すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクとヨシュアは人気デザイナーCATのバッジを見つけた後、
ラーメン店「らあめんどん」に行き、店主が作った素朴な味のラーメンを評価する。
人気タレントの王子英二がそのラーメンを食べ、その素朴な味を絶賛する。
らあめんどんの店主は自分のラーメン作りに対する情熱を改めて確認し、
自分の味を貫き通す決意をするのだった。
死神のゲーム、四日目。
ネクとヨシュアは、マーブルスラッシュで勝負していた。
お互いのバッジがぶつかるが、ギリギリまでフィールドは落ちない。
「そこだ!」
「おっと」
ネクのバッジがヨシュアのバッジめがけて飛び、ヨシュアのバッジを落とそうとする。
対し、ヨシュアは上手くバッジを切り返して、ネクのバッジの攻撃をかわした。
「さあ、とどめを刺そう」
そう言ってヨシュアはハンマーを振り回し、弾き飛ばそうとする。
しかし、それをチャンスと思ったネクは、ハンマーの攻撃をギリギリでかわす。
「とどめを刺すのは、俺だ!!」
「うわぁぁぁぁー!!」
そして、ネクのバッジが勢い良くヨシュアのバッジに突撃、そのままバッジは落ちた。
「よしっ!! 俺の勝ちだ!!」
マーブルスラッシュのこの試合は、ネクの勝利で終わった。
「ネク君、ズルイよ。いつの間に、マーブルスラッシュ強くなったの?」
「答える義務はない」
「ちゃんと答えてよ。僕に隠れて特訓でもしたのかい?」
「別にいいだろ? 勝ちは勝ちだ」
ヨシュアがああいう事を言ったのだから、ネクもああいう事で返そうと思った。
やられたらやり返す、倍返し……とまではいかないが。
「約束どおり、あと1時間はミッションを待つ!」
「もう……ネク君、ちょっとだけサービスしてよ」
「断る。ゲームに勝ったのは俺だ。何があろうと、あと1時間はミッションを待つ」
「まったく……時間の浪費だよ……仕方ないね……」
その1時間のうちに、ヨシュアは携帯電話で誰かと話す。
ネクはヨシュアの様子をじっと見る事にした。
「昨日の参加者消滅人数は14名です」
その頃、どこかのバーで、死神の女性幹部、虚西充妃が北虹寵に報告する。
ミッションを全く出していなかったが、ゲームマスターの実力が高い事が伺える。
「さすがは奇才だな。この分なら、7日かからずゲームが終わりそうだな」
「その件ですが、昨日より本日にかけ、ミッションが出されていません」
キタニジはミッションを出さないゲームマスターの彼に疑問を抱く。
「ミッションが出ていない?」
「はい。しかし、参加者はいちじるしく減少しています」
「……南師は?」
「昨日より消息を絶っており、連絡が取れません」
奇才というだけあり、ミナミモトは相変わらず奇妙な行動を取った。
ミッションを出さなかったのは、彼がどこかに向かったからである。
「行方不明か……」
「UG内で南師が創作したと思われるオブジェは散見されています。
よって、UG内にはいるものと推測します」
彼はスクラップで塔を建てるほど手先が器用だ。
だから、UG中に彼が作ったオブジェがあちこちにあるのだろう。
「……ならばしばらく様子を見る」
「南師の捜索も不要ということですか?」
「そのとおりだ。アイツは群れを嫌う、少しぐらい放しておく方がいい」
「……了解いたしました。北虹様のおおせのままに」
コニシはそう言って、キタニジに敬礼した。
「そのほかの問題は?」
「ルート5にて、多数の死神が禁断ノイズによる襲撃を受けました」
死神も作ってはならない、禁断ノイズ。
参加者も死神も、誰彼構わず襲うそのノイズは、まるで目に見えないウイルスのようだった。
「禁断か……。で、戦力への影響は?」
「問題ありません。犯人の解明および捜索はすでに着手しております」
「なるほど……参加者の減少理由はそのノイズか……」
「はい。事件の関連性につきましても、調査を進めております」
「フッ、相変わらず完璧だな。後は虚西にすべて任せる」
「了解いたしました」
去っていくキタニジの背中を見て、コニシは密かに彼について思い出す。
南師猩という青年は、18歳で幹部になるという、
幹部最年少記録を大幅に塗りかえたまさに奇才だ。
戦略性、情報力、意思、決断力、目的遂行力は、キタニジに次いで高い数値を誇る。
その代わり協調性は全くない、というより協調性と引き換えに高い能力を持つと言っていい。
能力は高いが、癖がありすぎる彼は、一体どんな目的を持っているのか……。
そして、場面はネクとヨシュアに戻る。
ヨシュアは、携帯電話でハネコマと連絡していた。
「羽狛さん、忙しいって……いつもお店ガラガラじゃない。はいはい分かったよ……じゃあね」
そう言って、ヨシュアは携帯電話の通信を切った。
その時間、4分の1となる15分である。
「ねぇ、ネク君……お願いがあるんだけど……」
「ミッションの待ち時間なら短縮しないぞ」
「……分かったよ」
ネクはヨシュアが何か言う前に自分から言い出す。
何が何でもヨシュアに約束を守ってほしいからだ。
「じゃあ、交換条件ならどうだい?」
「俺の質問に答えるなら、調査を始めてもいい」
「仕方ないね。いいよ、なんでも聞いてよ」
「……おまえ、何を探してるんだ?」
先程から携帯電話で何を探しているのか、ネクは聞きたがっていた。
レッドスカルバッジではない、という事は判明したが、もっと情報を聞き出したかった。
「気になるの?」
「答えないなら、ここであと45分待つ」
「フフフ……それはね……渋谷ジャックさ」
「ごまかすなよ」
渋谷ジャックは、ネクは聞いた事がなかった。
誤魔化しているのかとヨシュアに問うが、ヨシュアは表情一つ変えずに言った。
「フフフ……ごまかしてなんかいないよ」
「……熱でもあるのか?」
「フフフ……そのために僕は渋谷川を探してる」
渋谷川は実在する場所なので、気になった人は調べてみるといい。
「じゃあ、僕からも質問。ネク君は本当にRGへ帰りたいの?」
「え……」
ヨシュアの質問に、ネクはきょとんとしていた。
蘇生のために死神のゲームに挑んだのだが、紆余曲折あって自分の目的を見失っていた。
「帰ったところで何が変わるの? RGでもどうせ、ひとりなんでしょ?
UGにいるのと同じじゃない」
(……RGでも、UGでも、ひとり……)
「フフフ……まぁいいよ。別に対して興味ないから。
さぁ、今日もケータイにそって進もう。探知機を起動してみるね」
ヨシュアは携帯電話の探知機を起動する。
渋急ヘッズの奥の方から反応があるようだ。
「えっと……渋急ヘッズの奥は……」
「宇田川町か!?」
目的地の場所を聞いて、ネクは驚いた。
宇田川町はネクがヨシュアの思考をスキャンして見た場所だからだ。
「そうだ! 宇田川町だ。ネク君、渋谷の地理に詳しいね」
「渋谷生まれ渋谷育ちだ」
「へぇ~、そうなんだ」
「反応は宇田川町なんだろ? 行くぞ」
「めずらしいね、ネク君から言い出すなんて……」
きっと、そこに自分の生前の記憶がある。
そう思ったネクは、自分から宇田川町に行くと決めた。