ディバインストラテジー ~LostMemory~ 作:ポチョさん.
連れてこられた先に待っているのは・・・
ユウは徐々に意識を取り戻し眼を開ける。辺りを見回すと前には鉄格子、壁や床はコンクリートで出来ている。かなり広い牢屋だな。数もかなりある。他の牢屋にも大勢いる。ユウ以外にも同じ牢屋に十三人いる。年端のいかない少年や老人まで。どうなってるんだいったい。
「大丈夫か?」
同じ部屋にいる男が声を掛けられた。
「あぁ、大丈夫です。」
とりあえずユウは返事をして男の方を見る。筋肉質でツンツン頭の男が立っていた。
「あんたも連れて来られたのか?」
「あぁ、奴ら一体何をする気なんだ。」
これだけの数を集めてきたんだ。何も無いはずがない。ユウが男に声を掛ける。
「奴らって誰なんだ?何で僕たちを集めたんだ。」
「街の兵士だ。理由はわからん。」
その後皆黙っていた。しばらく経つと外から足音が聞こえて来る。鎧が擦れる音が聞こえる。奴らだ。足音はこちらに向かって歩いて来てる。鎧を着た男達が牢屋の前で立ち止まる。その内の一人が牢屋の鍵を取り鍵を開ける。
「お前ら出ろ。」
鎧を着た男が合図する。相手は複数で武器持ちに対してこちらは人数では勝っているが武器は無い上に訓練の積んだ兵士相手に素手で戦うなど無謀だ。ここは従うしか無い。全員が指示に従い牢屋を出て兵士について行く。
連れてこられた場所は広い円形のドーム。十メートルはあるコンクリートの壁には固まった血が付いており、壁の上には座席が並んでおり座席を埋め尽くす程の綺麗な服やアクセサリーを付けた人達が座っていた。地面には剣や斧といった多数の武器が落ちており、そのどれもが使われ続け手入れもされていない錆びた物ばかりだ。集まった観客、落ちている(もしくは置いている)武器、連れてこられたユウ達、これだけ揃えば子供でも分かる。そしてユウ達の想像した通りに話が進んでいく。マイクを持った小柄な男が席を立ち喋り始める。
「皆様、大変長らくお待たせしました。本日のショーを開催します!!」
マイクを持った小柄な男が身振り手振りで話している。この男は何を言うのかと皆の不安が高まっていく。
「さぁて本日はバトルロワイアルを開催します!!」
観客が騒ぎ、ユウ達の表情が凍り付く。今なんて言った?冗談だよな。
「ルールは簡単。最後の一人になるまで殺し合ってくださ~い。落ちている武器は使ってくれて結構。どんな方法でもいい。殺して殺して殺しまくれぇ!!最後まで生き残り無事に生還するのは誰でしょうか!!」
周囲を見渡すとさっきまで困惑していた男達は覚悟を決めたのか一目散に武器に向かって走っていた。もう正気を保っている者などいないだろう。皆生きるのに必死だ。当然か、この状況で他人を気にしてはいられない。マイクを持った小柄な男が両手を広げて叫ぶ。
「さぁスタートです!!」
開始の合図で全員が戦い始める。全員が手に持った武器を振るい戦う。ユウも辺りを見渡し落ちている短剣に向かって急いで走る。何とか短剣を拾い上げ、周囲を見渡すと次々に殺されていく人達。まずは運動能力の低い老人や子供が殺され次は男同士の殺り合い。ユウも必死に逃げ回りながら様子を見る。ただでさえ経験の無いユウが一人でも倒せるかわからないのに何人も相手に勝てるはずがない。ユウが走り回りながら周りを見ていると一人の男と目が合う。男は顔や身体に返り血を浴びて血に染まり手には刃こぼれした片手斧が握られていた。男は斧を握りユウに向かって迫る。
(・・・やるしかないのか。)
ユウの身体が震えた。武者震いではなくただ恐怖で。男が目の前に立ち雄叫びをあげながら斧を振り下ろす。ユウが横に転がり辛うじて回避。
(危なかった・・・考えろ・・・どうすればいい?どうすれば・・・)
ユウが立ち上がり男を見上げる。相手の距離は目視で三メートル程度。片手斧の長さを考えると一歩踏み込めば攻撃範囲に入る。それに比べユウは相手の身長の約半分の身長しかなく、しかも武器は短剣。得物の差も出ている。ユウが短剣を届かせるなら三歩は必要だ。
(懐に入るんだ。じゃなきゃ勝ち目がない。)
考えるだけなら簡単だ。相手より素早く動き斧を振り下ろす前に短剣を突き刺す。もしくは相手に空振りをさせてから突っ込む。こちらも単純だが実行するのは難しい。相手の動きを先読みにし、避けながら懐に飛び込む。だがそんなこと出来ない、というより出来るはずがない。ユウは日頃から鍛錬していたわけでもなく天性の反射神経や観察眼などがあるわけではない。だが無理にでもやるしかない。出来なければ死ぬだけだ。
(選択肢は二つに一つ。)
男が地面に刺さった片手斧を引き抜き再度ユウを睨む。男は一歩進み片手斧を振り上げ、ユウも覚悟を決めて突っ込む。ユウが一歩目を踏み込み男は片手斧を振り下ろす。致命傷になりユウが狙える唯一の部分を狙う。
二歩目を踏み込み斧がユウに刺さる前に短剣を男の股間に突き刺す。男は絶叫、ユウが短剣を引き抜く。男は斧を手放し両手を股間に当て膝を落とす。
(今だ!!)
ユウが短剣を捨て落ちた斧を両手で拾い上げ男の首めがけて力一杯振る。斧が男の首を落とす・・・ことはなく刃が首の半分で止まり刃から鮮血が流れ男が地面に倒れる。痙攣し続けていたが徐々に動かなくなってなった。ユウが手についた血を眺める。流れたばかりの血はまだ生暖かく人を殺したのだと改めて実感させられる。
(あ、ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・)
両目から涙が止まらない。頭が痛い。罪悪感で心が押し潰されそうになる。ユウが空を見上げると観客達は笑いながら殺し合う自分達を見ていた。まるで映画やショーを見ているみたいに。
(狂っている・・・主催者も観客達も何もかも!!)
だが終わらない。泣き叫んでも助けを求めても変わらない。この狂ったショーは終わらない。最後の一人になるまで・・・。
男達が次々、死んでいき、残ったのは二人。ユウと牢屋で最初に話しかけてきたツンツン頭の男だけ。男は身体中に返り血を浴び、右手に剣を握っていた。左脚を引きづりながらユウに向かって歩いてくる。左太股から血が流れている。流石に無傷というわけではないらしい。
(なら勝機はある。僕が子供で油断しているだろうし。)
だがそれも一撃だけの話。一撃を避けたら油断なんてしなくなる。ユウの近くには片手斧と短剣、どちらか一つしか選べない。男は脚に怪我を負い、走ったりは出来ない。そうこうしている間に男が目の前に迫っていた。
「オレのために死んでくれや坊主!!」
男が剣を振り下ろす。ユウは落ちている短剣を拾い横っ飛び。立ち上がり男を見据える。
(泣くのは後だ、懺悔するのは後だ。今はただ・・・目の前の男を・・・殺す!!)
飢えた野獣のような眼で男を睨み短剣を両手で握り締め男に迫る。男が剣を振るより速く、短剣の刺突を男の左太股の傷口に突き刺す。男は歯を食いしばり左拳でユウの胸を殴り、ユウは仰向けに倒れる。
「ぐっ・・・が、はっ・・・」
血を吐くも歯を食いしばり両脚に力を込め立ち上がる。短剣は男の脚に刺さったままだ。男も左膝をつくがまだ戦意喪失していない。だがあの脚では恐らく立てないだろう。問題は相手をどうやって殺すか。男の両腕が無事な以上近づくのは危険、出来うるなら遠距離攻撃が望ましい。ユウも次の一撃を受ければまず起き上がれない。
(ならやることは・・・)
ユウが起き上がって周囲を見渡し短剣を見付ける。短剣を取りに走って向かい、短剣を拾い上げ男の前まで歩いていく。
男とユウの距離は数メートルまで縮み、ユウが立ち止まる。
男はユウを睨みながら必死に立ち上がろうとしている。たとえ歩けずとも立って戦おうとしていた。男も理解していた。ただ座っているだけでは殺されると・・・
だが左脚に激痛が走り、とても立てる状態ではなかった。 男が体勢崩して転倒。
(・・・・・・今だ!)
男が体勢を崩した瞬間に男に向かって走り、両手で握った短剣を前へつき出す。男がユウの接近に気づくも体が反応せず、ユウのつき出した短剣が男の顔のど真ん中に突き刺さった。男の体は力無くその場に倒れ伏す。
「おめでとうございます!!まさか少年が勝つとは思いませんでしたが。今宵のショーは楽しんで頂けたでしょうか。次回もまたお楽しみに!!」
小柄な男がマイクを持って終わりを告げる。ユウは倒れた男を見下ろし、自分の体についた血を見る。いつの間にか両手の痙攣が収まっていたが両目から涙が止まらなかった。