すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ネクとシキは忠犬ハチ公像の呪いを解くために渋谷駅に行く。
そこで二人は、ビイトとライムという少年少女に出会った。
ビイトはネクとシキを敵と誤解するが彼らが同じゲームの参加者である事を知ると攻撃をやめる。
ビイトとライムは協力を提案するがネクはこれを拒否、一人で行動する事を選ぶのだった。


7 呪われた像

 落ち込んでいる人、モヤイ像、宝くじ売り場、行き交う人々、ポスターが張られた壁。

 そんな渋谷駅を歩きながら、ネクとシキが忠犬ハチ公像を探していくと、

 赤いパーカーの男とまた出会った。

 

(また赤いヤツ……。だとしたら、きっとこの先に……)

「イタっ! ここにも壁がある……」

 先に進もうとすると、見えない壁に阻まれる。

 情報通りだとしたら、ここも何らかの条件を満たせば消えるはずだ。

(やっぱりな……)

「壁があるってことは……またノイズを倒せばいいんだよね?」

(コイツ……気づいてないのか、話にならないな)

「ってネク! どこ行くの!?」

 渋谷駅の周辺にノイズはいない。

 ネクは壁を解く方法を、赤いパーカーの男に聞きに行った。

「おい……アンタがもしかして……」

「解除条件は像の呪い解除のこと」

「アンタ……死神だよな」

 バッジを使っても、スキャンができなかった。

 という事は、この男は参加者か死神のどちらかのはずだ。

 参加者バッジは持っていないため、恐らく後者で確定だろう。

「答える義務はない。ゲームを続けろ」

 だが、男は淡々とした様子でネクに話した後、そのままどこかに去っていった。

 

「……ふん。聞くだけムダってことか」

 壁を解除する条件は、像の呪いを解く事――死神が出したミッションと同じだ。

 忠犬ハチ公像はこの先にあるはずなのに、壁に阻まれて進めなかった。

(あ、あれは……)

「ネク……」

 すると、ネクは何かを発見する。

 ネクがそれに近付こうとすると、彼の後ろから声が聞こえてきた。

 その声の主は、シキだった。

「もうお願いだからひとりで行かないでよ」

「おい!」

「もう! 『おい』じゃないよ、シ・キ! ちゃんと名前で呼んでよね」

 とうとうネクはシキを名前ですら呼ばなくなった。

 二人の関係はますます険悪になっていく。

「あれも像だろ?」

 ネクの目線の先には、モヤイ像があった。

 シブヤには忠犬ハチ公像以外にも、もう一つ、像があったのだ。

 ちなみに、モヤイ像は実在するので、気になった読者は調べてみよう。

「モアイ像? なんでこんなところにモアイがいるんだ」

「モ・ヤ・イ・像! なんでいるのかは気にしたことなかったケド……」

「あれが呪われてるのか……?」

「どうだろ? 見た目はいつもどおりだけど……」

「調べてみるか」

 忠犬ハチ公像でなければ、呪われているのはモヤイ像かもしれない。

 ネクがバッジを持って精神を集中すると、モヤイ像の周囲に二つの紋章――ノイズがあった。

「ノイズ!?」

「これが像の呪いか!? ……解き放て、ってことは、コイツらを全部倒せばいいのか」

 

 蛙のノイズと狼のノイズが襲ってきた。

 ネクはショックウェイヴとバレットショットのバッジを装備し、ノイズと戦う。

「全部消してやる!」

「ネク、私も戦うわ!」

 シキもネクと一緒にノイズと戦った。

 ネクがバレットショットで遠くからノイズを撃ち、シキが猫のぬいぐるみをノイズにぶつける。

 エネルギーの弾が連続してノイズに命中し、とどめはシキが刺した。

 性格的にはまだ合っていないが、連携はかなりのものだ。

 

「ネク、いい加減に心を開いたらいいのに……」

 シキは、ネクがずっと自分から距離を取っているのにやきもきしていた。

 ネクは他人との関わりを拒絶し、その象徴としてヘッドフォンをつけている。

 そんな彼の気持ちを、シキは理解できなかった。

 

(誰かと関わりたくないんだ……)

 ネクは、ノイズを黙々と倒していた。

 ノイズを倒せば壁は消えるし、ミッションも達成できる。

 早くミッションをクリアして、自分が何者なのかを知りたかった。

 シキの気持ちなんて、知った事ではなかった。

 

「ノイズはあと一体だよ!」

「そこか!」

 シキの声が聞こえたかどうかは分からないが、ネクが最後のノイズに向かって突進する。

 ショックウェイヴ、敵を斬りつけるこのサイキックは、敵を自動的に狙う。

 そのため、攻撃しようとした敵から離れたり、遠くにいる敵をすぐに攻撃したりできる。

 普段はバレットショットで攻撃して、とどめをショックウェイヴで刺すというわけだ。

 シキも後ろからサポートし、数分後、ネクとシキは全てのノイズを撃退した。

 

「よし、これでノイズはみんな倒したね!」

「条件確認」

 ノイズを全て撃退すると、赤いパーカーの男が淡々と話し、去った。

「モヤイ像にノイズがとりついてたんだね。

 やっぱりノイズはスキャンじゃないと分からないんだね」

 赤いパーカーの男はもういない。

 なので、壁が消えて、先に進めるはずだ。

「像を呪いから解き放て……。ってことは、今のノイズを倒すのがミッションだったのかな?」

「今のはただの壁解除だ。見ろ、タイマーがまだ消えてない」

「ほんとだ……タイマーが消えてない」

 ネクとシキの手には「32:15」と書かれてある。

 やはり、像の呪いの「像」とは、忠犬ハチ公像の事だったのだ。

「けど、壁は消えてる」

「ハチ公……だっけ? そっちの方が本命だな」

「……だっけ? あれ? ネク、もしかしてハチ公知らないの?」

「……知らない。ハチ公ってなんだ?」

「ええ!? うそ? ハチ公知らないの!? かなり有名なのに……」

 ネクはシブヤで目覚めた時、名前以外の記憶を全て失っていた。

 死神のゲームの事も、ハチ公の事も、もちろん、何故ここで目覚めたのかも。

 その事情を知らないシキは、驚いていた。

「昨日、私とネクが会った場所にあった犬の像、あれがハチ公。

 そうだ! 私も聞いていい? どうして壁を解く方法が分かったの?」

「……」

「……また考え事? まぁいいわ! さぁネク、ハチ公に行こう!」

 しつこいが、ネクは記憶喪失なだけである。

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