今回は、ハクアとルビー……そして、あの三人が中心の話となります。
また、この話には小説の『一番星のスピカ』のネタバレとなる部分もあると思います。それでもいいという方は、どうぞご覧ください。
side:ルビー
「ただいまー………ってあれ?」
ある日、私は仕事から帰ってきたのだが………どうやら今、家にいるのは私一人みたいだ。
「そっか……今日はみんなまだ………」
そんなことを呟きながら、私はリビングへと歩いていく。すると……
「あっ」
「……」
そこには、ソファーで横になっているハクアの姿があったのだ………これは寝ているのかな……?
「ほんと、いつ見ても可愛い寝顔だな~……」
最近、デザグラの運営とかで忙しいとか言っていたから、疲れているのだろう………ん?そういえば神様って疲れるのかな?そもそも睡眠って―――
「……」
そんなことを思っていた私だけど……
「………っ!」
急にハクアの右手を握った……そして……
「良かった……ちゃんと暖かい……」
そんなことを呟いてしまう……。
「あ……」
その後、自分の呟いたことに気が付いた私は………少しだけ、昔のことを思い出した………。
それは、私がまだ『天童寺さりな』として生きていた時のこと………
『あ!せんせーいらっしゃい!』
『あぁ、お邪魔するよ』
いつものように病室に来たせんせを、私は笑顔で出迎える。
『それじゃあ―――』
その後、私たちは一緒にB小町のDVDを見始めた。二人でDVDの感想を言い合ったり、アイのことについて熱く語り合った。あと、歌も歌ったりした……前に主治医の先生に怒られたからほどほどにだけど……それから時間は過ぎていき―――
『はぁー!』
『最高だった……!』
私たちはDVDを見た後の余韻に浸っていた。
『ちょっとその辺を散歩しないか?ここのところ外に出てないだろ?』
『うん!早く行こ?』
『わ、分かったから急かすなって……』
その後、病院の周りを散歩しようとせんせに言われ、私はせんせに車椅子を押してもらって外へと向かっていた。すると……
『……あの』
『えっ?』
『ん?』
突然、車椅子に乗った私と同じくらいか年下の子が、後ろから声を掛けてきて………
『これ……』
その子が何かを私に差し出してきた………その何かというのは……
『あっ!』
私の「アイ無限恒久永遠推し!!!」の文字とデフォルメのイラストが描かれたアクリル製のキーホルダーだった。どうやら、さっき何処かで落としてしまっていたみたいだ。
『ありがとう!』
『良かったな』
『うん!』
傷は………無し!本当に良かったぁ……!!
『……』
すると、喜んでいる私を余所に、キーホルダーを渡してくれた子は、黙って何処かに去って行こうとしていた。
『ちょ、ちょっと待って!』
『?』
私が声を掛けると、その子は素直にこちらを向いてくれた………さっきはキーホルダーが無事だったことが嬉しくてよく見ていなかったけど、その女の子………いや、男の子は中性的で髪は肩のところまで伸びている可愛らしい容姿をしていたのだ。
『ありがとね!これ大事なものなんだ~!』
『それなら良かったよ………じゃあ―――』
『!だから待ってよ!』
『っ!?』
私がお礼を言うと、その子はまた去ろうとしたので、それを再び引き止める。
『あなた名前は?』
『……神崎白愛……だけど……?』
その子……白愛君は不思議そうな表情をしながらも答えてくれた。
『私は天童寺さりな、こっちはゴロー先生』
『君とは初めましてだね?研修医の雨宮吾郎だ』
『ど、どうも……?』
私たちも自己紹介をし、白愛君は戸惑いながらもそう返した。
『ねぇ、白愛君は今一人なの?』
『?今というか、いつも一人だけど……』
『『……!』』
そっか………せんせに出会ったり、アイを推す前の私と同じ……。
『じゃあ、そろそろ検査の時間だから』
『あっ、ま、またね!』
白愛君はそう言って、今度こそ何処かへ行ってしまうのだった……。
それから数日後……
『お邪魔しま~す!』
『えっ?』
私は白愛君の病室にお邪魔(アポなし)していた。病室は以外にも、私の病室の近くだった。
『な、何で僕の病室に……?』
『?何でって……だめだった?』
『いや……そういうわけじゃないけど――』
『なら良かった!』
『……せめて理由くらい聞かせて欲しいんだけど?』
そして、私は車椅子で白愛君のいるベッドに近づいていく。
『話し相手としてはせんせがいるんだけど……』
『せんせ…………あぁ、吾郎先生ね』
『だけど同い年の相手がいなくて……』
『つまりは……話し相手になって欲しいと……』
『うん、そっちがいやじゃなかったら……だけど』
私が恐る恐るそう訊くと……
『まぁ……そういうことなら』
嫌がることなくそう言ってくれたのだ………初めて会ったときの様子から、人と話すのが苦手なのかと思ったけど……意外にそんなこともないのかな?
『え!ほんと?』
『うん』
『よし!じゃあよろしくね!』
それから私と白愛(本人に許可はもらった)は色々なことを話した。
『白愛って私よりも年下なんだね』
『うん、今年で……11』
『その割には落ち着いているよね……』
お互いのことだったり……
『へぇ……それがきっかけで吾郎先生と……』
『うん!あっ!今度白愛も見てみる?』
『?見てみるって何を?』
『もちろんアイのDVDだよ!』
『アイ……?』
『!アイはねB小町っていうアイドルでね―――』
『……』
私の最推しのアイのことを教えてあげたりした………まぁ、こっちが一方的にたくさん話したけど。
『今日はありがとね?』
『ううん、こちらこそ』
『!そうだ……今度は私の病室でせんせと一緒に話さない?』
『うん、いいよ』
そして、そう約束をしてから私は、自分の病室へと戻っていくのだった……。
白愛と一緒に話をするようになってから少ししたある日、私の病室でいつものように二人で話していると……
『そういえばさ……白愛の家族って、どこにいるの?』
私はふと、そんなことを訊いてみた………白愛は大半の時間を私と過ごしてくれているから、白愛の病室に家族がお見舞いに来たりしないのかと疑問に思っていた………けど……
『……知らないよ』
『えっ?』
その言葉に、白愛はそう答えた………「知らない」って、一体……?
『ど、どういうことなの……?』
私は、恐る恐る白愛にそう訊いた……。
『僕が病気って分かってから、家族は一度たりともここに来ていないからね………というか、もう長いこと会ってないよ』
『そう……なんだ……』
『ただ分かっているのは………
おそらく、僕は親から捨てられてるも同然ってことだよ』
『……!?』
『まぁ、前から両親は兄さんの方ばかり構っていて、僕に興味はない……というかいつも邪魔みたいに思われていたようだし………病気にかかっていなかったとしても……ね』
『……』
『入院費は払われてるらしいけど……きっと両親じゃなくて、顔も知らない親戚の誰かもね』
いつも私に優しく接してくれている白愛に、そんなことがあったなんて……。
『……寂しく……ないの?』
『うーん……寂しくはないかな』
白愛はなんてことないように、そう口にしていたが……
『
その目は何処か、悲しい目をしているように見えた………白愛も、私と同じ……いや、もしかしたら私よりも……。
『っ……』
『……さりなちゃん?』
『!ううん、何でもないよ?』
白愛が私の顔を覗き込んできてそう言うが、私はなんてことないように返事をする………そして……
『……ごめん』
『え?』
『変なこと、聞いちゃって』
『?別に気にしなくてもいいよ?』
『……』
そんな白愛の言葉を聞いて、私は思わず黙り込んでしまう……すると……
『……ありがとう』
『えっ?』
『やっぱり、優しいんだね』
白愛は私にそう言いながら、車椅子を動かし……
『じゃあ、またね』
もう時間になったらしく、自分の病室へと戻って行った。
『『アイーー!!』』
『!?』
それからさらに数日後、今度は以前からの約束通りゴローせんせも一緒になり、B小町のDVDを見ていた。
『ふ、二人共……???』
白愛はというと、私たちが興奮しているところを見て驚いていたけど………そして……
『ねぇねぇ!どうだった?』
『え?』
『素晴らしかっただろう?』
『ちょ、二人共なんか怖いよ……』
DVDを見終わった後、私とせんせは白愛に感想を聞こうと迫っていた………今思えば、少しグイグイ行き過ぎだった気がしたけど……。
『私もいつか、アイみたいに……!』
『……』
私はふと、そんな言葉を小さく零した………すると……
『……なれるよ』
『えっ?』
『さりなちゃんならなれるよ……このアイさんと同じようなアイドルに』
その言葉が聞こえていたのか、白愛が私にそう言ってきたのだ。
『ほ、ホントに?』
『うん……
信じ続ければ、願いは叶うものだからね?』
『……!』
前にせんせにも「退院したらアイドルにでもなればいい。そしたら俺が推してやるよ」と言われたけど……
『それまでに僕が生きていたらだけど………うん、
絶対にさりなちゃんのファンになるよ』
この言葉も、同じくらい嬉しかったなぁ……。
『ホントに……?』
『ここで噓をついてどうするの……なんなら指切りでもする?』
『!うん!せんせも一緒に!』
『!分かったよ』
私たちは三人で小指を絡ませ……
『約束だからね?』
『あぁ』
『うん』
約束をするのだった…………けど――
『………え?』
『容態が急変って……!』
それから少しも経たないうちに、白愛の容態が急変してしまった……。
『何で……だって、昨日だって―――』
白愛は昨日だって、私たちと一緒に話をしていたはずなのに……そんな様子は一度も……!
『ごめんなさい……白愛君から口止めされていて……』
『え……?』
『二人には心配をかけさせたくない……と』
『『……』』
そんな看護師さんの言葉に、私もせんせも思わず黙り込んでしまう…………私たちのために、そんな……。
『君たちは仲が良かっただろう……せめて最期は、傍にいてあげてくれ』
『『……』』
白愛の主治医の先生にそう言われた後、私とせんせは白愛が寝ているベッドに近づいていく。
『こんな……こんなのって………』
すると……
『……あれ?二人とも……?』
『『!』』
白愛が目を開いて、こちらをを向いた。
『ごめんね?こんなことになっちゃって……』
『白愛……』
『!無理しちゃダメだ、今は寝ていないと―――』
無理をしてでも私たちと話そうとしている白愛に、せんせがそう言おうとするが……
『さりなちゃん……先生……』
『!何?』
『何だい?』
白愛は私とせんせに向かって口を開く。
『……ごめんね』
『え……?』
『約束……守れなくて』
『!白愛が謝ることは―――』
こんな時にまで、私たちのことを……。
『退院したら、夢……ちゃんと叶えるんだよ?』
『!うん!絶対にアイドルになるから!だから―――』
私は白愛の手を必死に握りながら、必死に声を掛け続ける………そして……
『次に生まれ変わったら………必ず―――』
私の手から、白愛の手が力なくベッドの上へと落ちる………。
『白……愛………?』
『っ……!』
そして……
『いや……いやだよ!!いかないでよ……!!』
私は声を上げて涙を流しながら、もう動かなくなった白愛の手に触れ……せんせも涙を流し、白愛を見ながら手を強く握っている………そしてしばらくの間、私たちはそのままでいたのだった……。
「それから何ヶ月か経った頃、私も……」
けど、ママの子に生まれ変わって……私の兄と弟として生まれ変わっていたせんせや白愛と再会することができた……それに、あの時の約束通り―――
「ん……」
「……!」
「……姉さん?帰って来てたんだ」
そんなことを思っていると、ハクアが目を覚ましたようで、ゆっくりと身体を起こす……
「っ……!」
「!?」
そんなハクアを、私は思い切り抱きしめた………。
「姉さん?どうしたの?」
戸惑うハクアは、私にそう訊いてくる。
「……」
私は何も言わずに、ただただハクアを抱きしめ続けたが……
「……何か昔のことでも思い出した?」
「え……?」
何故かそう言い当てられてしまう………そして……
「大丈夫だよ……僕はここにいるし、どこにもいったりしないから」
ハクアは私を抱きしめ返してきた………何を思い出していたのかも、ハクアにはお見通しみたい……。
「それに……今はこうして家族になって、あのときの約束も守ることができた……それも最高の形でね」
「!……うん、そう……だよね」
ハクアは私を安心させるようにそう言ってきてくれる………。
「……」
「……じゃあさ、指切りでもする?」
「指切り……?」
「二人だけだけど、昔したみたいにさ」
私の不安そうな様子を見て、ハクアがそう言ってきたのだ。
「………本当に、変わってないなぁ」
「え?」
「ううん、何でもないよ」
そして、私とハクアは小指を絡ませ……
「約束だよ?」
「うん、約束だね」
あの時と同じように、指切りをして約束するのだった…………互いにこれからの願いを叶え、幸せに生きていくことを………。
読んでくださりありがとうございます。
今回は、推しの子の小説を基にこの話を書かせていただきました。
良ければ、感想や評価、あれば「ここすき」への投票もよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。