二人は同じ血を流す。私はその間に挟まる。   作:愛宕饅頭

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12,迷子でも進め

 

「あのちゃん、えっと……ちょっと話したいことがあって……」

 

昼休み、もじもじとした様子のともりんにそう話しかけられた。

その日一日ずっとそわそわしていて、寧ろいつ切り出されるだろうかと思っていたくらいだった。

昨日、あんな話をしたばかりだ。どういう話をされるのかは大体分かってる。

 

周りに人が居る状態じゃ話し辛くないかな?と思っていたけど、天文部の部室まで案内されて納得する。

確かにここなら他に滅多に人が来ないだろう。天文部はともりんしか所属してないし。

 

「それで、話って?」

「アルの事なんだけど……」

 

まあそうなるよねー。

昨日のことを思い出す。

私とともりんは昨日電話で話をしていた。私がともりんの姉弟関係のことをもっとちゃんと知っておきたいって思ったから。

その時何気なく話題に出してしまったこと。私が歩弥君と恋人同士だという話。

そのことに、ともりんはとてもショックを受けているようだった。怒ってるとか悲しんでいるとかいうより、戸惑っている。自分の感情の置き場に困っているような、そんな様子だったと思う。

付き合い始めた経緯が経緯だけに私も話すのを避けていたけど、結果として私と歩弥君がともりんに秘密にしていたっていう形に思われてしまってるかもしれない。

昨日の夜はその話をした直ぐ後に、『気持ちを整理したい』っていうともりんの言葉を受けて電話を終えていた。

だから、今こうして改めて話をすることになるのは私も分かっていたことだった。

 

『……あのちゃんの前だと、こんな顔するんだね』

 

写真を見せた時のともりんの言葉と声をはっきりと覚えている。

あの時ともりんがどんな気持ちだったのか、私には想像することしかできない。

それでも、なんとなく分かってきたことが一つだけある。

 

多分、ともりんは歩弥君のことをただの弟としてだけじゃない感情で好きなんだと思う。

自覚してるかどうかは別として。

 

我ながら、何でこんなことになってしまったんだろうと思ってしまう。

とはいえもう、ここまで来たら腹をくくるしかない。聞かれたことにはちゃんと答えよう。

 

「あのちゃんとアルは……その、恋人同士だったんだね」

「あーうん。別に隠してたつもりは無かったんだけど……」

「ううん。恋人のことって私はよく分からないけど、あんまり人に話して回るようなことじゃないと思うから」

「あ、あはは……」

 

そよりんには、私に恋人ができたら自慢して回りそうだと思われていた。

……実際私も普通に恋人ができてたらそうしてた気がするし。

 

「あのちゃんはアルのことが好き……なんだよね」

「それはー……もちろん!」

 

それは嘘じゃない。

こんなに短期間で恋人になるレベルとは思っていなかったけど、初対面の時点でいいなーと思っていたわけだし。

 

「あのちゃんにとって……アルってどんな子?」

 

答えにくい質問来ちゃった。

 

「どんな……う、う~ん……どんな……放っておけないって感じかなー」

 

自然と思いついた答えはそれだった。

歩弥君がっていうよりは、この姉弟のことが放っておけないと思ったのがそもそもの始まりなわけだし。

 

「そっか……そうなんだ」

 

私の答えに、何故かともりんは少し嬉しそうにしていた。

 

「最初、二人が付き合ってるって話を聞いてビックリした」

「アルのことも、あのちゃんのことも大好きだから……その、どういう気持ちで居るのが正解なのか分からなかった」

「でも今は……ちょっとだけ安心してる」

 

そう言って小さく笑うともりんの表情は、私のよく知るものと同じに見えた。

けれど、その言葉には少し意外に思ってしまう。

昨日、その話をした時のともりんの動揺はそんな風に簡単に整理できるようなものじゃない気がした。もっとこう……ギスギスしてしまうのかなと考えていた私からしてみれば拍子抜けしたような気分ですらある。

 

「私はあんまり、あの子と一緒に居ちゃいけないから……あのちゃんが傍に居てあげて」

 

そう言ってほほ笑むともりんに、寂しさの面影を感じてしまうのはきっと気のせいじゃないと思う。

 

「ごめん……こういうの、えっとお節介?なのかな……」

「ううん。歩弥君はともりんにとっても大事な弟の事なんだし、気にして当然だよ!」

「ありがとう、あのちゃん。話はそれだけだから」

「う、うん……そっか」

 

気を遣われてるなってはっきりと感じ取ってしまう。

寧ろ私の方がいろいろ気を回さなきゃって思っていたのに、立場が逆だ。

昨日の様子から考えてみても、ともりんには口に出していないだけで秘めた感情があったはずだ。でも、いざこうして私と向き合ったときにそれを表には出さなかった。

多分だけどともりんは、私と歩弥君が付き合っているって言うことを伝えてなかったのは『自分に遠慮してたから』って解釈したんだと思う。

だからこそ、こんな風に割り切ったように見せている。……私にはそんな風に見えてしまう。

 

「待って、ともりん!」

「……?」

「えっと……あー……やっぱり、何でもないかも……」

 

思わず衝動的に呼び留めたけど、言うべき言葉がなにも浮かんでこなかった。

 

これ以上何を話せばいいというんだろうか?

そもそも、自分が何をしたかったのかさえ分からなくなってきた。

 

最初は、普通に友達として仲のいい姉弟が離れ離れなのは可哀そうだなって思った。

それでもせっかく知り合えたんだし、もっとこの二人のことを知って仲良くなれたらなって思って、あの日……練習終わりに『忘れ物をした』って言ったともりんの後を追いかけた。

その追いかけた先であの光景を見て、怖くて気持ち悪いって思ってしまった。

それから改めてその時の映像を見て、姉弟でそういうことをするのはよくない事だって思った。ともりんにそんなことして欲しくないと思ったんだ。

勢いのままに歩弥君に『話がある』ってメッセージを送っちゃって、それから……ふとした思い付きで付き合うことになって。

それで、回り回って今だ。

 

思えば、最初からずっとそうだった。

思い付きの行動で、自己中心的な先入観で、自分本位の正義感で、二人が隠し通そうとしていたことに一方的に踏み入ってしまった。

見て見ぬふりをするのが勝手によくない事だと思って、相手の触れて欲しくなかったものに触れてしまった。

 

今までが上手くいきすぎてたのかもしれない。

歩弥君とのことが思いがけず上手くいって、事態が好転してきただけに私は勘違いしてしまってた。

私がしていたことは、ただの自己満足だ。……いや、それは分かっていたはずなのにな。

きっと、話を聞けばすっきりすると思っていた。ちゃんと二人のことを理解できれば、問題が見えてきて、解決を手助けできるんだと思ってた。

間違ってることに間違ってると指を突き立てられれば、最後はめでたしめでたしで終わってくれると思ってた。

 

でも、実際はどうだろう?

踏み込んでみて、二人のことを知れば知るほどに……もやもやすることばかりだ。

もとから私が考えていたみたいに、このままいけばともりんは恋人の私に遠慮して歩弥君との不健全な逢瀬をしなくなりそうだ。……だというのに、素直にほっとした気持ちになれないのはなんで?

ともりんがもっと感情を露わにして、怒ったり悲しんだり、嫉妬したりしてくれれば私は満足だったんだろうか?

秘めた思いを秘めたままにして、お姉ちゃんとして友達として、きちんと心の整理をつけてきたともりんのことを誰が責められるというんだろう?

 

私って、結局何がしたいんだろ。

釈然としない思いばかりが積もり、いつの間にか自分の感情は迷子になってしまっていた。

 

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「はぁー……」

 

某ファストフードショップの一席、プラスチックのストローを口に咥えたまま大きなため息を吐く。

苛立ちで何度もストローの先を噛んでしまっており、先っぽはボロボロになっていた。

 

「……人を呼びつけておいてなんなんですか」

 

私の対面に座っているのは須能歩弥君に、ご尤もな意見を貰う。

その日は授業中もどうにも上の空で自分の考えがまとまらなくって、もやもやした一日を過ごしていた。

思い浮かぶのは、ともりんのあの寂しげな微笑ばかりだ。

 

「私って、何したいんだろって思って……」

「へー、愛音さんでも悩んだりするんですね」

「ちょっと酷くない?」

 

彼の中で私はどんな人物だと思われているんだろう。

 

「私も人並みに悩んだりするってば」

「思い付きと好奇心で年下を恫喝した人とは思えない発言ですね」

「うっ……その話、なんか寧ろ私の弱みになってきてない?」

「ただの事実です」

 

そう言われてしまっては返す言葉もない。

 

「短絡的で、行き当たりばったりで、強引で、思考より行動が先行するのが愛音さんじゃないですか」

「めっちゃ人の痛いところついてくるー……」

 

今まさにそんな自分の性格にウンザリしていたばかりだ。

 

「褒めてるんですよ」

「えー?ただの事実ですってわけじゃなくって?」

「……そういう相手の気持ちも考えずに人の腕を引っ張り回すところ、俺は別にいいと思いますけどね」

「え?」

 

項垂れていた顔をパッと前へ向ける。

対面に座る歩弥君は、私から顔を逸らすように窓の外を見て頬杖をついていた。

 

「一人くらい、そういう人が居てもいいんじゃないですか」

 

顔をそむけたまま、歩弥君はそう続けた。

まだ付き合いの短い私でも、照れてるなってすぐに分かった。

 

それは、正直かなり意外な発言だった。

私から積極的に声を掛けないと彼からは何一つアクションを起こしてくれないから、ちょっとウザがられてるかもってくらいは思っていた。

けれど、どうにもそうではないらしい。

 

「もしかして、私が思ってるより歩弥君って私への好感度高い?」

「今のでまた嫌いになりました」

「ごめんごめん、冗談だってば。私ってちょっとウザいと思われてそうだと思ってたからさー」

「まあ、それはそうですけど」

「あ、ウザいとは思われてたんだ……」

 

実際に言葉にされると流石にちょっとへこむ。

 

「そういう愛音さんだから、俺もこうやって演技も遠慮もなしに居られるんです。……日常は堅苦しいことばっかりなんで」

「そっかー……そういやなんか、歩弥君って家族のことでも苦労してるみたいだもんね」

「そういうことです。だから愛音さんが適当な理由で呼び出してくれれば、あんな場所に居なくていい理由になります」

「あんな場所って……」

「俺にとってはそうなんです……くだらない、息が詰まる場所」

 

忌々し気に顔を歪めて歩弥君はそう言った。

好きじゃないとか興味ないとかじゃなくて、こうやって直接的に嫌悪を口にするのはちょっと珍しいなと思った。

『それでも家族なんでしょ?』と諫めようと思っていたけど、その表情を見てそれを言うのは流石に躊躇われた。

思春期の反抗期って感じとも少し違う気がする。同じ再婚した家族でも、ともりんとは随分違うらしい。

……でもこういう話もしてくれるようになったのは、大分心を許してくれてるってことなんだと思う。

 

「まあとにかく、愛音さんのウザい部分に救われた奴もいるって話です。だから……そんなに気に病まなくてもいいんじゃないですか?」

「その行き当たりばったりのせいでよくない結果になってたとしても?」

「それこそ今更過ぎます。俺との関係なんて最悪から始まったじゃないですか?」

 

確かにそれはとても納得のできる反証に思えた。

あの時は最悪に思えても、進み続けたから今結果としてなんだかんだ良好な関係性になっている。

 

「迷子でも進め……か」

 

そっちの方が確かに私らしいかなと思える。

とはいえ、歩弥君の時と違って明確に私がこうしたい!っていう考え方の軸みたいなものが揺らいでいるのが問題なんだよね。

私は……どうしたいんだろ。

 

「で、結局何に悩んでたんですか?」

「んー、実は――」

 

そこまで言いかけて着信音に遮られる。

すみません、と断りを入れながら歩弥君がスマホを開いていた。

その画面を見て、歩弥君の表情が神妙な物へと変わっていく。

 

「……また用事?」

 

歩弥君と一緒に居ると、こういうことは割とよくあった。

いつもだったら申し訳なさそうな顔か、鬱陶しそうにしながら帰るけど、その時はいつもと少し様子が違うようだった。

即座に返信をしたらスマホをしまって帰る準備をいつもならしてるだろうけど、その時は焦れた様子で返信がくるのを待っているようだった。

やがてまた着信音が鳴り、一層険しい顔をする。

 

「愛音さん」

「ん?」

「燈に何かありました?」

「えっ?」

 

思わずドキッとしてしまう。

心当たりがあるどころじゃない、今まさに話そうと思っていたところだった。

 

「……怒らないで聞いて欲しいんだけどさ」

「それは内容次第です」

「実は、私と歩弥君が付き合ってるって話をともりんにしちゃったんだよね……」

「…………え?それだけですか?」

「それだけって……割とショッキングじゃない?」

「そういうもの……ですか?」

 

歩弥君は戸惑っているみたいだった。

怒られたり呆れられたりするのかなって思っていたけれど、こういう反応も確かに納得できる。

やっぱり、歩弥君とともりんでは互いに少し違う認識で想いあっているんだ。

 

「どういうメッセージだったの?」

「……まあ言ってもいいか。燈が『今から会いたい』って送ってきたので、愛音さんと一緒に居るけど来る?って聞いたら『それなら今日は大丈夫』って返ってきたんです」

「あー……そっか……まあそうなるかぁ……」

 

ともりんの気持ちも分かる。

私の前ではああやって割り切ったように見せていたけど、やっぱりそれだけでは済まない複雑な思いがあったんだと思う。

だから歩弥君と会って話をしたかったんだろうけど、私のことを思って遠慮しちゃったんだろうな。

 

「燈を傷つけることを言ったり、喧嘩をしているわけではないんですか?」

「う、う~ん……喧嘩はしてないけど……傷ついてはいるの……かも……」

「は?どっちかはっきりしてください」

「私だって分かんないんだってば!」

 

きっとともりんも私と同じで、感情が迷子になってしまっているんだと思う。

頭の中では正しいとかそっちの方がよかったって思っているのに、一人では解消できないもやもやした思いが膨らんでいってるんだと思う。

私もそうだった。そよりんか歩弥君、どっちかに今のこの感情を吐き出さずにはいられなかった。

結果的に私は歩弥君をこうして捕まえたけど、ともりんも吐き出す相手として歩弥君を選んだんだろう。

 

「……とにかく、別に喧嘩とか仲違いしたとかじゃないんですよね?」

「それは、間違いないと思う」

「はぁ……なんかよく分からないですけど、CRYCHICの時みたいに燈を裏切って傷つけるようなことをしていないなら、一先ずはいいです」

 

なるほど、歩弥君はそういう方向性で心配していたのか。

でも、裏切りか。私にそんなつもりは無かったけれど、ともりんはどう思ってるんだろ。

私の想像通り本当に歩弥君に恋愛感情みたいなものを持っていたとしたら、そういう感情を抱いてもおかしくない気はする。

 

「とりあえず燈の方に行くので、今日はここで」

「あ……うん」

 

『今日は大丈夫』っていう返事だったのに、歩弥君はともりんに会いに行くらしい。

恋人(わたし)よりお姉ちゃん(ともりん)の方が歩弥君にとっては優先度が上なんだ。確かにそっちの方が彼らしいと私も思う。

彼にとってはそれは当然のことなんだろうけど……こういう部分でも、二人の思いは少しすれ違っているのかもしれない。

 

「……言っておきますけど、跡をつけて来ないでくださいね」

「そんなことしませんー!……前科あるけどさー」

「愚痴ならまた今度、いつでも聞きますから」

 

そう言って彼は席を立ち、店を出て行った。

 

そんな彼を引き留めようとした手が宙ぶらりんに浮いたまま、だらりと落ちる。

今日のお昼と一緒だ。

何かを言いたいという思いはあったのに、上手く言葉が続いてくれなかった。

 

自分らしくないなって自分でも思う。

こういうとき何だかんだポジティブに切り替えられるタイプだと思ってたのに、まだ自分の中で感情の整理が追い付いてないんだろう。

 

「なーんで、こんなにスッキリしないかなー……」

 

初めて二人がキスをしているのを見た時は、気持ち悪いって怖いって思ってた。

昨日、何気なく言ってしまった言葉でともりんの歩弥君への特別な感情を垣間見た。

そして今日、ともりんは自分の思いを秘めたままで終わらせようとしているのを感じた。その時私は、このままじゃやだなって思ったんだ。

 

……ああそうか、これって罪悪感なのかも。

 

私より絶対ともりんの方が歩弥君のこと知ってて、大切にしてて、好きなんだと思う。

それなのに一緒に居ることさえ難しくて、想いを告げることさえ簡単じゃない。

 

そんな関係の中で、突然間に入ってきたのが私なんだ。

 

私のこの感情は、申し訳なさなんだろう。

だって、絶対ともりんの方が歩弥君のこと好きだもん。

 

「……じゃあ歩弥君と別れる?」

 

それも嫌だなと思ってしまう。

私自身が折角仲良くなれたからこの関係を手放してしまいたくないと思っているし、何よりともりんがそんなことを望んでないだろう。

これで別れたらともりんは……多分喜んだりはしないはずだ。それどころか自分のせいでって、悲しんだりしそうだ。

 

「歩弥君ともこのままで、ともりんが私たちに遠慮せずに済むようなそんな関係があれば……」

 

言葉にすることで、少しずつ自分の気持ちが整理できてきた。

ともりんが私のことを思って遠慮をしているように、私だってともりんのことを大切に思ってる。

私と歩弥君が付き合っているというだけで、ともりんに自分の気持ちを押し込めて欲しくない。寂しい思いをして欲しくない。

私が求めているのはそういう形だ。

 

「とはいえ、そんな都合のいいこと…………あるかも」

 

言葉にして整理していくうちに思いつく。

思いついてしまう。

普通じゃないけれど、自分の悩みを一手に解決できるようなそんなやり方を。

 

もし障害があるとすれば、自分の常識くらいだ。

 

「……迷子でも進め……いや本当に?」

 

これしかないってくらい名案に思えたけど、改めて思うと本当に大丈夫か不安になる。

また歩弥君の時みたいにその場の情動に突き動かされて、とんでもないことをしようとしている気がする。

 

「……よし、一旦持ち帰ろう」

 

あの時の様に思い付きでメッセージを送ったり、言葉にして伝えたりはしない。

一度冷静になるために家に帰ってお風呂に入って、心身ともにスッキリさせてから改めてどうするか決めよう。

そう思い、私はファストフード店を後にしたのだった。

 

==============================================================================

 

 

場所はとあるファミリーレストラン。

四人掛けのボックス席に3人の男女。

 

私とともりんと歩弥君。

こうして3人で一堂に会するのはこれで二度目だろうか?

私の隣にともりんで、その対面に歩弥君。並び方まであの時と同じだった。

 

違う点があるとすれば、歩弥君はあの初対面の時のような穏やかで優しげな表情じゃなかった。

額を押さえ、指先でトントンと机を叩いている。

 

「……すみません、俺の耳が悪かったのかな。もう一度言ってくれますか?」

 

歩弥君の声は震えていた。

怒りとも呆れとも違う、まるで理解できないものを見てしまったような、そんな様子に見える。

……まあ気持ちは分からなくもない。けど、納得してもらうしかない。

 

「うん、だからね私――――ともりんとも付き合うことにしたんだ」

 

さっき言ったことと同じ内容を、もう一度歩弥君に伝える。

 

「えぇ……やばぁ……」

 

あの日私が二人に言ったことを、歩弥君が頭を抱えて私とともりんに言っていた。

 

 

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