すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
狩谷と八代は赤い髑髏のバッジを見つめ、その力について議論する。
一方、ネクとビイトは虚西を追い詰めようとするが、ビイトは賞金首になってしまった。
ネク達は虚西を追い詰めるために104ビルに向かうが、道玄坂には彼女の姿はなかった。
ビイトは死神を離反した事で他の死神から狙われ、ネクとビイトは指名手配されてしまう。
それでも彼らは、虚西を追い詰める決意を固めるのだった。
場面は死神側に映る。
カリヤとヤシロは、コニシから指示を受けていた。
「では狩谷さん、八代さん、頼みますよ」
「はいっ☆ お任せください! ゲームマスターからの特命なんて光栄です!!」
「……」
やる気満々のヤシロだが、カリヤは複雑な表情をしていた。
コニシは眼鏡を上げて、彼女に静かにこう伝えた。
「八代さん、あなたは総合ポイントにおいて幹部クラスにも引けを取らない優秀な死神です。
感情のコントロールにさえ気をつければ、成功は確実でしょう」
「はいっ☆ アドバイスありがとうございます」
「結果が出せれば昇進は間違いありません。北虹様には私から進言しておきましょう。
期待していますよ」
「ご期待にそえるよう、全力をつくします☆」
最後の言葉にはあまり感情がこもっていない事を、ヤシロは気づいていなかった。
「そして狩谷さん、あなたは本来……」
幹部クラスだ、とコニシは言おうとしたのだろう。
だがカリヤは首を横に振って、コニシの方に向き直った。
「……で、虚西さんはどちらへ逃げられるノデ?」
「逃げる? 狩谷さん、その認識は誤りです。訂正してください。
攻めるのです、絶対に見つからない場所から」
コニシは逃げるのではなく、安全地帯から攻撃するらしい。
ある意味でゲームマスターらしいと言えるだろう。
「あっ! あれは!?」
道玄坂からA-EASTに行こうとしたネクとビイトを待ち受けていたのは、
ゲームマスターのコニシだった。
「鉄仮面! 待ちやがれ!」
彼女を捕まえればミッションクリアとなるため、ビイトは彼女を追いかけようとするが……。
「っつう! 壁かっ! キーバッジ……キーバッジ……あった!」
案の定、壁によってこれ以上先に進めなかった。
ビイトはキーバッジを取り出して壁を解放する。
「よし! いくぞ!」
キーバッジで壁を解放した後、ネクとビイトは逃げるコニシを追いかける。
だが、その先にもビイトを狙う死神はいた。
「待てよ、賞金首」
「くっ……死神か」
彼らはネクとビイトを足止めするつもりらしい。
こんなところで手間取っては、コニシを捕まえる事はできない。
「うざってぇ! さっさとかかってこい!」
早めに死神を倒して、コニシを捕まえる。
ビイトの中には、その考えしかなかった。
「おらっ!」
ビイトはスケボーに乗ってノイズの攻撃をかわしながら体当たりする。
ネクは雷を落とすサイキックで、ビイトが攻撃したノイズを倒す。
「この一撃……ちょっと痛いな」
続けてビイトはスケボーで上昇し、ネクは死神の攻撃を食らいながらも反撃する。
「おらぁ、食らえ!」
もう一体のノイズを倒した後、ビイトは死神に突っ込んでいき体当たりで死神を吹き飛ばした。
死神は勢いよく地面に叩きつけられ戦意を失った。
「くっ、ここは撤退だ!」
戦闘不能になった死神は、すぐにその場を去った。
「ったく……次から次へと襲ってきやがって。さっさと行くぞ」
ビイトは死神がいた方を見て悪態をつく。
その様子を見たネクは、エントリー料になったあのノイズのためにも、
彼と共にミッションをクリアしなければ、と思った。
「待ちやがれ、鉄仮面!」
A-EAST前にもコニシはいて、彼女は涼しい顔でどこかに向かおうとしていた。
「あっちはA-EASTの……」
「あの建物の中に逃げこみやがったな」
A-EASTの建物といえば、以前に停電になった事がある場所だ。
「よし! チャンスだ、ヘッドフォン。鉄仮面をぶっ倒すぞ!」
建物の中に隠れているならば、彼女はきっとそこから動かないに違いない。
そう思ったビイトは、建物の中に入ろうとした。
「おう! おまえ達」
そんな彼らの後ろから声をかけたのは777だった。
「ちょうどいい、ちょっといいか」
「あっ……アンタは……」
「なんだぁ? こっちは今、急いでんだ」
「悪いけどアンタにかまってるヒマはない」
時間はまだあるとはいえ、ぐずぐずしているとコニシを取り逃がしてしまう。
なるべく777の要求はすぐに終わらせたかった。
ネクとビイトの話を聞いた777は、どこか不機嫌そうな表情をしながら言った。
「それじゃ、しょうがねーな……ってわけにはいかねーんだ」
「なにっ!?」
「今日はマジでラッキーだぜ。賞金首の方から現れてくれるとはな」
そう、777もれっきとした死神だ。
エマージェンシーコールの対象となっていて、ビイトを消そうとしているのだ。
「アンタ……」
「フン。おめぇみたいなチャラい死神なんざ、ソッコーぶっつぶしてやるぜ」
自分から襲ってくるなら、遠慮はいらない。
ビイトは777を倒そうとしていたが、777は両手を広げて笑いながら言った。
「は~ん、それは無理だと思うぜ? なんせ、今日の俺はツキまくりだ。
今夜のライヴは初めてチケットがソールドアウトしたんだ。ソールドアウトだぞ、すげーだろ」
要するに、チケットが全て売れたという事になる。
バンドのボーカルである彼にとっては、とてつもない幸運と言えるだろう。
「ああ、そうかい。だったらライヴの準備でもしてろよ。俺らの邪魔すんな」
当然、そんな事はビイトにとってどうでもいい。
彼はコニシを捕まえるのが目的だからだ。
しかし、777は仁王立ちするように、ネクとビイトの前に立ち塞がる。
「そうはいかねぇな。おまえが何をして賞金首になってるか知らねーが、
エマージェンシーコールが出されるほどのおたずね者だ。
俺はUGとRGの2重生活が気に入ってるんだ。UGの平和は守らせてもらうぜ」
「俺が悪人かよ……」
「俺にとってはな」
確かに死神にとってビイトは悪人だろう。
ビイトが事情を抱えているとはいえ、死神を離反した事に変わりないのだから。
「さあ、覚悟しろ! ビトウダイスケノジョウ!」
「だぁぁぁ!!」
――ようやく、ビイトの本名も、ネクとビイトに判明した。
しつこいようだが、こんなに長い本名を言われたがらなかったのは、彼本人の問題である。
「ビ……ダ……!? なんだソレ。何かの呪文か?」
「だまれ!! その名前は言うな!!」
「名前? もしかして……」
「……俺の……名前だ……」
「まじでか?」
「ダセーからビイトって呼べ!!」
本名を言われてしまったため、ビイトはどもりながらもネクに説明する。
長いため本人はなかなか言いたがらなかったのだ。
「いくぞ! ダイスケノジョウ!」
「だぁぁぁぁ!! くっそ、許さねぇぞ!! ネク、こいつをぶん殴ってやれ!!」
本名を言われて腹が立ったビイトは、ネクに777を懲らしめるように言った。
頭に?マークを浮かべるネクだったが、ビイトに言われたからにはやるしかなかった。
「ちょこまかと動きやがって!」
ビイトは蝙蝠型ノイズに攻撃が当たらず、イライラしている。
ネクは精神を集中して雷を発生させ、蝙蝠型ノイズを雷の玉で打ち据えた。
「動き回る相手には、これが効果的だ」
ネクは石を落とすバッジを使い、蝙蝠型ノイズが固まったところに落とす。
攻撃を食らった蝙蝠型ノイズはすぐに消滅した。
「く……っ、苦しい」
「ヘッドフォン、援護するぞ!」
777は闇の力でネクを攻撃し、ビイトは彼に追いつこうとする。
回復しようにも邪魔されてしまい、サイキック攻撃もかわされる。
そんなネクを援護するべく、ビイトはスケボーで777を打ち上げる。
「今だ、ヘッドフォン!」
「ああ!」
ネクは吹き飛んだ777をさらに吹き飛ばし、777を地面に叩きつけて戦闘不能にした。
「くっ……強い……」
「フン、これにこりたらビイトって呼べよ」
ビイトは自分の問題からか、本名を言いたがらなかったらしい。
長い本名なので、言いにくいのは当然だが。
「時間くっちまったな。よし! 次行くぞ」
「おい……ちょっと待て。トドメを……早くトドメを……さしやがれ」
立ち去ろうとするビイトに、瀕死の777が手を伸ばしてビイトに告げる。
だがビイトは、777の手を払った。
「別におめぇと戦う理由なんてもうねぇぞ!
俺はUGを壊す気もねぇし、それに……今日、ライヴなんだろ?」
「ファンやスタッフがアンタを待ってるんじゃないのか?」
せっかくチケットが全て売れたライヴだ、大成功する事は間違いないだろう。
ネクとビイトは、777を応援したかったのだ。
「……」
自分達には戦う理由なんてもうない、むしろ同志ではないかと思った。
このまま上手くいけば、参加者と死神で、友情が結ばれるかもしれない。
「フフフ……今日は本当にツイてるぜ」
そう思うと、777は笑みを浮かべずにはいられなかった。
こうしてぶつかったおかげで、お互いに言いたい事を言えたのだから。
「ありがとよ、ヘッドフォン……それと、ダイスケノジョウ」
「だぁぁぁぁぁ!! てめぇ!! またボコされてぇのか!?」
「おい、落ち着け」
また本名を言ったのか、とビイトは怒るが、ネクはビイトの拳に手を置いた。
「ダイス……いや、ビイト。コレ持ってけ」
「これは……」
そう言って、777は白いキーバッジをビイトに渡した。
「俺のキーバッジだ」
「いいのか?」
「借りは作りたくないタイプでね」
「分かった、ありがたくもらっとくぜ!」
777からのプレゼントは、大切に持っておこう。
これは、彼との友情の証なのだから。
「よし! 行くぞ、ヘッドフォン」
「ああ、この中からまだ出てないはずだ」
コニシは間違いなくこの建物の中にいる。
ネクとビイトは彼女を捜そうとしていて、事情を知らない777は?マークを浮かべる。
「ん? 何の話だ?」
「鉄仮面だよ!」
ネクとビイトは777に事情を話した。
ゲームマスターのコニシがこの建物の中に入っているのを目撃して、
彼女を捕まえるのがミッションである事を。
だが、777は首を横に振った。
この中には誰もいないはずで、777はここにずっといたが誰も見なかったという。
ならば、彼女は一体どこに隠れているのだろうか。
777は嘘をついているようには見えないが……。
「お~い、誰かいるのか? お~い……」
777は建物の中の誰かに呼びかけている。
確かに777の背中には翼が生えていて、彼が死神である事は一目瞭然だった。
「ほら、やっぱり誰もいな……ぐはっ!!」
その時、777の断末魔が聞こえてきた。
「な、なんだ!?」
「おい! 行くぞ、ヘッドフォン」
777に何かが起こったのは間違いないため、ネクとビイトは急いで声のした方に向かった。
「待てよ、賞金首」
だが、そんなネクとビイトに死神が立ち塞がる。
「くっ……死神か」
「うざってぇ! さっさとかかってこい!」
早く倒して、777を見つけなければ、と思った。
「ったく……次から次へと襲ってきやがって。さっさと行くぞ」
死神を撃退したネクとビイトは777を捜しに、急いで建物の奥へ向かっていった。
そこに罠が待ち受けている事は、ネクもビイトもまだ知らなかった。