東雲と別れてから俺は1人で絵を見て行っていた。しかし、俺には絵の何が良いのかが分からない為見てもあまり何も思わなかった。いや、確かに綺麗な絵とか凄いとは思うのだが。専門的な感想に関しては分からないのだ。筆の使い方が良いだとか、色合いが良いだとか。一般人の俺には理解し難い
「君も来ていたんだな」
「あ、どうも」
絵を見て回っていると、後ろから話しかけられた俺は後ろを振り返るとそこには東雲のお父さんが立っていた。東雲のお父さんも絵を描いている人で有名な画家らしい。詳しい事は聞いてないが、過去に東雲とも絵のことでトラブルがあったとか無かったとか
「どうだい。絵名の絵は」
「凄いです」
「それだけか」
「すみません。俺には絵の感想は無理です。そもそも何が良いのかが分からないので」
「はは。君らしいな」
俺は東雲のお父さんに素直に言う。別に東雲のお父さんだからと言って気を使う必要も無いし、そもそも嘘を言った所で何も無いから
すると、東雲のお父さんは東雲の絵を見て少し考え込んでいた。そして、少し時間が経ってから話始める
「私は馬鹿だったよ」
「え?」
「絵名には画家になれるほどの才能が無いって言ってしまった。しかし、こうして周りから認められ、展示会まで出すように。絵名の絵はちゃんとこうして評価されたんだな」
「みたいですね」
過去に何があったかは詳しくない。だが、少なくとも今の親子関係は普通になっている事を願う。東雲だって本当はお父さんの事好きだと思うし
「お父さんはどうしてここに?」
「私か?私は絵名の絵を見たくてここに来たんだ。絵名には秘密で」
「言ってないんですか?」
「あぁ。言ったら来ないでって言われそうで怖くてな」
「そんな事言わないと思いますけどね」
「どうして分かるんだ?」
「東雲、言ってましたよ。いつかお父さんに絵を見てもらって認めて欲しいって。まぁ、お父さんがたまに東雲の絵を見に来てる事も知ってると思いますし」
「そうだったのか」
東雲には悪いけど、どうせあいつからお父さんに直接言うのは難しいと思うから俺から話すしかない。あとが怖いけど
絵名は高校の時、画家の才能が無いとお父さんに言われたらしい。それから絵を描いてネットに投稿しても反応はあまり。まぁ、よく分からないが
「それに、お父さん絵名の絵を認めた時ありましたよね」
「……」
「東雲が大学でコンクールで出す絵を描いてて。それを見たお父さんが絵を認めた。と言っても半分くらいダメ出しだったみたいですけど」
「そんな事もあったな」
「東雲の高校時代の事は分かりません。分かりたくも無いですし、干渉する気も無いです。でも、大学の時の東雲の事は分かります。絵を描く時のあいつの楽しそうな顔。絵を描き終えた後のあいつの嬉しそうな顔」
「七瀬くん」
「そんな東雲の顔をいつかお父さんにも見てもらいたいです。あいつ、誰よりもお父さんに心から認めてもらいたいんだと思います」
東雲は前に言っていた
【いつか、お父さんに認めてもらいたい。そして、お父さんを超える画家になる。そしたら私きっと心から嬉しいって思うから】
絵を描いている東雲が俺に言ってきた言葉だ。その時に、あ。じゃ、今は嬉しくないんだな。うわぁ、最低な女だな。せっかくお前の絵を認めてくれてる人が居るのに嬉しくないとは。最低だな。と言ったら本気で怒られてしまった
ともかく、東雲はお父さんに認めてもらいたいんだろう。まぁ、今のお父さんを見る限り認めてそうだけど
「なので、東雲と話す事があったら是非絵の事について話してあげてください。きっと東雲なら話してくれると思いますから」
「そうか」
「ちなみに東雲もここに来てますよ」
「……」
「多分、今は友達と話してると思いますけど。お父さんが行ったら東雲から話しかけてくると思います」
「……」
「行くか行かないかは任せますけど、ここで行かないと多分後悔しますよ?」
「……」
東雲のお父さんはしばらく黙ったままだった。それはそうだろう。東雲が居るので話に行ってはどうです?と言われて素直に分かったとは言えないだろう。気まずいと思うし
しかし、ここで東雲と話す機会を逃したら次は何時になるか分からない。だったら今ここで東雲と話をして仲直りでは無いが、話し合いをして少しは家族としての会話が起これば
「……探してみるよ」
「そうですか」
しばらく黙っていた東雲のお父さんが小さい声で言った。それを聞いた俺は少しだけ笑って言った
「だったら、早い方がいいですよ」
「そうだな。七瀬くんありがとう」
「お礼を言われる事はしてないんですけどね」
「それでもだ。君は絵名を近くで支えてくれてた。私には出来なかったことだ」
「出来なかったのならこれから出来るようにすればいいだけの話ですよ」
「……本当に君はすごいな」
東雲のお父さんはそう言って歩き出した。最後に何かを言っていた気がするが残念ながら俺の耳には聞こえていなかった。まぁ、そんな重要な事じゃないだろう
改めて俺は東雲の絵を見てみる。しかし、俺には理解し難い。何が良くてどこが良いのか。ここに絵の専門家が居たらきっと何処がいいとか教えてもらえるのだろうか