あれから夏祭りが終わり、学生なら新学期が始まった8月31日。俺はいつも通り図書館へ行くのではなく、東雲にある場所に呼び出された為その場所へと向かっている。その、ある場所とは
「もういいって」
そう言って俺はある場所の前で立ち止まり小さく呟いた。ある場所と言うのはタピオカミルクティーのお店だった。店が見えた辺りから嫌な予感はしていたが、本当にタピオカだとは。この前宵崎のタピオカ飲んだからいらない
しかし、帰る訳には行かないので東雲を探してみるが。肝心の東雲がまだ来ていないので隠れて東雲を待つことに。すると、数分後に東雲が到着。ちなみに隠れたのには意味は無い
俺が居ない事にあまり驚いては居なかったが辺りをキョロキョロしだして、終いには電話をかけ始める。その電話の相手はもちろん俺だ
「はい」
『あ、雄磨?今着いたんだけど、あんた何処にいるの?』
「もう着いたのか?」
『そう。さっき着いたから。でも、姿が見えないから電話したんだけど今どこなの?』
「……後ろに」
「ひゃい!?」
電話中にこっそり東雲の背後に近づき、脅かしてみると普段聞いた事ない声が東雲から聞こえた。ひゃい!?って何?てか、そんな人をお化けみたいな感じで見られても
「あ、あんたね!」
「ほら、暑いから少し冷そうかなって」
「し、心臓に悪いわよ」
「涼しくなったか?」
「……お陰様で」
「それは良かった」
少し腑に落ちない東雲だったが、ここに呼んだ理由を話してくれる。俺はそれを聞くつもりでは居るが、一応逃げ出す準備をする。しかし、東雲に腕を組まれてしまい無理になる。傍から見たらカップルなのか?周りの人達が見てくる。そんな事を気にしてないのか東雲は話始める
「覚えてる?」
「何を?」
「タピオカ事件」
「ちょっと記憶に無いですね」
「なら、思い出させてあげる。雄磨と一緒に有名なタピオカミルクティーのお店に行った。そこで私と雄磨でそれぞれ違うタピオカミルクティーを頼んだ」
「へい」
「私は雄磨が飲んでたやつも気になってたから飲む前に先に1口交換しない?って聞いた。雄磨は許可した。ここまでは覚えてる?」
「へい」
「そこであの悲惨な事件が起きた」
凄い壮大な感じで話しているが、先に結論を言うと俺が東雲の飲んでいたタピオカミルクティーのタピオカだけを食べた。それに驚いている隙に俺の飲んでいたタピオカミルクティーからもタピオカだけを食べた。これがタピオカ事件
「私、どんな気持ちだったか分かる?」
「別にミルクティー飲めたんだからいいだろ」
「それだとタピオカミルクティーって名前にならないのよ!」
そう言って東雲はタピオカミルクティーのお店の看板を指さす。そこにはタピオカミルクティー販売中!と書かれており、イラストにはちゃんとミルクティーの中にタピオカが入っていた。看板を見ていると東雲は続ける
「そもそもね!タピオカだけを飲むって逆にどうやったら出来るのよ!」
「慣れれば」
「その慣れればが普通は出来ないのよ!それに、あんた奏にも同じ事したらしいわね」
「よくご存知で」
「……瑞希にやったら消されるわよ?」
「なんで暁山が」
「あの子、タピオカミルクティー好きになったみたいで。それも私よりも」
「確かにそれはやばいな。あの時、お前から死ぬ程追いかけられたからな」
「お陰様で自分の体力を知る事が出来たわよ」
「どういたしまして」
「感謝してない。むしろ逆よ」
呆れた顔をする東雲。そんな東雲を見て俺も呆れた顔をする。しかし、暁山がタピオカミルクティー好きになるとは。あいつ、可愛い物とか好きなのは分かってるがタピオカミルクティーって可愛いか?
「とりあえず、あの時のリベンジをする為にここに来たのよ。仕事を無視して」
「いや、仕事しろよ」
そのリベンジを作ったのは俺なので俺が言えた事では無いのは分かるが、タピオカミルクティーだけの為に仕事を破棄するとは。凄まじい気合いだ
それから俺達は店に入りタピオカミルクティーを2つ注文。俺は抹茶タピオカラテ、東雲は黒糖タピオカミルクだ。これもあの時の同じメニューである。前にも飲んだ為、違う奴にしようとしたら東雲に怒られた為前と同じに
そして、タピオカミルクティーを買った俺達は近くのベンチに座り飲む事に。ちなみにここもあの時の同じ場所だ。なんでここまで忠実に再現するんだろうか
「今回は交換は無しだから」
「いや、もうさすがにしないって」
「やっと味わって飲めるわよ」
東雲はそう言っ黒糖タピオカミルクを飲む。そして、凄く幸せそうな顔をしていた。この顔はあの時は見れられなかったからな。幸せそうで何より
「やっぱりタピオカ美味しい」
普通に飲んでいるだけなのに凄く綺麗に見えるし、可愛くも見えるのはなんでだろうか。東雲だからこそなのか。昔の東雲には無かった大人の雰囲気がある
「ん?さっきから私の方を見てるけどどうかした?」
俺の視線に気づいたのか東雲は飲むのをやめて俺の方を向く
「いや、昔に比べて成長したなぁって」
「……変態」
「冤罪だ」
別に身体の事では無いのに、何故か胸を隠す東雲。さすがに女の子の前でセクハラ発言なんかするわけが無いのに。そう思いながら俺はタピオカだけを食べた。その様子を見た東雲は声を出して驚いている
「それ!!」
「ん?」
「それよそれ!」
東雲が指を指してる方を見ると俺が飲んでいる抹茶タピオカラテを指さしているようだ。別に変な所は無いのだが、何に驚いているのか分からない
「交換は無しって言ったのはお前だぞ?」
「違うわよ!てか、タピオカ無いんだから交換も何も無いわよ!」
「ですね」
東雲は少し間を置いてため息までついた後に口を動かす
「雄磨、人の人体構造的にタピオカだけを飲むのは無理なのよ。それが出来るのは化け物」
「お前、凄い失礼な事言ってるからな?」
「だったら教えなさいよ!どうやったら出来るの!」
「普通にストローをタピオカだけに当ててゆっくり吸うんだよ。それを繰り返す。すると、このようにタピオカだけを食べる事が出来る。まぁ、味の無い黒い塊を食べてるだけだからあれだが」
そう言ってタピオカが無くなった抹茶ラテを東雲に見せる。ちなみに俺は東雲が持っている黒糖タピオカミルクを指す
「何よ」
「普通に飲んだらそうやってタピオカが少し多く残るんだよ。そして、最後には黒い塊だけが残る」
「それ、飲み方が悪」
「うるさい」
「あ、ごめん」
「いいか?タピオカミルクティーはどれだけ早くタピオカを食べれるかが大事なんだ」
「聞いた事ないんだけど」
「大学生の時、知り合いのやつが言ったんだ」
「うん」
「タピオカミルクティーはタピオカだけ残ってしまった場合、無惨に捨てられてしまうと」
「間違った情報だから忘れなさい」
そう言うと東雲は黒糖タピオカミルクを飲み始めた。俺は必死にタピオカだけが残った時の事を説明していたが、東雲は呆れた表情をしながら、ただ黒糖タピオカミルクを飲んでいた
結果、俺の言う通り。東雲は最後にタピオカだけ残ってしまい、それを指摘したら顔を真っ赤にして怒られてしまった。凄い理不尽だ