すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ネクとビイトはライヴステージに向かい、何者かに襲われた777を探す。
しかし、777のチョーカーが見つかり、彼が消滅した事を知る。
二人は彼を消した虚西を探し、ノイズと戦うが、彼女の姿はどこにもなかった。


56 死神あそび

 最後の死神のゲームは三日目を迎える。

 ネクとビイトは、再びスクランブル交差点にいた。

 A-EASTにいたはずだったが、既に時間を過ぎてしまったようだ。

 

「早くA-EASTに戻るぞ!」

「待て!」

 A-EASTに戻ろうとするビイトをネクが止める。

「なんでだよ! 鉄仮面はあそこにいるんだろ?」

 ビイトの言葉にネクは首を横に振った。

 あのゲームマスターの性格からして、既に別の場所に行っている可能性が高いからだ。

「たしかにあそこにはいたと思う。けど、あれだけ捜しても見つからなかった」

「たしかにA-EASTはすみずみまで捜したけどよ」

「あそこにゲームマスターが確実にいた証拠もない」

「でも、笑い声がしただろ!」

「アイツが仕組んだトラップの可能性もある」

 今回のゲームマスターは前回の男二人を遥かに上回る狡猾な頭脳の持ち主だ。

 ネクとビイトを嵌めて、二人が消えるのを望んでいるのかもしれない。

 それならば、別の場所にいる事は確実だろう。

「だから、今日はまだ捜してないエリアを捜そう。

 あの死神からもらったキーバッジがあるだろ。これで地道に捜していくしかない」

 ゲームマスターはA-EAST以外の場所にいる。

 証拠を集めてゲームマスターを見つけるのが、ネクの考えであり、作戦だ。

「わ、分かった」

 ビイトは正直言って頭は良くない。

 だが、闇雲に探して時間切れになるよりは、時間はかかるが慎重に探すのが確実だ。

「だけどよ、もう3日目だ。俺だって時間がねえんだぞ。あぁ、どうすりゃいいんだ!!」

 ビイトは無い知恵を振り絞るように頭を抱える。

「あぁ、イライラする! スパッと片づける方法はないのかよ……」

「あるわよ☆」

 それならなんと都合がいいのだろうか。

 ネクとビイトはうなだれるが、その時、彼らの背後から少女の声が聞こえてきた。

「誰だっ!?」

「相変わらず元気そうね、新人クン……って今は裏切り者だったわね」

 声の主は、下っ端死神の八代卯月だった。

「なんだ、ピンク頭か」

「何よ! ピンクが何か悪いっての?」

 読者には彼女の髪の色が赤紫に見えるだろうが、今はとりあえずピンクという事にしておこう。

「俺らを倒しにきたってのか? だったらさっさとかかってこいよ! こっちは急いでんだ」

「あっそう」

 ビイトの挑発に対し、ヤシロはすぐに立ち去った。

 彼女の行動に、ネクとビイトは首を傾げる。

「コレなーんだ」

 しばらくするとヤシロは戻ってきて何かを見せる。

 それは、ネズミが描かれた黒いバッジだった。

 彼女は油断したビイトからバッジを盗んだのだ。

「それは!!」

「ゲームマスターから引きついだのよ。今日はあたしがゲームマスター代行なの☆」

「さっさと返せ! コノヤロー!!」

 ビイトはヤシロからバッジを取り返そうとするが、

 ヤシロはひょいひょいとビイトを翻弄するように手を動かす。

「ストーップ!! このバッジはエントリー料でしょ。ゲームに勝たなきゃ返さないわ」

「だぁぁぁ、そうだった! くっそ!!」

「でもスペシャルチャンスよ。あたしのミッションをクリアしたらこのバッジ、返してあげる☆」

「まじかよ!?」

「当然よ、ゲームマスター代行だもの☆」

 軽い言動の彼女を疑うビイト。

 とはいえ、ゲームマスター代行になるという事は彼女の実力もそれなりに高いという事だろう。

「そんなこと言ってまたダマす気じゃないだろうな」

「え? なに? 信用してないの? じゃあ、このバッジ……このままぶっ壊しちゃお~」

「ま、待て待て、や、やめろ!!」

 そう言ってヤシロはバッジを破壊しようとする。

「うふふ、信じる気になったようね。じゃあ、ミッション出題よ」

「……」

「ミッションは『死神あそび』の04」

「ヘックション! ヘックション!」

 こんなタイミングでくしゃみをするビイトに、ネクとヤシロは頭に?マークを浮かべていた。

「制限時間は60分、失敗したら……って、

 あたしは正式な代行じゃないからミッションに失敗してもアンタらは消滅はしないわ」

 あくまで、消滅しないのはネクとビイトだけ。

 もし、ヤシロの出したミッションに失敗したら、ビイトのバッジは消えてしまうのだ。

「へっ! なら、余計楽勝だぜ」

「でもミッションに失敗しちゃったら、このバッジが消滅ね」

 だがビイトは、それに気づかずヤシロを挑発し、ヤシロがビイトにツッコミを入れた。

「くそっ! ふざけんな!」

「なんとでも言えば? じゃあ、ミッションスタート☆」

 そう言って、ヤシロはネク達の前から姿を消した。

 念のために言っておくが、ヤシロは決して嘘はついていない。

 

「くそっ、ピンク頭! まちやがれ!」

「いや、むしろラッキーだ。あてもなくゲームマスターを捜すよりはいい」

「そ、そうだな……」

 まだ情報が集まっていない以上、ゲームマスターを捜す事はできない。

 なので、まずはヤシロの死神あそびに付き合うしかない。

「バッジさえ取り返せれば鉄仮面にゃ用はねぇ。

 よし! さっさとピンク頭のミッションを片づけるぞ」

 果たして、ヤシロが出した『死神あそび』04は、何の事を指しているのだろうか。

 それを知るため、ネクとビイトは、ヤシロを追いかけた。

 

「……おい、ところで……今日のミッションは何をするんだ?」

 ヤシロとの会話の途中でビイトがくしゃみしたため何をすればいいのかネクは分からなかった。

 『死神あそび』というので何らかの遊びらしい。

「は? おめぇ、ちゃんと聞いてなかったのかよ」

「……おまえのでかいクシャミで聞き取れなかったんだ」

「ったく……しょうがねぇな。今日のミッションは……」

 ビイトはネクにミッションの内容を伝えようとしたが、彼もまた内容を忘れてしまったようだ。

「まさか……おまえも聞き逃したんじゃ……」

「だ、大丈夫だヘッドフォン!」

 そんな事をネクに指摘されたビイトは、慌てて首を横に振った。

「『死神ごっこ』の04だろ」

「『死神あそび』だ」

「えっとぉ~、たしか……01が『ロシアンルーレット』で……02が『かくれんぼ』、04は……」

「う~ん……どうすればいいんだ……」

 『死神あそび』の04の内容を思い出そうとするビイト。

 すると、ネクの背後から、声が聞こえてきた。

「やっぱり、こんな時は『死神さん』で……」

 ネクが死神さんで助けた、あのサラリーマンだ。

「そうだ! 『死神さん』だ!」

「……おまえ……それ、思いつきじゃないだろうな」

 ネクは明らかに違うだろ、と思って首を振った。

「お、俺は元死神だぜ! だ、だから大丈夫だ!」

 繰り返すが、ビイトはあまり頭が良くない。

 そのため、大きなくしゃみをして、死神あそびの04を度忘れしてしまった。

「じゃあ『死神あそび』の『死神さん』って、何をすればいいんだ?」

「な、名前のとおり、死神になって……RGのヤツと……交信するんだよ」

「……本当か?」

 そもそも『死神さん』というのは、こっくりさんのようなものだ。

 ヤシロがそんな事をミッションにするのはあり得ない、とはネクの談だ。

「お、俺は元死神だぜ! だ、だから大丈夫だ!」

 ビイトはまた同じ事を言った。

 やれやれ、とネクは溜息をつくが、覚えていないのはこちらも同じだ。

「よし! ヘッドフォン、『死神さん』をやりそうなヤツを見つけるぞ!」

「さっき通ったあのおっさんを当たってみるか……」

 

 『死神あそび』04は、『死神さん』ではない事は読者にだって一目瞭然だろう。

 しかし、ネクもビイトも、『死神あそび』04が何なのかは分からない。

 ここは少し二人の様子を見てみるのはどうだろう。

 

 サラリーマンは『死神さん』に必要な紙と10円玉を持っている。

「『死神さん』か……。これを知ってから、何もかもこれで決めるようになってしまった……。

 『死神さん』のおかげで事業に成功した。『死神さん』に聞けば正しい道に導いてくれる……。

 でも……私はこのままでいいのだろうか……」

 もしかすると、自分は『死神さん』に依存しているだけかもしれない。

 自分の意志を持たず、何でも『死神さん』にやらせている。

 それは、『死神さん』に操られているだけではないのか、とサラリーマンと思っていた。

 

「なんだぁ? 『死神さん』やんねぇのか?」

「……意外だな」

 ネクとビイトはそんな彼の事情を知らず、『死神さん』をしない事に困惑している。

 

「私は『死神さん』をやめるべきか否か……。……そうだ! こんな時こそ『死神さん』で……」

 『死神さん』をやめるために『死神さん』をする。

 それは、はっきり言って本末転倒だった。

 

「おおっ! いいぞ、おっさん」

「……」

 これに気付いているのは、ネクだけだった。

 

「死神さん……死神さんって、いかんいかん! 『死神さん』はもう、やめるんだった……」

 そう言って、サラリーマンはどこかに去った。

 

「くそっ、じれったいな、このおっさん。さっさと『死神さん』やっちまえよ」

 イライラするビイトを制止するように、ネクはビイトの前に立った。

「……なあ、今日のミッションは本当に……」

「だ、大丈夫だ。『死神あそび』04は『死神さん』だ。俺は元死神だぜ!」

「……」

 どう考えても違うだろ、とネクは首を振った。

「俺を信じろ、ヘッドフォン! よし! あのおっさんに……あれ? おっさんは?」

 ビイトはサラリーマンが去った事に気づかなかったようだ。

「ふぅ……」

「やべぇ! 見失っちまう。行くぞ! ヘッドフォン!」

 そう言って、ビイトはサラリーマンを追いかけた。

 

(パートナーを信頼しろ……か)

 いつでも猪突猛進のビイトだが、死神のゲームで生き残るためにはパートナーを信頼する事。

 ビイトに呆れつつも、ネクは彼を信じるのだった。

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