すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクは死神のゲームに再び参加し、新たなパートナー、ヨシュアと出会う。
彼らは104という目的地へ向かうミッションを受ける。
ヨシュアはネクが前回のゲームに参加していた事を知っており、ネクは彼を疑っていた。
一方、下っ端の死神達は、新たなゲームマスターの計画について議論していた。
訳も分からないままヨシュアと共に死神のゲームに挑んだ、ネク。
謎だらけだが、まずは彼とシブヤで生き残らなければならない。
「……この道を通りたければ、このノイズを倒してみろ」
赤いパーカーの男が、条件を提示する。
「壁か……」
「この先に行くにはノイズを倒す必要がある……か。
よし……せっかくだから、僕の実力を見せてあげるよ。
そう難しくないから、ネク君でもついてこれるはずだよ。
僕のスタイルは簡単に言うとカウントアップさ」
「カウントアップ?」
「どういうものかは実戦でつかめるはずだよ。さて、準備はいいかい?」
「……できている」
ネクは一瞬躊躇いながらも、首を縦に振る。
「よし……じゃあ、いこうか」
ネクとヨシュアはカニ型ノイズと戦った。
ヨシュアが後ろから攻撃している間に、ネクが近距離でノイズを攻撃する。
それの繰り返しを行うと、白いバッジが光った。
「……いくぞ」
ネクは軽く頷くと、バッジの力を解放する。
ヨシュアとの連携の内容は、数字が書かれたカードを順番に触る事。
鏡文字もあるため、ネクはしっかりと数字を見た。
連携は上手くいき、カニ型ノイズを無事に全て倒した。
「どうだい? 少しはつかめたかな? これから協力して戦おうね。
僕達はパートナーどうしなんだからね。フフフ……」
はっきり言って、ヨシュアはシキと比べて感じの悪い人物だった。
だが、シキがいないため、今は彼と共に戦わざるを得なかった。
「……条件達成を確認した。この壁を解放する」
壁が解放された後、ネクとヨシュアは104ビルの前に行く。
既にネクの手から、タイマーは消えていた。
「1日目はなんとか終わったか……」
「! ネク君……あれ……何かな?」
ふと、ヨシュアは積まれた何かを確認する。
自転車や信号機、電柱など、たくさんのスクラップが積まれた塔だ。
「な、なんだ、あのガラクタ!! 前に来たときはあんなのなかったぞ……」
「ぜたおせえ!!」
ネクが絶句していると、塔の上から青年の声が聞こえてきた。
「えっ!? な、なんだ!?」
「あそこに人が座ってるね……」
「ゴミ山の上に人……?」
「ゼタ
暗号解くのにどんだけかかんだ!! このヘクトパスカルが!」
ネクがそう言うと、青年は塔の上から叫び出す。
ゼタは10の21乗、つまり垓よりも大きい単位だ。
一応、ヘクトパスカルも単位である事を説明する。
「ヘ、ヘクトパ……? うぅ……頭が……!!」
「俺は
青年はスクラップの塔から降りると、ネクとヨシュアの前で、南師猩と名乗った。
東沢洋大の時は姿を見せるのが遅かったが、今回は初日にすぐに現れたようだ。
「ゲームマスター……死神か……」
「! おまえ……今回の参加者なのか……」
「お、俺のことか?」
「フン、そりゃ……うれしい誤算だな。これで俺の求める解にまた近付いた」
ミナミモトがネクの方を向いて言う。
物事を数学に例えるほど、数学好きなのが分かる。
前回のゲームマスターの時といい、ゲームマスターは一癖も二癖もある人物だ。
「解って……何を言ってるんだ……?」
「フフフ……初日からゲームマスターが登場かい? ずいぶん常識破りなゲームマスターだね」
ネクはミナミモトの言う事が理解できなかったが、ヨシュアはこの事態でも冷静だ。
「ジョーシキなんてゴミだ! クラッシュ! 俺がまとめて捨ててやる!」
ミナミモトにとって常識はゴミ同然らしい。
だから、スクラップで塔を作ったり、ミッションの内容を計算式にしたりと、
非常に型破りな方法をしているのだろう。
知っての通り、彼は協調性が皆無であり、色々な意味でぶっ飛んでいる人物である。
「これは俺のゲームだ。俺が作るゲームに必要なのは完璧な計算と……美学だ」
「ウワサどおりのカブキ者だね」
「ヒトヨヒトヨニヒトミゴロってね……」
ヨシュアとミナミモトは、全く会話が噛み合っていなかった。
ちなみにミナミモトが言ったのは、2の平方根を覚える時に使うものである。
「さぁ、問題の時間だぜ。おまえら参加者どもに俺が許したUGにおける占有量はいくつだ?」
「さぁね」
「1ヨクトグラム!」
「原子レベルってことかな?」
「そのとおり、ロクデナシどもには存在価値はない」
ヨクトとは、10のマイナス24乗を指す単位だ。
和名では「涅槃寂静」というこの単位は、
一般的なウイルスの大きさであるナノ、10のマイナス9乗よりも非常に小さい単位である。
要するに、参加者には全く席を与えない、とミナミモトは言っているのだ。
「さぁて……そろそろ1ヨクトグラムどもが集まったようだな……」
参加者の群れを見たミナミモトは、メガホンを持って高らかに参加者に宣言する。
「存在価値のないヨクトグラムどもに告ぐ! おまえら全員、ここで
そして、ミナミモトはサイ型ノイズを召喚し、その場を撤退した。
「あの角には攻撃が効かないみたいだよ」
「だとしたら……背後に回ればいいんだな!」
ネクはサイ型ノイズの背後に回り込み、氷のサイキックで攻撃する。
サイ型ノイズは変化した角を思いっきりネクに叩きつける。
ネクはダメージを受けながらも、何とかサイ型ノイズに氷のサイキックを放った。
「ふぅ~。1日目、無事終了だね」
ネクとヨシュアは何とかサイ型ノイズを撃退した。
どうやらミナミモトは、ネクの事を知っているようだ。
「彼……なかなか痛快だよね」
「は?」
「この分なら、この先も期待できそうだね」
ヨシュアも分からない事が多すぎる。
ネクの行動や死神のゲームの事を知っていて、まるで渋谷を俯瞰しているような態度。
どう見ても只者ではないだろう。
「明日はどんな趣向でもてなしてくれるのかな……。楽しみだね、ネク君」
はっきり言って、ネクはヨシュアを信用できなかった。
だが、この渋谷で生き抜く
パートナーを信頼する事。
勝ち残るためには、ヨシュアを信頼するしかないようだ。
「まぁ……僕達なら7日間楽勝だよ。
ネク君のサイキックと僕のヒラメキ……この抜群のチームワークをもってすればね。
フフフ……」
相変わらず嫌味なヨシュアをネクは全く信用できなかった。
だが、ネクはシキのためにも、彼と行動するしかなかった……。