【3話完結】呪術廻戦〜平子真子という呪術師〜 作:アイナll
「あ、ちょうど良かった」
「う〜わ」
俺はこの男が嫌いだ。
えのきみたいな髪型してるし、身長はめっちゃ高いし、なんかよう分からん目隠ししてるし、ウザ絡みしてくるし。うわー目ェ付けられたーほんま面倒いわー。
「え〜僕まだ何も言ってないじゃん。ってか偉大なる五条センパイの髪をえのきだって?」
「そんなこと言うてないやろ。心読むのやめろや」
あと、こういうところが嫌いだ。全てを見透かすかしているような態度が無性に腹立つ。
「ほんで、なんの用や。なんか話があるんちゃうんか」
「そうだった!今“空き”でしょ?とある任務を任せたいんだけどいい?ってか任せたから」
俺に拒否権無いやん。
この世界には「呪い」というものが存在する。人間から流れ出たあらゆる負の感情が積み重なり、形をなすと呪霊となる。
日本国内での怪死者・行方不明者は年平均1万人を超えており、そのほとんどがこの“呪い”による被害だ。
俺の名は
呪いを祓うために呪いを操る、いわゆる呪術師という事をしている。
さて、話をほんの1時間前まで戻そう。
〜〜〜〜〜
俺は任務を終え、都内にある東京都立呪術高等専門学校に報告を終えた帰り。ちょっと1年生の様子を見に行こうかな、なんて校舎を歩いていると同じく呪術師をしており、自他共に認める最強 五条悟と偶然出会ってしまった。
「
バッタリ会ったが最後。そこら辺のベンチに無言の圧で座られれる。そして缶コーヒーを持たされたが最後。話を聞き終わるまで逃げられない。
「それって確か…
「そそ。その呪具が…盗まれたの☆」
「はぁ」
「だから…探して☆」
「はぁ?!嫌やそんな面倒な事。お前がせぇや強いんやから」
「無理なんだよ。僕には。ほら、ちょ〜優秀な五条悟パイセンは忙しいの。だから君に任せる、というか君が適任だ」
こういうところが、せこいんだ。この男は。
まぁ五条悟に任されたなら仕方ない。逆らったら殺されかねないから、一応「善処する」と返した。
普段なら「善処する=やる気無し」と捉える人が多いだろうが、この場合はやらざるを得ないから「やるだけやったるけど期待すんな」という意味を込めて。
〜〜〜〜〜
そして現在。
五条悟宛の請求書で新幹線に乗り、件の綱八代本家がある呪術の原点 京都まで来た。
綱彌代家とは、京都に本拠地を置く呪術界の名家であり、その実力は時代が違えば御三家に数えられていたと言われる程。術式は主に“反射”を得意としており、今回の呪具もそれ関連のヤバい代物だ。
『特級呪具:九天鏡谷』。綱彌代家最大の汚点であり、実力の割に発言力が無い所以でもある。
戦後の日本で呪いが大量発生した時、当時当主だった綱彌代
戦後の混乱が収まり、呪いの発生が徐々に落ち着いて来た時期。その存在を危険視した呪術総監部に封印指定呪具にされてしまった。
その後は特に何も無かった。術式自体は誰でも使える様に加工されているが、封印は綱彌代家の当主しか解除できない様に作られている。そのため、持ち出したところで何が出来るという訳でも無いだろうに。
一応捜索の協力という事で綱八代家の人間から外見的特徴も教わった。刀の呪具で鍔が特徴的らしい。いかんせ戦後まもなく封印されたもので、資料のほとんどが無いため写真はおろか絵も残っていない。
「ほんまどこにあるんや」
念のため綱彌代の本家に来て探してみたが、手がかりは無かった。なんなら余計に分からなかった。
封印場所は屋敷の地下深く。木箱に厳重な封印が施されており、誰かが封印に手をつけると最新鋭のセンサーが反応し屋敷中の警報が鳴り全扉が閉まる物理的に脱出不可能な陸の島となる。試しに手をかけてみれば、そりゃもう…大変だった。並の呪術師だと絶対に出られないし、手荒に行けば必ず物理的・呪術的な“跡”が残るはず。
盗まれたのは2日前。警報も何も鳴ってないところから封印は“正規ルート”で解除されていた。
当主にしか開けることのできない封印が正規の手順で開けられたとすると、怪しいのは当主だが、その時は高専にいたらしい。証言、記録が保証している。
となると…どういう事だってばよ。
「…あー考えてもどうにもならへん」
ってかなんで本家の連中は動かんのや?怪しいから下手に動けないというのは分かるが、何もしてないのはおかしいやろ。特に部外者の俺を封印場所まで案内させる意味が分からへん。それにあれだけガチガチなセキュリティで写真どころか絵も残ってないとかアホやろ。
屋敷から出てそこら辺の公園のベンチに腰掛けて頭を抱えて悩むが、どうにもならないのでリフレッシュも兼ねて散歩でもすることにした。
「考えてもどうにもならへんな。…せや、せっかく
重い腰を上げ、住宅街の中にある不自然なくらい薄暗い路地へ向かう。
住宅街にある、どこか昭和くさい駄菓子屋へ入る。地味に立て付けの悪い扉を開けて入ると店内の棚に箱のまま置いてあるお菓子があるが目当ては駄菓子ではない。
「やっとるか〜」
「おや?珍しい客っすね」
店で一声あげると奥から緑と白の帽子に甚平というあまり見ない格好をした胡散臭い男が出てくる。
「よぉ喜助。元気そうやな」
「平子さんも変わり無い様で。して、本日はどの様な要件で?あ、新作の駄菓子っすか?」
確かここに…と白々しい態度で店の棚を漁り出す。
この男の名は浦原喜助。浦原商店という駄菓子屋の店主にして“表向きは”この店の経営者だ。
「お求めはコレっすよね」
「ソレ先月発売したヤツやボゲ。そんなマズい菓子ちゃうわ」
「評価が辛辣っすねぇ。じゃあ何の用っすか?平子さんは“ウチの”必要無いじゃないっすか〜」
浦原喜助。表の顔は怪しい駄菓子屋店主。
その裏の顔は、特別呪術師。いわゆる訳あり系実力派呪術師。これでも現役の時は、かーなーりヤバかった。あまりにヤバ過ぎるので呪術師としての活動を禁止しつつも才能を捨てるには惜しいので“特別呪術師”なんて階級だけ取り除いた名誉職を与えた上層部。飼い慣らせず殺せずの微妙な立ち位置の男。
今は駄菓子を売りつつ、呪術師が使う呪具を扱う専門店。俺は使う術式が特殊なんで使う機会はないが、様々な場面で活躍する呪具を売っている。
「阿保、ソッチでも無いわ。干し柿の在庫あるか」
「…あぁ、もうそんな時期っすか。鉄裁さ〜ん」
「はいコチラに」
裏から、更に浦印のエプロンを着た筋肉ダルマ…じなかった筋骨隆々なメガネ男性が数個の干し柿を竹ざるに乗せて差し出す。
喜助はそれを紙袋に入れて俺へ差し出す。
「いくらや」
鞄から干し柿分の代金を出そうとするが、止められる。
「いいですよ〜これくらい。ほぼ鉄裁さんの趣味みたいなもんですから」
「そっか、ほな頂くで。ガキ共によろしゅ言うとってや」
袋を受け取って浦原商店を出る。日が暮れない内に
「来るの遅くなってすまんな。最近立て込んでたんや」
入り口で手桶、ひしゃくを持ち水を汲んで目的地へ向かう。
横並びの石像の一つ。その前でしゃがんで手を合わせる。
「これ、一応持って来たで。食ってくれや」
浦原商店で貰った干し柿を供え、一方的に語りかけながら簡単な清掃をする。
「そんじゃ、行くわ。今度は悟からの頼まれごとをせなあかんねん。ほんま面倒いわアイツ」
一通り清掃を終え、道具を返して次の目的地へ向かう。
彼が参った墓には『猿柿家之墓』と彫られていた。
改めて特級呪具:九天鏡谷の捜索を始める。
どこにあるのかは、皆目検討もつかない。それも盗まれたのが2日前となると、国内にあるかも怪しい。
一応喜助の店に行った時、事情を話すと綱彌代家の術式に反応して矢を指すコンパスをもらったのでこれを頼りに探すしか無い。
まず、コンパスが指し示したのは郊外の廃墟。
観ただけで分かる。ここには“いる”。
入ってみると案の定だった。緑のアマガエルの様な呪霊がざっと50匹は群がっていた。
「っはぁ〜、ほんま面倒いわ。けどまぁ、見つけたらからには無視もできへんよな!」
呪霊とは人から出る“呪い”が学校や廃墟といったネガティブな連想をする場所に溜まり、形となった物。呪霊同士で外見に共通点はほぼ無く、習性としては一般人には見えず弱い奴ほどよく群れるくらいだ。
背負っていたギターケースを下ろし、蓋を開く。そこには2本の刀が入っており、内一本の脇差しを取り出し抜刀する。
そして呪霊に向かって一直線で立ち向かう。呪霊は多少の抵抗をして来たが、単体ではほぼ無力なので数を減らす作業ゲーと化した。
「こんなもんか。まぁこういう事もあるやろ。次行こ」
数分で呪霊を全て片付けた後、コンパスを見ると別方角を指していた。
「なんや、ここも“おる”な」
案の定、中には同じ様なアマガエルの呪霊が数十匹集まっていた。
「ここもかいな」
また別の場所でも。
九天鏡谷を探しとるのに、いつの間に呪霊狩りをしてんだ。喜助のヤツ、さてはガラクタ押し付けて来たな?
『おかしいっすね。確かに綱彌代家の呪術に反応する様に作ってるんですけどねぇ〜』
「言うてるけど、全然会わんで。綱彌代家のつの字も無いでアホ」
日も暮れたホテルへの帰り道。こんなガラクタを押し付けてきた喜助と通話していた。今日だけで5カ所以上回っているにも関わらず
ん?待てよ…
…全てに…呪霊…?
学校などの呪霊が大量にいる空間でも外見が全く同じ呪霊というのは稀だ。何故なら呪霊とは不確定多数の人間が無自覚に発する呪いが形になったものであり、負の感情は人それぞれ。同じ形が群がることがあってもそれが複数箇所に、学校や廃墟の様に様々な場所で現れることなんてまず無いはずだ。いるとすれば元から分裂しているくらいだろう。
もしくは誰かが意図的に作りだしたか、その場所に集めた呪霊か。
くそっ!どっちの可能性も大いにあるな。例の呪具が正規の手順で解除された以上、何かしらの形で綱彌代家が関わっている。だからこの件に家は手を出さなかったのか。ボロが出てしまうから。
「やぁこんにちは。一級呪術師 平子真子君」
「っ?!」
背後に突然現れた?!なんやコイツキモっ!
「おっと急に話かけるのはまずかったね。ははははっ、すまない。なんせ人と話すのなんて
「せやな。いきなり背後に現れるなんてマナー違反やで」
なんやこのバケモノじみた呪力量は。これが、現綱彌代家当主 綱彌代
当主の写し鏡みたいな顔ととんでも呪力量。そんで人の底を見抜いた様な薄ら笑いが腹が立つ。あー、えのき髪を思い出してきた〜
「何やら我が家の問題に付き合わせてしまって申し訳ない」
「ほんまにそれや。一応聞いとくが、心当たりは無いんか?」
「あったらどうにかしてるよ。こちらとしても手詰まりでね」
“手詰まり”ねぇ。
「んで、俺に何の用や。多忙なご当主様が労いにって訳でも無いやろ」
「話が早くて助かるよ。平子真子、この一件から手を引きたまえ」
そう来たか…
「はぁ?何でや。アンタらのいざこざに巻き込まれてんのはコッチやで。それが何でぽっと出の当主に止められなあかんねん」
「そう…か。手を引く気はないと言うことかい?」
「たりまえや」
「そうか。ではまた会おう」
「ッ!」
俺に背を向け引き返す。かと思いきや目の前から姿が消える。
突如として腹から生える刃。滲み出る鮮血と遅れてやってくる痛みが刺された事実を実感させる。
「呪うで…クソったれ…」
「かかって来るといい。呪術師として祓ってあげよう」
徐々に全身の力が抜け…地面に倒れ伏せてしまう。
〜用語解説〜
・平子真子
24歳。
本作の主人公。
先祖(曾曾曾ジイさん)が狗巻家の人間。長らく呪術師の生まれなかった平子家に生得術式を持って産まれた呪術師。
高専では五条悟の一年後輩にあたる。
現在の等級は一級。
・五条悟
25歳。
平子の一つ先輩。自他共に認める最強。
知らない請求書が届いたのでちょっとビックリした。
・浦原喜助
浦原商店という駄菓子屋の店主で呪術師。
かつては特級に近い呪術師であったが『人の呪霊化』という禁忌の技術を発見したために上層部により呪術界から追放された。が、呪詛師になる事を恐れた上層部は“特別呪術師”という専用の階級を与えた。
御三家を始めとする高専外呪術師に与えられる特別◯級とは違い、階級が無いため任務には就けないが、いざという時は利用できるようにし、非呪術師に害をなせば追放→死刑ができる。
駄菓子の他に呪具を取り扱っており任務前に呪具の調達で立ち寄る呪術師も少なく無い。というかこっちがメインの客。
住宅街に店を構えているものの住宅の配置を利用した簡易的な人払いの結界を使っているため、「浦原商店へ行こう」と思わない限り滅多に辿り着けない。時々子供が迷い込む事があるがその時はお菓子をあげて帰り道を教えてあげる。
日下部篤也の同期らしい。
・鉄裁さん
筋肉モリモリマッチョマンのなんか凄い人。
最近の趣味は干し柿作りとうまい棒を美味く食べる研究。
・綱彌代時黄泉
古くから続く綱彌代家の現当主。噂によると恐ろしいくらい初代当主に似ているらしい。
・綱彌代時灘
綱彌代家の初代当主。
騒動の元凶である特級呪具:九天鏡谷を作った男。
・九天鏡谷
特級の名を冠する刀の呪具。綱彌代時灘が制作した。
名前は周知だが、その能力を知るものは少ない。噂によると“特級の割に微妙”らしい。真偽は不明。
・脇差し
平子真子がギターのケースに入れている二級呪具。
本命はもう一本の方だとか…。
次回「その2」
2023/10/02/12:00投稿