あと、始動編がこのペースだと数十話規模になりそうです……。
そんな話は置いておいて……果たしてハクアは恋愛リアリティーショーを乗り切ることができるのでしょうか。
それでは、どうぞご覧ください。
side:アクア
「でね~ウチの犬がね~」
「うんうん」
「ほら、これなんだけどね~」
「へぇ~」
マジでだるい……。若者特有の共感し合うだけの会話マジでキツい……。
俺は、もうこの会話は十分だと考えMEMちょに次の話題を振る。
「あ、そう言えばさぁ……MEMちょってさ、普段の動画編集とかは全部一人でやってるの?」
「うん!基本的にはね――」
恋愛リアリティーショーに台本はない。基本的になにをするかは、俺たち演者の自由となっている。ただ、
『基本的には自由にしてもらって構いませんが、カメラマンさんが寄ってきた時は、その時にしていた会話を要約した話をしてくれると助かります』
とのことだ。恋愛リアリティーショー番組の歴史も20年前後だろうか、そこまでやっているからかノウハウが蓄積されているようだ。ディレクターからの言葉をどう解釈するかは、演者次第だ。それをアドバイスと思うか、指示と思うかも本人次第だ。
そんな番組にハクアを引き込んでしまったが……大丈夫だろうか。あいつは見たところ俺みたいに演技をせずに、素で臨んでいるみたいだ。それに普段は、素直な面が強い印象だし……デザグラでは少し違うが。
MEMちょとの会話を終え、定点カメラの映る位置でそんなことを考えていると
「アクア君、だよね?」
「うん、役者の星野アクア。高一だよ。よろしく」
「同じく高一の鷲見ゆきだよ。よろしくね」
モデルの鷲見ゆきが話かけてきた。……にしても、位置取りが上手い。さすがはモデルと言ったところか。
「本当にこういう番組って台本ないんだね。どんな話していいのか全然分かんないよ」
「確かにね」
「私臆病でガシガシ前に出るタイプじゃないし、トークもあまり得意じゃないから、きっと埋もれちゃうんだろうなぁ…」
「何で君はこの仕事受けたの?」
「うちの事務所の看板の人がね、仕事を断らない主義で…事務所に来た仕事全部もっていくから年中ヒマで……」
「あぁ…」
「何か足掻きたくて…そしたら鏑木さんが……」
「なるほどね」
「渡りに舟っていうか。恋愛とか今までしてこなかったから」
「噓だぁ」
「やだな噓じゃないよ。私まだ高一だよ?タレントだからってみんながみんな恋愛してると思ってたら大間違いだよ?君は恋愛に興味無いの?」
「ないわけじゃないよ。僕も男だし……でも僕は過去の恋愛引きずってて……」
俺はそう言いつつ、前世を含めて一番の推しであり、母親であるアイを思い浮かべた。
「いや……思えばあれが恋だったのかも分からない。消化しきれてないからなんとも……ね」
「ふーん…複雑なやつだ?……あ!学校の先生を好きになったとか?」
「まぁ、割と近いかも」
「じゃあ乗り越えないとね…」
そんなやり取りをしていると、鷲見ゆきが
「ねぇ、知ってる?前のシーズンのカップル、最後にキスしたんだよ」
「まぁ、一応予習はしたし……」
?なんか雰囲気が……
「いい人がいるか不安だったけど……」
そう言って俺の顔の前まで来て……
「私…君にならキスできるかも」
「なっ」
急にそんなことを言ってきたのだ。
「後ろ。カメラマンさんが撮ってる」
「!」
思わずその方向に、目線を向けてしまいそうになるが
「カメラに視線は送っちゃダメ。ここはきっと使われるよ」
……やられたな、これは。
「仲良くしようね?」
そう言い残して、去っていった。どこが臆病だよ……。
side:ハクア
「あー、あれはやられたね……」
兄さんと鷲見ゆきさんのやり取りを遠目に見て、僕はそう呟く。あれはリアリティーショー向きの性格の人だ。立ち回りが上手い……。
「ハクア君、こんにちは」
「こんにちは、先輩」
そんなことを考えていると、何度も役者の仕事で共演したことのある黒川あかね先輩が話しかけてきた。
「お兄さんのこと見てたの?」
「あぁ、はい……演技っていうのは分かるんですけどね」
「あー……すぐには受け入れられないよね」
共演回数が多いので、必然的に話が弾む。しばらく、最近のお互いの様子なんかを話していると
「ねぇ、ハクア君はなんでこの仕事を?」
「え?あー……それはー……」
「……なんか訳ありな感じだね」
「あぁ、はい。前に兄さんが鏑木さんに会った時に、僕も出てほしいと言われたらしくて……」
「あぁ……なんか……ごめんね」
「あぁ、いえ!先輩はなにも……そういえば、先輩の方はどうしてこの仕事を?」
そして、先輩にも理由を聞いてみた。
「私はね、舞台だけじゃなくてカメラに映る仕事もやってみないかって言われて……でも、何やっていいか分かんないし……一応、アドバイスをメモしたりとかしてるんだけどね」
……相変わらずだなぁ、この人は。まぁ、その姿勢は素直に尊敬できるけど。すると、急に先輩が
「ハクア君は……その……恋愛に興味とかは……?」
「正直なところ、ないですよ」
そう聞いてきたので僕はそう答える。……この収録が始まるまでに考えたことがある。僕はどうするべきかを。……答えは決まっている。
「それに多分ですけど、誰ともくっつくことはないと思いますよ」
「えっ?」
「僕は恋愛とかよく分からないですし、今までそういうことをしたこともないです。それに……」
「それに?」
デザイアグランプリに巻き込んでしまうことだけは、何としても避けなければならない……同じことを繰り返してたまるか……!
「……ハクア君?」
「いや、何でもありませんよ……」
これが最適解かは、分からないが他の何かを失うくらいなら、自分の何かを失くした方がいい……僕はそう思う。
「そう……なんだ……」
後から思ったことだが、そう言う先輩は何処か寂しそうに僕を見ていた気がした……。
数日後、今ガチの収録から兄さんと一緒に帰って来ると、姉さんが不機嫌な様子で出迎えてくれた……何かあったのだろうか?
「二人とも、取り敢えず座って」
「「……?」」
僕たち…本当に何かしたの……?そして、言われるがままに椅子に座る。
「仮にも私は妹で姉なわけで!私が嫌いなタイプと兄と弟……というか「せんせ」が誰かと付き合うとかはないわけで……」
兄さんはそもそもないんだ……。というか前世の名前で呼んできているあたり、相当いやなんだなぁ……。
「そして、ハクア……「ハク」が私の嫌いなタイプと付き合うのは嫌なわけ!」
「はぁ……」
……僕もらしい。そもそも、僕は誰とも付き合う気はないから、その心配は必要ないと思うけど……。
「じゃあ、ルビーは誰とハクアが付き合うのがいいと?」
「それはね~、私の一押しは~……」
姉さんがタブレットを操作して映し出したのは……
「ゆきぽん!多分この子は純粋でいい子だよ!」
「「……」」
姉さんは、ゆきさんの画像を指差しながらそう言う。僕たちは顔を見合わせて、同じことを思ったのか
「「姉さん(お前)はしばらく恋愛しない方がいいと思う」」
「えぇ!?っていうか、私にはお兄ちゃんがいるからいいもん!」
「俺かよ……」
そんな会話をした後、二人が自分の部屋に行き、僕がその場で休んでいると
「ねぇ、ハクアはどうしてそんなに誰とも付き合いたくないの?別にこの子たちのことが嫌いなわけではないんでしょ?」
僕の隣にきたお母さんがそう言ってくる。
「そうだけど……」
「けど?」
「前も言ったけど、恋愛のこととかよく分かんないし…僕が恋愛しても相手を傷つけるだけだよ……」
「……」
少しぼかして言ったが噓は言ってない。きっと、そうなってしまうだろうから……。そんなことを思っていると
「私ね……恋愛に失敗したんだ」
「え?」
お母さんが急にそんな話をしてきた。
「その時、すごく傷ついたし……悲しかった」
「……」
僕は黙ってお母さんの話を聞く。
「だからね、ハクアたちにはね…そんな思いをしてほしくないし、幸せになってほしい」
その言葉が噓ではないことはすぐに分かった。
「怖がっていても、何も始まらないよ」
「それは分かってるし、それに怖がっているわけじゃ……」
「とにかく!何事も経験だよ!あなたは私の子、きっと大丈夫!」
そう僕を抱きしめてながら言ってきたのだった。
僕たちが生まれた時よりも、母親らしくなったなぁ……。
「ありがとう、お母さん」
「どういたしまして!」
そう僕はお礼を言うのであった……。
読んで下さりありがとうございました。
次回はリアリティーショーの続きからです。
もし良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。