すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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新たな仲間とここで出会います。


6 ビイトとライム

 忠犬ハチ公像の呪いを解くため、ネクは渋谷駅に行った。

「ちょっと待ってよ、ネク!」

 ネクに置いてけぼりにされたシキは、急いでネクと合流した。

「置いていかないでよ! パートナーでしょ!」

「……」

「……見つけたぞ」

 ネクはそんなもの知るか、とでもいうような表情をする。

 すると、後ろから男の声が聞こえてきた。

「えっ! だ、誰!?」

 シキが振り向くと、そこには、白い髑髏が描かれた黒い帽子を被った、

 金髪に青い瞳の筋肉質な少年がいた。

「昨日はよくもやってくれたな! 今すぐここでぶっツブしてやる!!」

「ちょっと、なんの話!? キミと会うの、初めてなんだけど! ネク……まさか知り合い?」

「知るか、こんなヤツ」

 少年は二人と初対面であるにも関わらず、二人に対し敵意を向けていた。

 シキは、急いでネクに話を振るが、当然ながらネクも少年を知らなかった。

「そうかい……でも、おめぇらの仲間には会ったことあるぜ」

「仲間!? なんのこと!?」

「うっせー! だまれ!! もうだまされねーぞ!

 おめぇらはスキャンできねぇ! ヤツらの仲間ってのはお見通しなんだよ」

 少年は拳を振るいながら、ネクとシキに襲い掛かろうとする。

 どうやら少年はネクとシキを敵だと思い込んでいるようで、今すぐここで倒そうとしていた。

「ちょっ! やめ……」

 少年の拳がシキに届こうとした、その時。

 

「やめて、ビイト!!」

 ビイト、と呼ばれた少年の背後から、誰かの声が聞こえてきた。

「この人達は違うよ! ボク達と同じ参加者だよ!」

 ビイトを止めたのは、彼と同じく金髪に青い瞳の、中性的な容姿をした少女だった。

 帽子はビイトと同じマークがついており、橙色の服には黒い髑髏が描かれている。

「何?」

「ほら、彼らも参加者バッジ持ってるでしょ? 参加者同士は心が読めないみたいだよ。

 ビイトもボクをスキャンできないでしょ? それと同じだよ」

 少女はビイトに、ネクとシキが持っていた参加者バッジを見せる。

 死神のゲームに参加する者は、公平性のためお互いにスキャンができない。

 それについてを、少女はビイトに教えたのだ。

「……。あ……早とちりしちまった……わりぃ……」

「いいよいいよ、ちょっとびっくりしたけど」

 ビイトは、殴りかかろうとした事をシキに謝る。

「昨日、ピンク頭のねーちゃんにハメられてな。104に行けなかったんだよ。

 おまけにノイズまで仕掛けられてな、ひでぇ目にあったぜ」

 ビイトはこれまでの事情をシキに話す。

 彼もネクとシキと同じミッションを受けたようだが死神の妨害で達成できなかったらしい。

「そっか~、それで仕返しのために捜してたってわけね」

「そう……ってまだ名前、言ってなかったよな。俺はビイト、んで、こっちが……。

 ……相棒の、ライム」

 ビイトは自身の名とパートナーの名を名乗る。

 彼の本名は「尾藤(びとう)大輔之丞(だいすけのじょう)」というのだが、本人はそれを嫌っているのだ。

 ちなみにライムを呼ぶ時、ビイトは言葉が詰まっていたのだが、

 それを気にする者は誰もいなかった。

「初めまして……」

「私はシキ。で、彼が私のパートナー、ネクよ。よろしくね」

 シキは言葉を交わさないネクの代わりに彼についてビイトとライムに話した。

 一方ネクは、後ろを向いたまま何も言わなかった。

 

「あのヘッドフォン……どうかしてんのか? やっぱ怒ってんのか?」

「気にしないで。キミ達のせいじゃないと思うから……」

「そうだ! ワビがわりに良いこと教えてやるよ! おめぇら、ケータイ使いこなしてるか?」

「ケータイって、自分のケータイのこと?

 電話もかけられなくなってるし……メールも出せないみたいだから、

 ミッションメールを確認する時ぐらいしか使ってないけど……それ以外の使い方があるの?」

 携帯電話はシブヤに来た時から、通信機能が失われてしまっている。

 交流手段といえば、死神がミッションをメールで通達する時くらいだ。

「色々いじってみた時に見つけた機能なんだけど」

「っておめぇら……本当に知らないのか? それじゃ、この先困るぜ?」

「う~ん……そうかも……」

「よし! 分からないことは俺達に聞けよ。この際だから教えてやるよ!」

 

 ビイトとライムは、シキに情報を話した。

 携帯電話を使えばバッジを組み替える事ができる。

 ピンク頭のねーちゃんとは、死神の一員である事。

 ミッションをクリアできなくても、タイマーが消えれば存在は消えなくなる事。

 通れる壁と通れない壁が、シブヤにある事。

 これらについてを、ビイトとライムが分かる範囲でシキに話したのだ。

 

「ありがとう、イロイロ聞かせてくれて」

「ふふふ……よかった。ボクこういうの得意なんだ」

「でもよ、この先何が起きるか分からねぇってライムが心配してんだ。

 だから俺ら、協力しねぇか?」

「『三人寄れば文殊の知恵』って言うでしょ? 四人なら、きっと効率いいと思うんだ」

 ビイトとライムはシキに協力を要請する。

 確かにパートナー同士ならノイズに襲われる事はないし、

 サイキックさえあればノイズと戦う事もできる。

 だが、死神のゲームは理不尽な要素も多い。

 そのため、ビイトとライムは共に戦ってミッションを達成しようと呼びかけたのだ。

「それいいじゃん! 協力するする!! その方が楽しそう! ねっ! ネク?」

 もちろん、シキは引き受けたが……。

 

「……勝手にしろ、俺は一人でやる」

 ネクからの返答は、これだった。

 やはり、ネクは他人との協力を拒絶した。

 全く変わっていない。

「え……? ちょっ……ネク! どうして?」

「これ以上うるさくされるのたまらないんだよ。

 信用できない他人にいちいち干渉されるのはもうゴメンだ」

 ネクのヘッドフォンは、雑音を遮断するものだ。

 彼は、シキ、ビイト、ライムの会話を「雑音」と思っていたから、拒否したのだ。

「ネク!! どうしてそんなこと言うの?」

(そんなの知るか。なんで俺はこんなにイライラするんだ?)

 ずっと他人を拒むネクに対し、シキは怒る。

 ネク本人も、苛立ちを理解できなかった。

「私達は……」

「参加者と死神はスキャンできない。おまえ達が死神じゃない証拠は無い」

「だって、参加者バッジが……」

「バッジだけで信用できない」

 ずっとこのやり取りが続いていた。

 ネクを信頼しているシキと他人を信頼しないネク。

 まるで、口喧嘩をしている「きょうだい」のようだった。

 

「おい! ヘッドフォン!! なんだよ……その言い方!!

 人がせっかく気ィ使ってやったのによ!」

「怒らないで、ビイト……」

 シキを突っぱねるネクに、ビイトは我慢ならなかった。

 そんなビイトを、ライムが優しく宥めている。

「ネク君の言うこと、分からなくもないよ……。それに、ボクがおせっかいしただけだから……」

「ライム……。むむむ……あったまきたっ! おめぇらなんか、こっちからお断りだ!!」

 乱暴な口調のビイトだが、その実、とても情に厚い性格だ。

 こんなやり取りをしているネクとシキに、ビイトは呆れてしまったのだ。

「行くぞ、ライム」

「ゴメン!! あっ! 待って!」

 呆れたビイトは、ライムと共に去っていった。

 

「……行っちゃった……。もうっ! 今のはネクが悪いよ!

 みんなで一緒にいた方が絶対良いのに!」

「だったらアイツらと行けばいいだろ?」

「どうしてそんなこと言えるの!? パートナー同士じゃない……」

 ネクの態度は全く変わっていなかった。

 世界は自分一人で十分、自分だけがその全て、他人の価値観は無意味……それがネクの全てだ。

 たとえ、相手が「パートナー」であっても。

「私、ネクが分からないよ! ネクが何を考えているのか知りたい!」

「じゃあ俺をスキャンしてみればいいだろ」

「そんなのムリって知ってるでしょ!? それに……そんなことしなくても、直接話せば……」

「話す必要なんてない。俺は誰かと分かり合えることなんて、一生できない。

 他人は必要ない、足手まといだ。俺は考えどおりに進んでいくだけだ」

 それは、ネクがシブヤで目覚めた時の考えと同じ。

 他人と分かり合いたくない、前が見えないからどいてほしい、耳障りだから消えてほしい。

 ――今の彼は、そんな精神状態だった。

 

「ちょっと! ネク! もう……どうすればいいの……教えてよ……」

 人は変わらなければ前には進めない。

 ネクはそれを本当に理解しているのか、シキには、分からなかった。




次回は渋谷の看板ものを調べに行きます。
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