すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクとヨシュアは宇田川町に向かうが、死神ビイトに遭遇し、戦闘が始まる。
ビイトはネクを倒そうとするが、ネクはビイトと戦う事を拒否する。
その後、ネクとヨシュアはミナミモトが描いた魔法陣を見つけ、
それが禁断ノイズを召喚するものである事を知る。
そして、ネクは「自分を殺したのはヨシュアだ」と確信するのだった。
死神のゲームは五日目、残り二日で全てが終わる。
「もしもし、羽狛さん? 僕だよ。あの探知機の件だけど……」
ヨシュアは相変わらず、ハネコマと連絡を取っていた。
探知機の反応がおかしい事を報告するためだ。
ネクを殺害したのはヨシュアだが、同機は不明。
それについて本人に直接聞きたかったが、まだ証拠が不十分である。
「今日もミッションが出てないんだ。だからそっちに行けると思うよ。気になることもあるしね。
うん、頼むよ。じゃあ、また後でね」
ハネコマに連絡しているヨシュアを見て、ネクはますます彼を警戒する事にした。
何をするか分からない以上、油断できないからだ。
シキのためにも、ネクは生き残る決意を固めた。
「ということで、今日もよろしく」
「その前にひとつだけ聞きたいことがある」
「フッ、今日は何がお望みかい?」
「おまえの目的はなんだ?」
まず、ネクは自分を殺害した理由ではなく、ヨシュアが何を考えているのかを聞いた。
「前に言ったはずだよ。渋谷ジャックさ」
「だから、それってなんなんだよ?」
渋谷ジャック――つまり渋谷を支配する事。
ネクは理解できず、ヨシュアに突っかかる。
「渋谷川を探して……おまえ、いったい何がしたいんだ? 言わないならもう協力できない」
「……。ふぅ~、仕方ないね……。いいよ、全部話してあげる」
根負けしたヨシュアは、とうとう口を開いた。
「渋谷は誰が管理しているか覚えてる?」
「コンポーザーだろ」
「そう。今、渋谷はコンポーザーがジャックしてるのさ」
コンポーザーがジャック、つまり支配しているという事。
渋谷の支配者はコンポーザーである、というのはネクは知っていたが……。
「……って、まさか、おまえ、コンポーザーに殴りこみする気じゃ……」
「今はまだその前段階さ。コンポーザーの居場所が分からないからね。
僕の読みではコンポーザーは渋谷川にいる。だから、渋谷川の場所を探しているのさ。
これで十分かな?」
「じゃあ、おまえは……コンポーザーの居場所をつきとめるために渋谷を歩きまわってるのか?」
「そう、この頼りにならない探知機でね」
ネクはようやくヨシュアの目的を知る。
ヨシュアはコンポーザーを探すために、渋谷を歩き回っていたのだ。
しかし、灯台下暗しということわざもある事を、読者にだけは明かしておこう。
「おい、じゃあ俺達がオブジェ死神に狙われてるのって……」
「まぁ……ある意味僕のせい……かな? 僕の野望がオブジェ死神にばれちゃったみたいだね」
読者には分かるだろうが、オブジェ死神というのはミナミモトを指す。
「くっ、よけいなことに巻き込みやがって……。
俺は勝ちたいんだよ。そのために余計なリスクは増やしたくない」
「モチロン、僕もさ」
やはり、ヨシュアは信用ならない人物だった。
「ということで、羽狛さんのところへ行こう」
「何しに?」
「探知機が不良品だから直してもらうのさ」
「コンポーザー探しをまだ続けるのか!」
「もちろん、僕はあきらめないよ」
ヨシュアはコンポーザーを探して渋谷をジャックしたいらしい。
そのためにネクを引っ張っていきたいとか。
「ちゃんと答えたんだから早く行こうよ」
「……」
ネクは渋々、ヨシュアに付き合うのだった。
さて、その頃の下っ端死神である。
「ちょっと狩谷、昨日言ってた気になることって何よ?」
「あのヘッドフォンとおぼっちゃんのふたりサ……」
「ああ……あのボウヤ達? アイツらがどうかしたの?」
どうやらカリヤは、ネクとヨシュアの様子が気になっているようだ。
「今からそれを確かめに行くんダヨ」
「ちょっ……確かめるって、狩谷……。
今回のゲームは参加者に手出し禁止ってゲームマスターから言われてるでしょ?」
「手出しはしないヨ。一緒に遊ぶだけサ」
「それって同じことじゃないの?」
「まぁ、細かいことは気にするナ」
「まぁいいわ、どうせヒマだし、一緒に遊んでもらいましょ☆」
カリヤはあくまで、様子を見るだけらしい。
ヤシロは不満そうな顔をしながら文句を言うも、本人も暇だったので付き合う事にした。
場面はネクとヨシュアに戻る。
「ちょぉ~とマッタ」
「誰だ!」
二人の後ろから、誰かが声をかけてくる。
ネクが振り向くと、眼鏡の青年死神カリヤがいた。
「よぉ! おふたりサン、調子はドウダ?」
「おまえは……何の用だ?」
「ちょっと俺とゲームしないカ?」
ネクが身構えると、カリヤは勝負を仕掛けてきた。
「は? ゲーム?」
「悪いけど君と遊んでるヒマはないんだ」
当然、ネクは訳が分からず困惑し、ヨシュアも首を横に振る。
「つれないネェ~。卯月~」
「了解☆」
「なっ……」
カリヤの号令で、ヤシロがネクとヨシュアの背後に回り込む。
そして、赤いパーカーの死神はバリアを張る。
二人の退路は死神に塞がれてしまったようだ。
「はい! 準備完了! 壁を作らせてもらったわ☆」
「なんだって!」
「というわけデ……楽しいゲームのハジマリハジマリ~」
そう言って、カリヤはヤシロと共に撤退した。
「くそっ……アイツら……」
壁のせいで、ネク達は足止めされてしまった。
解放するためには、ブランドランキングでD+Bを1位にする必要がある。
戦闘が終わり、ネクとヨシュアは東に向かった。
「あちこちに壁があるな……」
死神が張った壁は、ネクの予想以上に多かった。
渋谷デパートの奥の壁を担当する死神は、海の味を感じるラーメンを欲しがるようだ。
死神でもお腹が空く事はあるらしい。
ネクとヨシュアはひとまず、道玄坂に向かった。
「道玄坂か……。そういえば、オッサンのラーメン屋があったな」
「ねぇ、ネク君、道玄坂の名前の由来知ってる?」
「いや……」
ヨシュアは渋谷の豆知識をネクに話そうとする。
「ネク君、それでも地元民かい?」
「……」
何も言わないネクをよそに、ヨシュアは渋谷の豆知識を話した。
「道玄坂の名前の由来は、和田義盛一族の残党、大和田太郎道玄から……という説と、
道玄庵というお寺の名前から……という2つの説があるんだ」
「へぇ~」
「道玄坂は日本文学でもたびたび出てくるんだ。
たとえば、かの有名な江戸川乱歩の『怪人二十面相』では、
二十面相の隠れ家が道玄坂にあるんだ」
「へぇ~」
「何気なく歩いている所が、何かの舞台になっていたって知るとおもしろいよね」
「まぁ……そうだな」
ネクは某テレビ番組のように相槌を返す。
それに対し、ヨシュアは怪訝な顔をしていた。
「……ネク君、僕の話、ちゃんと聞いてたのかい?」
「ああ」
「本当かい?」
「……じゃあ、質問」
ヨシュアは、ネクが本当に自分の話を聞いているかどうか確かめようとする。
読者なら、きちんと読み進めれば分かるだろう。
というわけで、ネクとヨシュアを見守ってほしい。
「道玄坂の名前の由来になった人物名は?」
「ええっと……」
ネクはヨシュアの言っていた事を思い出す。
実際のところ、一応話は聞いていたものの、おぼろげにしか思い出せないでいた。
だが、ここでヨシュアの信頼を失えば、後のミッションに影響が出る。
ネクは知恵を振り絞って、ヨシュアの質問に答えようとした。
「……大和田太郎道玄、か?」
「正解! ちゃんと聞いていたみたいだね」
ネクにしては珍しく自信なさげだったが、ヨシュアは笑顔で頷いた。
話は戻り、ネクとヨシュアはらあめんどんに行ってラーメンを注文しに行った。
「海の味のラーメンといえば、しおラーメンか?」
「うん、飾り気は全くないからね。これがいいと思うよ、ネク君」
「お、ありがとよ!」
店長は笑顔でラーメンを買ったネクを見送った。
「……ふわぁ、だるいなぁ……。今日は休みだったはずなのに……。
……うーん、どうするかなぁ。腹減ったしなぁ」
「これか?」
そう言って、ネクは死神にラーメンを渡した。
「うわっ……持ってきたよ。うーん……見た目まずそうだな、そのラーメン……」
死神はしおラーメンを見ると、首を横に振った。
どうやら、死神はお気に召さなかったようだ。
「もうお前らが食っていいよ。壁は開放してやる」
「……」
二人が行ったカドイ前にも壁が張られていた。
片方の道は塞がれていたので、ネクとヨシュアはもう片方の道に行った。
「……お待たせしました。……突然ですが、死神クイズの時間です」
「またおまえか……」
「それでは参りま~す」
死神が出したクイズの内容は、以下の通りだ。
「今回の死神クイズは、今話題のラーメン屋、道玄坂の『らあめんどん』に関してです。
第1問! 『らあめんどん』の店主の名前は? A:土井ケン B:上野ドン C:藤神タツ
第2問! 店主と仲良くなると出てくるメニューは次のうちどれ?
A:ねぎラーメン B:チャーシューメン C:カップめん
第3問! しおラーメンのお値段は? A:¥580 B:¥680 C:¥780」
全問正解したため、壁は解放された。
「忘れた頃にやってくる、それが死神クイズです。では、また会う日まで、さようなら~」
死神クイズを出した当の死神は、例の言葉を言い残して去っていった。
……ちなみに、クイズの正解はA、C、Aである。
「でも、こんなに壁を張るなんて、死神達はどうしているんだろうね」
「分からない……けど、ちゃんと開放しないと、ゲームに悪影響が出そうだ」
果たして、死神は何を企んでいるのだろうか。
ゲームマスターがミッションを出さないのは、ある大掛かりな計画だと思われるが……。