恋愛? 仕事以外興味ないんで ←「「は?」」 周りの美女美少女美幼女達 作:鉄の掟
「サイトー……サイトー……サイトー……サイトー……何処に居る……の??」
お疲れ様です、サイトーです。
現在、前世でも感じたことの無い程の絶望を味わっています、助けて。
まぁ……一先ずは何故俺がこんな事になっているのか、説明しよう。
ネロさんの家から小さい体に鞭を打ち、駆け出した俺は順調に家までの道を戻っていた。
走ってる時は帰り道で迷わないか心配だったが、考えてみればネロさんの家からグレタさんの畑までは割と近いし、グレタさんの畑から俺の家まではほぼ一直線に続いている為、今の俺の体でも30分も走れば難なく辿り着ける距離だった。
しかし……俺は見てしまったんだ、いや目が吸い寄せられたといっても言いだろう……そう、グレタさんが倒れてしまったが為に運ぶ事の出来なかった……種の詰まった袋を。
気づいた時には、俺は某巨人漫画で穴を塞ぐ為に巨石を持ち上げたシーンの様に、種袋を運んでいた。
何で急いでいる時にそんな事したんですか? 馬鹿なんですか? と聞かれたら俺の答えは一つ……そこに仕事があったから……さ。
そうして四つの種袋を何とかグレタさんの畑まで運び、良い汗をかいた時には全てが遅かった。
汗を拭おうと見上げた空には星が浮かび、さっきまで西の空に浮かんでいた太陽も完全に行方不明だ。
俺は走った。
万が一、いや億が一でも、あの姉がまだ帰って来ていない可能性に掛け、ダッシュで家までの道を駆けた。
しかし……
「……サイトー……」
「うおぉぉぉ……」
家の玄関で鞄を足元に置き、体育座りで顔を俯かせている姉の姿を見た瞬間、俺は頭を抱えて倒れ込んだ。
せめて姉が玄関ではなく家の中に居たのなら誤魔化せたかもしれない、こっそり家の裏から入るなり、玄関を叩いて姉が動く瞬間に家の中に入るなり出来た筈。
後で姉に色々言われたとしても、外から入って来る所を見られてなければどうとでもなる、しかし玄関に居られてはどう頑張っても家に入る瞬間に見られる。
どうしたものか……このままだといずれ両親も帰って来る。
何も知らない両親は誤魔化せるだろうが……あの姉は無理だ、必ず俺が門限までに帰ってなかった事に気付く。
まぁ、5歳に門限も何も無いのだが……前世では保育園か幼稚園に行かせる年齢だろうし、これも異世界の常識の違いだろう。
「こうなったら……」
俺は残った最後の手段に歯を食いしばる。
この方法はハイリスクハイリターンな為、出来れば使いたくなかった……が、空は段々暗くなって来ていて、両親がいつ帰って来るか分からない以上、悩んでいる時間はない。
よし……行くぞ!
「お、お姉ちゃーん……」
「!! サイトー! 何処行ってたの!?」
「う、ひぐっ……わかんなぁい……」
「……サイトー……よしよし、怖かったね」
……ふっ、笑いたきゃ笑えよ。
見た目は5歳児、中身は大の大人が泣きながら少女に抱きしめられてるんだ。
笑ってくれなきゃ俺が辛い。
しかし、これでリサは俺がただ訳も分からず家から出たと思う筈。
まさか朝から近くの畑のグレタさんに雇用されたり、ネロさんの家の家政婦に1週間という仮契約ではあるが雇われたりなんて、考えもしない筈だ。
というか今考えると、今日の俺は2個も仕事をゲットしたのか。
死んだ時に出会ったあの神様の話では、俺が仕事を見つけるのはほぼ不可能みたいな言い方だったのに。
やっぱり人間成せばなる、成さねばならぬか。
5歳でこれならこの調子で、前世以上にこの異世界で仕事をする事も夢じゃないかもな。
あははは! ……はは……ところで、さっきから何で離してくれないんですかね。
「……お、お姉ちゃん?」
「……サイトー、今日何してたの?」
「え、いや……ちょっと外でお散歩してて」
「嘘」
「ひっ」
いきなり10歳の少女が発したとは思えない程低く威圧感のある声が、小さな耳の中に無理矢理入り込んで来る。
口から小さな悲鳴が上がり、体がびくっと跳ねるが、リサは俺の事を強く抱きしめている為、俺の体はその場から動かない。
「……サイトーの身体から知らない匂いがする、知らない……女の匂い」
「き、気のせいだよ」
「……また、嘘付くんだ」
「……いや、ちが」
い、痛ててて!? 何だこの力!?
まるで巨大な蛇に締め上げられてる様な感覚に、俺の身体からミシミシと嫌な音が聞こえる。
ま、不味い……このままじゃ、骨の数本確実に折られる!
大体知らない女の匂いって何だよ! 確かにグレタさんの肩を支えたり、ネロさんの手を握ったりしたけど、それだけだぞ!?
そんなの前世でアメリカの警察の仕事をしていた時に飼ってた、麻薬探知犬のポチでも気付けないわ!
「あら、二人共、何やってるの? こんな所で」
「……お母さん」
か、母さんが帰って来たのか……?
リサの締め付けが強すぎて少しも首を動かさないが、恐らく後ろに居るのだろう。
助かった……何とか身体にヒビが入る前に抜け出せそうだ、というかさっきからリサの胸が顔に当たって息がし辛い。
いや、というか……マジで締め付けすぎて息が……うぐっ……。
「リサちゃん、取り敢えずサイトーちゃんが窒息しちゃうから、離してあげて?」
「……分かった」
「ぷはぁ! ……はぁはぁ、死ぬかと思った……」
肺を大きく動かして口から息を吸う。
まさかエベレストのガイドで、高山病になった時以来の過呼吸になるとは思わなかった。
まぁ、ぶっちゃけリサに締め付けられている時も呼吸する事は出来なくはなかったが、流石に少女の胸の中で目一杯息を吸い込むのは出来ないだろ。
「取り敢えず二人共、お母さんご飯の用意があるからお家に入って?」
「分かった……ってちょちょ……どうしたんだよ」
「お母さん、ご飯が出来たら呼んで」
母さんの方を向いていた俺は、右手をリサに掴まれる。
それもかなりの力でギュッと握り締めていて、出来ればリサと一緒に居たくない俺は、何とか振り解こうとするが、とても振り解けない。
「は〜い、分かったわ」
その一言を聞くと、リサは置いてあった鞄を持ち上げると、俺の方をチラリと見ながら俺の手を引き、玄関から家に入って行った。
「お姉ちゃんで上書きする」
「……はい?」
玄関から一直線にリサの部屋に連れて来られた俺は、鍵を閉め俺に振り返ったリサから、そんな事を言われる。
一瞬俺の耳がおかしくなったのかとでも思ったが、ジトっとした目で睨み付けるリサを見る限り、そういう事でも無いらしい。
いや、そういう事であれや。
何だよ上書きって、おい。
内心イラつき始める俺を無視して、リサは年齢に見合わない大きさの胸に両手を縮こませ、俺を真っ直ぐ見つめながら話し始める。
「サイトーはお姉ちゃん以外の女と一緒に居ちゃダメ、なのにサイトーはお姉ちゃんが居ない間に、他の女の匂いが付く様な【何か】をしていた。そんなのおかしい。今までずっと私の匂いしかサイトーは知らなかったのに、何でそういう事するの? ねぇお姉ちゃんが嫌いになったの? お姉ちゃんはサイトーにとって必要じゃ……ないの?」
「……えっと」
な、何て早口なんだこの姉ぇ……。
最初と最後以外全然聞き取れなかったぞ、というか途中俺が震え上がる様な事言ってなかった?
もう一度最初から聞きたい気持ちはあるが、リサの表情を見る限りここでもう一回言ってくれなんて言ったら、何されるか分かったもんじゃない。
だってずっと瞬きもせずに俺の返答を待ってるんだもん、怖いよ普通に。
さて、それでリサの話を省略すると「お姉ちゃんはサイトーに必要じゃないの?」という事になる筈。
うーん……ぶっちゃけここで正直に【必要というか邪魔】と言うのは簡単だ、今まで何度この姉に、俺が仕事をしようとするのを邪魔されたか分からないからな。
俺の唯一無二の仕事という楽しみを奪い続けたこの姉を、前まではマジで早くどっか行ってくれないかなと思ってた。
しかし……今の俺、というか今日朝から晩まで念願の仕事をした俺にとっては、リサに伝える言葉はもう決まっていた。
「必要……というか居たら居たで別にいいかなって感じかな」
「……」
あれ、どうしたんだ?
率直に今のリサに対する考えを話したつもりだが……何かマズイとこでもあったのだろうか。
邪魔とは一言も言ってないし、それに必要とも言ってない。
リサが今更何を言おうがしようが、俺はもう仕事を手にした、だから居ても居なくても別に……と、いう一番フラットな関係が今の俺がリサに思う正直な関係性な筈だが。
「もう、いい」
「え、ちょ」
何かが吹っ切れた様に顔を上げたリサは、俺に静止の声も上げられないほど早く近づいて来た。
そうして俺は後ろのリサのベッドに倒れ込み、俺の前には丁度四つん這いの様な形で俺を見つめるリサの顔があった。
そしてその顔が俺の顔のギリギリにまで近づいて来る。
抵抗しようともがこうにも、俺はか弱く小さい五歳児であり、自分より5歳も年上の女の子に力で勝てる訳がない。
「ちょ、ちょっと待て! 何でいきなりこうなんの!?」
「じっとしてて、直ぐ終わる」
「終わらせてたまるかぁ!!」
勝てる訳がない……と言っても何も勝つ必要はない。
俺は明らかにキスしようとして来たリサの唇を避ける様に横を向いた。
不味い、このままだとマジで襲われかねない。
まだ五歳児の弟を襲うとかやっぱりこの姉は何処かおかしい、そうはっきり言ってどうかしてるんだ。
この姉も、この世界の両親も、明らかに俺に対して異常と言っていいほど過保護だ。
恐らくだが……あの神が何かしたのだろう。
「避けちゃダメ」
「うご」
俺をこの世界に転生させた神の見えざる手に怒りを募らせていると、何回もキスを避けられイラついた様子のリサが、俺の顔をガシッと掴む。
う、動けねぇ……何故かは分からないけど、この姉のキスを受け入れたら、取り返しのつかない事になる気がする。
それこそ……仕事も何も出来ずにこの家で姉にずっと世話されて過ごすみたいな。
何故かは分からないが、こんな未来が頭の中で鮮明に浮かぶ。
「サイトー……好き」
「だ……れか……たすけ……」
「二人共ー、ご飯よぉ〜!」
……リサの唇が俺の唇に触れる瞬間、階段の下から母親の食事が出来た事を伝える声が部屋に響く。
その声を聞いたリサは一瞬ビクッとして体を止めた。
その隙を俺は見逃さずリサの手を顔から剥がし、リサの体の下から素早く這い出した。
母さん……俺は初めてあんたの事が好きになりそうです……あ、いややっぱり嘘です。
「サイトー!」
「……な、なんだ?」
速攻で階段を駆け降りようとした俺を、暗い部屋の中からリサが呼び止める。
「何でサイトーはそんなに仕事が好きなの?」
どう考えても今するような物じゃない、脈絡のない質問。
そもそもこんな事を聞いてくる時点で、リサはあの神の息がかかった存在である事は確定した訳だ。
なら……言わせてもらおう、あの時あの神に言ってやりたかった一言を。
「仕事以外興味なんか無いんだよっ!」
はい、お久しぶりです皆さん。
前回の投稿からかなりの時間が空いてしまい、またそれに対して何の告知もせずに居た事、重ねてお詫び申し上げます。
理由については後ほど活動記録に書こうと思いますので、宜しければそちらをご覧下さい。
そして勝手ながら、この小説はこれにて完結にさせて頂きたいと思います。
その理由につきましても活動記録をご覧頂ければと思います。
最後に短編ながらもこの小説をご覧になってくださった皆さん、お気に入り登録や感想を残して下さった読者の皆さんに感謝申し上げます。
いや本当に、ちゅっちゅ。
ではまた何処かで私の名前を見かけたら、暇つぶしに読んで貰えたら嬉しいです。
ではでは…え? 明日焼肉?マジ? 行けたら行くわ。