すばらしきこのせかい Shibuya Survival   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ネクは裁かれしものの道を進み、自分が命を落とした場所に気づく。
羽狛早苗の絵を見つめ、彼への思いを呟くと、ネクは自分の世界を広げる決意を固めた。
そして審判の部屋に辿り着き、コンポーザーに挑むが、代わりに北虹寵が現れる。
ネク、シキ、ビイトの三人は、渋谷を一つにしようとする北虹寵を止めるべく、戦った。


71 渋谷をかけて

 死神の指揮者・北虹寵との最終決戦が始まった。

 

「この蛇の弱点は、頭みたいだな」

 ネク、シキ、ビイトは、大蛇の攻撃が届かない場所に移動する。

 シキはにゃんタンをけしかけ、大蛇になったキタニジの頭を攻撃する。

 ネクも同じく、キタニジの頭を殴って攻撃し、炎を出すサイキックで追撃した。

「おりゃ!」

 大蛇というだけあって、尻尾も攻撃できるようだ。

 ビイトは尻尾目掛けてスケボーで体当たりし、シキはにゃんタンをけしかけて尻尾を攻撃する。

 ネクはキタニジが吐いた炎をかわしつつ、頭をサイキックで攻撃した。

「尻尾は私達が攻撃するから、ネクは頭を狙って!」

「ネク、絶対にあいつを倒すんだぞ」

 シキが尻尾ににゃんタンをけしかけ、ビイトがスケボーで攻撃している間に、

 ネクは離れた位置から頭を攻撃する。

 吐く炎は攻撃が届かない位置にいれば当たらない。

 ネクは安全な場所に移動し、キタニジをサイキックで攻撃した。

 

「小賢しい真似を……。あのバッジがあれば……」

「残念だったわね。私は自分の意志で、あなたと戦うわ!」

 シキは最初にネクと共に死神のゲームに挑戦し、後にネクから大切な存在として認められた。

 そのため、シキはネクに置いて行かれないように、

 ネクやビイトと共にキタニジと戦う事を選んだ。

「シキ……だったよな? 覚えてねぇだろうが、あいつはおめぇを操った」

「そんな事が……」

 ビイトはシキがキタニジに操られた事を説明する。

 シキは戸惑って攻撃の手を緩めるが、すぐに真剣な表情でキタニジを見た。

「だったら、ますます許せないよ。手加減はしないからね!」

「それはこちらも同じだ。さて、これならどうか?」

 キタニジは口からオレンジの球を吐いた。

 ネクは、どんな攻撃なのか分からず、そのオレンジの球に触ろうとする。

「触っちゃダメ、ネク!」

「え……?」

 オレンジの球にネクが触れた瞬間、球は大きく膨れてネクを包み、宙に浮く。

 彼の目の前に、鋭い棘が生えた大蛇の顔があった。

「ど、どういう事だ……」

「終わりだ」

 そう言ってキタニジは、球ごと炎を吐いた。

ぐあああああああああ!!

 焼けつくような痛みが、ネクに襲い掛かる。

 球に包まれているというのに、身を焼かれる激痛がネクの闘志を奪っていく。

 

「「ネク!!」」

「う……ぅ……」

 大ダメージを受けたネクは、ふらつきながらも何とか立ち上がる。

 シキとビイトは大急ぎでネクを助けようとするが、キタニジが尻尾を振るって二人を薙ぎ払う。

うぁぁぁ!

きゃぁぁ!

 キタニジの攻撃を受けたシキとビイトは大きく吹き飛ばされてしまう。

 二人は何とか体勢を整え直し、それぞれの武器でキタニジの尻尾を攻撃した。

「くそっ、なんて事を……!」

 ネクは鎖を発生させるサイキックや、

 雷を発生させるサイキックでキタニジの頭と尻尾を同時に攻撃する。

「慌てんなよネク!」

「ネクは一人で戦ってないから! 私達を信じて!」

「あ……ああ」

 焦る必要はない、と二人に言われたネクは、気を引き締めてキタニジを攻撃し続けた。

 ネクは口から吐く炎をかわし、尻尾の薙ぎ払いもかわしながらシキとビイトが反撃する。

 いくら相手の身体が大きくても、攻撃が当てやすければ特に問題はなかった。

「終わりだ!」

「まだ終わらない!」

 ネクはキタニジの炎を受けながらも、必死にキタニジをサイキックで攻撃する。

 身体は既にボロボロで、後一撃を受ければ戦闘不能になるところだった。

「攻撃ばかりじゃダメだよ! たまには回復も!」

「……そうだな!」

 シキのアドバイスで、ネクは缶が描かれたバッジを使い、飲み物を飲んで体力を回復した。

 疲労はまだ取れていないが、これで十分な体力を保つ事はできた。

 後は、体力が残り少ないキタニジを倒すだけだ。

 ネクとシキは手を取り合い、同じ絵柄のカードを次々に当てていく。

 次々に正解し、二人の力は徐々に高まっていった。

 

「にゃんタン、お願い!」

「よーし、行け!」

 二人がそう言うと、にゃんタンが巨大化し、その上にネクとシキが乗る。

 巨大にゃんタンは目から紫のビームを雨のように降り注がせ、

 体力が少ないキタニジを打ち据えた。

 そして、最後に巨大なビームがキタニジに当たり、凄まじい爆発と共に轟音が発生した。

「コンポーザー……」

 最早キタニジに戦う気力はなかった。

 大蛇になっていたキタニジは、人の姿に戻った。

 

「はぁ……はぁ……何とか、倒した……」

「くっ……このままでは……。俺には……もう……時間が……」

 蛇になったキタニジを倒したネク、シキ、ビイト。

 このまま、彼は黒い光になって消滅しようとした。

 

「やぁ、久しぶり」

「お、おまえは……」

 そんな彼らの前に、少年が涼し気に声をかける。

 その少年は、ミナミモトの攻撃からネクを庇って消えたはずの、ヨシュアだった。

「そろそろタイムリミットだね」

「ヨシュア……? おまえ、生きてたのか! どうしてここに……!?」

 何故ヨシュアが生存したのか分からず、混乱しているネクをよそに、

 キタニジがゆっくりとヨシュアに手を伸ばした。

「まだだ、まだ終わってない! 俺が渋谷を守る!」

 そう言ってキタニジは、青い手裏剣のようなエネルギー弾をヨシュアに飛ばす。

 それがヨシュアに命中し、赤と青の光に拘束されたヨシュアは宙に浮く。

「ヨシュア!!」

「助けて、ネク!」

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 そして、ヨシュアはキタニジの中に取り込まれ、シキとビイトも球の中に閉じ込められる。

 必死で脱出しようとする二人も取り込み、

 キタニジの姿は赤と青の光を纏った、五つの頭を持つ黄金の龍になった。

 

「みんな……!」

 ネクは龍になったキタニジと対峙する。

 今まで感じた事のない威圧感に、ネクは震えながらも瞬時に身構える。

 龍は五つの首を全て使い、炎の息を吐いた。

 ネクは龍の攻撃をかわしつつ、雷を発生させるサイキックで龍を打ち据える。

 弾幕のように炎が飛び交う中、ネクは的確に龍の首をサイキックで攻撃した。

「まだ倒れたくない! 渋谷を救うのは俺だ!」

「それは俺も同じだ! 俺達も渋谷も背負っている。お前一人には、荷が重いんじゃないか?」

 キタニジは孤独に戦ってきたが、ネクにはたくさんの仲間や友がいる。

 彼らの想いが、ネクを奮い立たせているのだ。

 だから、ネクはキタニジとの戦いに、絶対に負けるわけにはいかなかった。

 

「みんなの思いが詰まった渋谷を、お前に渡すわけにはいかない!」

 ネクは氷を発生させるサイキックで龍を凍らせ、続いて近接サイキックで連続攻撃する。

 皆の思いを込めたネクのサイキックの威力は、以前よりも格段に上昇していた。

 すると、取り込まれたはずのシキの球が淡く光りネクの目の前に光り輝くシキとなって現れた。

「ネク、いくよ!」

「ああ、やってやる」

 訳の分からない現象だがネクはもう迷わなかった。

 ネクは光のシキと心を通わせ、彼女と共に龍を打ち据えていく。

 光のシキの光り輝くにゃんタンの爪が、龍の身体を切り裂いて大ダメージを与えた。

 

「ネクは一人じゃないよ、みんなで戦ってるんだよ」

 シキの言う通り、ネクにはたくさんの仲間がいる。

 一人では絶対に勝てない相手でも、仲間がいれば、必ず打ち勝つ事ができるのだ。

「仲間など、戯言に過ぎない!!」

 そう言って、キタニジはオレンジの球を放ち、再びネクを閉じ込めようとした。

 だが、ネクはその球をかわして、雷を発生させるサイキックで反撃した。

「同じ手はもう俺には通じない」

「くそぉっ!」

 キタニジは怒りながらも理性を保ち、五つの頭から巨大な火炎弾を放った。

 その五つの炎は、ネクに正確に狙いを定め、ネクの体力を徐々に削っていった。

 だが、ネクにも反撃の手段はあった。

「きったー!」

「発動!」

 今度は光り輝くビイトがネクのところに現れ、共に手を取り合って力を解放する。

 キタニジの身体を鎖が縛り付けるとネクと光り輝くビイトが体当たりしてキタニジを攻撃した。

「お気に召すかな?」

「当然だろ」

 次に光り輝くヨシュアがネクのところに現れる。

 キタニジの身体に隕石が降り注ぎ、大ダメージを与えた。

 

「なんという事だ……これが仲間というものか……」

 キタニジは、ネクを鋭い目で睨みつけている。

 仲間を取り込んで一人だけにしたはずなのに、

 諦める事なくキタニジに立ち向かい、あまつさえ彼を追い詰めている。

 それが、ますます彼に不快感を与えているのだ。

 しかも、インプラントが効かないため、キタニジにできる事は一つしかなかった。

「こうなれば、救済の光を浴びせるまでだ!」

 キタニジはそう言ってオレンジの球をネクに放つ。

 球に包まれたネクは閉じ込められてしまい、

 キタニジはその隙にそれぞれの頭を動かして光の剣を作り出す。

「くそっ、脱出しなきゃ……!」

 早めに脱出しなければ、あの剣に貫かれてしまう。

 ネクは自身が持っているあらゆるバッジを使って、オレンジの球を破壊しようとした。

「無駄だ。この球はちょっとやそっとじゃ壊れない。なすすべなく、救済を受けるしかないんだ」

「くそっ、渋谷がかかっているのに……!」

 ネクは只管に、オレンジの球に攻撃を当て続ける。

 その攻撃が功をなしたのかオレンジの球に徐々に罅が入り、あと少しで壊れそうになっていた。

 だが、ネクを閉じ込めたオレンジの球は、徐々に光がある場所に進んでいった。

 

ぐあああああああああああああ!!

 あと一歩というところで脱出は間に合わなかった。

 ネクはキタニジの光の剣を受け、焼けるような熱さに襲われてしまった。

 その熱が、ネクの闘志を刈り取っていき、ついにネクはその場に崩れ落ちた。

 

「ごめん……シキ……ビイト……ヨシュア……俺、渋谷を守れなかったよ……」

 薄れゆく意識の中、キタニジの高らかな笑い声が聞こえてくる。

 ネクが三人の仲間に謝罪した、その時だった。

 

「早く起きてよ、ネク! こんなところで寝てる場合じゃないでしょ!?」

「ネク! ここで終わっちまうのかよ!? おめぇはそんなタマじゃねぇだろ!?」

「君は渋谷を、世界を守りたいんでしょ? だからネク君、絶対に諦めちゃダメだ」

 シキ、ビイト、ヨシュアが、倒れているネクを必死に励ました。

 今は皆、龍のキタニジに取り込まれているが、全員、ネクがこの戦いに勝つと信じていた。

「……みんな……」

 皆がネクを信じている。

 ネクが渋谷を救ってくれると信じている。

 その想いに答えたのかそうでないのか、

 ネクの手の白いバッジが光り輝き、四つの星がバッジに浮かび上がった。

「そうだ。俺には仲間がいる。友達がいる。俺を信じてくれる、大切な人がいる。

 渋谷は……みんなで守るんだ!」

 三人の心を込めた励ましにより、

 重傷を負っていたネクの身体が淡く光り輝き、傷がみるみるうちに癒される。

 その光が消えた後、傷が完治したネクは、ゆっくりとバッジを持って立ち上がった。

 彼の手の白いバッジは、強く光り輝いている。

 

「な、何故立ち上がった!?」

 キタニジは復活したネクを見てたじろいでいる。

 ネクはそんなキタニジを、鋭い目で睨みつけた。

「お前には分からないだろうな。俺……いや、俺達が一人で戦ってない事を」

「どういう事だ。俺は、渋谷に不要なものを消して、新たな渋谷を作ろうとしているのに……」

「この渋谷は色んな人の色んな考えが飛び交う街だ。

 みんなは色んな思いを持って渋谷で過ごしている。その思いとぶつかっていきたい。だから」

 そう言って、ネクは光り輝くバッジを持って、キタニジに真っ直ぐ突っ込んでいった。

 

俺達は、お前を止める!

 不要なものなんて何一つない。気に入らないからって消しても意味はない。

 それを……ここで証明する!」

 ネクと仲間達の想いが、ネクの気を奮い立たせた。

 キタニジは抵抗するかの如く、五つの頭から無数の光の剣を飛ばす。

 ネクはそれをかわしながら、キタニジにとどめを刺そうとしていた。

 

「これが、俺達の想い……俺達が出した答えだ!」

 ネクは五つ首の黄金龍にそう叫んだ。

 シキ、ヨシュア、ビイト……今までの仲間(ともだち)の思いを込めた、

 三つと一つの光がネクの手に集まり、白い髑髏と共に放たれる。

 十字の光が五つ首の黄金龍に命中し、やがて無数の光の柱となって、龍を包み込んだ。

 

「これでミッションクリア……そうだろ?」

 ネクは、五つ首の黄金龍から人の姿に戻ろうとするキタニジにそう言った。

 今、ネクの最後のゲームが、終わろうとしていた。

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