恋愛? 仕事以外興味ないんで ←「「は?」」 周りの美女美少女美幼女達 作:鉄の掟
「……っよし、作戦開始……!」
おはようございます、サイトーです。
絶賛自分のベッドから起きて、2階の廊下から下に降りる階段まで人影がないかチェックしている途中です。
「……オールクリアっ! ゴーゴーゴー!!」
一枚のデカい白いシャツから、俺の体のサイズにピッタリな小さなシャツと革の茶色いズボンに履き替え終えた俺は、素早く迅速に一階に続く階段を降りて行く。
時刻は時計がこの家に無いから分からないが多分10時くらい。
昔、エジプトでラクダに荷物を乗せて運搬する仕事をした事がある為、太陽の位置さえ分かれば方角と時刻は何となく分かる。
まぁあの時は脱水症状になったエジプトの仕事仲間に、積んでいた水を飲ませてしまった為、1日でクビになってしまったけど。
「……ふむ、よしやっぱりこの時間は誰も家に居ないみたいだな」
一階に降りた俺はそう呟き家のドアまでトコトコと歩く。
午前中から夕方までのこの時間は両親は畑仕事に行き、姉も学校に行っている。
つまり姉が学校から帰る時間……大体午後5時くらいまでは俺はフリーで何をしてようがバレる心配は無いという訳だ。
7時間も仕事出来るとか最高かよ、おい。
「うおっ……雲一つない仕事日和だな」
木製のドアを目一杯押し外に出た俺の目に、雲一つない青い空と草木や森の木が揺れる緑と青の大自然が飛び込んで来る。
一瞬だけ立ち止まって、そんな前世では見ることの無かった美しい景色に目を奪われるが、まぁそんな綺麗な青空なんかはどうでもいい、それより仕事だ。
種植え、耕し、水やり……想像するだけで気分が昂ってくる。
「えっと……確かあの子が居た畑は、こっちの道だった筈」
家を出て右側に、一直線に続く道を歩いて行く。
まるで日本の片田舎の様な景色に、懐かしい気持ちになっていると見覚えのある畑が見えて来た。
そうして遠目でも分かる、日に焼けた健康的な肌をタンクトップの様な服から惜しみなく見せて田おこしをしている子が見えた。
多分姉と同じぐらいの年齢だろうか?
俺が迷う事なくその子のいる畑の方に歩いて行くと、タオルで滴る汗を拭った彼女と目が合った。
……あれなんか睨まれた気がする。
あ、こっちに歩いて来た……よく聞こえないけど何か言ってるな。
「あんた向こうの畑の子よね? ……何でここに居んの?」
姉より短い黒髪を頭の後ろに結び、細い腕を姉より小さい(まぁこれくらいが年相応な気もするが)胸の前で組んだ少女は、さっきまで作業をしていた畑から身軽に出てくると、俺の前でそう言った。
「初めまして、えっとサイトー・テルキと申します。お忙しい中すみません」
「あっえっ……ふ、ふんっ! ちっこいくせに礼儀を知ってるのね!」
「恐縮です、この度は貴方の仕事ぶりに勝手ながら感動いたしまして、是非とも貴方と仕事をしたいと思い、ここまで来た次第です」
何となく分かった。
これは面接だ、彼女はきっと俺の事を試しているのだろう。
あの強気な姿勢と態度、そして俺の話し方に対する評価。
どう考えてもこれは面接試験だ、この子は俺がきちんと仕事をこなせるか試している、ならば俺はここでミスるわけにはいかない。
何としてでも彼女……いや面接官の期待に応えなければ……!!
「んえっ……? え、えっと……仕事をしたいって事……?」
「はい、是非とも宜しくお願いします」
「あの、でも……あんた確かまだ5歳ぐらいよね? ……何でそんな歳で仕事の事なんて考えてるの……?」
成程、そう来たか。
焦るなサイトー、考えろサイトー。
面接官の心意を読み取れ、何故5歳の俺が仕事を手伝いたいなんて言うのか……。
面接は嘘吐きが勝つ、何処かでそんな事を聞いた覚えがある。
それは半分当たっていて半分外れていると俺は思う、嘘というのは面接では所謂スパイスだ。
味を付けすぎてもダメ、付けなさすぎても個性が出ない。
つまり俺は今このスパイスの調合具合を試されているという訳だ、見た目は10歳程の彼女だが……どうやら俺の実力を出し惜しみして勝てる様な相手ではないらしい。
「以前から貴方の仕事をする可憐なお姿は拝見しておりました、そこで私も貴方と同じ様に肌を焼き、美しく健気に仕事をしたいと、幼いながらもそう思い立った次第です」
相手は女性、しかもまだ10歳ぐらいの所謂幼女だ。
小難しい話し方や変に取り繕う必要はない。
手っ取り早く見た目と仕事ぶりを褒める、これで嬉しくならない女性は居ない、少なくとも俺はそう思う。
「そ……そう? ま、まぁ別にそこまで言うなら雇ってあげなくもないけど……?」
「! 本当ですか!」
「だけど……私の家は貴方の所と違って、その……あんまりお金が無いから……」
少女は暗い顔を地面に向け俺に聞こえるギリギリの声で話す。
なんだ、そんな事か。
確かに俺が産まれた家はこの村では一番裕福な家だった筈、まぁだからこそ両親は俺に働かせる気はないみたいだが……、息子がヒキニートになってもいいのか? あの家族は……。
一先ずそれは置いといて、少女の言い方は多分相場の給料は払えない職場という事だろう。
しかしブラック企業でサビ残の鬼と言われた俺にとってはそんな事、気にする必要すら無い。
「構いません、例え無賃金だろうが俺は働きたいと思っています」
「じゃ、じゃあ……これから宜しく……?」
「はい、お願いします」
少女はそう言うと動物の皮で作られた厚い軍手の様な物を外し、白く透き通った肌の手を俺の方に差し出していた。
懐かしいな、炎天下の中畑仕事をしているといつの間にか、こういう手に俺もなっていた時がある。
俺の方が身長が頭一つ分は低い為、どうにか短い右手を少女の差し出す手に近づけていると、少女は呆れた様に笑い自分から腰を落とし、俺の手を握った。
「はい! 宜しくね、えっと……サイトー君だっけ?」
「はい、そうです……名前をお聞きしても?」
「私? 私は【グレタ・ローリー】。 気軽にグレタで良いわよ」
「分かりました、グレタさん」
このグレタさんは俺の上司になる人だ、目上の人を呼び捨てにする訳にはいかない。
そう思い、さんを付けたのだがグレタさんは何処か不満そうに幼いながらも整った顔を顰めると、ズカズカと草木を踏み越え畑に戻ってしまった。
何か怒らせてしまったか?
グレタさんの通った道をなぞり畑に入っていく途中でそんな事を考えるが、直ぐに気持ちを切り替え仕事に掛かる。
畑の中は外のうだるような気温とは違い、冷たい泥が足に触れ気持ちいい。
さてまず何から始めようか。
「グレタさん、俺はまず何からすればいいですか?」
「……じゃあ、あそこに田おこし用の鍬があるから、それで土を耕しといてくれる?」
「分かりました」
グレタさんの指差す方向には、2本の鍬が置いてあった。
成程、やはり異世界と言えど農業のやり方はさほど変わらないみたいだ。
5歳の体では少し動くのに苦労する畑の中を何とか進み、鍬の元まで辿り着くが……参ったな、両手を使っても上がる気配すら無い。
それに畑は泥の海で、大人は兎も角今の俺じゃあ、踏ん張る地面なんて無いも同然。
「や、やばい……どうしよう……」
ここに来てこんなしょうもない障害が俺を阻むなんて思わなかった、農業は体力勝負。
鍬も持てないんじゃ当然農作業なんて夢のまた夢だ。
苦節5年やっと掴んだ仕事のチャンス。
……無駄にしてたまるか。
「……っふおおおおあああ!!?」
「何してんのよ、馬鹿」
「あいたっ!?」
頭に突然現れた衝撃に思わず涙ぐみながら後ろに振り返ると、グレタさんの平な胸が顔の目の前にあった。
……ん? 胸? 背中じゃ無いのかこれ。
「鉄の鍬なんてサイトー君には重いでしょ、これじゃなくてこっちの木製のを使いなさいよ」
「あっ、どうもすいません……」
グレタさんは俺の横を通り過ぎると、もう一つの鍬を持ち上げ俺の目の前に差し出した。
……いやてっきり2本共鉄製だと思ってたんですが、だって先端埋まってたし。
どうやら異世界でも理不尽な事は起こるようだ。
「はぁ……畑の耕し方、分かる?」
今日何度目か分からない呆れ顔でグレタさんは俺を見る。
いかん、このままじゃ最悪使えない奴だと思われ、クビにされてしまうかもしれない。
「大丈夫ですっ! 経験ありますので!」
「……その歳で経験がある訳ないでしょ?」
嘘はついていない、経験は数えきれない程あるんだ。
畜生、こんな小さい体の自分が憎い。
そう考えていると、いつの間にかグレタさんは俺の背後に周り、俺の持つ木製の鍬を、俺の手の上から一緒に握っていた。
さっきは軽い握手だったから分からなかったが、グレタさんの手は女性にも関わらずかなり硬くなっていた。
働き者の手、頑張り者の手の感触だ。
「いい? 鍬は腕で振るうんじゃ無くて体で振るの、こうやって……!」
「うぐっ」
図らずしも鍬を振ると言う体制は、どうしても前傾姿勢になってしまう。
俺に教える為とはいえ、グレタさんは全力で手に持つ鍬を前に振り下ろしていた、そうなると必然的に背中にはグレタさんの体が密着するわけで……。
いや決して仕事以外には興味なんてこれっぽっちも無いんだが、こうも無造作に近付かられると……どうしても意識はしてしまう。
「あの、グレタさん! もう十分ですから……!!」
「こう……やって! やるのっ……よ!」
ダメみたいですね……(諦め)。
太陽が真上に登った頃、グレタさんは熱が入ったのか、俺との密着度はほぼゼロに等しくなり。
無我夢中で鍬を振る少女と、その下でされるがままに鍬を持つ俺という、奇妙な光景が完成したのであった。
少しこの後の展開に難儀している作者です。
因みにサイトーは人並みに精力は有ります、なので美幼女に抱きつかれたら何とは言いませんが、反応はします、はい。
次回は19日の18時更新です。