すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

5 / 72
ネクとシキは信頼できるのか? なお話です。


5 信頼

 ネクはバッジを手に取ると、精神を集中する。

 見えるものが全てではない……男からそう言われた通り、

 彼の周囲には三つの橙色の紋章が浮かんでいた。

 あれこそが、ネク達が倒すべきノイズなのだろう。

 

 ネクが手にしたバッジは、手が描かれたバッジ、サイコキネシス。

 サイキックの中で最も有名な、物を念力で動かすものだ。

 襲ってきたノイズは、最も弱い蛙型のもの。

 

「全部、消してやる」

 ネクはそう言って、ブロックを浮かせ、ノイズに向けて飛ばした。

 蛙の攻撃を食らわないように、できるだけ離れて、攻撃していく。

 

 電撃を放つバッジ、サンダーボルト。

 エネルギー弾を飛ばすバッジ、バレットショット。

 敵を斬りつけるバッジ、ショックウェイヴ。

 周りのものを利用しながら、ネクは次々とノイズを倒していく。

 結果、あまりダメージを受けずにノイズを全て撃破し、ネクは戻ってきた。

 

「そっか……ノイズってスキャンすると見えるんだ」

 先程のノイズは、シキには見えなかったようだ。

 すると、赤いパーカーの男が淡々とこう言った。

「撃破条件確認」

 ノルマを達成したので、道が開かれた。

 

「ノイズの探し方は分かったけど……壁が……あれ!? 通れるようになってる! どうして!?」

「ノイズを倒したからだ」

「壁ってノイズを倒すと通れるようになるんだね。でも……おかしいよね」

「何が……?」

「二人じゃないとノイズは倒せないって聞いたけど……ノイズって一人でも倒せてるよね?」

「そういえば……」

 先程はネク一人でノイズを倒した。

 シキにノイズが見えなかったとはいえ、

 パートナーがいないと死神のゲームは生き残れないはずだ。

 彼女はそれに、疑問を抱いていた。

「いつも一緒に戦ってるわけでもないし……」

 

「契約しているからだ」

 その時、後ろから声が聞こえてきた。

 淡々とした声は、間違いなく「彼」のものだ。

「「(えっ)!?」」

 ネクとシキが振り向くと、赤いパーカーの男が立っていた。

「ノイズはパートナーがいる事で初めて倒せる。

 契約していないものはノイズにダメージを与えられない」

 男は事実を淡々と伝えるとそのまま去っていった。

 

「ちょっ……。なんなの、あの人……さっきから」

 男はやけにノイズの事情に詳しかった。

 恐らくは、死神と関係があるのだろう、とネクは推測した。

「でも、ネクってスゴイよ!」

「……え?」

「ほら、持ってたバッジ、全部使えたんでしょ?」

「ああ……」

 支給されたバッジは、全部で七つ。

 その全てを使いこなせるというネクは、相当な才能を持っているらしい。

「ネクってサイキックの天才かも!!」

(なんだそれ……ちょっと使っていきなり天才も何もないだろ。単純すぎる……)

 少し使っただけで天才ともてはやすシキは、ネクにとっては嫌だった。

 今のシキの声は、ネクにとって「雑音」だろう。

 だが、ネクはごく僅かだが、シキの気持ちを分かっていた。

 こんな暗い場所で明るく振る舞えるなんて、心が強いんじゃないか……と。

(そういえば……なんでこんなバッジを持ってるんだ?)

「あれ? ネク、参加者バッジが二つあるよ」

「本当だ……」

 今、死神のゲームに参加しているのは、ネクとシキの二人だけのはずだ。

 しかも、シキの分のバッジは、当然ながら彼女が持っている。

 他にもう一人、参加者がいるのだろうか。

「でも……参加者バッジって、二つ持ってても意味なくない?」

(そんなこと知るか。なんでバッジを持ってるかも分からないのに……。

 でも、このバッジがなければノイズには対抗できない。

 サイキックを使うことが生き残るための唯一の道ってことか……)

 「大切な」記憶を取り戻すためにも、

 ネクはサイキックを使いこなさなければ、と思うのであった。

 

「えっと……でも、二つあった方が便利だよね! きっと何か役に立つよ!」

(意味ないって言ったのはおまえだろ)

「それに私、ほんとにラッキーだって思うよ。パートナーがこんなにサイキック使えるなんてさ。

 すごい才能だよ! 天才だよ、ネク! 私、ネクがいないとほんと無理だよ」

 パートナー、ネクの才能を褒め続けるシキ。

 シキはネクが他人との関わりを拒絶しているため、何とかして心を開こうとしていた。

 ネクをとことん褒めて彼を喜ばせようとしていた。

(今度はおせじか……。バレバレだ、もういいよ。そういうの……)

 だが、これもネクはお世辞と取っていて、話を聞いていないそぶりを見せていた。

「ねぇ、ネク……聞いてる?」

「……」

「人が褒めてあげてるのに、そんな態度はないでしょ?」

「……聞こえてるよ」

「聞こえてるかどうか全然分からないよ。ノーリアクションだし。

 大体、そのヘッドフォンだって外した方がいいよ。話してる人に失礼だよ」

「いちいちうるさいんだよ! ヘッドフォンしようがしまいが俺の勝手だろ!

 昨日今日会ったおまえにつべこべ言われる筋合いはない!」

 ネクとシキの歯車は、まだ合っていない。

 他人との関わりを拒絶するネク、彼の心を開こうとしているシキ。

 互いにやり方は正反対で、仲は良くならない。

 パートナーというよりは、ただ、連れ添っているだけのようだった。

 

「そんなに怒らなくてもいいじゃん……。もう……どうしたらいいの……」

 いつまで経っても心を開かないネクに、シキは苛立ちながら携帯電話を取り出した。

 ネク自身に何があったのはシキも分からない。

 しかし、このままネクが他人を拒絶していれば、死神のゲームで生き残る事はできない。

 シキはそう思っていたのだ。

 

(人に文句言っといて、自分はケータイいじりかよ……)

 一方、ネクもシキが自己中心的な事をしていたのに気づいた。

 会話の途中で携帯電話を使う事は、マナー違反であるからだ。

 ネクはシキに黙って去っていった。

 

「あっ! 待って!!」

 シキも慌てて後を追っていく。

 この二人の歯車はまだずれたままだが、

 いずれは、必ず一つになり、本当の信頼関係を得るだろう。




次回はもう一人、いえ、もう二人のメインキャラが登場します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。