ハクアは、恋愛に対して苦手意識があるようですが果たして……
それでは、どうぞご覧ください。
side:ハクア
デザイアグランプリ第二回戦が終わってから数日後、僕たちは平穏な高校生活を送っていた。そして、それぞれの仕事にも精一杯、打ち込んでいた。
そんなある日のこと
「ルビー?そろそろアイドルグループを動かしてもいい頃合いだと思うのだけど……」
「うーん……そう言われても心当たりがなぁ……」
そろそろ、姉さんがアイドル活動を始めるのにいい頃合いだと判断した副社長のミヤコさんから、そんな話が出る。
ちなみに、今の苺プロは社長が壱護さん、副社長がミヤコさんという風になっているが、今のアイドル部門……というか女性の多い部門はミヤコさんが中心となって任されているらしい。同性同士の方が話しやすいのではないかという、社長の配慮である。
「よその事務所からのスカウトはダメだし……フリーの子ならいいのだけれど……」
「居るじゃん」
「「?」」
「あぁ……あの人か」
「あの人って?」
「フリーランスで名前が売れてる割に仕事がなくて…顔が可愛い子」
「もしかして……ロリ先輩!?」
そして、有馬先輩をアイドルにスカウトすべく二人は翌日、本人に交渉するらしい。僕は午後からアニメの収録があるため、その場にはいない。
終わるのは夕方になるので、帰ったら聞いてみることにしよう。
そして、翌日……
「お疲れ様でした!」
「あぁ、お疲れ様!」
今放送中のアニメの収録が終わり、僕は真っ直ぐ事務所に行った。
さて……スカウトの結果はどうだっただろうか。
「星野ハクア、だだいま戻りました!」
「おう、戻ったか」
「あら?お帰りなさい」
「あ!お帰りなさい、ハクア!」
「お帰り~ハクア!」
「お疲れ、ハクア」
「うん、ありがとう」
僕は姉さんにハグされながら、そう言われる。そこには、ちょうどお母さんもいた。
「あ、そういえばスカウトは?」
「それなら……」
「されたわよ、見事に」
「ん?」
そう声がしたので、そちらを向くと
「こんにちは、先輩。スカウト、受けてくれたんですね」
「え、えぇ……まぁ、元天才子役っていう何の意味もない肩書きから元天才子役のアイドルっていうのに変わっただけ……どの道、何かしらのカンフル剤は必要だったしね……」
「自分を納得させるのに必死だねぇ~」
「……なんか、嫌そうに聞こえますけど?」
「……そ、それに、アクアとあんたと同じ事務所に入れば盗めるものもあるかもだしね」
「……なるほど」
……一体、どうやってスカウトしたんだ?
「アクア、貴方一体どんな手を……?」
「それ私も気になるなぁ~」
ミヤコさんもお母さんも同じことを思ったのか、そう聞く。
「あぁ、ただの人読みだよ…有馬かなは共感力が強くて押しに弱い。こういうのは性格上、泣き落としやごり押しが有効らしいから試してみたら、案の定だっただけだ」
「あらま~……」
「お前なぁ……」
「アンタねぇ……そういう事ばかりしてると、そのうち痛い目見るわよ。夜道には気を付けなさい」
兄さんのその言葉にお母さんが、何とも言えない表情になり、社長は呆れ、ミヤコさんも呆れながら忠告する。
「それに人読みって……やっぱり、監督から教えてもらったの?」
そうお母さんが聞くが
「いや、その辺りの知識はハクアから」
「「「え?」」」
その言葉に、三人がこっちを向く。
……前に演技のアドバイスとかでそういう話を今までの経験をもとに話した覚えがある。けど……
「いや…確かに言ったよ、言ったけどさ……こう使うとは思わないじゃん……」
「「「あぁ……」」」
三人は納得したのか、同情するような目を向けてくる。すると
「ねぇ、アクアって次の仕事なんか入ってないの?」
そんな会話が聞こえてきた。……あ、兄さんが逃げた。
「あるには…あるよ?ハクアも一緒のやつ……」
「何か渋い顔ねぇ……」
姉さんたちがパソコンを操作し始めたタイミングで僕も静かに部屋を出て行こうとする……が
「どこいくの?ハクア?」
「え」
「そうだよ~」
「ちょ、な、なに?」
何故か、僕はすごい笑顔の姉さんとお母さんに連行されていく。そして、姉さんの隣に座らされてしまった。
「じゃあ……見よっか」
「!?」
まさか……いやいやいやいや!そんな公開処刑はさすがにないでしょ!?
「……ミヤコさん?」
「(……ごめんなさい、ハクア)」
「……先輩?」
「(何なのかは知らないけど……ごめん、ハクア)」
二人の方を見て助けてを求めるものの、目をそらされてしまった……。
女性陣はダメか。そう思い社長に目を向けるが……
「(すまん、何か逆らったらダメな気がする……)」
「(えぇ……)」
社長も何かを察したのか、目をそらされた……。
「……で、二人の次の仕事って?」
そう先輩は話を進めるよう促す。
「これなんだけど……」
「……えぇ!?アクアとハクアが恋愛!?」
「……」
パソコンには、僕と兄さんを含めた7人が出演する恋愛リアリティーショー番組の『今からガチ恋始めます』が映し出されていた。
そして、姉さんは告知用の動画を再生する。
『えと、鷲見ゆきです。高一です』
「スタイルいい~」
「上から下まで整ってるわねぇ……」
姉さんたちが、出演者たちを見ながら感想を言っていく……主に女性に対してだが。
『熊野ノブユキです。ダンスが得意です』
『黒川あかね。高校二年生、役者です』
「うわ、出た…!」
「え、かなちゃんの知り合い?」
「え?まぁ、ちょっと……」
お母さんの疑問にそんな返しをする先輩。まぁ、二人は昔からあれだしなぁ……。
『高三のMEMちょです!YouTubeで配信やってます!よろしくね!』
「こういうのも出るのね…」
「「可愛い~!」」
親子だからだろうか、二人して同じ感想を言う。
『森本ケンゴ。バンドやってます。よろしく』
「なるほどね……芸能活動をしている高校生達が週末の色んなイベントを通じて交流を深め、最終的にくっつくとかくっつかないとかとかそういう番組ってこと……そういうことよね、ハクア」
「……まぁ、そうですけど」
それプラス、僕ら三つ子はデザグラという命懸けのイベントがあるんだけど……っていうか先輩は何で僕に聞いたんだろ……?
画面にはさっき紹介された、五人が教室で話をしている。
「鏑木さんの番組だけあって、みんな顔いいね~」
お母さんがそんなことを言っていると
「あ、お兄ちゃんだ」
兄さんが教室に入ってくる場面だ。あぁ…あれか……。
『アクアです。何かめっちゃ緊張するわ~……みんな、よろしくね!』
「「いや誰!?」」
「……」
「(ウチの子……やっぱ、きゃわ~)」
キャラを演じている兄さんを見て、三者三様の反応をする。僕はこの時のことを思い出して黙り込んでいた。お母さんは唯一目を輝かせて見ていたが……。
「お兄ちゃん陰のオーラ発している闇系でしょ!?」
「キャラ作りすぎ!」
『えぇ~かっこい~。役者さんって憧れる~』
そんなことを言うMEMちょに対して、姉さんが
「あーお兄ちゃんこういうぶりっ子には厳しいからなぁ……この子はないかなぁ」
というが、兄さんは今キャラを作っている。そのため……
『MEMちょも可愛いね。めっちゃ照れる……』
「「は?死ね」」
そういう反応をする。……あと二人とも、そういうことは言うものじゃありません。
「何だあいつ……私には可愛いなんてスカウトの時しか言わなかったくせに…」
「女に囲まれて浮かれてんな……帰ったらマジで説教だわ…」
凄い罵倒してるなぁ…二人とも。そんなことを思っていると
「あ!ハクアだ!」
とうとう僕が入ってくる場面になったようだ。
『星野ハクア、高一で声優と……役者やってます。よろしく』
「良かったぁ~……」
「ハクアはそのままでいてね(こっちも、きゃわ~)」
「やっぱり…あんたはいい子ね」
姉さんたちがそんなことを言う。
「……どうしたの急に?」
「いやだって、ハクアまであんな風になってたら……ねぇ?」
「「ねー」」
姉さんも先輩もお母さんもそんなことを言う。
「僕のことなんだと思ってるの……?」
『へぇ~二人は兄弟なんだ~』
『そうそう、ハクアは俺の弟なんだ』
『兄さん共々、よろしく』
「ていうか、結局お兄ちゃんもオスなんだね」
「チョロそうなメス見つけたらすぐこれだよ」
二人ともだいぶ兄さんに対してご立腹だ。
「でも二人とも、これメディア用の演技だよ。そうしないと番組が成り立たないよ?」
「アイのいう通りよ。身近な男が女にデレデレするところが腹立つのは分かるけれどね。ハクアもだけどアクアは役者、そういう男を演じる気持ちでそこにいるんじゃないかしら」
「演技……」
お母さんとミヤコさんがそう説明するが、先輩は納得できないみたいだ。
「……これ、最後には本当に告白して恋人になったりするんですよね」
「そうね。形式だけでもそこの筋は通すことになるでしょうね」
「告白が成功したら……キスとか……」
「まぁ、定番ね」
「なんで…こんな番組受けたんだろ……」
先輩はそう言い落ち込んでしまった……
「あなただって女優を続けるなら、いずれキスシーンとかも求められる。ここを割り切るのも仕事のうちよ。この業界でガチガチの貞操観念持ったままだと後々辛くなるわよ」
「分かってますけど……」
そして、社長とミヤコさんが次の仕事で部屋から出ていった後のこと
「あ、そう言えば」
「「「?」」」
「ハクアはなんでこの仕事受けたの?」
「あぁ……兄さんが『今日あま』の打ち上げで鏑木プロデューサーからその話をされた時に、僕にも出てほしいって言われたらしくて……その場では拒否権がなかったらしくて、そのまま……」
「てことは……後から知ったってこと!?」
「まぁ…そうなるね。あぁ、兄さんも被害者側だから責めないであげて」
僕がこの番組に出る理由を聞いてきた姉さんにそう答えるが、兄さんのせいにしそうだったのでフォローをいれておく。
「ちなみに、ハクアは誰狙いなの?」
「「そうそれ!」」
そんなことを三人とも聞いてくるが……
「……」
「……ハクア?」
誰がって言われても……そんな人は今のところいないしなぁ……。
「大丈夫……?」
「え?あぁ、うん……誰狙いって言われても、正直分かんないかな」
「分かんない?」
「だって、恋愛とか正直分からないし……僕が人を好きになるなんて……駄目なんだ……あってはならないんだ……」
「……ハクア?」
「また巻き込んじゃうし……」
「ねぇ……どうしたの?」
「そんなことになったら……「ハクア?」勝たなきゃ……「ハクア」そうしないと「ハクア!」!」
いつの間にか考えていたことが口に出ていたらしい。
「どうしたの?大丈夫?」
「どこか痛くない?」
「あんた……本当に大丈夫?」
三人とも心配させてしまったようだ。
「大丈夫だよ。とにかく、誰か狙いとかはないし……滅多なことがない限り、僕が恋をすることもないよ」
そう言い残して、僕は部屋を出ていく。
そして、事務所にある屋上に出て、いつも持ち歩いている金貨を取り出す。
その金貨には、かの皇帝であるガイウス・ユリウス・カエサルの顔が彫られていた……。
『私のことは、忘れなさい……その方が、きっと幸せよ……』
「忘れられるわけないよ……母さん……今、どこにいるの……?」
そう、僕は呟いたのであった……
読んで下さりありがとうございました。
今回は、ハクアの負の部分が一部垣間見えました。一体、過去になにがあったのでしょうか……
次回も恋愛リアリティーショーの続きです。
良ければ、感想と評価の方をよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。