すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
渋谷で始まった謎のゲーム、ネクこと桜庭音操はどう動いていくのか……。
1 始まりはノイズと共に
104と書かれた建物。
人々がたくさんいる、スクランブル交差点。
ありふれたシブヤの光景だ。
信号機のランプが赤から青になると共に、人々がスクランブル交差点を歩き出す。
その雑踏の中にいたのは、オレンジ色の逆立った髪をした少年、ネク。
(どけ!! 前、見えないだろ!)
ネクは気分が悪くなりながら、声に出さずに吐き捨てる。
彼は他人と関わる事を拒んでいるために、人が密集した場所は、不快になるのだ。
(うるさい!! 耳障りなんだ! もう全部消えてくれ!!)
スピーカーから流れる放送。
実演販売をしている店員。
シブヤを歩き回る人々。
それらは全て、ネクにとって不愉快でたまらない、「雑音」だった。
世界は俺一人だけでいい
自分自身がその全て
他人の価値観なんて意味は無い
ネクはヘッドフォンをつける。
それは他人との関わりを拒絶する象徴だ。
(俺は誰かと分かり合う事なんて、一生、できない!!)
誰とも関わりたくない。
それが、ネクの願いだった。
信号機が赤から青になり、スクランブル交差点を人々が歩く。
雑踏の中で、ネクは目を覚ました。
歩く人々の足元が見える。
踏まれそうになっていたネクは、立ち上がる。
ふと、右手に見慣れない「何か」の感触に気づく。
丸い形に、黒い色、そして白い髑髏が描かれた「それ」を手に取った瞬間、
ネクの目の前にあり得ない光景が広がる。
見えないはずの波長の乱れが、見える。
「あ、頭の中に言葉が……流れ込んできた!」
スクランブル交差点を歩く人々の声が聞こえる。
ネクにとっては、雑音となるだろう声だ。
(なんだ今のは)
関わりを拒んだはずなのに、人の声が「見える」。
ふと、ネクは持っている「それ」を見る。
(……このバッジのせいなのか?)
ネクはバッジに力を籠め、精神を集中した。
すると、行き交う人々の声が、また聞こえてきた。
―背が伸びれば、もっとモテるのに……。
―どこかの公衆電話で告ると成功率が100パーセントらしい!
―イベントオーガナイズしたいな。
(やっぱり見える! ……なんだこれ。まさか……周りの人が考えてる事が見えてるのか?)
他愛ない人々の声。
だが、ネクにとって、他人の声が見えるのは非常に嫌な感覚のようだった。
(なんなんだよ、このバッジ……)
ネクはバッジを捨てようと思った。
他人の声を見るのは、非常に不快だからだ。
その時、ポケットに入っていた携帯電話が鳴る。
「えっ! ケータイ? 俺か?」
ネクは携帯電話を取り出して、画面を確認する。
メールが届いていたので、ネクは内容を見る。
FROM
unknown
SUBJECT
ミッション通達
104にたどりつけ
制限時間は60分
できなかったら消滅
死神より
---END---
それは、死神を名乗る者からのミッション通達だった。
くだらないと思ったネクはメールを消去しようとしたが、何故か消去できなかった。
「なんだ、このメール……」
気味の悪いメールを見たネクが立ち去ろうとすると突然、彼の手に痛みが走った。
そこには制限時間を示す黒い文字が書かれている。
さらに、建物に映る映像も黒に赤の文字が書かれたものに変わっており、
空中に不気味な紋章が浮かび上がり、紋章がとりついた蛙が空から降ってきた。
「っつ!」
蛙はいきなりネクを攻撃してきた。
ネクは反応できず、腕にかすり傷を負う。
「俺を狙ってるのか!? く、来るな……」
蛙はじりじりとネクに近寄ってくる。
武器を持たない彼に、反撃する手段はない。
なので、今はこの蛙から逃げるしかなかった。
ネクは飛びながら走り、蛙から逃げる。
蛙の飛びつきを、ネクはひらりとかわし、スクランブル交差点を走っていく。
「……っつ! どうなってるんだよ!!」
紋章がとりついた蛙、手に書かれた残り時間。
ネクにとって、いや、普通の人にとっても、これは異常事態だった。
「だ、誰か!!」
ネクは歩く人々に助けを呼ぶ。
しかし、彼らに蛙の姿は見えず誰も来る事はない。
「くそっ! 逃げるしかない!」
ネクは、何も分からないまま、襲い掛かる蛙から逃げるのだった。
シブヤで始まった死神のゲーム。
ルールは、死神が出すミッションを達成したり、襲ってくるノイズを撃退したりする事。
敗北すれば、自分の存在が消える。
生き残るためには、ゲームクリアしかない。
七日間のサバイバルゲームが、始まった。
次回は最初のパートナーとの出会いになります。
私は、今でもすばせかは名作だと思っています。