すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクとシキはミッションのためにトワレコに向かう。
途中、シキがネクのズボンのボタンが取れかけている事に気づき、それを直す。
その後、特定のバッジを集めるためにノイズと戦い、見えない壁を通過する。
しかし突然、ライムがノイズに襲われて消えてしまう。
ビイトは悲しみと怒りに満ち、ネクとシキは彼の代わりにノイズと戦う事を決意した。
死神のゲームは、五日目――残り二日を迎える。
「ん……ここは……」
「あ……気がついた……?」
千鳥足会館で目覚めたネクを、シキが迎える。
シキはまだ、不安そうな表情をしていた。
「……ミッションはまだ来てないよ」
携帯電話にミッションを通達するメールはない。
「えっと……昨日はごめん。私……ちょっと言い過ぎたかも……」
シキは四日目で、ネクを死神のようだと言った。
ライムが消えたのに何も感じていないネクを、あの死神と同じだと思ったからだ。
(……ライム……)
一方、ネクはライムが消滅した事を、僅かながら覚えていた。
だが、それ以上考えていては、ミッションに支障が出ると思い、すぐに忘れた。
「今日も始まるぞ。ミッションの事だけ考えろ……」
「うん……そうだよね……。ビイトの分までがんばらなくちゃ」
パートナーがいないビイトのためにも、ここでミッションを達成しなければならない。
シキが決意すると同時に、携帯電話が鳴る。
「来たっ! ミッション!!」
ミッションを通達するメールが来た。
メールには、このような文章が書かれていた。
スペイン坂をノイズから解放しろ
制限時間は200分 失敗したら消滅 死神より
今度の制限時間は、3時間20分。
通達と同時にネクとシキの手にタイマーが浮かぶ。
「ノイズから解放……ノイズを倒すミッションか」
「スペイン坂はこのすぐ先だよ!」
「よし、スペイン坂に行くぞ」
二人はミッションの目的地となるスペイン坂に向かおうとしたが、
見えない壁があって進めなかった。
壁を開放するためには、このエリアで最も大きいノイズシンボルを二つ撃破する事。
ヤマアラシ型のノイズ、蛙型のノイズ、熊型のノイズなど、
多種多様なノイズを、サイキックで倒す。
そして条件を達成し、壁を開放して二人はスペイン坂に向かった。
「ここのノイズを全部倒せばいいんだよね!」
「よし……やるぞ」
ネクとシキは、スキャンしたノイズをサイキックで撃破していく。
シキの黒猫のぬいぐるみはノイズを薙ぎ払い、ネクが炎のサイキックを使って燃やす。
二人の連携は、徐々に整いつつあったが……。
「はぁ……はぁ……ノイズ……全然減らないね……」
「倒しても……キリがないな。どうして次から次へと現れるんだ……」
たくさんのノイズを撃破したが、ノイズが減る気配は全くない。
それどころか、倒しても倒しても、ノイズがあちこちから現れているのだ。
「何か、ノイズを引き寄せるものがある……とか?」
「だったら、元を断たなきゃならないな」
ノイズを大量発生させている何かがあるはずだ。
ネクがそう思っていると、どこかから少女の声が聞こえてきた。
「ねぇ、アイ……どうしたの?」
「ネク! あそこ見て! お店から出てきたあのふたり……」
シキに言われてネクが様子を見ると、
長い茶髪の少女と短い黒髪の少女が何やら不満そうな顔をしていた。
「アイ……もしかして怒ってるの?」
「怒ってないって」
「ほ……ほんとうに?」
「なんでもないってば!」
「な、なんだ!? すごいノイズの数だ……」
茶髪の少女アイと、黒髪の少女ミナの周りには、大量のノイズが漂っている。
恐らく、彼女達の周りにいるノイズが、彼女達の気分を悪くしているのだろう。
「なんなんだ、あのふたり……」
「なんか、口げんかしてるみたいだね。
まるで、あのふたりにノイズが引き寄せられてるみたい……」
「ノイズとあのふたり……何か関係してるのか?」
「とにかく、ふたりのまわりのノイズをなんとかしよう!」
ネクは精神を集中し、アイとミナの周りにいるノイズをスキャンした。
二人の周りには、オレンジのノイズがいた。
「先手必勝だ、やられる前にやるぞ!」
ネクは熊型ノイズに突っ込んで切り刻む。
続いて、シキが黒猫のぬいぐるみを熊型ノイズにけしかけて攻撃する。
体力は多かったが、反撃の隙を与えずに連続攻撃を行い、熊型ノイズを撃退。
残った熊型ノイズも同じような戦い方で倒した。
こうして少女達にとりついたノイズは全て消えた。
「コイツらのノイズは払ったぞ」
「ネク! ダメ……またノイズが集まってきたよ!」
だが、ノイズはまだ消えていなかった。
いや、少女達の暗い気持ちが、ノイズを引き寄せているのだろう。
「くそっ……これじゃ、キリがない」
「まるで、あのふたりがノイズを呼び寄せてるみたい……。
あのふたりに何か原因があるのかな……」
あの少女達がノイズを引き寄せているのだろうか。
ネクとシキは、少女達の会話をよく聞いた。
「アイ……来週のこの日って空いてる?」
「……多分、空いてるけど……どうして?」
「ううん……なんでもない」
「……」
「あのふたり……負のオーラが出てるって感じだね」
「もしかして、それがノイズが集まる原因か?」
「えっ!?」
ネクはこの状況を瞬時に理解した。
以前に起こった出来事を、思い出しているからだ。
「前にもあっただろ……。ノイズが人にとりついて悪影響を出してた。
ノイズは負の感情に反応するんじゃないのか?」
「それはあるかも! でも……この人達にはとりついてないよね……。
どっちかっていうと引き寄せてる……あっ! そっか!」
「だから、このふたりのわだかまりを解けば……」
「ノイズは集まって来なくなる! そうだね! ふたりの仲をとりもとう!」
あの二人に何があったのか、まずはそれを知る必要があるようだ。
ネクとシキは早速、張り込んだ。
「ねぇミナ、昨日さ、渋谷デパート前に本当に行ってない?」
「えっ……うん、行ってないよ。もー、しつこいなぁ、アイも」
「ふーん」
ネクはバッジを握り締め、アイの気持ちを読み取った。
「絶対ウソ。だって私、昨日ふたりが一緒にいるの見たもの。
許せない……どうにかしてミナのウソを見抜けないかしら」
アイは、ミナが嘘をついていると思っている。
だが当然、アイにはミナの考えが分からない。
「本当だって! 信じてよ、アイ」
「うん……分かってる……」
「もー、アイってば! 全然信じてないでしょ!」
ネクは再びバッジを握り締め、ミナの気持ちを読み取った。
「やっばー! 完全に疑われてる! どうしよ……もう言っちゃった方がいいのかな……」
アイはミナに、嘘をついていると思われていた。
どちらが正しいのかは、分からなかった。
「大丈夫……分かってるのよ……」
「えっ?」
「……ううん、何でもないの」
二人の仲を取り戻し、ノイズを消すための方法を考えていたネクとシキ。
「う~ん……。あのふたりの仲を取り持つには……」
「こんな時は、インプリントの出番じゃないか?」
「そうだね!」
二人が喧嘩している原因をインプリントすれば、この問題は解決するはずだ。
そのため、二人は情報収集のために千鳥足会館前に戻った。
「また大量に商品を仕入れてしまった……」
千鳥足会館前では、サラリーマンが愚痴を吐いていた。
彼が持っていたのは、上に赤い鳥居、左下に「白」、右下に「黒」とかかれた紙、
そして十円玉だった。
「『死神さん』の次は……『レッドスカルバッジ』……か」
次にサラリーマンが出したのは、髑髏が描かれた赤いバッジ。
これも、何らかの効果があるらしい。
「仕入れルートがよく分からないだけに……危ない気がするんだよなぁ……。
大丈夫かなぁ……。う~ん……どうしたものか……。そうだ! 死神さんで占ってみよう!」
どうやら死神さんというのは、こっくりさんに近い占いの一種らしい。
サラリーマンは10円に指を置くと、ゆっくりと呪文らしき言葉を唱えた。
「死神さん……死神さん……」
ネクはサラリーマンの様子を病気だと思っていた。
だが、シキは占いをしているのだと理解している。
「紙の上の十円玉がどこに動くかで、どうするか決めてるのかな?」
「どこに動くかって、自分で動かしてるだけだろ?」
「だったら、ちょっとイタズラしてみない?
ネクならサイキックで十円玉が動かせるんじゃない?」
現実のこっくりさんも、「本物」を除けば、自分で動かしているのが大半である。
ただ、それをしたせいで怪奇現象が起きた事もあるため、今では禁じられているのだが。
まあ……それは置いといて、ネクは精神を集中し、十円玉を「白」のところに動かした。
「白かー! ハッキリした決断力、やっぱり困った時は死神さんだな。
えっと……白ってことは……あれ? 何質問したっけ?
……死神さん、死神さん、私のさっきの質問は何でした?」
サラリーマンは質問内容を忘れてしまい、死神さんに質問の内容を問いただした。
もうこれ以上話は通じないと察した二人は後にしようとしたが、携帯電話が鳴った。
どうやら、「死神さん」というキーワードが登録されたようだ。
そして、スペイン坂に戻った後、ネクはアイに「死神さん」をインプリントする。
「……死神さん? そうよ! その手があったわ! ねぇ……ミナ……」
「え? なに? どうしたの?」
「『死神さん』って知ってる?」
「え? 死神さん? ああ! 知ってる知ってる!
今、学校でウワサになってるおまじないでしょ?
聞いたことをなんでも答えてくれるってやつ」
「一緒にやってみない?」
「いいよ! おもしろそう!」
そして、アイとミナは死神さんを始めようとする。
ネクは死神の真似をして、二人に真実を伝え、二人を仲直りさせる事にした。
「死神さんにはルールがあるのよ」
「なになに?」
「まず、死神さんを召喚することから始めるの」
「あっ、それ、私にやらせて~」
「……いいわよ。死神さん、死神さん、いらっしゃいましたら……『白』にお進みください!」
ミナは十円玉に指を置いて、呪文を唱えた。
すると、十円玉はゆっくりと「白」の方に動いた。
「白だ~! すご~い! 本当に動くんだね~!」
実際は、ネクがサイキックで動かしたのだが、アイとミナは気付いていないようだ。
「えっと~、さっきの質問が、いらっしゃいましたら白にお進みください、
で、その答えが白っていうことは……いるよ、ってこと? ……やっぱりいるんだ~!
こわ~い! 動いたね~。死神さんって本当にいるんだね」
「そうよ。死神さんの前ではウソはつけないのよ」
「こわ~い!」
死神さんが「いる」という事に驚くミナと、彼女の言葉に同意するアイ。
「じゃあ、ミナ……次の質問に行くわよ」
「うん、何聞くの?」
「うん……。じゃあ……ミナのこと聞くね」
「えっ!? 私のこと!?」
アイは、ミナが嘘をついている事を知っている。
そのため、何としてでもミナの嘘を暴きたいのだ。
「死神さん、死神さん、ミナには最近気になる人がいますよね?」
ネクはもう一度サイキックを使い、ゆっくりと十円玉を「白」に動かした。
占いの結果を確認したアイの顔が険しくなる。
ミナとマコトは、付き合っていたのだ。
「やっぱり白! ……アイ?」
「次の質問よ!」
「あ、アイ……? キャラ違くない?」
「死神さん、死神さん、ミナは私に隠し事をしていますね!?」
アイが険しい顔で呪文を唱え、ネクが十円玉を「白」に動かす。
「やっぱり白!」
「……あ、アイ?」
「やっぱりそうだったのね!」
「何? どういうことなの?」
実際のところ、十円玉を動かしているのはネクだ。
ネクが、ミナの嘘を暴くために、サイキックを使っていたのだ。
「覚悟しなさい! 最後の質問よ!」
「あ、アイ……」
「死神さん、死神さん、ミナは昨日、私に秘密でマコト君と会ってました!
そうですよね!? 死神さん!」
「えっ? アイ、知ってたの?」
とうとう、アイはミナに秘密を暴露した。
これ以上隠し事をされると頭にきてしまうからだ。
だがミナは、意外といった顔をしていた。
「あ~あ……やっぱりバレちゃってたか」
「そうよ! 私、知ってるのよ。ミナがマコト君と……」
やはり、ミナはアイに隠し事をしていたようだ。
死神さんのおかげで、それは表になったようだ。
「はい、コレ……」
ミナは、アイにマーブルスラッシュのチケットを見せた。
「何よ……このチケット!
ひどいよミナ……私がマコト君のこと好きなの、知ってるのに……」
「ごめん……もしかして……余計なお世話だった?」
「えっ!?」
「マコト君、モルコのイベントに行きたいんだって。
でも、チケットが手に入らなくて困ってるって昨日、聞いたの」
イベントに行きたかったマコトだったが、チケットがなくて困っていたらしい。
「それで……なんとかチケット手に入れられないかな~って、
友達中にメール回して手に入れたの!」
「これ……もしかして……」
「これ口実にしてさ! 一緒に行ってきなよ」
「ミナ……私のために?」
「まぁね」
実はミナとマコトが一緒にいたのは、デートのためではなく、
アイにマーブルスラッシュのチケットを渡すためだったのだ。
「ミナ……ごめん……私、カン違いして……ミナのこと疑ってた……」
「いいって……いいって! 驚かせようとしてコソコソしてたのは事実だし!
友達なんだから、そのくらい気にしないよ」
「ミナ……」
アイは一連の出来事が自分の誤解だと知り、ミナに謝った。
ミナもアイを許し、二人はようやく仲直りした。
すると、アイとミナの周りにいたノイズが、次々に消滅していく。
二人が和解した事によって、ノイズが消えたのだ。
後は残ったノイズを倒せば、ミッションクリアのはずだ。
「いっくよー!」
シキは黒猫のぬいぐるみを熊型ノイズにけしかけるが、
当たり所が悪く大したダメージにはならなかった。
「ひゃぁっ!」
熊型ノイズはシキに勢いよく拳を振り下ろし、シキを吹っ飛ばして叩きつける。
もう一体の熊型ノイズがシキを吹き飛ばした。
「いたた……もうやめてよ!」
「離れろ」
ネクは氷柱を発生させ、熊型ノイズを浮かせる。
立ち上がったシキは熊型ノイズを睨みつけ、黒猫のぬいぐるみをけしかけ、消し去った。
「そんな攻撃は、当たらない!」
熊型ノイズがネクを襲うが、ネクは素早く動いて攻撃をかわす。
バッジをムラサメに変えて高く飛び上がり、熊型ノイズを宙に浮かせ、
シキが熊型ノイズにとどめを刺した。
「タイマーが消えた……」
ノイズの残党を撃破した事で、ネクとシキの手からタイマーが消える。
今回のミッションを達成したのだ。