それでは、どうぞご覧ください。
side:あかね
私は自室で、今ガチの最新話を見ていた。
ゆきちゃんの頬に傷を付けてしまった映像はしっかり使われていた。最新話を見終わったあと、番組の公式SNSにはすごい数のコメントが寄せられていた。
そのほとんどが、私に対しての批判だと……最初はそう思っていた。でも、見ていくうちに……ハクア君に対しての批判の方が多くなっていた。
……私のせいだ。私があんなことするから、ハクア君まで……。
ちゃんと謝れば許してもらえる……説明すれば分かってくれる……そう思って、私は言えるだけのことを言って謝ろうとして……
火に油を注いでしまった……。
『今ガチから早く消えろ』
『お前はいらない』
『失望したわ』
見ている人たちが一斉に私に対して批判を書き込んでくる。どんどんと増えていく。……でもこれは当然のこと。これはみんなの意見なんだから……。
私は、このような意見も目を逸らすことなく見た。
炎上してから、スマホを離すことなくSNSを見た。
コメントを見続けた。
朝になったら全部収まっているって、自分に言い聞かせた。
朝になった。
そんなこと、あるはずがなかった……。
眠れた気がしなかった。
気分は良くならなかった。
批判されることが、こんなにも辛いとは夢にも思わなかった。
お母さんからも心配された。
でも、大丈夫って言った。
体が食事を拒絶した。
お母さんが見ていないところで吐き戻した。
クラスメイトが、私の陰口を言っているのを聞いた。
学校でも、私の居場所はなかった。
批判のコメントは日に日に増えていった。
批判される人が、私以外にも増えた。
……私のせいだ……私のせいで……お母さんも……ハクア君までもが……。
「そういえば…何も食べてないや……」
批判のコメントを一通り見て、何も食べていないことに気付く。今ガチメンバーのLINEにご飯を買って来ることを書き込んで、外に出る。
……そういえば、台風が来てるんだったっけ……。
暴風雨の中、コンビニで買ったご飯を持ちながら歩いていく。
あ、転んじゃった……。
買ったご飯も、散らかってしまった……。
傘も飛ばされて、全身に雨が打ちつける……。
あぁ……もうどうでもいいや……何もかも……。
「疲れた……」
私は、近くにあった歩道橋の手すりの上に立っていた。
ここからなら……死ぬことができる。全部……終わりにすることができる……。
あぁ……やっと楽になれる……後悔もない……でも……
できれば……ハクア君に……好きですって、言っておけば良かったかなぁ……。
そして、私はこれで終わる……そう思っていた……。
「先輩!!」
……突然、誰かに抱えられる感覚がした。そして、そのまま歩道橋の内側に引き込まれた。
「……え?なんで……?」
そして、恐る恐る私を抱えた人を見た……。
「無事ですか!先輩……!」
「どうして……ここに……ハクア君が……?」
それは、私がずっと片思いしてきた人がいたのだった……。
「メムさんがこの台風の中先輩が出かけて、なのに全然帰ってこないって探しまわってて……だからコンビニまでのルートを辿ってたら……本当に……何してるんですか……!僕……本当に心配して……」
「……もしかして…泣いてるの……?」
「え?……あれ?な、なんで……」
ハクア君は、そう言いながらも涙を流していた。本人は今まで気付いていなかったみたいだけど……そして、それにつられたのか私も……
「あっ……ごめん……ごめんね……私は……!」
今までのことを思い出して泣いてしまったのだった。
「先輩……辛いのは分かります……」
「うん……」
「でも……死ぬのは違うでしょ……」
「……ごめんね」
「そう思うなら……もう、こんなことはしないでください……もう、僕に…
「……分かった」
「……」
……思えば、ハクア君と出会ったのは、小学生の時だった。初めて見た時は、きれいな子だと思った。そして……私やかなちゃんと比べても、演技力は高かった。
私は、それに憧れた。そして……いつの間にか目で追ってしまうようになった。
普段は声優としての活動が目立つハクア君だけど、役者の仕事もしていて、何度か共演したことがあった。
その時に私が、演技についての悩みを相談した時も嫌な顔一つせずに助けてくれて、真剣に相談に乗ってくれた……そんな真剣な
「好きです」って、言いたかった……でも、私にはその勇気がなかった。それに、ハクア君が恋愛に興味がない……というよりも恋愛そのものがよく分からないと言った時には、どうしようか分からなくなった。そして、今ガチで何していいか分からなくなって、埋もれていった。
ハクア君を打ち上げに誘う時に、何とかしようとして上目づかいをしたこともあった……流石にあれは恥ずかしかったなぁ……。でも、その後の私は番組で結果を残そうとして焦ってしまい……ハクア君にまで、辛い思いをさせてしまった……。
嫌われた……そう思った。でも、ハクア君は私を助けに来てくれた……とても、嬉しかった……。
「ねぇ、ハクア君?」
「何ですか……先輩」
ハクア君の方を見ると、静かに涙を流していた。こんなに泣かせて……私は彼に相当心配を掛けてしまったようだ。
「私ね…昔から…ずっと……」
……私は思わず、
「ハクア!!」
「ちょっと君たち!危ないでしょ!あんなところで!」
「君…泣いてるみたいだけど……大丈夫かい?」
そこには、ハクア君と同じく私を探していたであろうアクア君と彼が呼んできたのか、たまたまいたのかは分からないが警察官が来ていた。そして、私たちは警察に保護されることになったのだった……
side:ハクア
本当に、危ないところだった……。
僕は、先輩が警察に話を聞かれているのを兄さんと一緒に待ちながらそう思っていた。
あのLINEを見てすぐに、僕は家族が何か言っているのを聞かずに、家から飛び出していった。そして、それは功を奏したのだった。……後ですごく怒られそうだけど。
「最初はどうなるかと思ったが……よくやったな、ハクア。さすが、デザ神だ」
そう言って、兄さんが僕の頭を撫でた。
「あぁ、うん……ありがとう。ていうかデザ神なのは関係ないよ……あ、あと……外でデザグラのこと聞かれたら一発で失格だから」
「え、マジで?」
「うん、マジで」
「……気を付けよ。……あ、あと…携帯」
「?」
「見ておいた方がいいぞ」
「…分かった」
携帯がどうしたのだろうか……?そう思いスマホを見ると
「……うわぁ」
「あー……これは……」
画面には、お母さんや姉さんからの着信履歴がこれでもかと並んでいた。
「俺の方からも連絡入れたけど……お前からも電話しておけよ?」
「分かってるよ」
そして、僕はこの場で二人に連絡を入れたのだが……
「もしも『ハクア!!』!?……み、耳がぁ……」
電話越しだが、急に耳元で叫ばれたので驚いてしまう。
『アクアも一緒だよね?ケガとかしてない?それから「あー……母さん?」……アクア?ハクアは?』
「さっきの母さんの大声のせいで、今ダウン中……」
「……」
『え!?ごめん、ハクア!』
「う、うん……大丈夫……」
まだ、ダメージ残ってるけど……
「えと…うん、兄さんと一緒で…ケガもしてなくて……先輩は無事で……聞いたと思うけど今、警察署ね」
『うん、とにかく無事で良かった……ルビーに代わるね』
「分かった」
そうして、姉さんに電話を代わったのだが……
「あ、姉さ『ハクア!!』!?……またぁ…?」
『大丈夫?何でいきなり出ていくの!?私すごく「……ルビー?」……え?なんで、お兄ちゃんが?』
「ハクア、またダウンした……」
「……」
『え!?ごめん……大丈夫?』
「う、うん……(親子だなぁ……)」
僕はまた、耳にダメージを受けることとなった。
『とにかく無事で、良かったぁ……あ、あかねちゃんは?』
「うん、先輩も何とか無事だよ」
『そっちも良かったぁ……あ、今からミヤコさん行くから、そこで大人しくしててよ!』
「分かってるよ」
『じゃあ、後でね』
「うん……お母さんもね」
『うん!気を付けてね!……ハクア、アクア』
「「?」」
急に雰囲気が変わるお母さん……そして
『私は、貴方達を誇りに思います……よく頑張ったね』
「「……ありがとう」」
この言葉は、確かに僕たちの心に響いたのだった。
そんな電話をして、また待っていると
「ハクア!アクア!」
ミヤコさんが、こちらへやってきた。
「警察から連絡があったときは、色々覚悟してたけど……よくやったわ、二人とも。誇らしいわよ」
そう言って、ミヤコさんが僕たちの頭を撫でてくる
「さっき、母さんにも同じこと言われたな」
「そうだね……僕は今日良く頭撫でられるんだけど……」
「ふふふ……」
そして、頭を撫でながらもミヤコさんがこんなことを聞いてきた。
「ねぇ、ハクア?何で助けようと思ったの?」
「何でって……」
そういいながら、僕は今までの人生で参加してきたデザグラで死んでいった人たちを思い浮かべた。
「人は簡単に死ぬものだから……動かないと、誰も助けられない……今も、昔も……」
そう、人は脆い……どんな願いをもっていても、簡単に死んでいく。だから守って来たんだ、デザ神たちが……。
「そうね。でも、今回は貴方も助けられる側だったということを忘れずにね。私も心配したんだから……」
「分かってるよ……」
そうして、会話がひと段落した時、聴取室の扉が開いて先輩と先輩の母親が出てきた。それと同時に、今ガチメンバーも到着した。そして……
「なんで……こんな……相談してよぉ……!」
「ごめん…ごめんね……」
ゆきさんが、先輩の頬を叩き、そして……泣いて抱きしめていた。
そして、しばらくして僕はこう言った。
「それで、これからどうするんですか?」
「え?どうするって……?」
「これだけのことになったんです。ここで降りるのも、続けるのも、先輩次第です」
「!」
「まぁ、どっちを選んでも文句は言われないでしょうけど……」
僕は先輩にこう告げる。……正直、先輩には無理はしてほしくはないが……続けるというのなら、全力で支えるだけだ。
「私……今も怖いし、逃げ出したいけど……このまま終わりたくない!」
「……分かりました」
その先輩の言葉で、さっきまでの空気が一変していつも通りの空気に変わる。みんなが先輩の周りに集まっていく……やっぱり、明るい雰囲気が似合っているなぁ……。
その様子を見守っていると、みんなが思い出したようにこっちを……ん?こっちを……?
「ハクたん!」
「は、はい」
「ハクア君も心配したんだよ!」
「あー……でも僕は大丈夫「「じゃない!」」……」
「平気そうな顔して!」
「ホントは辛いくせに!」
「えぇ……」
というように、今まで先輩の方にいたみんなが今度は僕の方へと集まってきた……もちろん、先輩も一緒に。
「私も……心配だった……」
「先輩……」
「でも、無事で良かった……」
「えっと…ありがとう……ございます?」
僕は何ともないから心配の必要はないのだけど……。すると、先輩が
「ハクア君は強いなぁ……」
そう言ってきたのだった。それに対して僕は……
「僕は……強くなんかないですよ」
「え?」
「助けられなかったことも、ありましたから……」
「ハクア君?」
そう、僕は助けられなかった……そして、負けた……。だから…僕は弱い。勝たなきゃ……助けられなきゃ……意味がない……。
そんな過去のことを思い出していると……
「でも、私を助けてくれた。……ありがとう、ハクア君」
「……はい」
こうして、先輩の命を助けることができたのだった……。
それにしても……僕はなんで、あの時……涙を……?それに、先輩を見たとき…なんか…胸が……?
「ハクア?」
「え?」
「さっきから黙りっぱなしで……大丈夫か?」
「うん大丈夫。それで、どうかしたの?」
「あぁ、お前に手伝ってほしいことが――」
そして、兄さんが話したことに……僕は乗ることにしたのだった。先輩を本当の意味で助けるために……
読んで下さりありがとうございました。
今回は、初めてあかねの視点を書いてみましたが、どうでしたでしょうか。上手く書けていたなら幸いです。
次回も続きからやっていきます。
良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。