本当は策謀編の中に入れようとしたのですが、別にすることにしました。
果たして、ハクアがいることで舞台はどうなるのでしょうか……。
それでは、どうぞご覧ください。
演舞Ⅰ:新たな舞台
side:ルビー
私たちは今日、とある2.5次元の舞台の公演を見に来ていた………そして……
『♪~』
会場の照明が落とされ、音楽が流れてくる。
『かつて、大きな戦があった……』
『名立たる強者たちが己が信念と野望を胸に戦い続けたが、その戦いに勝者はなく、世界の命運を決める二十一の刀が極東に地に散らばった』
『この物語は、ある男が一振りの刀を手にすることで、始まる……』
ナレーションが終わると、照明の色が次々と変わり、音楽もテンポの早いものになった。そして、左右のスクリーンに交互にキャラクターが映し出された後……
『ブレイド』
それぞれにキャラクター名と、舞台の上にいるキャラに扮した役者の姿が映し出される。ブレイドは刀を右手に持ち、左手で後ろのところを添えるようにして構えた。
『ツルギ』
ツルギは二本の変わった形の刀を持って構えをとり……
『キザミ』
キザミは拳を突き出して、ポーズをとる。
『匁』
匁は顔を少しだけこちらへと向けて立ち……
『刀鬼』
刀鬼は刀を持ちながら観客のいる左の方を向いた。
『刃』
刃の名前は上から雷が落ちるような演出と共に映し出され、刃は右手に持った刀を左手に持った鞘へと納刀しながら、観客のいる右の方に視線を向けたのだ。
『鞘姫』
鞘姫は鬼の面を外し、何かを見つめるようにして上の方を向いていたのだ。そして……
『舞台 東京ブレイド』
スクリーンが移動し、巨大なタイトルが映し出されるのであった……。
side:ハクア
ゲームマスターの不正で、打ち切りになったデザイアグランプリから数週間後……色々あったが、僕たちは舞台「東京ブレイド」のスタッフや共演者たちとの顔合わせの日を迎えた。
『刃』役の僕、『刀鬼』役の兄さん、そして『つるぎ』役の有馬先輩は一緒にとあるスタジオへと向かっていた。すると……
「『劇団ララライ』って、硬派なイメージがあったけれど……よくもまぁ、2.5次元受けたわよね」
「そうですね……まぁ、半分は外部からのキャストらしいですけど……」
「そう緊張する必要はないと思うぞ」
そう、兄さんが有馬先輩に言う。
「別に緊張なんてしてないんだけど……あっ」
すると、有馬先輩が誰かに気付いて足を止めた。僕らも止まってその方向を見ると……
「メルト君……」
「……おす」
『今日あま』に出演していた鳴嶋メルト君だ。あの時は、酷い演技をしていたようだが……あれからどうなっただろうか……すると……
「久しぶりだな、メルト」
「おぉ……アクアか……それと……?」
そして、メルト君が僕に視線を向けてくる。
「初めまして、星野珀亜といいます。どうぞよろしくお願いします」
僕とメルト君は初対面なので、挨拶はしっかりとしておく……礼儀は大事だからね。
「あぁ……俺は鳴嶋メルトだ。よろしく」
とりあえず挨拶を交わしたあと、メルト君の方から話しかけてくる。
「この公演、鏑木プロデューサーが外部の役者のキャスティングに嚙んでるんだと。つまり俺たちは、鏑木組ってわけだ。よろしくな」
「「……よろしく」」
「どうしたの……二人して」
「なんだよ……その間は」
二人がそんな反応をするのに戸惑いながら、僕たちはスタジオへと向かうのであった……まぁ、二人の気持ちは分からなくもないけど……。
そして、僕らは集合スタジオへと入っていった。そこには関係者がほとんど揃っていた。あっ……あかね先輩が僕に気付いて目を合わせてきた。僕もそれに応えて、アイコンタクトを返しておく。
「『キザミ』役を務めさせていただきます。ソニックステージ所属の鳴嶋メルトです。よろしくお願いします」
それに続いて。有馬先輩から順番に自己紹介をしていく。
「『つるぎ』役を務めさせていただきます。苺プロ所属の有馬かなです」
「同じく苺プロ所属、星野アクア。『刀鬼』役を務めさせていただきます」
「同じく苺プロ所属、星野ハクアです。『刃』役を務めさせていただきます」
そして、僕たち三人が自己紹介を終えると……
「お!皆早いねー…まだ、10分前なのに」
サングラスを掛けた男性がスタジオへと入ってくる。
「揃ったみたいだし、紹介始めちゃおっか。僕の名前は雷田。この公演の総合責任者」
この人が、イベントの責任者か……。
「で、こっちが演出家の金ちゃんね」
「金田一敏郎だ。よろしく」
「脚本家のGOAさんに、2.5次元経験豊富な鴨志田朔夜君」
「よろしくです」
演出家に脚本家、2.5次元経験豊富な俳優……。
「こっからはララライの役者さんで……みたのりお、化野めい、吉富こゆき、林原キイロ、船戸竜馬、黒川あかね」
「よろしくお願いします」
へぇ……知り合いの人もいるみたいだ。
「最後に主演を務める……あー……」
雷田さんがこの舞台の主演の方を向いた……が、その人は壁に寄りかかって寝ていた。そこで、金田一さんが叩き起こした。
「起きろバカモンが!」
「って……あぁ、サーセン。この舞台の主役の……役名何だっけ?ま、良いか。姫川大輝、よろ」
……あの人、いつもああだなぁ……。主演を務めるのはララライの看板役者で、月9の主演俳優。さらには、帝国演劇賞最優秀男優賞を受賞した経験のある姫川大輝さんだ……あぁ見えても、凄い役者なのだ。
「このメンバーで一丸となり、舞台『東京ブレイド』を成功に導きましょう!」
side:アクア
今日は、顔合せだったが本読みもやることとなり、俺たちはそれまで思い思いに話や準備をしていた。
ハクアはあかねと早速話をしているようだ。
俺は、台本を見ながら『東京ブレイド』の物語について確認する。
東京ブレイドは、いくつかのチームが抗争を繰り広げ、互いに友情や愛情を深めていくという王道のバトル漫画だ。
俺が演じる『刀鬼』は、『渋谷クラスタ』に所属しており、主人公である『ブレイド』がいる『新宿クラスタ』の敵として立ちはだかる。
この舞台では、この二つのチームが戦う『渋谷抗争編』を主軸として物語が展開される。
あかねが演じる『鞘姫』と刀鬼は許嫁、ハクアの演じる『刃』とは兄弟という関係だ。しかし、兄弟役に実の兄弟である俺たちをキャスティング……さらには、俺とあかねが役で許嫁とは……色々と狙っているように見えるのだが……。
「……そろそろだね」
「うん……あ、待って」
「?」
「……行こ」
「……うん」
あの二人は、既に役へと入っているようだ……そして……
「時間だ。本読み始めるぞ」
金田一さんの一声で、本読みが始まるのだった……。
side:ハクア
僕の演じる刃は、姫川さん演じるブレイドのいる新宿クラスタに敵対する、渋谷クラスタに兄の刀鬼と所属している。この兄弟は、あかね先輩が演じる鞘姫の『壱の太刀』、『弐の太刀』とそれぞれ呼ばれている。
そして、刃は普段は温厚な性格で、もの静かであるが……戦いになると冷酷な面が表に出てくるという、二面性を合わせもつキャラクターだ。さらに、刃は戦闘能力は作中内で一、二を争うほど高く、戦闘シーンでは難しい動きが多い。純粋な剣の腕は渋谷クラスタで一番だと言われているほどだ。
「時間だ。本読み始めるぞ」
金田一さんのその声で、本読みが始まっていく。
まず思ったのが、安定した実力を見せるララライの役者たちだ。舞台ということもあるだろうけど、やっぱり演劇で活動しているだけのことはある。兄さんも舞台は始めただろうにそつなくこなしている。
そして、メルト君も『今日あま』からの9ヶ月間努力をしてきたのだろう。その成果が出ているようだった………すると……
「今回、下手な子いないね~」
「芸歴の長い有馬ちゃんや、ララライの面々が演技できるのは当たり前として……メルト君も『今日あま』の演技見た時はどうなることかと思ったけど、中々仕上げてきてるし、アクア君も舞台自体は初めてだって聞いたけど、周りが見えていてそつがない」
「鏑木は余所に人を送るときは、固い人選するからな」
「有馬ちゃんとあかねちゃんの同世代新旧若き天才対決も見逃せないよね~」
金田一さんと雷田さんの会話が耳に入ってきた。
「役にどっぷりつかる没入型と、周りの演技を綺麗に受ける適応型……演じ方も対照的。見た感じ、あかねちゃんの方が一歩先を言ってる感じかな~?有馬ちゃんも負けないでほしいな~」
「……分からんよ」
「この刀は田舎侍には過ぎた代物だ」
金田一さんはそう言って、演技をしている有馬先輩と……
「ウチには……姫川がいるからな」
その有馬先輩に向かって歩いて行く姫川さんを見つめていた……。
「……有馬……だっけ?」
「っ!」
「遠慮しないでいいよ」
その言葉を聞いた有馬先輩は……
「ハッ!私とやる気か?」
「話し合いで解決出来そうな雰囲気じゃなさそうだしな?強い方が刀の相棒になる……そうだろ!」
「確かに……分かりやすい!」
さっきとは打って変わって、自分を出すような演技をし始めたのだ。
「負けても文句言うなよ?」
「そっちこそ……なぁ!!」
二人は丸めた台本を刀のように振るい、演技を続けていく。
「ははははは!その程度か?それでは相手にならんな?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!」
周りは二人の演技に圧倒されているようで、あかね先輩なんかは有馬先輩がこんな演技をするのに、驚きを隠せずにいた。
「どうした?降参するか?」
「っ……舐めた口を……これで終いじゃ!!」
そして、二人は刀を鍔迫り合うようにし……
「ハハハハ!」
「!何がおかしい?」
「お前……強いな?」
「!?は、離れろ!!」
有馬先輩が姫川さんを離すようにして、この場面の演技を終える。そして……
「あぁ、それと……あいつもいるから、さらに分からなくなるな」
金田一さんはそう言い、僕の方に目を向けてくる………さぁ……次は僕の出番だ……。
side:あかね
「また……戦うんだ……」
本読みが進み、次は私演じる鞘姫とハクア君演じる刃のシーンになった。刃というキャラは普段は、温厚で戦いは好まない性格をしている。だけど……
「お前たちはここで斬る……覚悟しろ……」
そう、戦いの時になるとその温厚さは無くなり……敵に対して容赦のない冷酷な性格へと変わる。
ハクア君の演技を見て、まず思ったのが………すごい、ということだった。このような二面性のある役は、私もやったことがあるけど……温厚さと冷酷さの差をここまで表現できるなんて……。
共演者たちもスタッフさんたちも、その演技に引き込まれていた……例外なく、全員が。そして、ハクア君と姫川さんが戦うシーンへと入っていく……。
「……その程度?」
「くっ……まだだ!」
姫川さんは、ハクア君に向かって駆け出していく……だが、
「甘い」
「っ!?」
ハクア君は姫川さんの攻撃をいなし、そのまま刀を振るっていく。
「……」
「くっ……!」
姫川さんの前に立つハクア君からは、殺気?……のようなものが出ている感じがして、よりその場面の臨場感を増していた……。
「やっぱり強いな?」
「……」
「だが、俺も負けてられないんだよ!」
その二人の演技に私はもちろん、周りの人たちも圧倒されていた……。
初日のため、本読みが終わってからはすぐに解散となった。すぐに帰る人もいれば、その場に残って本読みや雑談をする人もいる。
「お疲れ様」
「うん、お疲れ様」
私のもとにハクア君がきて話しかけてきた。
「どうだった?台本は?」
その言葉に、私は……
「うーん……原作の鞘姫とは少し違うかなぁ……」
「やっぱり……」
そう答えたのだった。ハクア君もどうやら同じことを思っていたみたいだ。
「鞘姫はもっと……刃と同じように、戦いを嫌っていたはず……」
ハクア君のいう通り、原作では鞘姫は争いを好まないキャラクターをしている。だけど、この台本では鞘姫はそんなキャラクターはしていない。むしろ、積極的に戦いに行っているように感じる。
「なんで、こうなったんだろう……」
「脚本家の何かしらの意図なのか……あるいは――」
そんなことを話していると
「有馬かな。この後メシでもどう?」
「いいわね……私も聞きたいことが山ほどあるわ」
どうやら、姫川さんがかなちゃんを食事に誘ったみたいだ。
「メルト、あんたも来なさい」
「え?俺も?」
「共演シーン多いんだから当然でしょ?」
メルト君も巻き込んでいくらしい……すると……
「おふたりさん、俺たちもメシいかね?アクア君も一緒だけど……」
2.5次元の経験豊富な鴨志田さんから、食事のお誘いがきた。
「えぇ、いいですよ。あかね先輩は……」
「うん!私も行くよ。色々アドバイスできると思うし……」
「よし!決まりだな!」
そうして、私たちも食事に行くことになった。
……この舞台で、私はかなちゃんに勝ちたいとばかり思っていた。でも……あの演技を見てしまったからには、やっぱり……ハクア君にも勝ちたい!
「ねぇ……」
「?」
「私……ハクア君にも勝つから!」
そう、ハクア君に言うと……
「いや……最後に勝つのは僕だよ」
笑みを浮かべながら……そう言ったのだった……。
読んで下さりありがとうございました。
今回で、ハクアの演じる『刃』のキャラクター像が明らかになりましたね。
良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。
追記:2024.07.06……アニメ二期のシーンなどを追加しました。