すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ビイトは渋谷川へ行こうとするが、そこにゲームマスターの虚西が現れる。
虚西はビイトを死神から解任し、ノイズをバッジに変えてしまう。
そしてミッションを出題し、自分を見つけ出す事を要求する。
ビイトは虚西を追いかけ、ネクは彼について行くのだった。
「へぇ~、これが開放バッジカ……」
「渋谷で流行ってるのと同じに見えるわね……ってか、むしろ同じバッジじゃない?」
カリヤとヤシロはしげしげと赤い髑髏のバッジを見つめている。
以前にネクとシキが広めたあのバッジと、全く同じ形・色だった。
カリヤはしばらく赤い髑髏のバッジを見つめた後、やれやれといった表情になる。
「どうも気にいらねぇな~、こんなのはサ」
「あきらめなさい☆ 開放バッジ装着はゲームマスターの命令よ、逆らえないわ」
「ゲームマスター……鉄仮面様カ……。余計なことをしてくれたもんダネ」
カリヤは彼女の姿を思い出して溜息をつく。
この開放バッジがとんでもない事態を引き起こす事は、まだ彼らは気づいていなかった。
「力がハネ上がる秘密兵器よ。楽しみじゃない☆」
「そんなスバラシイ秘密兵器が今まで使われなかった理由分かってンノ?」
確かに、こんな強力なバッジを、このゲームまで使わなかった事は違和感がある。
参加者を仕留めるなら、最初のゲームで装備しておけばよかったのではないか。
ならば、確実に裏があるはずだ、とカリヤは感づいているようだ。
「体への負担が大きいんでしょ……」
「こんなモンつけさせるナンテ……。上の連中……な~に焦ってンダカ……」
「……ほんと、たかだか新人の裏切りにしてはちょっと大げさね」
ビイトが死神を離反しただけで、こんなに大がかりな事をするなんて。
ヤシロには幹部の考えが理解できていなかった。
「……さぁ、どうダカ……」
だが、カリヤはこの出来事の真相に、薄々ながら気づいているようだ。
それが事実かどうかは、まだ分からないが……。
「え? 何がよ?」
「……にしても卯月、なんだかうれしそうダナ?」
ヤシロが笑みを浮かべていた事に気づくカリヤ。
「ったりまえよ。やっと仕事らしくなってきたわ。仕事はやっぱりやりがいがなくっちゃ☆」
前回のゲームでは全くと言っていいほど仕事をしていなかったため、
鬱憤がたまりにたまっていたようだ。
「おっ! イイネ。では、さっそくゲームしますカ。そんじゃ、ラー……」
「ご苦労様です。意欲的に取り組んでいるようですね」
カリヤもラーメンをかけたゲームをしようとした瞬間、背後から女性の声が聞こえてくる。
「はっ、あなたは……」
「ちっ……」
カリヤは女性の姿を見ると、舌打ちした。
場面はネクとビイトに戻る。
「あいつはあっちに逃げていったな」
逃げていったコニシを捕まえるため、ネクとビイトは104ビル前に向かった。
「ここにも壁……進めないのか」
しかし、壁があるため進めない……と思いきや。
「いや……この壁なら進めるぜ」
「おい! またむちゃする気か」
「ちげーよ! バカにすんな。これだよこれ」
ビイトが取り出したのは、キーバッジだった。
「ここはこのLV1キーバッジで開けられる」
「昨日、壁を開けた……というより壊した時に使ったやつか」
「これは取られなかったみてぇだな」
そう言って、ビイトはキーバッジを壁に当てた。
どうやら正しいキーバッジだったようで、壁は音を立てて開放された。
「よしっ、開いたぜ」
「行くぞ」
ネクとビイトは、コニシを捕まえるために104ビルの横から道玄坂に向かった。
「くそっ! どこだ……」
道玄坂にはコニシの姿はなかった。
まだ余裕があるとはいえ、ぐずぐずしているとビイトは寿命が尽きてしまう。
彼はそのせいで、今もなお焦っていた。
「鉄仮面、どこ行きやがった……」
「見つけたぜ、裏切り者」
ビイトが焦っていると、彼の後ろから青年の声が聞こえてきた。
裏切り者、と言っている事は、きっと死神だろう。
「なんだおめぇ!?」
「死神だよ」
「そんなことは見りゃ分かるぜ。つーかよ、俺、もう参加者だぜ、ほら」
ビイトは自分の背中を死神に見せる。
そこに羽がない事を、彼に知らせたかったのだ。
「手ぇ出すのは禁止されてるはずだぜ」
「なんだぁ? 知らねーのか? エマージェンシーコールが出たんだよ」
「エマー……ジェシ? コール? なんだそれ?」
「UGの緊急事態宣言だ。
UG存続を第一とし、それをおびやかす危険因子の排除を最優先事項とする……」
「へっ! 何言ってるか分かんねぇぜ!」
ビイトには死神の言った事が理解できず、死神に食って掛かろうとする。
「つまり参加者への攻撃が解禁ってことさ。今じゃおまえは賞金首だ。
おまえを消して俺も幹部入りだ」
「フンッ、そういうことかよ」
死神はビイトを消そうとするが、それが逆に、ビイトの闘志に火をつけたようだ。
元々不本意で死神になったのだから、死神に牙を剥くのは当然である。
「だったら相手してやる。ただし俺、強いぜ」
「関係ねぇ。開放バッジがあるからなっ!」
「開放バッジ!? なんだソレ!?」
「……!?」
死神の胸には、あの赤い髑髏のバッジがつけられていた。
そのバッジは、ネクには見覚えがあるようだ。
「これがあれば俺の力は何倍にもハネ上がる。覚悟しやがれ! ビトウダイ……」
「だぁああ!!」
死神はそう言って、ビイトに宣戦布告するが、そこでビイトが慌てて止めようとする。
どうやらビイトは本名を言われたくないらしい。
まあ、読者には既に分かっているので、基本的に問題はないが……。
「そんなの関係ねぇ! 何があっても俺は勝つ!!」
「……何があったんだ?」
「とにかく、ぶっ潰すぞ!!」
「……分かった」
ネクはビイトの“名誉”のためにも、死神を追い払おうとした。
「なっ、バカな……。バッジが……き……きかない!?」
ネクとビイト、二人がかりとはいえ、
赤い髑髏のバッジを身に着けたのに戦闘不能に追い込まれた死神は驚く。
「けっ! 口ほどにもねぇ。もともと弱すぎるだけじゃねーのか?」
ビイトは服が汚れたのか、大雑把に服を手で払う。
「さすがだ……ビトウ……ダイ……」
「だぁぁぁあ!! 言うな!!」
ビイトはよほど本名を言われたくないようだ。
確かに、ビイトの本名は長いので、言いにくいのも無理はないが、これは彼本人の問題だろう。
「ビトウダイ? ……ってなんだ?」
「き、気にすんな」
死神が去った後、彼が言い残した言葉をネクはつい気になってしまった。
ビイトは、自身の本名を感づかれると困るので、首を横に振ってネクの追求を止めた。
「それより、メンドクセーことになったな」
「エマージェンシーコール……死神が常時襲ってくるってことか……」
ビイトは自分が死神を離反した事で、他の死神から狙われるようになって困った。
エマージェンシーコール、つまりネクとビイトは指名手配されてしまったのだ。
しかも、ミッションとしてゲームマスターを捕まえなければならない。
「だぁぁぁあ!! くそっ!!」
この妨害に対し、ビイトは拳を握り締めて悔しそうに叫び上げた。
「ただでさえ色々やんなきゃなんねえ時になんでこんなメンドクセーことになったんだ?」
「……おまえが死神を裏切ったからだろ?」
「……」
ビイトが死神を離反し、参加者になれば、死神から狙われるのは当然である。
あまり頭が良くないビイトは、しばらくの間、その事実に気づけずに固まった。
「だあぁぁぁあ!! 俺のせいか!!」
「気づけよな……」
「……ま、まあ、大丈夫だ。安心しろ。襲ってきた死神をかたっぱしからぶっ飛ばす。
それで全部OKだ。な、だろ?」
「……まぁ、そういうことだな」
ビイトは良くも悪くも単純なので、そういう結論になった。
「よし! それじゃ鉄仮面を捜すぞ!」
そう言って、ビイトはコニシを捜しに向かった。
その後、ネクはビイトの背中を見ながら、コニシの考えをじっくりと推理する。
(そういえば……あのゲームマスター、俺達に手出しできるのに、なんで襲ってこなかったんだ?
どうしてこんな回りくどいミッションをさせるんだ?)
もしかしたら、コニシは大きな計画を練っているのかもしれない。
死神をけしかけているのは、きっと彼女の時間稼ぎかもしれない。
「おい! 早く行くぞ!」
「ああ」
そんなネクを見たビイトは、ぼんやりしていると勘違いして、
スケボーに乗ってコニシを追いかけた。