すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ミッション終了後、アイとミナは仲直りし、一緒にレストランへ行く。
シキは友達の大切さを、孤独を好むネクに語った。
しかし、そこに死神のゲームマスター代行、東沢洋大が現れ、シキの心の闇を暴く。
彼はこのゲームが参加者……つまり、死者を蘇生させるためのものである事を明かす。
ネクは自分が死者である事を知り、茫然とするのだった。
そして……死神のゲームは六日目を迎えた。
「……ここは、スクランブル……交差点か……」
ネクはスクランブル交差点で目を覚ました。
昨日、ゲームマスター代行のヒガシザワから、自分達が既に亡くなっている事と、
シキがエリを妬んでいる事を知らされた。
その事がネクの頭の中から離れず、ネクはまだ、心の整理ができていなかった。
「これは……バッジ?」
ネクの手には、あのレッドスカルバッジがあった。
参加者バッジに似ているが、スキャンはできないようだ。
シキはまだ眠っていて、目覚める気配がない。
ネクは、自分が死者である事を自覚していない。
スクランブル交差点で倒れていた以前の事は、ネクは全く覚えていないからだ。
この渋谷は、コンポーザーが管理する、死神のゲームのための渋谷「UG」だ。
ネク達を一般人が認識できないのも、彼らが死者……つまり、魂だけだからだ。
そして、ネクが記憶をなくしていたのも、記憶がエントリー料になっていたからである。
だがそんな事は、ネクは全く分からなかった。
しばらくすると、ネクの携帯電話にミッションを通達するメールが届く。
六日目のミッションの内容は、これだった。
15時にスクランブル交差点の視界を支配しろ
制限時間は180分 失敗したら消滅 死神より
今回のミッションの制限時間は、五日目より少しだけ短い、3時間。
ミッション通達と同時に、ネクの手にタイマーが浮かんだ。
(それにしても……何なんだ、今日のミッション……。
スクランブルって……ここのことだよな。視界……? 視界ってなんだ……。
……ダメだ。俺の知識じゃこれ以上解読できない……。アイツは……まだ起きてないのか?)
「おい! 起きろ! ミッションが来たぞ!!」
ネクがシキを起こすために大声で怒鳴ると、シキは生気のない表情で起き上がった。
「今日のミッションは、時間と場所が指定されてるんだ」
「……視界を支配? 意味不明……」
シキも、ミッションの内容を理解できない、というよりもやる気がないようだ。
昨日、ヒガシザワに自分の秘密を暴露されて、余程傷ついてしまったのだろう。
「待てよ、よく見ろ。手がかりならあるだろ?」
「15時とスクランブル交差点……?」
「15時にここで何かが起きる……いや、起こすのかもしれない……。
まずはミッションの真意をつきとめるぞ」
ミッションの詳細を知るため、
ネクとシキはスクランブル交差点にいるサラリーマンに近付いた。
「はぁ……。絶対ムリだよ……。あぁ……時間だけが過ぎていく。あと3時間か……。
やっぱ俺……クビかな……ははっ……」
サラリーマンは、何かに悩んでいるようだ。
ぶつぶつと独り言を呟いているが、「3時間」という言葉がネクに引っかかった。
3時間というのはミッションの制限時間と同じだ。
今は12時で、3時間後には15時になる。
「おい! アイツ何か知ってるかも……」
「……」
シキはいつになく、暗い表情をしていた。
ヒガシザワに言われた事が心に残っているらしい。
ネクと同じ理由だ。
「と、とにかく……アイツをスキャンしてみるぞ」
ネクは精神を集中しサラリーマンをスキャンした。
―はぁぁぁぁぁぁぁ……。社長はいったい何を考えているんだ……。
大金かけてQフロアにCM流すなんて……。
一瞬しか映らないのに、誰の目にも入らないよ……。
「おい! 今日のミッションはこれじゃないか!?」
「……そうなの?」
「……いいか、15時……まず時間が一致してる。目は……視界とも一致するな」
「……」
「いや……でも、Qフロアってなんだ?」
ネクはシキにミッションの詳細を伝えるが、シキの耳には彼の言葉が入っていなかった。
「ネク……あれ……」
すると、シキが小声で何かを指す。
そこにあったのは、大きなビルであり、スクリーンにはCMが映っていた。
「Qフロアって、あそこにあるスクリーンのことよ」
「CMが流れてるな……。そうか! 視界を支配ってのは」
「交差点の人達に、15時のCMを見てもらうってこと?」
「その可能性は高いな」
「……CMなんて、みんな見ないよ。フツー、前とか下とか見て歩くもん……」
サラリーマンをスキャンした時もそうだったが、
皆、QフロアのCMを見る事はないだろう、とシキは思っていた。
「そこをなんとかするのがミッションなんだろ?
とにかく、CMを街の人に見てもらうしかない」
「だいたい、なんのCMなの……?」
だが、ネクもシキも、どんなCMを流せばいいのか分からなかった。
「CMについての情報をアイツから見てみるか」
ネクとシキはもう一度サラリーマンの様子を見た。
「もう……ダメだ……。どうにもならないよな……。やっぱり、俺はダメだな……」
サラリーマンの周りには、ノイズがたくさん浮かんでいた。
あのノイズを何とかしなければ、情報を聞き出す事はできない。
シキはまだ落ち込んでいるため、ネクは一人でノイズに挑んだ。
「どけっ!!」
氷の力でヤマアラシ型ノイズを浮かせ、ネクも飛び上がってアッパーする。
ネクは狼型ノイズの攻撃をかわし、ヤマアラシ型ノイズに無数の石を落とした。
狼型ノイズに近付いて拳と蹴りを叩き込むが、あと一発が足りず、
集まった狼型ノイズから反撃を受ける。
「このバッジを使って……」
距離を取り、キュアドリンクで回復した後、パイロキネシスで狼型ノイズを倒す。
ネクは素早く距離を詰めて狼型ノイズの攻撃をかわしつつ、打撃攻撃を繰り出す。
石を落とすサイキックで遠くの狼型ノイズを倒し、
残ったノイズを素早くサイキックで撃退した。
「いやいや! 落ちこんでてもしょうがない。
こんなバッジ、ブームになる気配はぜんぜんない!
けど、それをブームにしたてあげるのが俺のシゴト!!」
ノイズを払った事で正気に戻ったサラリーマンは、
レッドスカルバッジをブームにしようと誓った。
「バッジ……? このバッジと同じみたいだな……。このバッジを流行らすのか……」
ネクは、自分が持っている、髑髏が描かれた赤いバッジをシキに見せた。
「フツウの……バッジね。これじゃ、みんなCMなんて見ないよ……」
「確かに……。でも、あの人はプロなんだろ? さすがに作戦ぐらい用意してるだろ……」
ネクとシキは、サラリーマンの様子を見守った。
「よし! まずは渋谷の人にバッジを配って、広告塔になってもらおう。
声のかけ方は前に本で読んだとおり、フレンドリーな感じでいこう!!
えっと……『かなりヤバイです』『マジ、カッコいいです』『ありえないです』
この言葉で会話を盛りあげれば大丈夫だ!
CMが流れる前にバッジを広めて話題にしておけば……みんな、CMを見てくれるぞ!」
サラリーマンは、レッドスカルバッジを渋谷に流行らせようと行動した。
「おいおい……それだけでCMを見てもらえるわけないだろ……」
「あの口調じゃ……ヘンな勧誘とまちがわれるに決まってるわ」
ネクとシキは、サラリーマンを温い目で見ていた。
こんな感じでは、むしろ逆効果だろう、と。
「それに、バッジなんて話題にならないよ……。
やっぱり……誰にも受けとってもらえてない……」
「俺達で何とかするぞ」
ネクとシキは、ミッションをクリアするためにレッドスカルバッジを流行らせようとした。
三つのキーワードが登録され、宣伝を始める。
だが、ネクとシキは気付いていなかった。
レッドスカルバッジを広める事が、後に、とんでもない事態を引き起こす事に……。