すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ネクとヨシュアは、渋谷の壁を解放するための条件を達成していく。
その一方で、下っ端死神の狩谷と八代は、南師が召喚した禁断ノイズに対処しようとする。
狩谷はネクの秘密を見抜いているようだが、彼はそれを明らかにしなかった。


42 探し物は何ですか

 こうして、ネクとヨシュアはワイルドキャットに辿り着いた。

「おお、来たな」

 そう言って二人を出迎えるハネコマ。

「どれ、ケータイよこせ」

「はい、よろしく」

 ヨシュアはハネコマに携帯電話を見せる。

 この携帯電話は渋谷中に反応しているようで、目的のものが見つからないようだ。

「分かった、すぐ終わるから少し待ってろや」

「それと、ネク君のケータイにカメラ機能ね」

「分かってるよ」

 ハネコマはネクとヨシュアの携帯電話を受け取り、修理してもらう事にした。

 修理中、ネクは自分の死因について考えていた。

 何故、ヨシュアはネクを撃ったのか。

 彼はネクを撃ってメリットになるのだろうか。

 ヨシュアの目的は「渋谷ジャック」……つまり、渋谷を乗っ取る事。

 彼はそのために、ネクを撃ったのだろうか。

 ネクは渋谷ジャックと関係ないはずなのだが、契約を結んできたのはヨシュアからだった。

 ヨシュアと組むためにネクを撃ったのだろうか。

 そう思ったネクは、ヨシュアに話を聞こうとした。

「おい……おまえ、どうして俺と契約したんだよ」

「あれ? どうしたの、いきなり」

「契約した時におまえ言っただろ。【ずっと君を見ていたから】って。あれはどういうことだよ」

 ヨシュアはネクをどこかから見ていたらしい。

 ネクを撃ったのはヨシュアのはずなのに、何故か彼はネクのパートナーになった。

 まずは、その理由を聞きたかったのだ。

「なるほど……そういう切り口かい」

 だが、その言葉はヨシュアに簡単に流された。

「僕はね、昔からUGが見えたんだ」

「昔からって……生きてた時ってことか?」

「うん、僕は霊感が強いみたいでね。ほかの人には見えないものが僕には見えた。

 だから、この渋谷で死神のゲームが開催されていることはずっと前から知ってたよ。

 参加者やノイズ、死神達も見えてたからね」

 どうやらヨシュアは、俗に言う霊感体質らしい。

 生きながらノイズやUGが見えたりするのも、

 彼が生きていながら死んでいる、そんな不思議な力を持っているからだという。

「RGでずっと俺を見てたってことか……」

 ならば、何故ヨシュアはネクを撃ったのだろうか。

「だんだんUGで行われている死神のゲームに興味を持って、

 自分なりに調べている時に羽狛さんと知りあったんだ」

「羽狛さんとはいつごろ知りあったんだ?」

「だいぶ前だよ。いつごろだったかは忘れちゃったかな。

 それからはこの店に入り浸ってUGの話を聞いた。

 羽狛さんの話を聞くたびに、UGの魅力にどんどん引き込まれていったよ」

「魅力?」

 ヨシュアが抱くUGの魅力は、どんなものだろうか。

 ネクはきちんとヨシュアの話を聞く事にした。

「生死をかけて必死で渋谷をかけずりまわる……こんなに刺激的なレクリエーション、

 RGには存在しないよ」

 やはりヨシュアは渋谷を俯瞰するように言った。

 あの態度も、ヨシュアがこのように渋谷を見ているからだろうか。

「僕にとって日常は退屈以外の何物でもない。毎日、毎日同じことの繰りかえし……。

 それこそ、死んでいるのと同じさ」

 ヨシュアは生きながらゲームに参加している。

 そんな彼がそう言うのだから、ヨシュアはよほど退屈を嫌っているのだろう。

「それで……ここに来たのか?」

「そう、僕のいるべき場所はUGだという結論に達したのさ」

「だから、俺を巻きこんだのか?」

「えっ?」

 ネクの言葉にヨシュアは驚いた。

「おまえはUGに来たくてUGに来た。けど俺は……俺はおまえに……」

 ネクがヨシュアに自分を撃った事を言おうとした時……。

 

「待たせたな、終わったぜ」

 ハネコマの携帯電話の修理を終える声が聞こえた。

「本当かい!? 早く見せてよ」

 ヨシュアはすぐに、携帯電話を取りに行った。

 

「くそっ!」

 ヨシュアに言うタイミングを逃したネクは、俯きながら悪態をつく。

 せっかく自分の死に際の詳細を知りたかったのに。

 

「よし! これで全部片付いたな」

 ハネコマは用事を終えたのか、ワイルドキャットから出ている。

「あれ? 羽狛さん、出かけるのかい?」

「ああ、ちょっとヤボ用でな、今日は店じまいだ。じゃあな。2-3、2-3っと……」

 ハネコマは野暮な用事があるため、ワイルドキャットは閉店する事にした。

 そして、ハネコマは2-3に向かって歩いて行った。

 

「さて、探知機も直ったことだし、僕達も再出発しようか」

 探知機の修理が終わったため、ヨシュアは何かを探す事を再開した。

「そうだ、その前に……。ねぇ、ネク君」

「なんだよ」

「今度は僕の番だよ。ネク君、さっき僕のことたくさん聞きだしたでしょ?

 だから、今度はネク君のこと、教えてよ」

「……なんだよ」

「ネク君は、なんで死んじゃったの?」

「なっ……原因はおま……」

 ヨシュアがネクの死について話すと、ネクは驚いてヨシュアに掴もうとする。

 だが、ここで反論したら全てが無駄になると思い、ネクは俯きながらこう言った。

「……分からないんだ」

 ネクは記憶こそ取り戻す事はできたが、まだ記憶が完全に戻っていない。

 ネクは自分の事を出し渋っていた。

「分からないって……そんなことあるの?」

「前回のゲームで記憶を懸けたんだ。だいたいの記憶はもう戻ってる。

 けど、まだイロイロと思い出せないことが多い。そういうおまえは? なんで死んだんだよ?」

「フフフ……それはヒ・ミ・ツ」

「なっ……」

「僕はUGに興味があるから来た、ただそれだけさ」

 ネクはヨシュアが生きている事を知らない。

 読者にしか分からない事は、役者であるネクには届かないのだ。

 

「じゃあ、行こうか」

 いつも質問を上手くかわすヨシュア。

 揉めずに彼から聞き出すには時間がかかるとネクは考える。

「……ほら、ネク君。出発するよ」

 そんなぐずぐずしているネクにヨシュアは声をかける。

「反応はスクランブルの方から出てるみたいだよ」

 どうやら目的地はスクランブル交差点のようだ。

 ネクとヨシュアはすぐに、スクランブル交差点に向かった。

 

「見つけたぜ、ヘッドフォン野郎」

 スクランブル交差点に行くため、宮下公園を通るネクとヨシュアの前に、

 金髪の死神――ビイトが現れる。

「ビイト……」

「ちっとは強くなったか? どっちにしろ、今日は決着つけてやる」

 ビイトはネクを倒すためにやってきたようだ。

 ネクはまだ信じられないと言った表情で、ビイトに強く呼びかける。

「おまえ……なんでこんなことするんだ!?」

「決まってんだろ! 死神だからだよ!」

 やはり彼は死神のまま、何も変わっていなかった。

 だがヨシュアは宣戦布告するビイトを睨みつける。

「でも、それはおかしいね。死神は……」

「うるせー! だまれ! 俺は死神だ、だからおめぇらを消す! いくぞ!!」

 ルールに従わないのか、それとも完全に死神になっていないのか。

 ビイトがネクに攻撃しようとした、その時。

 

なにやってんのよ!!

 ビイトの後ろから、少女の声が聞こえてきた。

アンタらは!!

 ネクとヨシュアの前、ビイトの後ろには、下っ端死神のカリヤとヤシロがいた。

 二人はビイトのルール違反を指摘しに来たのだ。

「ムカつくからってルール違反はヨクナイナ~。参加者に直接手を出せるのは7日目。

 しかも、ゲームマスターだけダゾ」

 ゲームマスター以外の死神は、どんな時があっても決して参加者に直接手を出してはいけない。

 それが、死神のゲームにおける死神側のルール。

 つまり、ビイトはルールを何回か違反している、という事になるのだ。

「さらに、今回は仕事は全て禁止。

 参加者に一切手を出すなっていうお達しがゲームマスターから出てるの、知らないの?

 新人だから知らなかったじゃ済まないわよ」

 つまり、何もしなくていいのだが、逆にヤシロはそれで退屈しているという。

 だが、ビイトはヤシロの言葉に首を振った。

「俺は特別だ! 俺の仕事は指揮者からの特命だ!」

「特命!?」

「おっスゲェ! 期待の新人ってヤツカ?」

 ビイトはキタニジから、ネクを倒せと命じられたという。

「フンッ」

「なんで……なんで、アンタがっ!?」

 ヤシロはビイトを見て悔しそうな顔をする。

 自分達は仕事ができない、なのにビイトはネクを倒そうとする。

 その立場の違いに、彼女は嫉妬してしまったのだ。

「そんなの、俺が知るか! 仕事のジャマだから消えてくれねぇか、セ! ン! パ! イ!」

「ちぃぃぃ、調子にのりやがって!」

 挑発するビイトにヤシロは激昂するが、カリヤは彼女の肩に手を置く。

「ハイハイ、そんなにカッカしなサンナ。後は若いモンに任せて、俺達はテッシューってコトデ。

 んじゃ~、健闘を祈るぜ~、シンジン」

 そう言って、カリヤとヤシロは撤退した。

 

「フン……やっとジャマが消えたぜ。さぁ、覚悟しやがれ!」

 ネクとビイトの決闘が、再び始まろうとしていた。

 

「いい加減にしろ、ビイト! 自分が何をやっているのか、分からないのか!?」

「うるせぇ! とにかく、おめぇを倒す!!」

 ネクはビイトに呼びかけ、彼との戦いを止めようとする。

 しかし、ビイトは迷う事なく、スケボーに乗ってネクに突っ込んでいく。

「そんなものかよ!」

「そんなものって……俺は、おまえと戦うつもりなんて……」

「ないって言うのか?」

「!」

 ビイトはネクの腑抜けた態度を指摘する。

 そんな甘い態度だと、この死神のゲームで生き残る事ができないという。

 ネクは「そんな事ない」と首を振るが、ビイトは容赦なくスケボーでネクを攻撃する。

 逆に、ネクは防戦一方で、ビイトに対し自衛以外でサイキックを使っていなかった。

「そんなんだからおめぇは甘いんだよ。だったらこれで、とどめを刺してやる!!」

「やめろ、ビイト!!」

 そう言って、ビイトはネクに体当たりした。

 ネクはすぐに攻撃をかわして、ビイトにサイキックで反撃した。

 

「ちっ!! 今回はさすがに……」

「待てよ!! おまえに……」

うるせぇ! いくぞぉ!!

「待てって!」

 攻撃しようとするビイトを呼び止めるネク。

 だがビイトは聞く耳持たず、ネクに攻撃を仕掛けてきた。

 その時、ネクは鈴がついたペンダントを持っている事に気づき、

 そのペンダントをビイトに見せる。

「このペンダント、おまえのだろ!?」

「!? そ、それは! どうしておめぇが持ってんだ!?」

 ペンダントを見たビイトの動きが止まる。

 ネクは前回、ビイトとの戦いで彼がペンダントを落とした事を話した。

「昨日、おまえが落としたんだ」

「くそっ! 返せ!! それで俺を脅そうったってそうはいかねぇぞ!

 力ずくで奪い返してやる!!」

「そんなことしない! ほら、返すよ」

 ネクはいつもより穏やかにビイトにペンダントを返した。

 ペンダントを受け取ったビイトの表情が変わり、ネクに対する戦意が失われつつあった。

「どうして返した? 俺はおめぇらの敵だぞ……」

 信じられないといった表情のビイトだが、ネクはビイトが死神になった理由が分かっていた。

 ビイトはライムを人質に取られており、彼の本意ではないという事を。

 だから、これ以上ビイトが攻撃しないように、

 できればビイトにこちら側に戻ってきてほしくて、ライムの形見のペンダントを返したのだ。

「おまえの大事なものなんだろ?」

「……礼は言わねぇ。でも、ひとつ借りだ」

 そう言って、ビイトはネク達の前から姿を消した。

 その手に、しっかりとペンダントを握りながら。

 

「不良死神は行ったのかい? それにしても……特命ねぇ……」

「なんだよ?」

「なんでもないよ、さぁ行こう」

 ヨシュアは、ビイトに命令を下した死神が誰かを知っているようだ。

 もちろん、これは読者も知っているが、ネクはまだ分かっていなかった。

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