すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ネクは死神のゲームに再び参加し、新たなパートナー、ヨシュアと出会う。
彼らは104という目的地へ向かうミッションを受ける。
ヨシュアはネクが前回のゲームに参加していた事を知っており、ネクは彼を疑っていた。
一方、下っ端の死神達は、新たなゲームマスターの計画について議論していた。


26 ゲームマスター現る

 訳も分からないままヨシュアと共に死神のゲームに挑んだ、ネク。

 謎だらけだが、まずは彼とシブヤで生き残らなければならない。

 

「……この道を通りたければ、このノイズを倒してみろ」

 赤いパーカーの男が、条件を提示する。

「壁か……」

「この先に行くにはノイズを倒す必要がある……か。

 よし……せっかくだから、僕の実力を見せてあげるよ。

 そう難しくないから、ネク君でもついてこれるはずだよ。

 僕のスタイルは簡単に言うとカウントアップさ」

「カウントアップ?」

「どういうものかは実戦でつかめるはずだよ。さて、準備はいいかい?」

「……できている」

 ネクは一瞬躊躇いながらも、首を縦に振る。

「よし……じゃあ、いこうか」

 

 ネクとヨシュアはカニ型ノイズと戦った。

 ヨシュアが後ろから攻撃している間に、ネクが近距離でノイズを攻撃する。

 それの繰り返しを行うと、白いバッジが光った。

 

「……いくぞ」

 ネクは軽く頷くと、バッジの力を解放する。

 ヨシュアとの連携の内容は、数字が書かれたカードを順番に触る事。

 鏡文字もあるため、ネクはしっかりと数字を見た。

 連携は上手くいき、カニ型ノイズを無事に全て倒した。

 

「どうだい? 少しはつかめたかな? これから協力して戦おうね。

 僕達はパートナーどうしなんだからね。フフフ……」

 はっきり言って、ヨシュアはシキと比べて感じの悪い人物だった。

 だが、シキがいないため、今は彼と共に戦わざるを得なかった。

 

「……条件達成を確認した。この壁を解放する」

 

 壁が解放された後、ネクとヨシュアは104ビルの前に行く。

 既にネクの手から、タイマーは消えていた。

「1日目はなんとか終わったか……」

「! ネク君……あれ……何かな?」

 ふと、ヨシュアは積まれた何かを確認する。

 自転車や信号機、電柱など、たくさんのスクラップが積まれた塔だ。

「な、なんだ、あのガラクタ!! 前に来たときはあんなのなかったぞ……」

「ぜたおせえ!!」

 ネクが絶句していると、塔の上から青年の声が聞こえてきた。

「えっ!? な、なんだ!?」

「あそこに人が座ってるね……」

「ゴミ山の上に人……?」

ゼタ(おせ)ぇんだよ、おまえら!!

 暗号解くのにどんだけかかんだ!! このヘクトパスカルが!

 ネクがそう言うと、青年は塔の上から叫び出す。

 ゼタは10の21乗、つまり垓よりも大きい単位だ。

 一応、ヘクトパスカルも単位である事を説明する。

「ヘ、ヘクトパ……? うぅ……頭が……!!」

「俺は南師(みなみもと)(しょう)、今回のゲームマスターだ」

 青年はスクラップの塔から降りると、ネクとヨシュアの前で、南師猩と名乗った。

 東沢洋大の時は姿を見せるのが遅かったが、今回は初日にすぐに現れたようだ。

「ゲームマスター……死神か……」

「! おまえ……今回の参加者なのか……」

「お、俺のことか?」

「フン、そりゃ……うれしい誤算だな。これで俺の求める解にまた近付いた」

 ミナミモトがネクの方を向いて言う。

 物事を数学に例えるほど、数学好きなのが分かる。

 前回のゲームマスターの時といい、ゲームマスターは一癖も二癖もある人物だ。

「解って……何を言ってるんだ……?」

「フフフ……初日からゲームマスターが登場かい? ずいぶん常識破りなゲームマスターだね」

 ネクはミナミモトの言う事が理解できなかったが、ヨシュアはこの事態でも冷静だ。

「ジョーシキなんてゴミだ! クラッシュ! 俺がまとめて捨ててやる!」

 ミナミモトにとって常識はゴミ同然らしい。

 だから、スクラップで塔を作ったり、ミッションの内容を計算式にしたりと、

 非常に型破りな方法をしているのだろう。

 知っての通り、彼は協調性が皆無であり、色々な意味でぶっ飛んでいる人物である。

「これは俺のゲームだ。俺が作るゲームに必要なのは完璧な計算と……美学だ」

「ウワサどおりのカブキ者だね」

「ヒトヨヒトヨニヒトミゴロってね……」

 ヨシュアとミナミモトは、全く会話が噛み合っていなかった。

 ちなみにミナミモトが言ったのは、2の平方根を覚える時に使うものである。

 

「さぁ、問題の時間だぜ。おまえら参加者どもに俺が許したUGにおける占有量はいくつだ?」

「さぁね」

「1ヨクトグラム!」

「原子レベルってことかな?」

「そのとおり、ロクデナシどもには存在価値はない」

 ヨクトとは、10のマイナス24乗を指す単位だ。

 和名では「涅槃寂静」というこの単位は、

 一般的なウイルスの大きさであるナノ、10のマイナス9乗よりも非常に小さい単位である。

 要するに、参加者には全く席を与えない、とミナミモトは言っているのだ。

「さぁて……そろそろ1ヨクトグラムどもが集まったようだな……」

 参加者の群れを見たミナミモトは、メガホンを持って高らかに参加者に宣言する。

「存在価値のないヨクトグラムどもに告ぐ! おまえら全員、ここで()ね!」

 そして、ミナミモトはサイ型ノイズを召喚し、その場を撤退した。

 

「あの角には攻撃が効かないみたいだよ」

「だとしたら……背後に回ればいいんだな!」

 ネクはサイ型ノイズの背後に回り込み、氷のサイキックで攻撃する。

 サイ型ノイズは変化した角を思いっきりネクに叩きつける。

 ネクはダメージを受けながらも、何とかサイ型ノイズに氷のサイキックを放った。

 

「ふぅ~。1日目、無事終了だね」

 ネクとヨシュアは何とかサイ型ノイズを撃退した。

 どうやらミナミモトは、ネクの事を知っているようだ。

「彼……なかなか痛快だよね」

「は?」

「この分なら、この先も期待できそうだね」

 ヨシュアも分からない事が多すぎる。

 ネクの行動や死神のゲームの事を知っていて、まるで渋谷を俯瞰しているような態度。

 どう見ても只者ではないだろう。

「明日はどんな趣向でもてなしてくれるのかな……。楽しみだね、ネク君」

 

 はっきり言って、ネクはヨシュアを信用できなかった。

 だが、この渋谷で生き抜く(すべ)はただ一つ。

 パートナーを信頼する事。

 勝ち残るためには、ヨシュアを信頼するしかないようだ。

 

「まぁ……僕達なら7日間楽勝だよ。

 ネク君のサイキックと僕のヒラメキ……この抜群のチームワークをもってすればね。

 フフフ……」

 相変わらず嫌味なヨシュアをネクは全く信用できなかった。

 だが、ネクはシキのためにも、彼と行動するしかなかった……。

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