すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

レッドスカルバッジを持ったサラリーマン、マコトがカップルに話しかける。
マコトは自身の父親の話をし、バッジをソウタとナオに渡し、ネクとシキは彼の様子を見守る。
その途中でシキは自分がエリの姿になっているのを認識し、
自分自身がエントリー料だと理解するのだった。


21 赤いドクロ

「なんでバッジが話題になってないんだ? あんなに配ったのに……」

 マコトはスクランブル交差点で愚痴を吐いていた。

 レッドスカルバッジが広まっていないためである。

 もっとも、配ったのは三人くらいなのだが。

「やあ、ミッキー」

「えっ!?」

 すると、マコトに誰かが声をかけてきた。

 その人物は、人気タレントの王子英二だった。

「あっ! 王子さん……」

「どうしたんだい? こんなところで立ちつくして……」

「今、引き受けてる仕事がヤバいんです!

 このバッジを流行らせなきゃいけないのに……全然流行らないんです!」

 そう言って、マコトはバッジを王子に見せた。

 王子は渋谷のトレンドに詳しいため、

 レッドスカルバッジを広める方法は簡単に思いつくだろう。

「サンプルをたくさん配ったのに……」

「……ミッキー、それ本気で言ってるの?」

「えっ!?」

 王子は、マコトがバッジを配った人数が少ない事を指摘した。

 当然、配っただけでは流行しない事を、王子は知っているのである。

「しょうがないな……一緒に仕事をした仲だから特別に教えてあげるよ。

 流行しない理由……それはね、トレンドを意識してないからだよ。

 たくさん出回ってるからって人気があるとは限らないでしょ?」

「た、たしかに……」

 いくらたくさんあるからといっても、トレンド、

 すなわちブランドの人気ランキングが低ければ、誰も手に取らない。

「じゃあ、どうすればトレンドは変わるんですか?」

「方法はイロイロだよ。

 まぁ……僕ぐらいになると、街を歩くだけでトレンドが変わっていくけどね」

「身に着けて街を歩く……ってことか……」

 バッジを身に着けて歩き回れば、きっと、みんなはバッジを受け取るだろう。

 王子はそんなやり方を、マコトに教えてあげた。

 どうにも胡散臭いやり方だが、こうしなければ、あのバッジは流行らないだろう。

「さてと……僕は次の仕事があるからもう行くよ。じゃあね、ミッキー。仕事、がんばってね」

「あっ、はい!」

 王子は優雅な仕草で去っていった。

 

「そうか……トレンドか……。よしっ!

 俺も王子さんみたいに、バッジを着けて街を歩けば……トレンドが変わるはずだ!」

 マコトはそう言って、レッドスカルバッジを身に着けた。

 

「アイツ……ホンモノだな……」

「……トレンドか。ネク……もしかしたら……

 このバッジを着けてバトルをすれば……トレンドが変わるかも……」

 マコトの言う通り、バッジを身に着けて戦えば、渋谷のトレンドが変わるかもしれない。

 そうしたら、みんなはあのバッジを受け取るかもしれない、とシキは思っていた。

「どういうことだ?」

「この前……ライムとも話してたんだけど、

 バッジを着けてバトルをするとそのブランドの人気が上がるみたいなの……」

「RGのヤツらには俺達が見えないのにか?」

「うん、でもRGのトレンドに影響が出るみたい」

 RGとUGは別次元にあるが、完全に隔てられているわけではない。

 なので、ネク達がいるUGのトレンドは、RGのトレンドにも影響を及ぼすのだ。

「……よし、やってみるか」

 ネクはレッドスカルバッジを身に着けて、ノイズとの戦いに臨んだ。

 

「……身体が重い……」

 レッドスカルバッジを身に着けていると、ネクは重しがのしかかったような感覚に襲われた。

 身体を上手く動かせないため、早め早めの回避が必要だ。

「そうね、にゃんタンも頑張って……」

 シキはノイズと距離を取り、攻撃を避けていく。

「危ない!」

「きゃ!」

 シキに襲ってきた二体の蛙型ノイズを、ネクは物体を動かすサイキックで吹き飛ばす。

「ありがとう、ネク」

「礼を言う暇があったらノイズを倒せ!」

「そうね、行くよにゃんタン!」

 シキは狼型ノイズに黒猫のぬいぐるみをぶつける。

 その一撃で怯んだ狼型ノイズにネクのサイキックが炸裂、消滅した。

 二人はノイズの攻撃をかわしながら、それぞれのサイキックで反撃する。

 彼らの存在はRGでは知覚できないが、少しずつ、活躍が反映されていた。

「油断しなければ……必ず倒せる」

「重たくなってるからこそ、だね」

 今、二人はレッドスカルバッジの効果で身体に重しがかかるような感覚だ。

 だが、それを逆に利用し、相手より先に攻撃するようにしたため、

 大してダメージを受けなかった。

 

「このままいけば、トレンドが変わると思うぞ」

「ネク、気を引き締めていくよ!」

 

「ねぇねぇ! あのバッジ、カッコよくない?」

「えっ? どれ?」

「ホラ……あの人が着けてるやつ」

「本当だ! いいな~、アレ」

「どこに売ってるのかな?」

 ネク達が戦っていると、渋谷の人々がワイワイ騒ぎ始めた。

 マコトが身に着けているバッジに夢中になっているようだ。

「なんか……羨望の視線を感じるぞ。こ、これがトレンドを変えるってことか。

 すごい……王子さんが言ったとおりだ……」

 ネクのおかげでトレンドが変わり、レッドスカルバッジを手に取っていった。

 そして、ネクの一撃で、最後のノイズは倒れた。

 

「上手くいったみたいだな」

「バッジを着けて戦うと……やっぱりRGのトレンドに影響が出るんだね」

「ああ……。けど、アイツはそんなこと、夢にも思わないだろうな……」

 ネクとシキは、マコトの様子を見ていた。

「よし! この調子で104のトレンドも俺が変えてやる!」

 やけにやる気満々のマコトを、ネクは「ムカツク」と思っていたとか。

 

 ネクとシキはマコトを追いかけて104に行った。

「よし! ここでもアピールするぞ!」

「よし! ここでもバトルするぞ」

 

 ミッション達成のため、ノイズと戦うネクとシキ。

 レッドスカルバッジの効果で身体は重くなり、ノイズから集中攻撃を受ける。

 ネクは何度も攻撃を食らって瀕死で、

 シキもなかなか、黒猫のぬいぐるみがノイズに命中しない。

「結構ピンチじゃない? 私達」

「最初に相手してきた分のツケが回ったんだろう」

 だとすれば、気を引き締めなければならない。

 ネクとシキはそう誓って、ノイズと戦った。

 石を落とすサイキック、連続で打撃を行うサイキック、ネクの周囲を攻撃するサイキック。

 キュアドリンクも併用しつつ、二人はしっかりとノイズと戦う。

 

 飛び掛かって来たカラス型ノイズにネクは雷を落としシキは黒猫のぬいぐるみをけしかける。

 攻撃はかなり早く、多少のダメージを食らうが、すぐに体勢を立て直して攻撃する。

 彼らの戦いを見た渋谷が盛り上がっていくのは、今のネクとシキでも分かっていた。

 

「ねぇ……あのバッジ、超カッコよくない?」

「あの人が着けてるやつでしょ?」

「さっき、スクランブルで着けてる人いたよ」

「マジ?」

「あれ絶対人気出るよ!」

「私も欲しいな……」

 ネクとシキがバッジを装備して戦った事で、

 レッドスカルバッジの人気は、104でも上昇したようだ。

「スゴイ……分かる……分かるぞ……トレンドの変化が!!

 ここまで広めておけば……後はCMが流れるのを待つだけだ! スクランブルに戻ろう!!」

 ネク達がノイズと戦った事で、バッジが十分に渋谷に広まったようだ。

 CMを広めればミッションをクリアできるだろう。

 

「なんとか……上手くいったみたいだな……」

「大丈夫かな……」

「やるだけの事はやった。後は結果を待つしかない」

「……」

 バッジが広がるか、それともそのまま消えるか。

 ネクとシキは、運を天に任せるのだった。

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