水で征せよアカデミア   作:わこうど。

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Symbol of Peace

 

 

「オールマイト……!」

 

 

ㅤ恐らく日本で最も頼もしい男が、USJにやってきた。歓喜の声を上げる生徒たちとは対照的に、ヴィランは思ったよもりも冷静な反応を示している。

 

「待ったよヒーロー、社会のゴミめ」

 

「社会のゴミはテメェらや、ウスノロ!」

 

 

ㅤオールマイトに気が逸れている今がチャンス。緑谷を掴んでいる脳ミソ野郎の腕を、俺は極細噴射で切断した。速度も威力も火災エリアのときとは比べものにならない。

 

ㅤようやく脳ミソ野郎から開放された緑谷を、梅雨ちゃんが思い切り舌で引っ張って距離を離す。即座に俺は腰にしがみつく峰田のうなじを掴み、そして緑谷を舌で持つ梅雨ちゃんの腕を取った。

 

ㅤオールマイトが来たからこそ、ここに居続けるのはかえって彼の邪魔になる。

 

ㅤ尾白と葉隠を運んだように、三人を抱えて足元に水を噴射した。勢いよく跳び上がり、気を失っているらしいイレイザーのもとに着地した。

 

 

「相澤先生!」

 

 

ㅤ緑谷が彼に呼びかけるが、返答は無い。腕はあらぬ方向に折れ曲がり、頭から血を流すイレイザーヘッドは見るも無惨な姿に変わってしまっていた。

 

ㅤオールマイトが出入口から駆けて、僅かに残っていたチンピラを倒しながら俺たちの傍に来る。

 

 

「千重波少年、ありがとう! さあみんな、相澤くんを連れて出入口へ行きなさい」

 

 

ㅤ俺たちを庇うようにして手を広げたオールマイトは、しかしてヴィランたちから目を離さない。あの一瞬でここまで距離を詰めた彼に驚いて、俺たちは瞠目していた。

 

 

「やっぱり有象無象じゃ歯が立たないか、流石に早いや……はは、でも目で追えないほどじゃない。やっぱりあの”話”、本当だったのかなあ?」

 

 

ㅤカリカリと首を描いて、狂気的な目を向けるヴィランに背筋が凍る。俺の最初の判断は正しかった。やっぱりアイツは初撃で倒しておくべきだった──そう確信し、舌打ちをする。

 

 

「オールマイトが弱ってる、って話……」

 

「! オールマイト駄目です! あの脳ミソ敵! ワンっ──僕の腕が折れないくらいの力だけど、ビクともしなかった!!」

 

 

ㅤきっとあいつ……と言い淀む緑谷にオールマイトは振り返って笑みを浮かべた。いつものピースサインと笑顔のセットに、緑谷はそれ以上何も言えなった。

 

 

ㅤてかオールマイトが弱っているだって?

ㅤそんな話は聞いたことがない。あいつら──敵連合がUSJを襲撃する後押しとなったのがその話だろうか。

 

ㅤだとしたらこのヴィランたちは史上最高のアホだ。オールマイトは未だ衰え知らず、平和の象徴として表社会のトップに君臨する英雄である。そんな彼が衰えているなんて眉唾ものの話に惑わされて、わざわざ死地に飛び込んでくるとは。

 

 

「CAROLINA──SMASH!!」

 

 

ㅤ腕をクロスして、脳ミソ野郎にオールマイトが攻撃した。どんなに硬いヴィランでもぶっ飛ばしてきたカロライナ・スマッシュは、しかして脳ミソ野郎には効かなかった。

 

ㅤそれに驚いたのは俺だけじゃなくて、オールマイト本人もだった。マジで全然効いてないな!と言いながら巧みに脳ミソ野郎の猛攻を避けている。

 

 

ㅤ脳ミソ野郎の腕が上がった瞬間に、オールマイトの拳が腹部に突き刺さった。平和の象徴のカウンターなんて喰らえば大半のヴィランは気を失うだろうに、脳ミソ野郎は痛みも感じない様子でオールマイトに続けて攻撃を仕掛けている。

 

ㅤ二人の戦いを楽しそうに眺めていた手男ヴィランが、笑いながらそのカラクリをご丁寧にも説明してくれる。あいつ馬鹿なのか。わざわざ仲間の情報をオールマイトにペラペラと話すとか杜撰にも程がある。

 

 

「効かないのは”ショック吸収”だからさ……対平和の象徴、怪人・脳無。そいつを倒したいなら、ゆうっくりと肉を抉るとか効果的だね。それをさせてくれるかは別として」

 

「わざわざサンキュー! そういうことなら──」

 

 

ㅤ対平和の象徴とは、なんとも大層な名前である。しかしどんな敵も困難も乗り越えてきたオールマイトを相手にするには、いささか役者不足ではなかろうか。

 

 

「──やりやすい!」

 

 

ㅤ脳ミソ野郎……いや脳無の腰を掴んだオールマイトが、バックドロップをかました。ズドンという地響きを轟かせるその姿に、イレイザーヘッドの足を持っていた峰田が興奮する。

 

 

「なんでバックドロップが爆発みたいになんだよ!? すっげー! やっぱ俺たちとは段違いだぜオールマイト!」

 

「授業はカンペ見ながらの新人さんなのに」

 

 

ㅤそれは言うな、梅雨ちゃん。

ㅤ俺たちはオールマイトに言われた通りに、イレイザーを出入口の方へ担いでいた。俺はもしもの時に対応できるよう無手である為、背負っているのは緑谷だ。引き摺られないようにその足を峰田が持っている。

 

ㅤ先頭に梅雨ちゃんが、最後尾に俺が居る。

ㅤその間に守られている緑谷と峰田、イレイザーの三人だったが、意識のないイレイザーの容態よりも俺たちはオールマイトの派手な戦いぶりに目を奪われてしまっていた。

 

 

「あっ、デクくん達だ! 」

 

「千重波!」

 

「お茶子! 障子! 先生を運ぶの手伝ってくれ!」

 

 

ㅤ階段の上で広場を見ていたお茶子と障子が、俺たちに気付いてくれた。慌てて降りてきた二人にイレイザーをゆっくりと引き渡す。

 

ㅤ障子の個性は〈複製腕〉。複製した腕の先に目や耳などを生やせるこの出来る個性だ。彼自体のがっちりとした体格もあって、俺たちよりもイレイザーを動かさないように運べるだろう。

 

ㅤイレイザーを背中に背負って階段を上がっていく障子に続けて、俺達も出入口に行こうとしする。しかし一人だけ、様子のおかしい奴が居た。

 

 

「……」

 

「緑谷?」

 

 

ㅤふと、緑谷が何かをブツブツと呟き始めたのだ。いつだったかお茶子が「デクくんはヒーローオタクで、分析するのが得意なの」と話していたが、明らかに様子がおかしい。顔は青ざめて、彼の指先がプルプルと震えているのだ。

 

ㅤ声をかけても反応はなかったので、肩を叩いた。ビクッ、と身体を跳ねさせて俺に振り返った緑谷と目が合う。

 

 

ㅤこの顔は、この目は──まるで個性把握テストの時のようだった。オールマイトに通ずるものがあるかもしれない、と俺が思ったあの時の決意の籠った強い眼差し。

 

 

「なにか気付いたんか」

 

「……そ、それは」

 

「言わなくていい。お前オールマイトのとこ戻るだろ」

 

 

ㅤ一応、梅雨ちゃん達には聞こえないように小声で話す。緑谷の様子は明らかにオールマイトを見て何かに気付いたようだったが、緑谷はそれを何とかするためにあの場所へ飛び出そうとしている。その瞬間に俺が肩を叩いたので、出鼻をくじかれてしまったらしい。

 

 

「行くぞ、緑谷」

 

「千重波くん……! ありがとう!」

 

「は? 緑谷? 千重波? 何するつもりだよ……!?」

 

「デクくん!? 一水くん!! どこ行くの!?」

 

 

ㅤ戸惑ったように声を上げた峰田たちを置き去りに、俺と緑谷は同時に飛び出した。

 

ㅤくそ、緑谷たちとイレイザーを助けたら出しゃばらないと決めたばかりなのに、彼を止めるどころか一緒にあそこへ乱入するなんて。まあ、事件が終わった後のことに関しては既に諦観しているので気にすることはない。

 

 

ㅤ今考えるべきはオールマイトだ。

 

ㅤ脳無にバックドロップをしたオールマイトだが、あのワープ野郎の個性のせいで身動きが取れないでいるようだった。地面に突き刺さったかに思われた脳無は、ワープ野郎の助けを得てオールマイトの足元に上半身だけ出現し、彼の脇腹を強く握っている。

 

ㅤオールマイトのシャツに血が滲むのが見えた。

 

 

「オールマイトォ!!」

 

「ふ、浅はかな」

 

 

ㅤ緑谷が叫ぶ。ワープ野郎が反応して、緑谷の進行方向にあの黒い霧のようなものが遮った。あのままだとまた何処かへ転移させられてしまう。

ㅤもうあの距離じゃ緑谷は止まられない──仕方ないが、噴射で緑谷の身体を無理やり横から動かすしかないだろう。

 

 

「みどり──なっ!?」

 

「邪魔だデクゥ!!」

 

 

ㅤしかしそれよりも前に、ワープ野郎を横からぶっ飛ばした奴が現れた。誰かと思えばクソ下水煮込みである。爆豪がそのままワープ野郎を地面に押さえつけたおかげで、間一髪のところで緑谷は窮地を脱する。

 

 

ㅤ続けて、黒い霧から露出した脳無の下半身が凍らされる。その氷の先を辿っていけば、平然とした顔で轟が立っていた。

 

 

「テメェらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いたが……」

 

「オラァ!!」

 

 

ㅤ轟が二の句を告げる前に、爆破の粉塵の中から現れた切島が手男ヴィランに殴りかかった。あえなく避けられるも、ヴィランはたたらを踏んで後退る。

 

 

「くっそー! 良いとこねぇ!」

 

「スカしてんじゃねぇぞ、このモブモヤが!」

 

「平和の象徴は、テメェら如きにゃ殺られねぇよ」

 

 

ㅤ俺よりも強い、頼もしいヤツらが来た。

ㅤ爆豪、轟のツートップに加えて切島までもがオールマイトを助けようと駆け付けてきたのだ。

 

 

「みんな...!」

 

 

ㅤ脳無は下半身を凍らされ、その上オールマイトの相手をしている。一番面倒くさいワープ野郎は爆豪が抑えた。つまり、俺たち五人が次に見据える目標はただ一人。

 

 

「出入口を押さえられた……これはピンチだな」

 

 

ㅤ轟の氷結のおかけで力が緩んだ脳無からオールマイトが離れた。脇腹に滲む血が痛そうだ。その顔にいつもの笑顔はなく、彼らが油断できるような相手ではないことをマジマジと理解させられる。

 

ㅤズズズと、脳無が黒い霧の中に沈んでいった。

 

 

「このウッカリ野郎め、やっぱり思った通りだ!」

 

 

ㅤワープ野郎を押さえつけながら、爆豪が笑う。

ㅤ彼曰く、あいつがモヤ状のワープゲートになれる範囲は限られている。全身がモヤの異形型ではなく、しっかりとあいつには実体があるのだ。

 

ㅤ最初に爆豪と切島が攻撃した時、奴は「危ない」と口にしていた。その発言こそ、その推論を裏付ける何よりの証拠。全身がモヤで出来ていて、物理攻撃を無効化するような状態で生きていたならそんな言葉は出てこない。

 

 

「ぬぅ……っ」

 

「おっと動くなよ、少しでも怪しい動きしたらすぐ爆破してやる!」

 

「ヒーローらしからぬ言動……」

 

 

ㅤ散々煮え湯を飲まされた相手を圧倒している事実が心底楽しいのか、爆豪は口角を釣り上げてワープ野郎の一挙手一投足に睨みをきかせていた。その様子に切島はドン引きしている。

 

ㅤ戦況はこちらの有利。ワープ野郎さえ抑えてしまえばあとはオールマイトが脳無を、そして俺たちがあの手男を倒せばこの戦いは終わるだろう。

 

 

「攻略された上に、ほぼ全員無傷……ったく、恥ずかしくなるよ敵連合」

 

 

ㅤ凄いなあ、最近の子供は──と、追い詰められているのはあちらだというのに、なぜかアイツにはまだ余裕が見えた。ジジイと戦ったときような圧倒的な差は感じないのに、顔につけた手の隙間から見えるアイツの双眸だけはジジイ以上に俺の恐怖を煽る。

 

ㅤただの小悪党、って類じゃない。チンピラともまた毛並みが違う。手男とワープ野郎だけがこのUSJで言い表し難い”なにか”が違っていた。

 

 

ㅤその正体を確かめるためにも、まずは奴を無力化しない事には話が始まらない。

 

 

「轟、切島、緑谷、いくぞ」

 

「……おう」

 

「任せとけ!」

 

「うん!! あっ、でもアイツの個性に気を付けて! 多分、触れた対象を崩壊させる能力だ、触られたらアウトだと思う!」

 

 

ㅤ崩壊……なるほど、イレイザーの肘の妙な怪我はそれが原因か。先ほどアイツが殴ったりするのではなく顔に触れようとしたのは、梅雨ちゃんの身体を崩壊させるつもりだったから、ということになる。

 

ㅤオールマイトの登場が一分でも遅れていたら、今この瞬間、梅雨ちゃんが塵と化していたかもしれないと思うと、あのヴィランへ強い怒りを覚えた。

 

 

ㅤ轟の氷結、俺の噴射、切島と緑谷の個性を使ったパンチ──ワープ野郎を抑えている爆豪以外の全員で一斉に攻撃しようとしたそのときだった。

 

 

「身体が割れているのに……動いている!?」

 

「脳無、あの爆発小僧を殺せ」

 

 

ㅤ轟の氷結によって身体の半身を砕かれたはずの脳無が、手男の命令に従って動き始める。それを見て驚き、俺たちの攻撃の手が止まった。

 

 

「みんな下がるんだ!……なんだ、アイツの個性は”ショック吸収”じゃないのか!?」

 

「誰がそれだけって言った? 脳無にはまだ”超再生”がある」

 

 

ㅤ個性の複数持ち──!?

ㅤそんな馬鹿な、ありえない。人間に発現する個性は原則一つ、そこに例外なんてないはず。一人の人間による複数個性の発現は不可能であるというのは”個性学”どころか全世界共通の常識だ。

 

ㅤ両親の個性の性質を受け継ぐようないわゆる複合型は、あくまで両親の個性の性質を兼ね備える一つの個性でしかない。轟がいい例だろう。彼は個性を複数持っているのではなく、個性因子に氷と熱という二つの性質があるに過ぎない。

 

ㅤショック吸収と、超再生。仮にあの脳無とやらに両親が居て、そいつらがそれぞれショック吸収と超再生を持っていたとしても、複合型としてこいつが生まれる可能性なんてどれだけ低いと思っているのか。

 

ㅤ一体なんなのだ、あの脳無とかいうヴィランは。

 

 

「要するにコイツは、お前の100%にも耐えれるよう改造された超高性能サンドバッグさ。ほんといい道具を貰ったよ」

 

「──!!」

 

 

ㅤ氷結で崩れた身体を超再生で回復した脳無が、身体を再生させて動いた。目にも止まらぬ速さで爆豪に殴りかかったが、俺たちは反応出来ない。その物凄い風圧に飛ばされないように堪えるのが精一杯だった。

 

 

「かっちゃん!」

 

 

ㅤ緑谷が叫ぶ──だが、オールマイトだけが脳無の動きに反応していた。

 

 

「かっちゃん!? 避けたの!? す、すごい……」

 

「違ぇよ黙れカス」

 

「クソ、見えなかった……! オールマイト!」

 

 

ㅤ俺たちの方に投げられた爆豪は、尻もちをついて緑谷を一蹴した。何も見えなかったが、オールマイトが咄嗟に脳無に殴られかけた爆豪を庇ったようだった。

 

ㅤ土煙の間から見えたオールマイトはしっかりガードをしていたが、流石に無傷とはいかず、口から血を吐き捨てている。

 

 

「はぁ、はぁ……加減を知らんのか……!」

 

「子供を庇ったか……仲間を助けるためさ、仕方ないだろ? さっきだってそこの地味なやつが、俺に殴りかかってきたんだ。他が為に振るう暴力は美談となる、そうだろうヒーロー?」

 

ㅤそれは違う、と俺は心中で否定する。

ㅤ他が為に暴力を振るった結果、悪意から人を助けるからヒーローの活動は美談となるのだ。

ㅤしかしヴィランは例え他が為に暴力を振るおうが、人に笑顔を与えることはできない。その存在自体がむしろ恐怖と不安を煽る。オールマイトのように、人が安心して暮らせる世の中をつくることは出来ない。

 

ㅤ人々が安心して暮らせないのは全てヴィランが居るせいだ。美談がどうとか、暴力装置がどうとか、ついこの間高校生になったばかりの俺たちを殺そうとしてくる様な奴に、ヒーローの何たるかを語られたくはない。

 

 

「俺は怒っているんだ、オールマイト。同じ暴力がヒーローとヴィランにカテゴライズされて、善し悪しが決まるこの世の中に! だから知らしめてやるのさ、〈平和の象徴〉なんて所詮、抑圧のための暴力装置だってことを!」

 

「無茶苦茶だな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの──自分が愉しみたいだけだろ、嘘つきめ」

 

「バレるの早……」

 

 

ㅤこいつが何かしらの確固たる思想を持っていて、その上でUSJを襲撃したのならば一考の余地はまだあった。その思想が良い悪いかはともかくして、今後ヒーローを目指す上での糧になるならそれもまた経験と呼べる。

 

ㅤだが、こいつは違う。

ㅤどこまでも自分勝手。蓋を開けてみれば子供じみた暴論を振りかざして、我が為に社会の安寧秩序を乱すヴィランでしかなかった。しかしあいつはチンピラと呼ぶには強いし、あれだけの量の有象無象を集める事が出来る能力があるのが一番の問題点だ。

 

ㅤやっぱり野放しにしていいい類の犯罪者じゃない。ここで取り逃せば必ず、再び俺たちの前に立ちはだかる──そんな確信を抱いて、彼を睨みつけた。

 

 

「六対三、数はこっちが倍だ」

 

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!」

 

「テメェらは必ずここで捕まえるッ!」

 

「でしゃばんな水野郎……! モヤモブは俺が殺す!」

 

「おし! とんでもねぇ奴らだが、俺たちでオールマイトのサポートに回れば撃退が出来──」

 

「ダメだ! 逃げなさい!!」

 

 

ㅤ義憤に燃ゆる俺たちを止めたのは、他ならぬオールマイトであった。今まさに攻撃しようとした時に止められてしまい、俺は若干苛立ちが芽生えて、睨みつけるようにして彼を見てしまった。

 

 

「……さっきのは俺がサポートしなきゃやばかったでしょう」

 

「オールマイト血が……! それに時間だって……あっ!」

 

「それはそれだ、ありがとう轟少年!しかし大丈夫! プロの本気を見ていなさい!! 」

 

 

ㅤ……時間?

ㅤ緑谷の口ぶりに違和感を覚えて彼を見た。

 

ㅤなにかマズイことでも言ってしまったかのように口を抑える緑谷に、俺は先ほどヴィランが言っていた”オールマイトが弱っている”という話を思い出す。

 

ㅤもしかしてあれは事実、なのだろうか。

ㅤ緑谷は、まるでオールマイトに制限時間があるかのように狼狽えた。

 

ㅤもしもその話が本当なら緑谷の言い方にも納得がいくが──しかし……と頭の中で必死に考えている内に、手男がこちらに向かってくる。

 

ㅤ兎にも角にもその事は今はいい、あとで考えよう。

ㅤ間違いなく緑谷はオールマイトについてなにか知っているが、それを問い詰める時間はない。

 

 

「来てるって! もうやるしかないっしょオールマイト!」

 

「俺と轟で遠距離からサポートする。三人であいつを釘付けにしろ!」

 

「確かにそれが良いな、了解した」

 

「うん! 分かった!」

 

「任せとけい!」

 

「俺に指図すんな水野郎!」

 

 

ㅤ黒霧と呼ばれたあのワープ野郎と脳無は、オールマイトの相手をするようだ。つまりあの手男は俺たち五人を一人で相手取るつもりらしい。

 

ㅤどいつもこいつも俺たちを舐めるのも大概にしやがれ、と怒りを込めて個性を発動しようとした瞬間──、

 

 

「──!」

 

 

ㅤとてつもない威圧感をオールマイトから感じて、俺たちは身構える。手男もワープ野郎も思わず立ち止まったが、脳無が二人の間からオールマイトに向かって飛び出した。

 

ㅤ脳無に勝るとも劣らないスピードでオールマイトも向かい、互いの拳がぶつかり合う。

 

ㅤドンッとその衝撃で発生した風圧に、俺たちは手男に攻撃するどころか、その場に立っていることさえ難しくなった。俺たちに向かうのを止めて脳無とオールマイトから離れた手男が、呆れたようにオールマイトへ言った。

 

 

「”ショック吸収”って、さっき自分で言ってたじゃんか……」

 

「ああそうだな! 」

 

 

ㅤ対平和の象徴・怪人脳無。オールマイト殺害の秘密兵器というヴィランの言葉に違わぬ怪力とスピードだったが、平和の象徴は今まさにソレさえも上回ろうとしている。

 

ㅤ脳無の連打に、オールマイトも連打を返す。

 

 

「真正面からの殴り合い……!?」

 

「オールマイト……」

 

 

ㅤ彼は──平和の象徴は笑っていた。

 

 

「──だが! ”無効”ではなく”吸収”ならば限度があるんじゃないか!? 」

 

 

ㅤオールマイト対策。自分の百パーセントに耐えれるならば、自分はそれを上からねじ伏せる。

 

ㅤ高らかにそう言い放ったオールマイトに俺たちは絶句するしかなかった。個性を複数持つというありえない状態の脳無に驚いていたが、俺たちのすぐ側にはあの”平和の象徴”が居るということを忘れていた。

 

ㅤああそうだ、俺が憧れたのは──俺の原点はああいう事を平気でやれる人だったな。

 

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!ヴィランよ、こんな言葉を知っているか!?」

 

 

ㅤもしもオールマイトが強いだけの男だったならば、平和の象徴なんて言われないだろう。社会に秩序を取り戻し、人々に笑顔を与えてきた真のヒーローだったからこそ、彼は平和の象徴と呼ばれるに至ったのだ。

 

ㅤそして俺は、俺たちは──そんな偉大な男に憧れを抱く子供でしかなかったことを改めて思い知らされる。

 

 

更に向こうへ(Go Beyond)──Plus ultra(プルスウルトラ)ァァァァァ!!!」

 

 

ㅤプロヒーローの……平和の象徴の意地と矜恃を示すように突き上げたオールマイトの拳に、脳無はその身体をくの字に曲げて吹き飛ばされる。

 

ㅤUSJのドーム型天井を突き破る。

ㅤ対”平和の象徴”が平和の象徴によって倒された瞬間だった。

 

 

「コミックかよ……ショック吸収をなかったことにしちまった」

 

 

ㅤ究極の脳筋だぜ、という切島の呟きには抑えきれないほどの畏敬の念が込められていた。

 

ㅤあんなのデタラメだ。超再生が間に合わないほどの高速ラッシュ、その一つ一つにオールマイトの全力が加えられていたのだ。あれほど驚異に感じたはずの脳無を、ああも簡単に吹き飛ばせるものなのか。

 

 

──これがトップ、これがプロの底力。

 

 

ㅤ轟も爆豪も緑谷も切島も、そして俺も、ただ目の前で起きた光景に言葉を失うばかりであった。

 

 

「全盛期なら5発で十分だったろうに、300発以上も打ってしまうとは……やはり衰えたな」

 

「チートめ……!何が衰えただ、完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を……っ! 全然弱ってないじゃないか!アイツ、俺に嘘を教えたのか!?」

 

 

ㅤ敵連合の最大の武器を封じた今、もはや彼らにオールマイトを殺害できるような手段は残されていない。それでもなお彼らがオールマイトに立ち向かうというのならば、俺は彼らの無鉄砲な蛮勇を称えだろう。

 

ㅤプロの世界でもトップに君臨する男。

ㅤ彼の本気の力を間近で見ることになった俺たちに、もはやこの場で残ってオールマイトの手助けをするなんて考えは消え去っていた。

 

 

ㅤ本音を言うと、目から血が噴き出るほど悔しい。

ㅤオールマイトをも助けるヒーローになる──幼時からの夢を叶えるチャンスが目の前にあったのに、俺はそれを掴むどころか、助けれるほどの強さがまだないということを再認識させられた。

 

ㅤもしもその事実を悔しいと思えなかったなら、俺にヒーローになる資格はなかっただろう。だが、俺はいま間違いなく悔しかった。

ㅤ”俺たちの出る幕じゃない”と轟が言う。確かに彼の言う通りで、オールマイトは俺たちの助けなんてハナから必要としていなかった。それは俺たちがまだ未熟な子供だから、本気の世界を知らないヒヨっ子だからだ。

 

 

ㅤ決めた──もしも次に俺がこのような醜態を演じたならば、俺は自分の腹を割いてやる。

 

 

「クソッ!」

 

「千重波……?」

 

 

ㅤ無力感を誤魔化すように壁を殴りつけた。そんな俺を気遣うように切島が顔を覗き込んできて、こんなことをしている場合じゃないと我に返る。

 

ㅤ一刻も早く、オールマイトの邪魔にならないような場所へ退避しないといけない。もしも人質にでも取られたら、それこそ俺の夢は潰えてしまう。

 

ㅤこの悔しさを絶対に忘れるなよ、千重波一水──。

 

 

「主犯格はオールマイトが何とかしてくれる! 俺たちは他の連中を助けに行こう」

 

「……ああ、そうやな。まだヴィランは大勢残ってる。俺のとこみたいな奴が他にもいたらヤバい」

 

「? 何と戦ってたんだよ。千重波ならチンピラくらい余裕だろ?」

 

「そりゃチンピラはな。でも火災エリアにマスキュラーの祖父がいた。あれをチンピラとは呼べねぇよ」

 

 

ㅤジジイレベルのヴィランがまだ居るとは考えたくないが、最悪を想定して動くべきだ。個性が使えず体力の消耗が早い火災エリアならともかく、他のエリアならある程度は戦えるだろう。

 

ㅤ四人とも既に自分たちが転移させられた先のヴィラン共を駆逐したようだし、とりあえずここから近い暴風・大雨エリアにまず向かうべきか。

 

 

「マスキュラー? って誰だよ」

 

「指名手配されてる大物ヴィランだろ。プロヒーローも何人か殺ってる。そんなやつの縁者と戦ってたのか……道理でお前が怪我する訳だ」

 

「その言い方だとチンピラ如きに俺なら遅れはとらんだろ、って聞こえるんやけど……轟って意外と他人のこと見てるんやな」

 

 

ㅤ自分以外興味無いと思ってた。

 

ㅤ轟は既に俺たちの中で最強格のクラスメイトという認識がある。その実力は先日の戦闘訓練で誰もが知っていることだ。しかしこれは爆豪にもいえることだが、彼に協調性はほとんど無いだろうと俺は思っている。誰かと仲良しこよしするつもりはないのか、日々の学校生活は一匹狼タイプ。

 

ㅤ轟が誰かと仲良さげに話しているところなんて見たことないし、また表情が変わったところも見たことがない。そんな奴に俺個人が認識されているとは思わなかったので、素直に驚くと、轟は無表情のまま「強いヤツくらい覚えてる」と返してきた。

 

 

ㅤそうか、俺は轟に強いと認識されていたのか。だが嬉しいと思う反面、申し訳なさも抱く。

 

ㅤ強いのは個性があるからだ。個性なしでは俺はまともに戦えない。相性が悪いだけで強さ自体はチンピラでしかなかった炎野郎に苦戦したくらいだ。

 

ㅤヒーローとしての心構えも強さも、今の俺は持ち合わせていない。分不相応な評価に苦笑いを浮かべるしかなかったが、近くのエリアに向かおうとオールマイトたちに背を向けた俺たちをよそに、緑谷がピタっと立ち止まった。

 

 

「緑谷……?」

 

 

ㅤオールマイトの方を見ながらブツブツと何かを口走っている。その内容までは聞き取れなかったが、彼と一緒に広場まで来た俺には緑谷が何をしようとしているのかすぐに分かった。

 

ㅤこいつ、まさかまた───!

 

 

「待て緑谷!轟がさっき言った通り、もう俺たちの出ていい幕じゃ──」

 

 

ㅤ彼の腕を掴もうと手を伸ばした途端、緑谷はその手を振り払ってオールマイトのもとに飛び出していった。それも尋常ではない速さで。

 

 

「な……緑谷!?」

 

 

ㅤオールマイトに近づいていた手男とワープ野郎の間に飛び込んだ緑谷の足は、プラプラと力が入っていなかった。両足が折れるほどの力で踏み込んだのだろうか。

 

ㅤなんでやつだ、と瞠目する間もなく「2度目はありませんよ!」とワープ野郎が個性を使った。黒いモヤの中から、アイツの手が出てきた。

 

ㅤ触れられたら多分アウトって緑谷が言ったんじゃないか!

 

 

「オールマイトから、離れろッ!」

 

 

ㅤ何がお前をそこまで突き動かす。

ㅤ一体緑谷は、オールマイトの何を知っているんだ──もう今度は動こうとしなかった俺とは違って、足が折れようが飛び出していった緑谷。その背中に俺は猛烈な既視感を覚えた。

 

 

ㅤそれは、俺が憧れたヒーローの背中そのもので──。

 

 

「っ、緑谷から離れろやぁッ!!」

 

 

ㅤ手男がワープ野郎を通じて緑谷を崩壊させようと手を伸ばし、そしてその手を何とかして緑谷に触れさせないように、俺は叫びながら流水を放とうとした。

 

ㅤアイツの手のひらを貫通させる。この位置からでは切断までは出来ないが、触れることで対象を崩壊させることが出来るなら、手さえ切断してしまえば緑谷を崩壊させることは出来ないはずだ。

 

ㅤ届け、届け! と放った流水の先を見据えて──

 

 

「──!?」

 

「来たか!」

 

 

ㅤ流水がその手を貫くよりも先に、血が吹き出した。

ㅤそれを銃弾だと俺が認識するのと同時に、出入口から聞き覚えのある声が耳に入る。

 

 

「ごめんね、皆。動ける者をかき集めてきた」

 

 

ㅤバッとそちらを見やると、そこには我らが委員長の頼もしい姿が見えた。その隣にはスーツを着た喋るネズミが……いや喋るネズミってなんだよ。

 

 

「1-Aクラス委員長、飯田天哉! ただいま戻りました!!」

 

 

ㅤ十人以上はいるであろう雄英教師陣(プロヒーロー)を引き連れた飯田の声が、USJ全体に響き渡る。オールマイトが現れた時にも劣らないお茶子たちの歓声が聞こえてきた。

 

ㅤ手男を銃撃して緑谷の窮地を救ったのは、おそらくあのヒーローだ。ドレッドヘアーに特徴的なガスマスク、それに赤いローブと彼の代名詞ともえる回転式拳銃(リボルバー)──間違いない、あの人はプロヒーロー〈スナイプ〉だ。

 

 

「あーあ、遂にプロ共がわんさか来ちゃったよ。今度こそゲームオーバーだな。帰って出直すか、黒霧──ぐっ!?」

 

 

ㅤようやく撤退の動きを見せた手男に向かって、しかしスナイプ先生の正確無比な射撃が襲いかかる。何発かまともに食らって銃弾が身体を貫通したらしい手男が、血を吐きながら地面に倒れた。

 

ㅤそれでもスナイプの射撃は止まらず、息の根を止める勢いで連射する。遠距離からの銃弾の雨に彼は対抗することも出来ず、手男の周囲に広がったワープ野郎のモヤに守られているだけだった。

 

 

「この距離で捕獲可能な個性は……」

 

「──僕だ!」

 

 

ㅤ負傷して倒れていたはずの13号が、必死にブラックホールを発動させた。手男を守っていたワープ野郎の黒いモヤが、少しづつ13号に吸い込まれていく。

 

 

「引っ張られる……!? これは、」

 

 

ㅤいい気味だ、と嘲りながらも俺は最後の攻撃を仕掛ける用意した 。手男とワープ野郎の頭上に水の球体を生み出して、そこから極太の噴射をしようと力を込める。

 

ㅤただまっすぐ噴射するだけだ、狙いを定める必要は無い。ワープ野郎は13号が捕まえようとしている。なら俺はまだ残っている手男を動けないように地面に釘付けにしてやる。

 

 

ㅤ俺は限界に近い体力を振り絞って水を放った。

 

 

「クソがぁぁぁっ!!」

 

 

ㅤドドドド、と頭上から噴射された流水がまるで滝のように手男に降り注ぐ。あまりの水圧に彼は大の字になって地面に叩き付けられ、憎々しげに俺を睨みつけてきた。

 

 

「黒霧ィィ! 早く、早く俺を転移させろォォッ!!」

 

「ぐっ、ぉぉおおお!! 身体が……!」

 

 

ㅤ俺の噴射によって手男から吹き飛ばされたワープ野郎は、13号との距離が更に縮まったことによって、身体のモヤを益々吸い取られていた。

 

 

「よくやった千重波! そのままアイツを留めておけ!!」

 

「はいッ!!」

 

 

ㅤあの喋るネズミを肩に乗せていた男は、隣のB組の担任だった人だ。出入口から駆けてきたブラッドヒーロー〈ブラドキング〉が、手男を拘束しようと自身の血を操った。

 

ㅤブラドキングから放出された血が手男に差し掛かる。

ㅤたしか彼の個性は”操血”──何年か前、彼がヴィランと戦っている映像を見たことがある。その時は自分の血を固めさせてヴィランを拘束していた。

 

ㅤ他のプロヒーローたちも一斉に手男とワープ野郎に向かって動き始める。ワープ野郎はまだ13号のブラックホールに抗って、なんとか手男の元に行こうと藻掻いていた。

 

 

「逃がすかぁぁぁ!!」

 

 

ㅤここで逃がしたらダメだと、俺の本能がそう告げている。更に勢いの増した水流に、もう手男は顔を上げることすら出来ていないようだった。

 

ㅤいける、こいつらを捕まえられる──!

 

 

ㅤ俺はそう確信したが、空中からの極太噴射を遮るように黒いモヤが現れた。ワープ野郎は13号がブラックホールで吸い込んでいるはず、と思って先生の方に視線をやると、必死に伸ばしていた13号の指先が地面に落ちていた。

 

 

「13号先生!」

 

 

ㅤ気絶してしまったのか。お茶子たちが慌てて先生のもとに寄ったが、そちらを気にする余裕は無い。

ㅤ何としてでもアイツだけは逃がさない。そう思ってダメ押しの極細噴射も同時に放ったが、モヤに邪魔されて照準が定まらず外れてしまった。

 

 

「クソ、クソクソクソ! あばら折れたぞコレッ! あのクソガキがッッッ!!」

 

「落ち着きなさい死柄木 弔! とにかく今は退避を!」

 

「チッ……今回は失敗(ゲームオーバー)だったけど──次は殺すぞ、オールマイト」

 

 

ㅤそう言い残して、二人はスンと消え去った。静寂に包まれるUSJセントラル広場に、教師も生徒も、無際限の憎悪が込められたヴィランの負け惜しみに気圧されている。

 

 

「逃げられた、か」

 

「千重波」

 

 

ㅤ標的を失った噴射を中断するや否や、身体を支える力が途端に抜けてしまった。思わず倒れ込みそうになったところを、傍に居た轟が支えてくれた。

 

ㅤずっと張り詰めていた緊張が途切れて、既にもうゼロに近かった体力の限界が来たのだろう。もう立てる力も立とうとする気力もなかった。

 

 

「悪ぃな轟、もう力が入んねぇわ」

 

「別に良い……それよりも、ここにプロヒーローたちがこんなに集まるってことは、学校全体に仕掛けてきたって訳じゃなさそうだな」

 

「あぁ、先生たちが来てくれなかったらどうなってた事やら……」

 

 

ㅤオールマイトを始めとするトップヒーローを数多く輩出してきた雄英高校は、この日本社会にとっては大きな存在である。もしも轟が言うようにヴィランたちが学校全体に仕掛けてきていたならば、雄英という次世代ヒーロー育成の一大拠点が堕ちる可能性さえあった。

 

ㅤそれでもプロヒーローたちは負けないだろうと確信を持って言えるが、少なくとも一般大衆からの雄英のセキュリティへの信頼は地に落ちる。セキュリティが万全じゃない所に我が子を通わせたいと思う親は少ないだろう。

 

ㅤ襲われたのがUSJだけで良かった──と、楽観視は流石に出来ない。

 

 

「なんてこと……これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて」

 

「完全に虚をつかれたね……まァ警備体制の反省よりも、今は生徒の安否が最優先だ」

 

 

ㅤ国の教育機関に白昼堂々ヴィランに襲撃されるなんてニュース、世間には大きな衝撃を与えるだろう。またマスコミが騒ぎそうだ──と考えていると、俺の視界が段々と狭くなってきた。

ㅤまるでモノクロ映画を見ているかのように、目に映る景色が色を失っていく。

 

 

「……………轟、すまんが少し寝る」

 

「………ああ」

 

「一水くん!」

 

 

ㅤ瞼がとてつもなく重たい。

ㅤ閉じかけた視界の端に、焦った表情を浮かべて俺の方へ走ってくるお茶子の姿を捉えた。

 

 

ㅤ”別に死ぬわけじゃないんだからそんな顔するなや”と彼女に言おうとして、そこで俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 





次でUSJ編終わり
戦闘描写カス過ぎて萎えたけど何とかがんばります
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