すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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ネクが最初のパートナーと出会います。
これを書いている時はネクをちゃんと見守っていました。
十字キーやスティックを使わないという操作でしたからね。


2 シキとの出会い

「まぁた始まっちまったナ~。あ~メンドクセ」

「文句言わないの、久々の仕事じゃない」

 

 とあるビルの中。

 眼鏡をかけた筋肉質な橙色の髪の青年と、赤紫のショートヘアの少女が会話していた。

 一見すると普通の人間に見える二人だが、背中には悪魔のような翼が生えている。

 この特徴だけで、彼らが普通の人間ではない事が分かる。

 

「休暇あけの仕事っていちばんダルいんだヨネ~」

「仕事あっての休暇でしょ?」

 二人は同じ立場のようだが、仕事に対する態度は正反対だ。

「初日は参加者がいちばん多いんだから、ポイントの稼ぎ時よ。

 先月稼げなかった分を、今回で取り戻すわ!」

「ハイハイ……一週間がんばりマスヨ……」

 どうやら、以前のゲームではポイントをあまり取れなかったようだ。

 少女はポイント稼ぎにかなり燃えている様子。

 青年は文句を言いつつも、少女と共に仕事をこなそうとしていた。

「ところでサ……俺達もゲームしないカ?」

「は? ゲーム?」

 青年が仕事をゲーム感覚に捉えている事に、少女は疑問と反感を抱いていた。

「仕事もゲームにしちまえば楽しくなんダロ? ハイこれメイアン」

「それが名案ねぇ……。まっ、いいわ。で? 何すんの」

「『死神あそび』03『参加者狩り』……。

 今日のミッションでどっちが多く参加者を狩れるか……でドウダ?」

「何それ! ぜんぜん勝負になってないんだけど」

 参加者狩りというのは、このゲームで敗者を多く出す事だ。

 シブヤで行われるゲームに敗北した者は消える。

 つまり、どれだけ参加者を消せるかというのだが、

 当然、少女はこんなゲームに納得がいかなかった。

「あれ? ご不満デスカ?」

「だって、あたしが全員抹消するから☆」

 青年が参加者を消し去るのは、少女のプライドが許さないらしい。

「お~言うネ~、ちょっとテンション上がったヨ。

 んじゃ、いつもどおり負けた方がラーメンってコトデ」

 勝負に負ければ、罰ゲームとしてラーメンおごり。

 これも、青年と少女のルーチンのようだ。

 

「はぁ、はぁ。ここまで……来れば……」

 その頃、ネクはあの蛙から逃げ回っていた。

 今、彼は忠犬ハチ公の銅像の前にいる。

 ここまで来れば、あの蛙は追ってこないだろうとネクは思っていた。

 だが、蛙は執拗にネクを攻撃しようとする。

「くっ、しつこい!! なんで俺が狙われるんだ!」

 ネクは蛙の飛びつきをかわしながら、この状況を理解しようとした。

 空に紋章が現れ、しかもそれがとりついた蛙が降ってくるなんて、

 普通のシブヤでは考えられないからだ。

 その時、空中に再びあの紋章が現れ、人々にとりつくと空中に浮かんで消えた。

「き、消えた!? 人が消えた!! なんだよこれ……どうなってるんだ!

 何が起きてる! ってかここはどこだ」

 紋章がとりついた蛙が襲い掛かり、さらに紋章がとりついた人が消える。

 何度も起きる異常事態に、ネクは頭を抱えるしかない。

「ヤバイ! やられる!!」

 ネクにも紋章が襲いかかり、消されようとした時だった。

 

「見つけた!」

「えっ!?」

 突然、彼の後ろから少女の声が聞こえてきた。

 ネクが振り向くと、そこにいたのは帽子を被った赤い髪の少女だった。

「ねえ、キミ! 私と契約して!」

「なんだ、おまえ! 今、それどころじゃ……」

 少女に契約を迫られたネクは、さらに混乱する。

 だが少女はそれを無視し、話を続ける。

「聞いて! 契約すればノイズに勝てるわ!」

「は? ノイズがなんだって?」

「キミ、消えたいの!? 急がないと間に合わないの! お願い! 私と契約して!」

「わ、分かった。契約……する」

 少女の言う通りにしなければ、人々と同じように消えるかもしれない。

 ネクが仕方なく少女と契約すると、二人を淡い光が包み込んだ。

「な、なんだ……今の光……」

「はい! コレ!! このバッジ、使ってみて!」

 少女はネクに、炎が描かれた赤いバッジを渡す。

「おい……今の光……」

「詳しい話は後! 今はこのノイズを倒さなきゃ!!」

「あ? ああ……」

「行くよ!」

 少女がそう言うと、紋章がとりついた蛙がネクに襲い掛かってくる。

 総数三体のノイズとの戦いが、始まる。

 

(これが、ノイズを倒すための力か……)

 ネクがバッジを握って精神を集中すると、炎が蛙の周囲を包み込む。

 このバッジは、炎を発生させる力を持つようだ。

 蛙の攻撃を受けないように動きつつ、ネクは炎で蛙を攻撃する。

 使いすぎるとエネルギーが切れるため、それにも気を配りながら攻撃する。

 エネルギーが切れたら攻撃をかわし、溜まったら攻撃する。

 ネクはそれを繰り返し、全てのノイズを撃退した。

 

「なんだ……今の炎……俺がやったのか?」

「すっごーい! あのバッジ使えたの? キミ、サイキックうまいね!」

 突然の炎の出現に、ネクは戸惑った。

 一方、少女はネクがノイズを倒せた事を喜ぶ。

「キミと組めてラッキーかも! よかった~」

「サイキック? あの炎がか?」

「うん。それに契約したからノイズにはもう狙われないよ!」

 どうやらあのバッジには、サイキック、つまり超能力を使う力があるらしい。

 これさえあれば、ノイズに襲われて消える事はなくなるのだ。

「もう襲われないってことか?」

「うん、ノイズももう見えないでしょ?」

「……ノイズ? ノイズってなんだよ」

「え? さっきのバケモノのことじゃない」

 ノイズは、ネクが聞いた事のない言葉だった。

 翻訳すれば雑音という意味だそうだが、もちろんただの雑音ではなかった。

 しかも、サイキックを使える理由も分からない。

「そうだ! 名前、まだ言ってなかったよね。私は美咲四季。シキって読んでね」

(なんだいきなり、誰が呼ぶか)

 少女は美咲四季と名乗った。

 人付き合いを拒絶するネクは、内心ではシキを拒んでいるようだ。

 だが契約しているため、彼女と離れるわけにはいかなかった。

「それじゃ、今日から七日間、よろしくお願いします!」

「七日間……? よろしくって何が?」

「だって、死神のゲームは七日間でしょ?」

 死神のゲームが何なのかも、ネクは分からない。

 自分がどこにいるのかも、ネクは分からない。

 それどころか、ネクには名前を除いた全ての記憶がないのだ。

 

「で、キミの名前は?」

(つか、ここどこだよ!? 俺はどこにいるんだ?)

「ねぇねぇ、名前誰クン?」

(渋谷……駅……? ここは……なのか? なんで俺、渋谷に……)

「ん~? どうしたの?」

(そうだ、さっきの交差点だ。あそこに戻れば何か分かるかも)

 何故自分が渋谷駅にいるのか、

 自分が目覚めたスクランブル交差点に行けば何か分かるかもしれない。

 そう思ったネクは、シキの話も聞かずにスクランブル交差点に向かっていった。

「えっ! ウソ!? ちょっと待って!」

 シキも慌てて、ネクの後を追いかけた。

 

 スクランブル交差点にやって来たネクとシキ。

「おい、何でついてきてんだよ」

 ネクはシキがついてきた事を理解できず驚く。

「何でって……キミが勝手に動くからでしょ?」

「どこ行こうが俺の勝手だろ! ついてくるな」

「俺の勝手って……私達、ココに閉じ込められてるんだよ?」

 シキがネクに、ここが封鎖空間である事を話す。

 ネクは「そんなことあり得ない」と首を横に振り、シキから離れようとしたが、

 彼女はネクの手を掴んで引き留める。

「キミこそ何言ってるの? それに、契約したら一緒に行動!

 一人じゃノイズは倒せないし……最後まで生き残れないでしょ?」

「生き残る? なんだそれ?」

「二人じゃないとゲームに勝ち残れないってこと!」

 死神のゲームには、二人一組で参加する必要があるらしい。

 そうでもしないと、生き残る事はできないらしい。

 だが、なおもネクは首を横に振った。

「おまえのゲームの勝敗なんて俺には関係ないだろ」

「ちょっと! ふざけないでよ! 戦ってゲームに勝ち残らないと消えちゃうんだよ!?

 さっき見たでしょ? 人が消えていくところ……あんな風になりたくないでしょ?

 それに、私達はもうパートナー同士! だから、協力し合ってがんばろ?」

「何言ってんだよ! 勝手に人を巻き込んでおいて!」

「巻き込んだとかじゃないでしょ? キミだって死神のゲームに参加してるじゃない」

 ネクとシキの歯車は合わなかった。

 というよりも、ネクが一方的にシキを拒んでいた。

 だが死神のゲームという言葉を聞いて、ネクは一瞬だけだが立ち止まる。

「は……? 死神のゲーム? そんなもん参加してないぞ……」

「えっ……それ……おかしいよ。だって……参加者バッジ持ってるじゃん」

 シキに言われてネクが手を確認すると、そこにはあの髑髏が描かれた黒いバッジがあり、

 黒い文字で「20:05」と書かれてある。

 これが、死神のゲームの参加者の証らしい。

「手に私と同じタイマーも出てるでしょ?」

「俺と同じだ! なんなんだよコレ」

「やっぱりキミも参加者ってことだよ」

「……」

「あ、もうこんなこと話してる場合じゃない! 急がないと。

 あと20分しかないわ! 早くマルシーに行こう!」

「マルシー? マルシーってなんだ?」

「104のこと! メールに会ったでしょ? 104に行かないと消滅って」

 死神が出した最初のミッションは、60分以内に104に行く事。

 達成できなければ、消滅してしまう。

 以前にネクの携帯電話に届いたメールは、これを指していたのだ。

 この状況はどう考えてもおかしい。

 シキも、拒否したところでネクについていくに違いない。

 状況を理解するためにも行く方が無難だと判断したネクは、104に行く事にした。

「それから、これで三度目だけど、キミの名前は?」

「……桜庭……音操」

 ネクは渋々ながら、シキに自身の名を名乗った。

 これ以上拒否しても事が進まないと思ったからだ。

「サクラバ……ネクか~面白い名前だね」

(大きなお世話だ)

「じゃあネク君! 早く104に行こう!」

「……」

 

 突然巻き込まれた死神のゲーム。

 襲い掛かってくる化け物、ノイズ。

 ネクは不本意ながらシキと契約し、死神のゲームで生き残るために戦うのだった。




次回は死神のゲームの「ミッション」が始まります。
ネクとシキはクリアできるでしょうか。
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