【3話完結】呪術廻戦〜平子真子という呪術師〜 作:アイナll
五条悟により半無理矢理、捜索の任務に駆り出された一級呪術師 平子真子。
知人の道具を頼りに探し回ったところ大きな手がかりを入手。した時にはすでに遅く、真子の前に現れた現当主 綱彌代時黄泉によって刺されてしまった。
どうなる第二話!
古びた校舎から木の香りを感じ、教室に差し込む西陽とカーテンを揺らせる緩やかな風が心地いいこの頃。
「いつまで寝とんねん!アホ真子!!」
「いっっったぁぁ!!!」
最高のオーケストラが一瞬でヘビーメタルバンドに変わるように、世界が一転する。
「何すんねんひよ里!」
「何すんはこっちの台詞や!何分待たすんや!」
「え、何分て…」
教室にかけてある時計を見てみる。時刻は10時10分を回っていた。
あぁそうだ。今日は確か姉妹校交流会の日だった。
呪術師の通う、呪術高専は東京と京都の2ヶ所にある。
年に一度東京校の生徒と京都校の生徒が呪術をぶつけ合う姉妹校交流会というものが開催される。
開催期間は2日間で初日が団体戦、2日目が個人戦になるらしい。開催場所は前年勝った方の学校で、去年は
さしずめ、ひよ里は集合時間になっても来ない俺を叩きに来たのだろう。いや叩くな。
「ほな行くで。みんな待ってんねんやから」
「行く!行くから耳引っ張んなんや!お前背ェ低いから中腰キツイねん!」
「ア゛?」ブチッ
バリィンッ!!
「見事に降って来ましたね」
「大丈夫か?」
「無事やで。せやけど、死ぬかと思ったわ」
校舎の窓から投げ出された俺は木々をクッションにしてなんとか不時着した。
そこへクラスメイトの七海建人、灰原雄が様子を顔を覗きに来る。それをヘラヘラとした顔で返す。
「はぁ?なんで死んでないんや!」
「殺すなや!呪うで」
遅れて降りて来たひよ里と互いに睨め付け合う。
「ハァゲ!ハァゲ!」と罵るひよ里に「アホ!アホ!」と応える平子。小学生のような罵り合いに見るに耐えないと頭を抱える両校の生徒達。
「…双方、元気そうで何より。何よりだが…少しは落ち着け!!」
ゲン☆コツ
「「痛たぁっ!」」
そこへ割って入ったグラサンジジィに2人仲良くゲンコツを食らってしまう。そして、
「その怒りは試合にぶつけろ!」
そうして各校のチームに分かれる。
今年は少しイレギュラーな年で両校の2、3年が不在なため1年のみ参加。引率の先生は何故か2年の担任が務めている。
京都校は人数を合わせて1年が3人と引率の先生の4人でやって来た。
今年の団体戦は各自1つのバルーンを携帯し、相手チームのバルーンを全て割った方が勝ちという単純なルールだった。
追加要素として東京校引率の先生が手製したピ◯ミンのような呪骸を各自3体ずつ支給された。それぞれ煙玉、閃光弾、3級呪霊が入っている。コレらは呪骸から取り出して使う必要があり、使い方によって奇襲や離脱、囮などさまざまな駆け引きが生まれる。
対戦するのは各校の一年三名。
東京校は平子真子、七海建人、灰原雄。
京都校は猿柿ひよ里、六車拳西、久南白。
白熱した試合はその熱量を残したまま2日目へ。
2日目はサシの呪い合い。初日の戦闘を元に相手を分析した余計なもののない戦闘は初日以上に盛り上がり、両校の一年は多くの経験値を得ることができた。
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「任務だ。灰原と七海、平子はこのまま京都校の猿柿と任務にあたれ」
「分かりました」「は〜い!」
「はぁ?」
交流会の後、先生から言い渡された任務。全国3ヶ所に発生した2級呪霊を一年二人組で祓うというもの。
二人組…当然各校で一人余りが出る。聞くところによると京都校の久南白は六車としか任務に行かないだとか。当然ひよ里が余る。
だからってなんで俺が行かなあかんねん!
「行くなら好きにしろ。でなければ帰れ」
やかましい。似るのはグラサンだけでええねん。
その「言ってやった感」やめろや。
「ちなみに、これは先日の姉妹校交流戦で十分な実力を示したものを受け、お前らを昇級試験させるかどうか判断するものだ」
「うーわセコ」
大人のズルさに泣く泣く承諾した。
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その後、俺と同じく不満そうな顔をしているひよ里と合流し、現地の窓に帳を下ろしてもらい指定された場所へ向かう。
そこは有名な温泉地帯で付近の神社に現れた2級呪霊ということだった。
「アレか?アレならウチ1人で余裕や」
その神社には白毛並みの九本の尾を持つ狐、九尾がいた。
大きさは、さほど大きくなく尻尾も含めて2m代。足から頭部までで俺と同じくらいだろうか。周囲に青い炎があることから何かしらの術式を有している可能性あり。こちらを見てもすぐに襲ってこない辺り臆病、もしくは何かしらの縛り…パッと見て分析できたのはこのくらいだ。
今は参道の階段から鳥居越しの見ている状態。もしかして“鳥居を通る”が攻撃条件なのかもしれない。
「待て。念の為に俺の術式を、」
「いらんわ、そんなもん」
俺が呪具を抜くより早く、ひよ里は駆け出し背負った巨大な呪具を振り回す。九尾の呪霊は口から炎を吐いて抵抗するも。ひよ里のノコギリのような刃で首を斬り落とされてしまう。それも彼女の術式により強化されたクリティカル。俺は出る幕なく終わったしまった。
「呆気ないなぁ」
「…」
消えていく体を眺めながらひよ里から一言。
俺も全くの同意見。呆気ない。呆気なさすぎる。この程度の呪霊に準二級二人?おかしい。何か裏がある。
「ッ!ひよ里ィィッ!!」
気がついた時には遅かった。この“場”に来た時点で気がつくべきだった。
ここはかつての妖 玉藻前が姿を変えたという殺生石と言われる岩が神社裏方にある。
さっき戦ったのは器から溢れた物に過ぎない。俺たちが戦ったは九尾の妖。その本質である玉藻前ではない。
「合わせろ!ひよ里」
推定等級不明。仮想怨霊 化身玉藻前。
「っ!来んなバカシーーー」
計り知れない呪力量。それもそうだ。一体、何百年積み重なった呪いだと思っている。
「ッ!?」
気がついた時には遅かった。能面を被った着物を着た女性のような呪霊。ヤツの放つ呪力で俺らは愚か神社ごと吹き飛ばす。たった一つのため息が、さながら超極所的な津波のように。
「…はっ!、ひよ里!ひよ…」
全身を呪力で覆ったにも関わらず既に左腕は使えない。いや左腕を犠牲になんとか体を守れた。
土の中から体を起こし、周囲を見渡す。さっきまで神社だったそこは見違えるほど変化していた。巨大なクレーターの側面。中央に佇む化身玉藻前。
先程までいたひよ里の姿はない。
「んの野郎…闇より出て闇より暗くその穢れを禊ぎ祓わん…」
手に持った携帯を投げ捨て、持ってきた呪具を手に取る。柄の先にリング状の持ち手が付き、刀身に穴が空いた特殊な形状の一級呪具。
窓の放った帳の内側に再び帳を下ろす。言葉を介さずヤツへ伝える。「俺を見ろ。サシの勝負や」
術式を使用し、その肌を斬り刻む。
しかし呪霊。いくら斬ろうとすぐさま回復し、順応し対策した。
真正面で斬り合うのでは無く、全方位。出会ってすぐに見せたあの全方位の呪力放出。
たった一発で俺は再び地面の中に埋もれてしまった。
「っあー。一級?いやそれ以上。これは特級や。ほんま、俺がなんでこんな苦しまなあかんねん。ここで死ぬんは嫌やわー」
気がつけば手印を結んでいた。そっと内緒話をするように人差し指を口へ当てる。
未だ完成しない。一応作り方や、込めるものも決まってる。何度練習しても上手くいかない。でも、万一に賭けるしか俺にはない。
領域展開…
あの時降ろした帳はこのために。
俺は未だに空間を把握するという感覚はわからない。それでも、今は外界を遮断する結界の中。この空間に術式を付与する。
その結果、俺の予想は怖いくらい当たった。
化身玉藻前。それは仮想の存在である玉藻前への人々の恐怖が折り重なったもの。そこには当然、溢れ出るもの。そして恐怖への恐怖がある。
特級が近くにいたためになりを潜めていた3級〜2級までの呪霊がわらわらと湧き出して特級仮想怨霊へ襲いかかる。
それでなお一発で鎮める特級仮想怨霊。その余波で帳ごと未完成の領域も破壊されてしまう。
(あぁ、もう終わりか)
ひよ里はいない。呪力は尽きた。術式も使えない。
くっそ。呪術師に未練のない死は無いか。よく言うよ。
もし俺が呪いになれたら、絶対にお前を…
「虹龍ッ!!」
倒れる俺をそっと抱きかかえてくれた男。なんなんだと言いたくなるその謎前髪が特徴的な先輩。
「夏油パイセンやないか。観光しに来たんか?」
「それだけ言えるなら上等だ。シンジ、京都校の子は」
「…」
「そうか。なら仇打ちだ!」
先輩が来たのを見て、先輩に安心して俺の意識が途絶えた。その後、どうなったかは全て終わってから知った。
特級呪術師の夏油先輩がその特級仮想怨霊を倒してくれたらしい。先輩が戦う頃には呪力も相当削れていたから簡単だったそうだ。
他の現場もかなり酷かったらしい。七海のところは、なんてことない2級呪霊だったらしいが実際は土地神とも言える呪霊で推定等級は一級。この戦闘で同行した灰原が死亡。呪霊は五条先輩が1人で仕留めた。京都校の六車、久南に関しては帰ってくることはなかった。冥冥さんと歌姫さんが調査に行ったところ、高専のバッジは回収できたらしい。詳しいことは語ってくれなかった。
ほんの数日前まで六人で競い合っていた同期は、今や二人まで減ってしまった。七海、俺共に後悔の夜が続いた。
『いつまでクヨクヨしてんねん!』
今は聞こえるはずのないアイツの声が聞こえる。
この世界からそろそろ覚める頃合いか。
「ったく、このまま寝かせてくれっちゅうねん。ほんまめんどい呪いやわ。ひよ里…」
『寝過ぎや!今何時やと思ってんねん!』
「何時でもええやろ起きれば」
気がつけば教室の中。
ひよ里に起こされて教室を見渡せば、久南と灰原がバカやって六車がゲンコツをするいつもの光景があった。
あの日以来見ることはない光景。見てはならない光景がそこにはあった。
「はよう行け。お前がここに来るんはまだ早いで」
ひよ里に席から引っ張り剥がされ、ドアの向こう側へ投げられる。
最悪な最悪な過去だったが、夢で見るにはこれほど良い夢はない。
どんな悪夢でもアイツに会えるのなら。もう、夢でしか会えないのだから。
「ほな、こっからが“本番”や」
特級仮想怨霊 化身玉藻前。高専に特級指定されている16体の1体であり、あの奇跡的な地獄で巡り合った特別思い入れのある呪霊。
あの日、私は任務で少し遠出をしていたのが良かった。突如後輩から届いた空白のメッセージ。件名も本文もない、普段であれば迷惑メールだと無視するが今回は違う。送り主の性格的に無意味な嫌がらせはしない人間だ。普段なら『よう見るなwww暇かwww』くらいは書いてあるものだ。となると、メールに何も書けないほど逼迫しているということだ。
持てる中で最速の呪霊に乗り、任務地に駆けつける。こう言う時に限って嫌な予想は全て当たってしまう。
窓が降ろした帳の内側に小さな帳。そしてその内側に蠢く邪悪な呪力。
私が駆けつけたと同時だった。内側に張ってあった帳は内部から破られ、クレーターの中で向かい合う呪霊と後輩がそこにいた。
力を出し尽くした倒れる後輩を支え、そっと地面へ寝かす。彼はとっくに呪力を枯らしており、同行していた姉妹校の生徒は何処にも見当たらなかった。
こんな理不尽が許されるのか!
私は激怒した。これ程の相手だ。最悪手持ちの呪霊を全て犠牲にしてもヤツは潰すと決心した。
だが意外にも虹龍や準一級ほどの呪霊でほぼ無力感できた。
それほどまでに弱っていたのだ。私の背後に倒れる憎い後輩は、自分より数段強い格上相手にここまで奮闘していたのだ。
「君だけは、絶対に死なせない!」
呪霊の中に丁重に仕舞い、最高速で高専へ戻り治療させた。
しかしその後、高専で見た彼の絶望的な表情。
あの顔が私の心に今でも突き刺さっているままだ。
〜〜〜〜〜
「お願いしますよ?決して何人も入れないように」
「えぇもちろん。巨額の寄付と呪霊を頂きましたから。何人も通しませんよ」
ここは綱彌代家が所有する山の中。たった一箇所の入り口から入り、洞窟を通ってしか向かえない特殊な祭壇のある間。
初代に恐ろしいほど似ていると言われる現当主 綱彌代時黄泉は本家が持っていたほぼ全財産と極秘に封印していた準一級3体と二級5体、その他呪霊おおよそ100体を差し出す代償として“儀式の最中は五条悟も入れるな”という依頼を受けた。
正直、時黄泉の事は好かないが、あの男がこれ程の代価を払ってまで叶えたい望みに興味が湧いた。だから受けた。
たった一箇所の入り口に塞がるように立ち、どうせ誰も来ない儀式の門番をする。
「よぉパイセン。早速ですまんが、そこどいてもらえんか」
でも君だけは特別だ。
今は立場が違えど、私の同士たりえる。
「…通るといい」
「感謝はせぇへんで」
「かまわないさ」
すまない時黄泉。
正直、君のことは猿と同じくらい嫌いなんだ。
〜用語解説〜
・2006年度入学一年生
東京校は平子 真子、七海 建人、灰原 雄。京都校は猿柿 ひよ里、六車 拳西、久南 白。
いずれも輝く才能を秘めた呪術師の卵であったが、姉妹校交流会後の任務で4名が死亡する異例の年。
卒業した2名は呪術師を辞めたが、2015年現在では復帰している。
・特級仮想怨霊 化身玉藻前
某県、某神社に突如現れた仮想怨霊。
コイツとは別に九尾への恐怖から生まれた呪霊や心霊スポットにたまった呪霊などもいる。
あの戦いの後、夏油により吸収されて今でも夏油が持っている。
→作者が「夏油の玉藻てどこで手に入れたのだろう。高専の時に持ってたら甚爾戦で使ってたよなぁ」と思ったので、甚爾戦後、百鬼夜行前のこのタイミングで勝手に登場させて勝手に入手させました
・領域「
平子真子がわずか高専二年生という異例の若さでたどり着いた未完成の領域。
この時はできなかった空間掌握を帳で代用することで、帳内の空間に自身の術式を付与した。
領域内の特級呪霊に隠れ潜んでいた呪霊達が一斉に姿を表し、平子ガン無視で同士撃ちを始めた。
現在では完成しているとか…?
・一級呪具「逆撫」
柄の先にリング状の持ち手が付き、刀身に穴が空いた刀の呪具。
噂によると平子の術式と同じ名前だとか?
次回 最終回「その3」
2023/10/03/12:00投稿