すばらしきこのせかい Shibuya Survival 作:アヤ・ノア
ネクとシキは忠犬ハチ公像の呪いを解くために渋谷駅に行く。
そこで二人は、ビイトとライムという少年少女に出会った。
ビイトはネクとシキを敵と誤解するが彼らが同じゲームの参加者である事を知ると攻撃をやめる。
ビイトとライムは協力を提案するがネクはこれを拒否、一人で行動する事を選ぶのだった。
落ち込んでいる人、モヤイ像、宝くじ売り場、行き交う人々、ポスターが張られた壁。
そんな渋谷駅を歩きながら、ネクとシキが忠犬ハチ公像を探していくと、
赤いパーカーの男とまた出会った。
(また赤いヤツ……。だとしたら、きっとこの先に……)
「イタっ! ここにも壁がある……」
先に進もうとすると、見えない壁に阻まれる。
情報通りだとしたら、ここも何らかの条件を満たせば消えるはずだ。
(やっぱりな……)
「壁があるってことは……またノイズを倒せばいいんだよね?」
(コイツ……気づいてないのか、話にならないな)
「ってネク! どこ行くの!?」
渋谷駅の周辺にノイズはいない。
ネクは壁を解く方法を、赤いパーカーの男に聞きに行った。
「おい……アンタがもしかして……」
「解除条件は像の呪い解除のこと」
「アンタ……死神だよな」
バッジを使っても、スキャンができなかった。
という事は、この男は参加者か死神のどちらかのはずだ。
参加者バッジは持っていないため、恐らく後者で確定だろう。
「答える義務はない。ゲームを続けろ」
だが、男は淡々とした様子でネクに話した後、そのままどこかに去っていった。
「……ふん。聞くだけムダってことか」
壁を解除する条件は、像の呪いを解く事――死神が出したミッションと同じだ。
忠犬ハチ公像はこの先にあるはずなのに、壁に阻まれて進めなかった。
(あ、あれは……)
「ネク……」
すると、ネクは何かを発見する。
ネクがそれに近付こうとすると、彼の後ろから声が聞こえてきた。
その声の主は、シキだった。
「もうお願いだからひとりで行かないでよ」
「おい!」
「もう! 『おい』じゃないよ、シ・キ! ちゃんと名前で呼んでよね」
とうとうネクはシキを名前ですら呼ばなくなった。
二人の関係はますます険悪になっていく。
「あれも像だろ?」
ネクの目線の先には、モヤイ像があった。
シブヤには忠犬ハチ公像以外にも、もう一つ、像があったのだ。
ちなみに、モヤイ像は実在するので、気になった読者は調べてみよう。
「モアイ像? なんでこんなところにモアイがいるんだ」
「モ・ヤ・イ・像! なんでいるのかは気にしたことなかったケド……」
「あれが呪われてるのか……?」
「どうだろ? 見た目はいつもどおりだけど……」
「調べてみるか」
忠犬ハチ公像でなければ、呪われているのはモヤイ像かもしれない。
ネクがバッジを持って精神を集中すると、モヤイ像の周囲に二つの紋章――ノイズがあった。
「ノイズ!?」
「これが像の呪いか!? ……解き放て、ってことは、コイツらを全部倒せばいいのか」
蛙のノイズと狼のノイズが襲ってきた。
ネクはショックウェイヴとバレットショットのバッジを装備し、ノイズと戦う。
「全部消してやる!」
「ネク、私も戦うわ!」
シキもネクと一緒にノイズと戦った。
ネクがバレットショットで遠くからノイズを撃ち、シキが猫のぬいぐるみをノイズにぶつける。
エネルギーの弾が連続してノイズに命中し、とどめはシキが刺した。
性格的にはまだ合っていないが、連携はかなりのものだ。
「ネク、いい加減に心を開いたらいいのに……」
シキは、ネクがずっと自分から距離を取っているのにやきもきしていた。
ネクは他人との関わりを拒絶し、その象徴としてヘッドフォンをつけている。
そんな彼の気持ちを、シキは理解できなかった。
(誰かと関わりたくないんだ……)
ネクは、ノイズを黙々と倒していた。
ノイズを倒せば壁は消えるし、ミッションも達成できる。
早くミッションをクリアして、自分が何者なのかを知りたかった。
シキの気持ちなんて、知った事ではなかった。
「ノイズはあと一体だよ!」
「そこか!」
シキの声が聞こえたかどうかは分からないが、ネクが最後のノイズに向かって突進する。
ショックウェイヴ、敵を斬りつけるこのサイキックは、敵を自動的に狙う。
そのため、攻撃しようとした敵から離れたり、遠くにいる敵をすぐに攻撃したりできる。
普段はバレットショットで攻撃して、とどめをショックウェイヴで刺すというわけだ。
シキも後ろからサポートし、数分後、ネクとシキは全てのノイズを撃退した。
「よし、これでノイズはみんな倒したね!」
「条件確認」
ノイズを全て撃退すると、赤いパーカーの男が淡々と話し、去った。
「モヤイ像にノイズがとりついてたんだね。
やっぱりノイズはスキャンじゃないと分からないんだね」
赤いパーカーの男はもういない。
なので、壁が消えて、先に進めるはずだ。
「像を呪いから解き放て……。ってことは、今のノイズを倒すのがミッションだったのかな?」
「今のはただの壁解除だ。見ろ、タイマーがまだ消えてない」
「ほんとだ……タイマーが消えてない」
ネクとシキの手には「32:15」と書かれてある。
やはり、像の呪いの「像」とは、忠犬ハチ公像の事だったのだ。
「けど、壁は消えてる」
「ハチ公……だっけ? そっちの方が本命だな」
「……だっけ? あれ? ネク、もしかしてハチ公知らないの?」
「……知らない。ハチ公ってなんだ?」
「ええ!? うそ? ハチ公知らないの!? かなり有名なのに……」
ネクはシブヤで目覚めた時、名前以外の記憶を全て失っていた。
死神のゲームの事も、ハチ公の事も、もちろん、何故ここで目覚めたのかも。
その事情を知らないシキは、驚いていた。
「昨日、私とネクが会った場所にあった犬の像、あれがハチ公。
そうだ! 私も聞いていい? どうして壁を解く方法が分かったの?」
「……」
「……また考え事? まぁいいわ! さぁネク、ハチ公に行こう!」
しつこいが、ネクは記憶喪失なだけである。