできないかもしれません。ご了承ください。


第1話 始まりの出会い

 

歓声、歓声、歓声。

熱気、そして嬌声。

10万人を収容可能な大型ドーム、オレンジ色の客席は、しかしその姿を見せることなく。ただでさえこのドームが満員である光景は、威圧感さえ感じるものだが、さらに10万人全員が立ち上がって熱狂しているので、それはものすごい音圧と雰囲気をもたらした。

 

巨大なスタジアムの中空に映し出されたディスプレイは、そのスタジアムの中央にいる人物たった2名を映すために出ている。たったの、2名を。

 

その片方、筋骨隆々、身長は優に2mを超え、力強さを感じさせるツーブロックの髪型の精悍な男は、しかし追い詰められた表情をしていた。こんなはずではなかった、計算が狂った、そんな顔であった。

 

「いけ、グスタフ・マックス!!城島にダイレクトアタック!」

 

その精悍な男を追い詰めているのは、一見して優男。整った顔と声、細い線の体、そこそこの身長、いわゆるアイドルなタイプの男。しかし、これは決闘、デュエル。

 

巨大な列車の砲塔が、対戦相手のガラ空きのフィールド、その先にいる人物に向けられる。

 

そして、砲が、火を吹いた。

 

「ぐあぁああああああああー」

 

派手な爆炎、そして鮮烈な炎。その強烈な響きと共に、城島が吹き飛ばされ、

 

「ぐふっ」

 

巨大なスタジアムのフィールドに落ちた。目を回しながら倒れる城島が、スクリーンにアップで表示される。同時にライフポイントの表示が現れーー

 

ーLP 2000ー

ーLP 0 ー

 

『わあああああああああああああ』

 

ーー試合会場をさらなる熱狂が満ちた。

 

『決まったー!!!!新田(にった)選手のダイレクトアタックで!!鮮やかな3000の大ダメージー!!!これで、新田選手の三回戦進出が決定しました!!』

 

東京国華競技場、10万人の観客はこの新田輝明、新人プロデュエリストの台頭を喜んでいた。見目麗しく、若い青年の勇姿、プロリーグに出たばかりの頃から極めて高い勝率を誇り、このトーナメントでも注目を浴びるその存在の勝利に、観客は湧いていた---

 

『新田!新田!新田!』

 

-------

 

「新田!新田!新田!キャアアア!」

 

---その様子を、少女は自室のディスプレイから興奮した様子で観ていた。東雲遊生(しののめ ゆうき)14歳。長くて豊か、少し癖のある紫の髪に、ピンクのメッシュが入っている。決して大きいとも言えない体を、目一杯振り回して、たった今観ていた東京国華競技場でのプロ・リーグの一戦、その感動を表現していた。

 

「...ふう...はぁ...。新田君、カッコよかったぁ〜」

 

ひとしきりベッドの上で転がったと思えば、次は頬を赤らめ、目がハートになってゆく。

 

「いつか私も、強くなって、新田君のそばに...!ふふふ」

 

その幸せな妄想はしかし、打ち砕かれなければならなかった。

 

ピピピピピピ...

 

「はっ!そうだ!」

 

少女は覚醒し、現実に引き戻される。自身でかけた妄想脱出用のアラームだ。これをしないと彼女はいつまで経っても予定を忘れ、人に迷惑をかけてしまう。着ていたピンクのパジャマを脱ぎ去り、音速で着替えを済ますと、勢いよく部屋を飛び出した。

 

「今日は土曜日!決闘学園(デュエル・アカデミア)の入学試験の日!!うぉおおお間に合えええええ!!!」

 

尤も、かなり自分を優先した時間設定なので、いつもギリギリなのだが。

 

ーーーーーーーーーー

 

土煙を上げて紫の物体は走った。走って走って走り続けた。時に通行人を巻き込み、「なんだ、いつもの奴か」と半分は呆れられ、「頑張れよー!」と半分応援され、「今日も可愛いなぁ」と一部の人間に羨望の眼差しを向けられてる事は、知らずとも、走り続けた。

 

街路樹を抜け、街の中心である青眼白龍像をぶっち切り、中華料理屋を横目に少しよだれを垂らしかけると、最近建てられた新しい建物が見えてくる。

 

デュエルアカデミアとは、簡単に言えば一般の教育課程に加えて、決闘-デュエル-の授業を必修とする特殊な学校である。小学部から中、高等部までを網羅し、地方の支部校でも全校生徒2000人を超える規模を誇る超マンモスグループ校である。

 

全国に展開をしている途中で、ついにこの街、秋田市にもデュエルアカデミア支部が出来るという情報が入ってから1ヶ月後すぐに、3年後の完工後に始まる入学、編入試験の事前登録が始まっていた。

 

そう、3年、3年待ったのだ。11歳の時からウキウキに今日の試験、アカデミアでの日々を想像し、妄想し、待ち焦がれてきたのだ。今日はたまたま国華競技場の中継があったのでちょっと遅くなってしまいそうだが、そこは気合いでなんとかするのだ。仕方ない、新田くんを応援することも、入学試験と同じくらい大事なのである。

 

会場が見えてきた。この地方都市にはやや不釣り合いだが、街の発展の証になるであろう、綺麗な建物。綺麗な表面の大きなガラスが、校内を歩く様々な人間を映し出す。その大きなガラスが規則正しく並んで、そのような建物がずらっと左右に並んでいる。真ん中には大通りと呼んでも良いような道が通っていて、さらに奥まで続く建物群を際立たせている。

 

「目的の...建物、建物は...」

 

運動エネルギーはそうすれば失われないとでも言うように、スマホのメッセージを確認しながらもその場で走りながら、回っていた。

 

目的の建物に見当をつける、つけた。

デュエルアカデミア、中央闘技場。およそ1kmは続いてるかと思うような巨大な赤い壁、その四隅を白い塔が囲み、睥睨できるようになっていた。中央闘技場という名にふさわしく、天井は開けていて、まるで古代のコロッセオを思わせるデザインに、東雲遊生は息を呑んだ。

 

早く、行かなきゃ。そう思ってさらに駆け出し、体力を使い尽くそうと言ったところで、

 

どんっ-!

 

「キャッー!」

 

前に佇んでいた生徒にぶつかった。いわゆる事故という所だが、転ぶ時の咄嗟の自己防衛で、左腕で体を守ろうとした。だが、そう。左腕には通常デュエリストであれば誰でもつけているものがある。デュエルディスクだ。そしてそこから落ちてしまうと、まずいという思考が過るがしかし、間に合うことはなかった。

 

ガスッ!

 

しかも腕部につけていたデュエルディスクからは...

 

《バチバチッ!!》

 

「あぁーッ!!」

 

ショート音と共に、今の倒れた衝撃で完全に故障してしまったことを確認できてしまった。

 

「いたたた...あの、大丈夫ですか?」

 

聞こえた、意外と可愛い声の持ち主は、腰まである長い桃色の髪をたなびかせながらこちらを見ていた。そして高校生の時点で、将来性が期待されるボディライン...。

だが、遊生にそんなことは関係なかった。

 

「あの...大丈夫でs...」

 

「大丈夫じゃない!」

 

「えっ」

 

「私の...私のデュエルディスクが...」

 

あの人に、あの人にもらった大切なデュエルディスク。少し古いけど、私の大切な、しかも唯一のデュエルディスクだったのだ。こんな所で壊されてる場合ではないのだ。

 

「ぶつかってしまって、すみません...その...」

 

ぶつかったことはもはや問題では無い。

 

「アンタ!どうしてくれるのよ!」

 

「ひっ」

 

遊生は、鬼気迫る表情...いや、だが主に描写をするのであれば、号泣していた。

 

「アンダ、これは、ごれはっ!」

 

「あの、ごめんなさいデュエルディスクなら私のを貸しますから」

 

早口で捲し立てても遊生には届かなかった。

 

「ごれはっ...でぃっだぐんにぼだっだ...うぅ〜」

 

「えっと...」

 

なんだか何を言ってるのか分からない少女に、しかしこれ以上構っている時間はなかった。

 

「あの、落ち着いてください!そろそろ試験が始まる時間ですよ!」

 

「そうだ...ぢげん...」

 

「そうです試験です」

 

遊生は、今日なんのために外出をしたのか思い出した。ショックなことはショックだが、それは今はしまっておかなければならない。この日のため。この日のために3年も準備して来たのだ。

 

「あとで、落とし前はきっちりつけてもらうんだからね!」

 

「は、はい!わかりました」

 

桃髪の少女と遊生は走った。

 

-------

 

「は、はれ...?」

 

真っ赤に目を腫らしながらも走った先は、絶望だった。目的の建物、第3デュエル場に到着し、その大きな門の入り口でテーブルを広げている受付の人たちを見つけ、心の中で一安心した所であったが、

 

「決まりですので」

 

少し遅かった。

 

「いや、ちょ、ちょっとまってよ。ほら、時計の針はまだ9時ジャストよ!ほら!」

 

腕時計の針を指さして言ってみるが、現実は無常だった。

 

「いえ、すでに2分を指しておりますが...」

 

ぐにゃぐにゃ回る視界。震える腕は、時計の針さえブレて見え、もはや何時だか遊生には分からなかった。

 

「そんなぁ、ほら、まだ9時ですよぉ」

 

遊生は、藁にもすがる思いだった。なんとか弁明する事ができれば、この窮地を脱する事ができるかもしれない。だが

 

「えっと、女の子と、ぶつかって、で、えっと、デュエルディスクが、その」

 

しどろもどろに過ぎた遊生の弁明は、遊生自身のメンタルが危機を迎えていたこともあって、弁明の体を成さなかった。

当然、受け入れられるはずもなく、

 

「規則です。遅刻に例外はありません」

 

現実は無情だった。受付の人物らしき女性は、そのままたしかし、遊生は一人ではなかった。

 

「待ってください。これは事故の結果です」

 

「事故?」

 

「はい。」

 

「あなたは?」

 

「受験番号957番、宮永 薫(みやなが かおる)です」

 

桃色の髪が名乗る。なんだかその名乗りに合わせて、髪がそよ風になびき始めたような気がした。

 

「あなたも、この人と同じです。規則通りならば、失格となる所ですが、何か申し開きでも?」

 

彼女は、遊生と対称的に、落ち着いて堂々としていた。

 

「例えば、電車やバスが事故等で遅延した場合、それを証明できれば、それのよる遅刻や欠席は仕方なしと認められ、何かしらの処置がありますね?」

 

「通常ならばその通りですが...何かあったのですか?」

 

「先ほど申し上げた通り、彼女と私は軽い事故に遭いました。間に合うはずだったのが、こうして少し遅れる程度には」

 

「具体的には?」

 

「その...そこの彼女とぶつかりました。」

 

「ぶつかった...?その程度では認めるわけにはいきませんが」

 

「その、強くぶつかったので、怪我の心配もありました」

 

「証明書を発行されるような事故では無さそうですが。」

 

「彼女のデュエルディスクを見てください」

 

「へ?」

 

二人は視線を遊生に移した。絶望にひしがれていた彼女は、情けなくも4つんばいになっていたが、それで腕についているデュエルディスクはよく見えた。

最近の最新式のデュエルディスクは、腕につける小さな薄い盾のような形状をしている。厚さは3cm程度だが、起動すると、フィールドを表すバーチャルディスプレイが出現する。そして、インストールしてあるデッキデータを読み込み、プレイしたい内容の部分に指をかざせば、モンスターや魔法演出のソリッドビジョンが出てくる仕組みだ。

 

だが遊生のデュエルディスクは少し古いタイプのものだ。目立つのは7cmほどの厚みと、カードを読み込み、データ化するためのスロットがある事だ。

かろうじて、最新式のデュエルディスクとのデュエルをするための互換性は有るのだが、何せ本物のカードを所持する必要がある所が古いと言われているタイプ。

少し青みが掛かったカラーが特徴的なそのデュエルディスクは少し古びた様子が見えたが、それよりも致命的な様子の部分が。

少し厚めの丸い機械の一部分が、派手に欠け、全体にヒビが入っていた。焦げた部分も見え、ショートした跡すら見える。

 

「なるほど...これは」

 

「よく見ていなかった事も、そもそももっと余裕を持った時間に来なかった事も、私達の責任ではありますが...」

 

「いや、でも...規則は...」

 

煮え切らない様子の受付に、少し焦りの見える薫だが

 

「なんだ、なんでこんなに回収が遅れている?」

 

少しイラついた様子で、声がかけられた。

 

野太い女性の声、振り返るとそこには偉丈夫...ではないが、身長が190cmはありそうな凛々しい女性が立っていた。浅黒い肌だが露出が多めで、まるでデュエルモンスターズでいうアマゾネスのようであった。

 

「この三澤静香を待たせようなんて、いい度胸してるじゃないか。ええ、吉澤先生?」

 

吉澤先生、とそう呼ばれた受付の女性は、少し困ったように答えた。

 

「いえ、三澤先生にご迷惑をおかけするつもりは...」

 

それを聞いて、嘆息して三澤は言った。

 

「今回は完工後初の入学試験だろう?だから倍率も凄ければ、試験管の手も足りないんだ。さっさと片付けて来て欲しい所なんだ。吉澤先生もわかってるはずだよな?」

 

「それが、三澤先生、この受験生達がですね...」

 

-------

 

「なるほど、ほんのギリギリ遅れちまったって訳だ」

 

三澤は納得したような仕草で腕を組んだ。腕を組むことによって、よく鍛えられた腹筋や胸筋、上腕二頭筋などが目立つ。ちょっとかっこいい。

 

「はい...もしよろしければ、受験を許して頂きたいのですが」

 

「ふむ。わかった」

 

なんと二つ返事。これには遊生たちも驚いていたが、吉澤は食ってかかった。

 

「ちょっと!規則を破るわけにはいかないんじゃないですか?示しが...」

 

「たったの2分だ。アカデミアの理念は、優秀なデュエリストの育成だろ?ちょっと例外くらいあっても良いものだ」

 

「しかし...」

 

反論を続けようとする吉澤を遮るように、三澤は続けた。

 

「それにだ。話を聞く限り、おそらくそこのピンク髪の彼女は被害者だ。そこの紫髪はともかく、彼女は本当に仕方ないとも言えるだろう」

 

「三澤先生...」

 

遊生にとって雲行きの怪しくなる話である。よく考えてみれば、前に立っていた少女に遊生がぶつかった形、もといぶつかったのが真相なので、何も反論できない。そう思ったのか、絶望感の漂う表情で遊生はこの状況を見ていた。

 

「ただ、そこの紫髪を悪く言わないのは、おそらくデュエルディスクが壊れたのが可哀想だと思ったのか、自分にも責任があると思っていたのか...どちらにせよ、彼女はこの紫髪にも一緒にチャンスを与えて欲しいようだ。」

 

薫は驚いた。この人物の口調や雰囲気からはとても想像のつかない理知的な話し方だったからだ。

 

「どうしてそこまでわかるんですか?」

 

「ふん。どこか訂正する事項があるか?」

 

「いえ、特には...」

 

「そこでだ」

 

固い決意を示すかのように、組んでいた腕を振り翳し、三澤は宣言した。

 

「時間も惜しい所だし、私の権限で参加を認める。さっさといれてやれ、吉澤せーんせ」

 

腰を曲げ、仕方ないだろ?とでも言いたげな顔で吉澤を見る三澤。見ればウィンクまでしている。それをみて、吉澤は折れる他になかった。

 

「はぁ...わかりました。ここに名前と番号を書いて、身分証を見せてください」

 

吉澤が折れたということは、遊生にも無事チャンスが巡って来たということだ。先ほどまでの四つん這いが嘘のように、喜びが湧き上がって来た。落としてから上げられると、差分で喜びが倍になるのだろうか。とにかく嬉しかった。

 

「やったー!試験受けれる!やったやったやったー!あははははははは!!!」

 

「え、ちょっ!?」

 

気がついたら、喜びの発露は薫への抱擁といった形で表れていた。薫は、いきなりだったから驚いた様子で遊生をしばらく見ているしか無かった。

 

「ちょ、わか、わかりましたから、一度離れてください!」

 

「あ、ごめん...」

 

人に抱き付かれるなんていつぶりだろうか。いきなりだったからビックリしたが、そこまで悪い気はしなかった。

 

「えっと、宮永さん、だっけ」

 

「え、ええ。そうですが」

 

「これも何かの縁よ!薫って呼んでいい?」

 

この人物は、距離の詰めかたが下手なのだろうか。真っ直ぐに見つめてくるその瞳に、色々考える事が有りながらも負けてしまった。負けて、しまったのだ。

 

「わかりました。ではあなたの名前は?」

 

「東雲遊生。遊生って呼んで!」

 

そうして改めての自己紹介が終わり、二人が友情の握手を交わした所で、「コホン」と音がする。

 

「やっぱり失格にさせようかしら」

 

「わぁ!まってぇー!!」

「あっ、ごめんなさい!」

 

二人して一緒に慌てるのであった。

 

-------

 

廊下をしばらく歩くと、どでかい広場が出て来た。各所では、すでに生徒と試験官とのデュエルが始まっていた。

 

『俺のターン、ドロー!』

『甘いな、リバースカード、オープン!』

『チェーン発動、封魔の呪印!!』

 

各所で聞こえてくるデュエルの様子が、遊生の心を打った。これから私もここでデュエルするんだ。

 

「今日は受験番号901番から1000番までの百名の試験を行う予定だ。ここでは一度に10組までデュエルが可能だから、少し時間はある。そこで見学しているといい」

 

三澤が説明をしながら、席に案内してくれる。ここはコロシアムとは少し違うが、少し高いところから観客席が並び、随所にある階段で下へ降りてデュエル場に立つという仕組みだ。今はまだ始まってからあまり経ってないので当たり前ではあるが、試験待ちの生徒で客席は一杯だった。

 

「さて、宮永はここで待ってればいいとして、東雲」

 

「は、はい。なんでしょう...?」

 

この人が目を向けてくると、緊張してしまう。生物的な優劣を激しく感じるというか、なんというか...。

 

「お前に関しては、半分以上宮永の好意で、残りは私の好意と裁量で助かったフシがある。わかるな?」

 

「はい、申開きのしようがありません...」

 

しゅん。

 

「お前は特別に、私が直々にデュエルをしてやる」

 

「え」

 

この怖い人と...いや、ちょっとかっこいいとおもっでもええええ!!?

 

「ど、どうしてなんでしょう...」

 

「簡単だ」

 

「?」

 

「その時になればわかる。さて、私はしばらく席を外す。ちゃんと見学しろよ、998番」

 

三澤は、そのまま席を立つと、デュエル場の1箇所に降りて行った。5つのフィールドが横並びになってるのが2列あるので、合計10個のフィールドが並んでいるが、まだデュエルの始まっていないフィールドに生徒が所在なさげに立っていた。そこに三澤が収まる。

 

「受験番号902番。待たせたな。試験を開始する」

 

そこに居た生徒は短髪黒髪、身長は190cmほどで、三澤に見劣りしない体格の男だった。恰幅のいい体をしているので、余計に大きく見える。

 

「受験番号902番、李讃熙(リーチャンヒ)です。よろしくお願いします」

 

「試験官の三澤だ。さあ、早速始めるぞ。」

 

「はい」

 

恰幅の良い...まあつまり太っているのだが、意外といい声で宣言した彼の雰囲気が、どこか新田に似ている気がした。遊生はこの人物のデュエルに興味があった。

そう思っている間にも、両名がボタンを押し、バーチャルディスプレイを展開する。そうなったら、重なってかかる決まった掛け声があった。

 

『決闘(デュエル)!』

LP4000

 

三澤

LP4000

 

フィールドの中央に、両名の方からサイコロが出現する。1-6の出目で、同じだったら振り直し。数が大きい方が先行か後攻を選べるのだ。

 

李3

 

三澤6

 

「あっちゃー」

 

李が軽く仰反る仕草をする。サイコロで負けたのが悔しいと軽くリアクションをしたような形だが、デュエリストならその意味は大きい。

現代の遊戯王において、先行を取れることのアドバンテージが大きいのだ。事実、李はできれば先攻がとりたいと考えていた。

 

三澤は「ふん」と少し微笑み、宣言した。

 

「私が先攻だ」

 

そして、始まる。入学試験での、普通じゃないかもしれないデュエルが。遊生はなんとなくそう思いつつ、手に汗を握った。

 

-------

 

「私のターン!スタンバイからメインフェイズ!」

 

三澤はそう宣言しつつ、カードを5枚引いた。李も5枚釣られるように引く。

 

「私は手札から、【ライオウ】を通常召喚!」

 

青いカラーの、雷を纏ったモンスターが、雷の音と共にフィールド場に現れる。

 

ライオウ ⭐︎4 光

攻撃力1900

 

「なんと...今時珍しい、少し古いカードですね」

 

李は驚いて言った。

 

「古いカードだから、侮るか?」

 

「いいえ、そのカードは、時が経った今でも厄介なカードです」

 

「ふむ、きちんと勉強しているようだな。私はカードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

李はその言葉を聞いて、頷く。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

李はドローカードと共に、手札のカードを覗き込んだ。しばしの沈黙が流れる。

 

「その様子だと、伏せカードに対処できるカードが引けなかったようだな」

 

「いいえ、そうでもないです」

 

「む、そうか。では見せてみろ」

 

「はい。まずスタンバイフェイズからメインフェイズまで。...何もなければ、私はバトルフェイズに入ります」

 

遊生は驚いて言った。

 

「えっ!?モンスターを何も召喚せずに、バトルフェイズに入るの?」

 

「あれは、おそらくそのタイミングでしか発動できない何かのカードがあるんだと思います」

 

「薫ちゃん、何よそんなカード、私見たことないわ」

 

「もしそうなのだとしたら、少し珍しいカードですしね。しょうがないです」

 

「ずっと新田くんのデュエルは欠かさずに見ていたのに、私が知らないなんて...」

 

「新田輝明選手をずっと見ていた...ほかのプロの試合も見ていたのなら、見たことくらいはあるはずですが...呆れた人ですね」

 

「えへへ...」

 

「とはいえ、今あるカードの中で、しかもこの状況で発動するカードなら、あれしかないでしょう」

 

李はそのカードを発動した。

 

「俺は、バトルフェイズを終了!そして、このカードは、自分フィールド上のカードの数が相手フィールドのそれより少ない時、且つバトルフェイズ終了時に発動可能。更に、自分フィールド場にカードが存在しない場合、手札から発動することができる。罠カード発動、【拮抗勝負】」

 

「ほう」

 

拮抗勝負のカードが、フィールド場に現れて、効果の発動の演出が再生される。

 

「相手フィールド上のカードは、私のフィールド上のカードの数まで減ります。方法は裏側での除外。なにかチェーンはありますか?」

 

「ふむ。それは止めねばなるまいな。リバースカードオープン、チェーン発動!【神の宣告】」

 

「む」

 

チェーン1拮抗勝負

 

チェーン2神の宣告

 

「ライフを半分払い」

 

LP4000→2000

 

「相手の魔法、罠、モンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚を無効にして破壊する。私は拮抗勝負を無効にして破壊する!」

 

「カウンター罠なら仕方がない。これはやられました」

 

「ふん、流石に、如何に試験のための調整されたデッキだと言えど、たった一枚のカードで台無しになるようなデッキではないさ」

 

「では、メインフェイズ2に入ります」

 

遊生は感心したように見惚れていた。

 

「ほえぇ〜、あんなカードもあるんだね」

 

「一般的なデュエリストが知らないのは仕方ないですが、プロデュエルが好きで見てるのであれば、知ってて当然のカードです」

 

「それは、えっと...あはは」

 

「まああなたは違うようでしたね...新田選手の場合、彼の個人的な好みということもある様ですが、枠を削る際の候補が拮抗勝負だったようです」

 

「それはどうして?今見た感じ、初手に先行を引けなかった場合の切り札って感じだったけど」

 

「すべてのデッキの先行展開に有効なわけではないのと、彼のプレイスタイル的に、後攻1ターン目のバトルフェイズを事実上放棄することを嫌ったのでしょう。彼のデッキは『列車デッキ』。大きなモンスターと高い攻撃力で押し切るデッキなので」

 

「な、なるほど〜」

 

遊生は、新田という人物に関して自分より詳しい薫に少し嫉妬し始めてしまった。次からはちょっとちゃんと見よう...。

 

「それより、始まりますよ」

 

「う、うん」

 

李は少し考えると、メインフェイズ2をはじめた。

 

「俺は、手札から罠カード発動、【無限泡影】!対象はあなたのフィールドの【ライオウ】だ!」

 

「む」

 

ライオウが、色を失ってセピア色に染まっていく。

 

「ライオウの効果が...わざわざこうするということは、デッキからサーチをするためだな?」

 

「そういうことです。そして、手札のモンスター効果を、デッキから「斬機」モンスター、【斬機シグマ】を墓地へ送り、発動。【斬機サーキュラー】!」

 

遊生は更に驚いた。

 

「斬機、ってあまり聞かない名前だけど...それより、デッキから墓地へ送るのが...コスト!?」

 

「ずるいですね、あれでは...」

 

「だって、あれじゃあ効果を無効にしても、墓地へ送る方は止められないじゃない!」

 

「最初から墓地へ行くカードを除外するようにするしかないですね」

 

語り合う二人を差し置いて、デュエルは進む。

 

「斬機サーキュラーを、手札から特殊召喚!」

 

「なるほど、カード効果での特殊召喚なら、ライオウで無効にできない。だが、罠カード発動!【奈落の落とし穴】!攻撃力1500以上の相手モンスターが特殊召喚に成功した時に発動可能!そのモンスターを破壊して除外する!」

 

斬機サーキュラーがフィールド上に表れた瞬間、紫色の亀裂がサーキュラーの足元に発生する。穴に落ちて姿が見えなくなった後、爆発が起きて、そのままサーキュラーが居なくなってしまった。

 

「この程度は、ライオウと3枚の伏せカードを見た時から想定していました。手札から【斬機サーキュラー】を通常召喚」

 

もう一度、サーキュラーが現れる。

 

斬機サーキュラー ⭐︎4 光

攻1500

 

「もう一枚のサーキュラーか」

 

「そして、俺の【斬機サーキュラー】を対象に、再び手札からモンスター効果発動、【斬機サブトラ】!対象のモンスター、【斬機サーキュラー】の攻撃力を1000ポイント下げ、フィールド上に特殊召喚する!」

 

サブトラが特殊召喚される。

 

斬機サブトラ ⭐︎4 炎

守 1000

 

「そして、【斬機サーキュラー】が表側表示で存在している時に斬機モンスターが特殊召喚された事により、【斬機サーキュラー】のもう一つの効果発動!デッキから、「斬機」魔法、罠を手札に加える!俺はデッキから【斬機超階乗】を手札に加える。そして、手札から装備魔法発動、【斬機刀ナユタ】!斬機サーキュラーに装備!」

 

斬機サーキュラーが、巨大な刀を装備した。

 

「俺はカードを一枚セットして、ターンエンド。サブトラによって下がった攻撃力は、元に戻る」

 

李のフィールド

斬機サーキュラー 攻1500

斬機サブトラ 守 1000

伏せ 1枚

斬機刀ナユタ(サーキュラーに装備)

残り手札1枚

LP4000

 

三澤のフィールド

ライオウ 攻1900

伏せカード2枚

残り手札1枚

LP2000

 

「私の、タアァーン!」

 

三澤がターンを開始する時、大きな声の反響と共に、衝撃派が会場を襲う。

 

「ちょちょちょっとぉ、何よこれ!」

 

「うぅっ、声と気合いだけで、なんていう...!」

 

「人が気合を入れたからってこうなるって、あの人どうなってるのよー!」

 

「噂で聞いたことがあります。三澤静香は、圧力を発して、相手を威嚇することがあると。それがこれですか...」

 

「圧力ってこんなに!?いや凄いけど...静香って、全く静かって感じじゃないよ!」

 

三澤は笑った。

 

「フハハハハ!やるじゃないか李受験生!だがライオウは破壊できていない。このデッキがどういうデッキかはわかってるんだろうね?」

 

「はい。おそらくそのデッキは、⦅グッドスタッフ⦆のデッキです」

 

「そうだ。今まで出現したカードを見る限りであれば、それが正しい思考だろう」

 

「ですが、おそらくタダの⦅グッドスタッフ⦆ではない」

 

「ほう?」

 

三澤が、笑みを止めた。李はそのまま続ける。

 

「これは私の勘なんですが、あなた、三澤先生は自分の気に入らないことがあったら、なんとかして変えてしまったり、自分の望むことがあったら少しずるいことをしてでも叶えるタイプだ」

 

「どうしてそう思った?」

 

「今目の前で対峙した感想もそうですが、過去の、プロデュエリスト時代のあなたのニュースや言動を調べたことがありました」

 

「なるほど」

 

再び三澤が笑みを作った。

 

「プロデュエリストの問題児、三澤静香...長々と言ってもしょうがないのでまとめますが、何となく勘だけど...あなたは恐らく、通常の試験官用のデッキに細工をしている」

 

「ふふふ...ふはははははは!!!」

 

三澤は笑った。そしてディスクを構える。

 

「正解だ。デッキの内容を20枚ばかり変えてある。全員で同じデッキを使うというのも芸がない気がしてね」

 

「20枚も変えたら、それは別のデッキだよ!」

 

「いくぞ、ドロー!スタンバイからメインフェイズまで!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ...となぜか擬音が聞こえる気がする。ほんと、つくづく名前と釣り合いのない人だ。

 

「私は、【ネメシス・コリドー】を召喚!」

 

『なっ!?』

 

今度は、遊生のみならず、観戦をしていた人間全てが驚くことになった。

 

「な、なんであんなカードが!?なにか雷族のサポートを他に入れてるのかな?でも40枚の枠に入り切らないんじゃないのー!?」

 

「普通は...入れませんね。⦅グッドスタッフ⦆なのであれば...。見れば、他の生徒たちのデュエルの先生たちのフィールドは、似通った物になっています。やはり今日の試験官のデッキはすべて⦅グッドスタッフ⦆。だけど...」

 

「私は、【ネメシス・コリドー】と【ライオウ】を、リンクマーカーにセット!」

 

「フフフ...」

 

李は笑って言った。

 

「まさか【ライオウ】がリンクマーカーにセットされるのを見る日が来ようとは。さすが三澤先生、面白いことをする」

 

「アローヘッド確認、召喚条件は、光属性モンスターを含むモンスター2体!現れろ、リンク2!」

 

赤い光になって吸い込まれ、【ネメシス・コリドー】と【ライオウ】が、中空に現れたリンクモンスターを呼び出すための紋様装置、アロー・ヘッドにセットされる。位置は左下と右下。

 

「【照耀の光霊使いライナ】ァア!!」

 

李の笑みが消え、さらに驚きが表情を彩る。

 

「ライナだと!?そのカードは...!」

 

照耀の光霊使いライナ L2 ↙︎↘︎ 光

攻1850

 

「そうだ。ライナの効果発動!相手の墓地の光属性モンスター1体を選択して、自分フィールドに特殊召喚する!さあ我が僕になれ、【斬機シグマ】!」

 

「そういうことか...」

 

【斬機シグマ】が、三澤のフィールド上に特殊召喚される。

 

「更に私は、私の墓地の【ライオウ】を除外して、【暗黒竜コラプサーペント】を特殊召喚!」

 

暗黒竜コラプサーペント ⭐︎4 闇

攻1800

 

「だんだん、見えてきた...あなたはライオウの属性や、基本的に採用される手札誘発以外のカードを大幅に変更し、光と闇属性のモンスターを入れ、リンクやシンクロ召喚をうまく行う、いわば⦅カオス⦆に似たデッキに仕上げたわけだ」

 

「察しがいいな。あまりに強いデッキにしても受験生を不当に落とすことになるからな。⦅カオス⦆あたりが妥当だと思ったのだ」

 

三澤が満足そうに笑いつつ、ターンを続ける。

 

「私は、【暗黒竜コラプサーペント】をリンクマーカーにセット!リンク召喚!召喚条件は、レベル4以下のドラゴン族モンスター1体!」

 

【暗黒竜コラプサーペント】が、赤い光になって、さらに吸い込まれる。

 

「現れろ、リンク1、【ストライカードラゴン!】」

 

ストライカードラゴン L1 ←闇

攻1000

 

「このモンスターはただの足場よ、【ストライカードラゴン】と【照耀の光霊使いライナ】を再びリンクマーカーにセット、リンク召喚!現れろ、リンク2!【暗影の闇霊使いダルク】!」

 

暗影の闇霊使いダルク L2 ↙︎↘︎ 闇

攻1850

 

「私は、【暗黒竜コラプサーペント】のモンスター効果発動!このカードが墓地へ送られた時、デッキから【輝白竜ワイバースター】を手札に加える」

 

遊生は怪訝な表情をした。

 

「なんですぐにランク4のエクシーズ召喚かレベル8のシンクロ召喚を行わないんだろう?今李さんの墓地に闇属性はいないし...」

 

「あの三澤静香が意味のないことはしません。すぐにわかるでしょう」

 

三澤はニヤリと笑った。

 

「私は、【ワイバースター】の効果で、墓地の【ストライカードラゴン】を除外し、特殊召喚!現れろ、【ワイバースター】!」

 

輝白竜ワイバースター ⭐︎4 光

攻1700

 

「私は、【輝白竜ワイバースター】に、【斬機シグマ】をチューニング!」

 

遊生は身を乗り出す。

 

「来た!シンクロ召喚!」

 

「雄々しき竜よ。その獰猛なる牙を今、銃弾に変え撃ち抜け!シンクロ召喚!レベル8!【ヴァレルロード・S(サベージ)・ドラゴン】!!」

 

白と赤を基調にした、龍が現れる。

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン ⭐︎8 光

攻撃力3000

 

「墓地の【ライナ】を選択して、【ヴァレルロード・S・ドラゴン】のシンクロ召喚成功時の効果と、チェーンして、【輝白竜ワイバースター】の墓地へ送られた時の効果を発動!」

 

遊生はぼやく。

 

「あまりに強いデッキにしてもって...そのカードを出しておきながらよく言うよ...」

 

「ですね...」

 

これには薫も呆れる他なかった。このモンスターは、プロデュエル界で必ずと言っていいほど見ることのある、いわゆる『万能無効』効果持ちのモンスターの1体。学生だと持ってる生徒は羨まれるレベルのモンスターである。学生でも持っていない事はない。頑張ってカードを入手することができれば。だが...試験で持ち出すのも気が引けるモンスターの1体だ。

見れば、李は何の反応も示さなかったので、組まれたチェーンが解決する。

 

「解決!【ワイバースター】の効果で、デッキから【コラプサーペント】を手札に加える!そして【Sドラゴン】の効果!墓地から先ほど選択したリンクモンスターを装備!リンクマーカーの数だけこのカードにヴァレルカウンターを置き、装備したモンスターの攻撃力の半分だけ、攻撃力がアップする!」

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン ⭐︎8 闇

攻3000 → 3925

 

「攻撃力が3925!ちょっと半端な数字だけど、3000ラインを大きく超えた!」

 

「バトルだ!」

 

李が構える。

 

「【暗影の闇霊使いダルク】で、【斬機サブトラ】を攻撃!」

 

【ダルク】が闇色の魔法を【サブトラ】に放つ。【サブトラ】はなすすべも無く攻撃を受け、爆発する。

李はその爆風を受け、堪える。

 

「ぐっ!」

 

「更に【Sドラゴン】で、【斬機サーキュラー】を攻撃!」

 

【ヴァレルロード・S・ドラゴン】

攻3925

 

【斬機サーキュラー】

攻1500

 

「これが通れば、大ダメージだ!」

 

李が負けじと宣言する。

 

「装備魔法、【斬機刀ナユタ】の効果!装備モンスターのダメージ計算時に、デッキから【斬機】モンスター、【斬機ダイア】を墓地へ送り、発動!その攻撃力分、攻撃力がアップする!」

 

「させるか!【ヴァレルロード・S・ドラゴン】の効果を発動!ヴァレルカウンターを1つ取り除き、【斬機刀】の効果の発動を無効にする!」

 

「ここで使うのか!」

 

「ふはははは!避けられぬダメージを喰らえ!ヴァレル・バレル!」

 

【ヴァレルロード・S・ドラゴン】が、シリンダーから弾丸を発射する。【サーキュラー】が攻撃を受け、爆発する。

 

「ぐっ!魔法・罠ゾーンから破壊され墓地へ送られた【斬機刀ナユタ】の効果、墓地から斬機カードを1枚手札に加える、俺は、墓地から【サーキュラー】を手札に!」

 

「ちょこざいな、吹き飛べぇえ!!」

 

「ぐあぁあああっ!!」

 

LP4000→1575

 

爆発を受け、李は体勢を崩し、少し飛んでしまった。持ち上がった体は、少し浮いて、仰向けに着地してしまう。

 

「ぐはっ」

 

「どうだ、中々の、良いデッキだろう?」

 

遊生は慌て、薫はさらに呆れた表情を見せた。

 

「ちょちょちょっとぉ!これ本当に入学試験でいいのー!?」

 

「これは...見事な戦術ですが、勝てる学生がいるのでしょうか...」

 

それに三澤が反応する。薫は、聞こえると思っていなかったのか少し恐怖した。

 

「フハハハハ!それには及ばない、宮永受験生」

 

「ひっ!?えっと...?」

 

「簡単な話、私の独断でデッキを組み換え、強くしてしまったのだ。なら、私の独断ではあるが、本来の合格条件、「試験官への勝利」を譲歩してやれば良い。私に勝てなかった生徒でも、私が認めれば入学できる訳だ」

 

「な、なんて自分勝手な...!」

 

「こ、これが、権力...」

 

これは恐らく今回だけではない。三澤がプロを一時休止し、教師になってから4年余り経つが、この人はクビになっておらず、更に言えば有名教師として名を馳せ、この新分校に戦力として派遣されたのだ。

つまり、これは校風だ。このような勝手、もといインスピレーションによる生徒への刺激が、良いとされるタイプの学校なのだと、薫は結論づけた。

そんな結論に他の何人かも辿り着いている中、李は立ち上がった。

 

「カードを1枚伏せる。私はこれで、ターンエンドだ」

 

三澤

暗影の闇霊使いダルク 攻1850

ヴァレルロード・S・ドラゴン 攻3925

伏せカード1枚

手札1枚

 

伏せカード1枚

手札1枚

 

「凄いですね...ですが、あなたはミスを犯した!それが...俺の勝利への道標となる!」

 

「何?」

 

「ほう」

 

「アナタのエンドフェイズに罠カード発動!【斬機超階乗】!!墓地から3体まで「斬機」モンスターを選択して発動!俺は【斬機シグマ】、【斬機サブトラ】、【斬機ダイア】を選択!これらのモンスターを特殊召喚し、更にシンクロかエクシーズ召喚のいずれかを行う!」

 

李の後ろに、斬機たちが3体浮かび上がってくる。

 

「させるか!速攻魔法、【墓穴の指名者】をチェーン発動!対象は、貴様の【斬機シグマ】だ!」

 

「くっ!【シグマ】!」

 

「解決!墓地の【シグマ】を除外し、次のターンのエンドフェイズまで効果を無効にする!」

 

「ならば、【斬機超階乗】は、【シグマ】を除いた2体を墓地から特殊召喚します。俺が選ぶのは、エクシーズ召喚!」

 

浮かんだ斬機のうちの1体【シグマ】が、不気味な手の指さしを受けて、色がくすみながら消えていく。

 

「残念だったな、3体エクシーズも、レベル12シンクロも、この次のターンの逆転もこれで難しくなった」

 

「いいえ、これでいいんです。私はレベル4の

モンスター2体、【斬機サーキュラー】と【ダイア】でオーバーレイ!」

 

2体のモンスターが黄色い光となって、渦に飲み込まれていく。

 

「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

黄色と白の眩い光が、渦から溢れてきた。

 

「エクシーズ召喚!現れろ、ランク4、【塊斬機ダランベルシアン】!」

 

渦から溢れ出る光と共に現れたのは、黒と黄色を基調にした機械戦士。

 

塊斬機ダランベルシアン R4 地

2000

 

「【ダランベルシアン】のエクシーズ召喚成功時の効果、発動!オーバーレイユニットを2つ使い、デッキから「斬機」カードを1枚、手札に加える!俺は、【斬機ダイア】を手札に」

 

「ほう、罠1枚でエクシーズ召喚まで行ってしまうのか。さて、私の場にはそれでも【ヴァレルロード・S・ドラゴン】がいる。あの連中もおどろいていたが、万能無効を持つモンスターだ。正直やり過ぎたとも思っているが...」

 

見ていた人元全てが思った。

 

(思ってるんだ...)

 

「もう十分だ。仮に負けたとしても、李受験生、お前は私が合格にねじ込んで見せる。きっとただの⦅グッドスタッフ⦆だったなら、お前に歯が立たなかっただろう。それでもやるか?この【S・ドラゴン】を突破できるというのか?」

 

腕を食んで淘汰三澤に、李が答える。

 

「はい。突破できます!」

 

「ふん。では、やってみせろ!」

 

「あああああ!!!」

 

鼓舞。己の窮地に勇気を奮い立たせ、心を燃やす咆哮。人間はこれをする時、勝つための力を振り絞る。太古より続く、生物としての本能の行動。

 

それを今、李は行った。

 

「俺の、タァアアアーーーン!!!」

 

to be continued...




勝手な私の妄想

東雲 遊生 CV 雨宮天さん
宮永 薫 CV 小清水亜美さん
三澤 静香 CV 小宮和枝さん
吉澤 佳奈 CV 根谷美智子さん
李 讃熙 CV 遊佐浩二さん
(リチャンヒ)
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