すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
死神のゲームの最終日。
ネクとシキはゲームマスター、東沢洋大を倒すために渋谷駅ガード下に向かう。
彼らは自分達がどれほど幸せだったかを思い出し、生き返るために戦う決意を固める。
そして東沢洋大との戦いが始まり、ネクとシキは彼を倒すために全力を尽くす。
東沢洋大は強大な力でネクとシキを追い詰めるが、彼らは決して諦めずに戦い続ける。
そしてネクとシキは東沢洋大を倒し、蘇生の権利を得る。
彼らは現世に戻る事を確信し、再会を約束するのだった。
25 死神のゲーム、再び
104と書かれた建物に、たくさんの人だかりがいるスクランブル交差点。
信号機のランプが赤から青になると共に、人々がスクランブル交差点を歩き出す。
それは、ありふれた渋谷の光景。
「……!?」
死神のゲームに勝ったはずのネクは、また、雑踏の中で目を覚ました。
あの時の光景と、全く同じだ。
「どうして……どうして……こんなことに……」
シキと共にゲームマスターを撃破し、彼女と共にこの世に戻ってくるはずなのに、
何故かネク一人だけが、残っていた。
携帯電話の音が鳴る。
ネクが携帯電話を開くと、そこには――
「……どうしてだー!?」
ネクの叫び声が、シブヤに空しく響いた。
「スクランブル交差点……。また……ここからやり直しか……」
何のために七日間生き延びたのか、その意味を見失ってしまったネク。
しかも、共に戦っていたシキはいない。
恐らく自分の代わりに蘇生してしまったのだろう。
(ミッション……俺は……負けられない……絶対に負けられない!)
ゲームⅠ 30+74=
制限時間は60分 未達成なら破壊
「っつぅ!!」
ミッションの通達と同時に、ネクの手にタイマーが浮かび上がる。
今回、ミッションを送った死神は、ヒガシザワとはまた違う、別の死神のようだ。
計算式を使っている事から、きっとその死神は、数学を得意とするだろう。
「タイマーか……。30+74……計算問題? 出題形式が変わった?」
前回のゲームマスター、東沢洋大を撃破したので、今回はゲームマスターが違うらしい。
そのため、前回の経験が通用するとは限らない。
だが、確実な事は一つ。
この死神のゲームでも、七日間を生き残らなければならないという事。
そのためには、まず、パートナーを探さなければならない。
ネクは、とびきりタフな人と組みたいらしい。
「まずは……ハチ公前……ハチ公前に行こう。きっと……また、使えるヤツがいる」
シキが待ち合わせをしたがっていたハチ公前には、一体誰がいるのだろうか。
ネクは急いでハチ公前に急いだ。
その頃、下っ端死神はというと。
「あ~、メンドクサ~。今週もまぁたお仕事……カ……」
カリヤが棒付きのお菓子を持ちながら、相変わらず仕事を面倒くさがっていた。
「いいじゃないの☆ 今週もポイントが稼げるわ!」
前回はあまりポイントを稼げなかったので、ヤシロは参加者を消すのにやる気らしい。
「でも……ゲーム開催が2週続くなんて初めてよね」
「……イヤ、けっこう前にもあったヨ。卯月はまだ来たばっかりのひよっこダカラナ……」
二回も死神のゲームが続くのは、下っ端とはいえヤシロも想定外だったらしい。
カリヤはヤシロに先輩風を吹かせていた。
「ひよっこって……もう2年になるんだけど……アンタ……何年、死神やってんのよ……」
「細かいことは気にするナ」
どうやら、カリヤは出世に興味がないらしい。
良く言えば無欲なその姿勢は、敵ながら素晴らしいと言えるだろう。
「まぁ……いいわ。……で? 今回のゲームマスター様は……」
ヤシロがゲームマスターの事を聞こうとすると、突然、彼女の携帯電話が鳴った。
急いでヤシロは携帯電話を取る。
「はい、八代です。……なんですって!? 何よそれ!! あ゛ーもうっ!!」
ヤシロは通信を切ると、またイライラして頭を抱えた。
「おーおードシタ~?」
「出動なしの待機って何!? バカにしてるの!?」
「そうカッカッしなサンナ。血管切れちゃうゾ?」
どうやら下っ端達は現場に行く必要はないらしい。
せっかくのチャンスを潰されたヤシロは怒るが、カリヤは対照的な態度を取る。
この辺が、先輩と後輩の違いだろう。
「いいじゃないの、もともとお休みだったんダシ」
「ったく……これだからあの人の仕切りはイヤなのよ!」
「そう? 俺はキライじゃナイヨ、むしろスキ」
「どこが!? 意味分かんなすぎてイラつくのよ!」
「仕方ナイサ。きっと俺達凡人じゃ思いもよらない、すんごい作戦を考えてんダロ~?
だって彼……こんなの作っちゃう孤高の奇才なんだカラサ……」
カリヤは、今回のゲームマスターがした事を思い出す。
スクラップで作った塔を建てるほど、技術が秀でているその人物と言えば、
彼以外に思い浮かぶ者はいないだろう。
忠犬ハチ公像の前に辿り着いたネクは、パートナーが誰かいないのか探していた。
今回はシキのためにも、絶対に負けられなかった。
「くっ、ノイズかっ!!」
そんなネクに、カニ型ノイズが襲い掛かる。
パートナーがいないので、戦う事はできない。
「なっ!? なんだ!?」
だが、カニ型ノイズは、ネクを攻撃する前に消えてしまう。
すると、ネクと中性的な顔立ちをした灰色の髪の少年を、淡い光が包み込んだ。
「契約成立!? 誰と!?」
ネクと契約したあの少年は、一体誰なのか。
訳も分からないままネクはカニ型ノイズと戦った。
「食らえ!」
ネクはカニ型ノイズに突っ込み、連続攻撃する。
灰色の髪の少年は携帯電話を持ちながら、ノイズに様々な物体を落としていく。
全く当たらないかと思えば、上手いところに命中する事もあり、不安定だった。
二人はカニ型ノイズの攻撃をかわし、サイキックで攻撃する。
ネクは近距離を攻撃し、少年は携帯電話で物体を落とす。
(怪しい割に、こいつはできるな)
ノイズを倒した一撃は、全てあの少年だった。
どうしても信用できないが戦力としては使えるためネクは少年に何も言わなかった。
「ぐっ!」
「大丈夫かい?」
「余計なお世話だ」
カニ型ノイズの攻撃を食らいながらも、ネクはアッパーでカニ型ノイズを打ち上げる。
直後に少年が携帯電話で物体を落とし怯ませネクの雷のサイキックでカニ型ノイズは倒れた。
「やぁ!」
「コイツは……」
「僕は桐生《きりゅう》義弥《よしや》。パパとママは僕のことをヨシュアと呼ぶんだ」
いかにもいけ好かなさそうな灰色の髪の少年は、笑みを浮かべながら名を名乗る。
「君もヨシュアって呼んでいいよ。大事な僕のパートナーだからね、フフフ……」
嫌味とも気障とも取れるその口調は、ネクが怪しむのも仕方がなかった。
それもそのはず、彼は……おっと、これ以上話すのはやめておこう。
「パートナー!? この弱そうなのが、俺の……パートナー!?」
「君、慣れてるようだから契約させてもらったよ」
「慣れてる……? なんでそんなこと分かるんだ?」
ヨシュアという少年は、ネクが死神のゲームに参加していた事を知っているようだ。
ハネコマと似たような感じだが、それ以上に気味が悪かった。
「フフフ……ずっと君を見ていたからね。素晴らしかったなぁ、君の戦いぶり」
気障ったらしくネクに話すヨシュア。
「まぁ、今日は初日だし……リラックスしていこう。
手始めにスキャンバッジを使ってごらんよ」
「わ……分かってるよ」
ネクはヨシュアを怪しみながらも、スキャンバッジを使った。
しかし、彼の心を読み取ろうとした瞬間、ネクの頭の中に凄まじい情報が入ってきた。
たくさんの紙が貼られた道、宇田川町の光景。
「どうしたの? 具合が悪いのかい? 困るな……君がしっかりしてくれなきゃ。
僕にとっては初めてのゲームなんだからね。ちゃんとエスコートしてもらわないと」
ヨシュアをスキャンすると見えた情報。
恐らくあれが、彼の住んでいた町なのだろう。
そんな事も知る由もなく、ヨシュアはネクを心配する。
「……大丈夫だ……」
「そう? よかった、じゃ出発しようか」
何故ヨシュアをスキャンできたのか、ネクには全く分からなかった。
参加者同士はスキャンできないはずなのに。
彼は、死神のゲームに招かれざる客なのだろうか。
「どうしたの? 行かないのかい?」
「……いや」
「まさかミッションが解けないわけじゃないよね? こんなに簡単なのに。
行先は30+74……つまり104さ」
ヨシュアは二桁の数字の加算をすぐに解く。
つまり、ネクとヨシュアは104に行けばいいのだ。
「もし君が解けない謎があったら、なんでも僕に聞いたらいいよ。
的確なアドバイスをしてあげるから。よかったね、僕と契約できて」
気障ったらしいヨシュアに、ネクは苛立っていた。
ネクの事を知っていたり、参加者なのにスキャンできたり、彼は何かと謎が多くもあった。
「それから、興味はないけど、不便だから確認しておくよ。君の名前は?」
「……ネク」
「ネク君か……。フフフ……おもしろい名前だね」
「おっ……大きなお世話だ」
「じゃあネク君、行こうか」
こうして、ネクは二人目のパートナー、ヨシュアと共に死神のゲームを生き残る事になった。
テレキネシス能力を持った謎の少年、果たして彼は一体何者なのだろうか。