すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクとヨシュアはトウワレコード前で探知機に反応するものを探す。
ネクは壁に描かれたCATの新作に目を奪われ、彼の正体が羽狛だと知る。
二人はスクランブル交差点に向かうが、ヨシュアの携帯電話に導かれ駅ガード下に向かう。
だがその途中でヨシュアが生きている事がバレ、ネクの怒りが爆発する。
だが、ヨシュアの言葉は、ネクに深く突き刺さるのだった。
死神のゲーム、六日目。
今日もネクは、スクランブル交差点で目覚める。
「うん……見つけたよ、渋谷川……。でも……入る方法が分からないんだ」
ヨシュアは、携帯電話でハネコマと通話していた。
ネクは何故、彼がヨシュアと協力するのか分からなかった。
彼は、ヨシュアがネクを撃った事を知っているのだろうか。
「じゃあ、また後で連絡するよ」
そう言って、ヨシュアは通信を切り、ネクのところに戻ってくる。
「やあネク君、おはよう。よく眠れたかい?」
「ふざけるな。俺を殺しといてよく俺の前に出てこれたな」
ネクは昨日から、ヨシュアへの怒りを持っていた。
自分を含めた参加者を冒涜するような態度が、ネクは許せなかったのだ。
「だから、だとしたらどうするの?」
「なに!?」
「仕返しに僕を消す?」
「それは……」
いくらヨシュアが許せないとはいえ、彼は現在のネクのパートナーである。
消したら、死神のゲームに支障が出てしまう。
「無理だよね。だって僕達、パートナーだから。僕を消したらネク君も消えちゃうもんね」
「くっ!」
もしかして、それを知っての上でヨシュアはネクのパートナーになったのかもしれない。
自身を撃った者をパートナーにして、ネクを思いのままに操るために。
しかし、ネクはヨシュアが自分を撃った理由が分からなかった。
彼にとってパートナーは誰でもよく、たまたまネクを目に付けただけなのか。
死神のゲームもミッションも関係ない、自分の目的さえ果たせればそれでクリアだ。
ネクはヨシュアの企みを、なんとしてでも阻止したいという気持ちを抱いた。
―ピピピピピ
「なっ! メール!! ミッションか!?」
その時、いきなり携帯電話に着信音が響いた。
これまで全く届いていなかった通知が、とうとう届いたのだ。
携帯電話を開くと、こんなメールが届いていた。
ゲームⅥ
2.2360679の“0”と“5”のボスを倒せ
制限時間は60分 未達成なら破壊
「っつぅ!! タイマーか……」
メールが届くと同時にネクの手に鋭い痛みが走る。
久しぶりのミッションだ。
2.2360679……つまり、ルート5が目的地だという事になる。
だが、“0”と“5”はどういう意味だろうか。
読者には是非、推理してもらいたい。
「まずは進めるエリアを調べておこう」
「めずらしくミッションに前向きだな。ミッションなんておまえには関係ないんじゃないのか?」
「関係ないとは心外だな。僕も一応参加者だよ」
「生きてるくせに」
「生きたまま参加はしてるけど、UGで消滅した場合、RGの僕の存在も消滅する。
つまり、条件はほかの参加者と同じってことさ」
ヨシュアは生きながらゲームに参加しており、明らかにルール違反であった。
だが、こうしてネクのパートナーになっており、ネクはこれ以上口出しできなかった。
「そこまでのリスクをおってまでUGに来たのか」
「RGにいるよりマシさ」
そう言ったヨシュアは、暗い表情をしていた。
どうやら彼は、ある理由でRGにいたくないらしい。
「じゃあ、行こうか」
「おい!」
先に行こうとするヨシュアを、ネクは呼び止める。
「俺はおまえのこと許したわけじゃないからな。
今はミッションが先決だから話を切りあげるだけだからな」
「フフフ……はいはい」
微笑みを浮かべるヨシュアを、ネクは白い目で見ていた。
「ネク君! あぶない!!」
「えっ!?」
センター街入口に行くと、ネクの周りをたくさんの黒いノイズが取り囲んだ。
「くそっ、囲みやがって!!」
黒いノイズからは逃げられない。
ネクはバッジを取り出すと、炎のサイキックで黒いノイズを燃やした。
ヨシュアは携帯電話を取り出すと、光の柱を呼び出して黒いノイズを攻撃する。
その柱からは、天使が見えていた。
「ヨシュア……おまえ、天使なのか?」
「さあね、それを教えたら君のためにならない」
「くっ!」
どこまでも素性を隠し続けるヨシュアに対し、ネクは心の中では苛立っていた。
コンポーザーとは何者なのか、何故ヨシュアが天使の力を使えるのか。
そもそも、天使とは死神の一種なのだろうか。
そんな思いが、ネクの中で渦巻いていた。
「ネク君、危ない!!」
飛び掛かってきた黒いノイズを、ヨシュアが間一髪、光の力で撃退する。
ネクは当然、お礼など言わず、黒いノイズとの戦いに専念している。
「せっかく僕が助けたのにお礼の一つも言えないなんて、
やっぱりネク君は他人の事、理解したくない?」
「……」
ヨシュアを信じていないネクは何も言わなかった。
ただ、黒いノイズを撃退して、先に進みたいだけだった。
つまり、ネクはヨシュアをまだ警戒しているという証だった。
「これで……全部だな」
ネクとヨシュアは何とか黒いノイズを撃退した。
二人が受けた浅くない傷が、黒いノイズの攻撃が激しい事を物語っている。
「今のノイズ……どうして襲ってきたんだ?」
「昨日のノイズも……その前にも、向こうから襲ってくるノイズがいたよね。
特別なノイズなのかな……?」
ヨシュアがそう言うと、カンガルー型ノイズがヨシュアの背後から襲い掛かってきた。
「おいっ! うしろっ!」
「えっ……」
ノイズがヨシュアを攻撃しようとした瞬間、跡形もなく消滅してしまった。
「今……何が起きた?」
「……親切な誰かさんが助けてくれたみたいだね」
「誰か……?」
その「誰か」とは、ビイトの事だろうか。
ネクにも、読者自身にも、まだ分からなかった。
「助けてもらえてラッキーだったね。僕としたことが油断してたよ。
今日はノイズの方から襲ってくるみたいだから、油断は禁物だね。
じゃあ、行こうか。進めるエリアを調べてみよう」
そう言って、ネクとヨシュアはセンター街入口に向かった。
「くそっ……今日はやっかいなノイズが多い……。なんなんだ……あのノイズ……」
六日目というだけあって、強力なノイズがネク達を襲っていた。
しかも、そのノイズは身体が黒く、禁断ノイズである事は嫌でも分かった。
「ノイズの種類は大きく分けて2種類。
RGの人間のネガティブ感情から自然発生した野良ノイズ、
UGの死神が参加者を消すためにつくったノイズ。
野良ノイズは参加者を襲ってこないから……」
「オブジェ死神が本気で参加者を消しにきてるってことか」
「そうだろうね」
「くそっ……」
死神のゲームもこの日を入れてあと二日、この死神は後から本気を出すタイプだろう。
ネクは悪態をつくが、だとしても彼は負けられなかった。
シキのためにも、そして自分自身のためにも。