最弱魔女の成り上がり配信   作:龍翠

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魔法の訓練

『女二人もめちゃくちゃ生意気そうやったな』

『あいつらの指導係誰だったんだよめちゃくちゃだぞ』

『最後の男の子が苦労性っぽくてかわいそうだったよ……』

 

 佐野君は、うん。むしろあのパーティは佐野君がいないといろいろと危ないかな。他三人が他の探索者相手でもあんな感じだから。

 

「サキ」

「あ、うん」

 

 テトちゃんに声をかけられて、私は思わず姿勢を正した。何を言われるんだろう。やっぱり他の人を探す、とか。

 

「同じようなことが何度もあると面倒だから、明言しておく。怒られそうだから言いたくなかったけど」

「え、と……。なに?」

「サキのスキルが他の人よりも弱いのは、私が原因」

「え……?」

「私たちが、サキからスキルを奪った」

 

『は?』

『え?』

『奪った……!?』

 

 スキルを奪った。私が弱いのはテトちゃんのせい。

 いや、意味が分からない。だって、私がテトちゃんと会ったのは、昨日だ。私が探索者を始めたのは去年から。だから、私がいつまでも弱いのは、私のせいで……。

 

「ダンジョンマスターが、サキを選んだ。だから私は、私たちはサキに与えられるはずだったスキルを剥奪し、別のものを与えた」

「別のもの?」

「魔法を扱う才能」

 

 そう。だから。つまり。

 

「魔法を扱えるのはこの世界ではサキ一人だけで、その代わりにスキルは与えられなかった」

 

 ああ、そっか。ずっと私は弱いままだった。何をやっても強くなれなくて、もっとダンジョンの奥まで潜りたいのに、ずっと一層で躓いてて……。

 

「テトちゃん。聞いてもいい?」

「構わない」

「どうして私だったの?」

「サキが、ダンジョンのクリアを目指していたから。すでにクリアを諦めた人が多い中で、サキだけが本気でクリアを目指していたから」

 

 だから。

 

「サキに魔法を教えてあげる。このダンジョンをクリアする力を」

 

 魔法を得るための代償が今までの私の立場だったのなら。それならまだ、安い方なのかな。分からない。今までずっとバカにされて、けなされて、何度もパーティを追い出されて。

 でも、魔法さえあれば。テトちゃんの魔法さえあれば、私はダンジョンを探索できる。友達を探して、もしくはダンジョンマスターに探してもらって……。それが、できる。

 

「テトちゃん」

「うん」

「言いたいことがない、と言えば嘘になる。でも、私は、魔法がほしい」

 

 私がそう言うと、テトちゃんが薄く微笑んだ、ような気がした。

 

 

 

『魔法が俺らには絶対に使えないと判明した件について』

『ショックだ……いやわりと本当に……』

『これさ。テトちゃんだけじゃなく、サキちゃんの価値もめちゃくちゃ上がってない? この子ら大丈夫? 誘拐されない?』

 

 怖いことを言わないでほしい。本当にあり得そうで困る。

 今私たちがいるのは、二層の適当な部屋。安全地帯というわけでもなく、今もゴブリンがたまに入ってきてる。入ってきて、そして直後にテトちゃんに燃やされてる。

 

「ゴブリンに同情する日が来るとは思わなかったよ……」

 

『本当にな!』

『ヒャッハー! 汚物は消毒だー!』

『マジで燃やすバカがいるわけwww』

『ここにいるんだよなあ』

 

 私はそんなテトちゃんに手を握られてる。まずは魔力を感じる訓練、らしい。

 

「他の人はダンジョン侵入時にスキルの種を植え付けられる。別に悪いものではない。訓練すればスキルは成長していく」

「私の場合は?」

「私の魔力を植え付けた。スキルとは相反する力だから、サキは最初に覚えたスキルだけで止まって、あとは魔力へと成長のリソースが奪われている」

「なるほど……?」

 

『つまり、ゲームで言うなら、戦いで得た経験値がスキルではなく魔法に全部振られてるってことか』

『分かりやすいように言ったつもりだろうが何も変わってねえよw』

『つまりテトちゃんかわいいってことさ!』

『なるほど!』

 

 何がなるほどなのか理解できないけど、テトちゃんはかわいいのは認める。今も握られてない方の手でテトちゃんを撫でてあげると、少しだけ気持ちよさそうに目を細めた。

 

「見て。テトちゃんかわいい」

 

『知ってる』

『一瞬のふにゃ顔最高でした』

『撫でられるのが好きなのかな?』

 

 これらのコメントはもちろんテトちゃんにも聞こえてるわけで。テトちゃんはじっとりとした目で私を睨んできた。でも怒ってないのはすぐに分かる。威圧感とか全くないから。

 

「サキ。何をする」

「テトちゃんがかわいいのが悪いと思います!」

「…………」

 

『サキちゃんwww』

『いいぞもっとやれ!』

 

 テトちゃんは小さくため息をつくと、私を見据えてきた。少しだけ、怒ってる、気がする。

 

「サキ。魔力を感じる訓練は二種類ある」

「嫌な予感がひしひしするけど、聞きます」

「ちょっと時間はかかるけど痛くない今の訓練と、すぐに覚えられるけど死んだ方がましだと思えるぐらいに痛い訓練。今から後者をしようそうしよう」

「ごめんなさい私が全面的に悪いですだからやめてください!」

 

『これは草』

『サキちゃんの顔色が一気に悪くなってて草も生えないわwww』

『めちゃくちゃ生えとるやないかいw』

 

 テトちゃんがわざわざ警告するぐらい痛い訓練とか想像するだけでも怖すぎてやりたくないよ。

 その日の訓練は、結局その魔力を感じる訓練だけで終わることになってしまった。

 




壁|w・)さくっとネタばらし。


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