女神の子   作:アキ1113

54 / 131
 今回は、前回の続きからです。

 本格的にハクア演じる刃が活躍していくと思います。

 それでは、どうぞご覧ください。


演舞Ⅶ:優しさと冷たさ

 side:ルビー

 

 東京ブレイドの舞台は進んでいき、今はキザミが匁に食らいつくも倒れてしまい、そこにブレイドたちが駆け付ける場面になっていた。

 

 「流石に二対一では分が悪い……ここは一度撤退を「何の騒ぎ?」!……刃」

 

 匁は分が悪いと思ったのか、撤退しようとしていた。その時……音もなく、ある人物が匁の隣に現れた。

 

 私を含めた観客たちも、そして演者たちも……突然現れた人物……刃に驚いている。本当に……誰にも悟られることもなく、現れたのだから……。

 

 「……お前……誰だ?」

 

 「アンタ何者?そいつの仲間みたいだけど……」

 

 ブレイドとつるぎがそう言う。

 

 「僕は刃……匁、この人たちは?」

 

 「はい。どうやら、新宿クラスタという徒党を組んでいるものたちかと……」

 

 刃の問い掛けに対して、そう答える匁。

 

 「なるほどね。ありがとう……そこの人たち」

 

 「何だ?」

 

 「ここは一度、互いに引きませんか?」

 

 刃がそう提案する……だが、

 

 「ふざけんな!こっちは身内を痛めつけられているんだ!1兆倍にして返さないと気が済まないわよ!」

 

 キザミを痛めつけられたままなのが気に入らないのか、つるぎはそう言って、刃の提案を跳ね除け、切っ先を向ける。

 

 「そっか……匁、撤退してこのことを報告して」

 

 「刃、あなたは?」

 

 「僕も少ししたら撤退する。このまま、攻め入られるのもまずいしね」

 

 どうやら、刃は一人で二人を相手にするみたいだ。仲間のためなら、自分が傷つくことも厭わない……そんな優しさを持った……どこか、ハクアに似ているキャラクターだと勝手ながら思っている。

 

 「ですが「行って」!」

 

 「君を信じて頼んでいるんだ。大丈夫……僕は、負けないから。あぁ、あと応援呼んで戻ってくるのはなしね」

 

 「しかし……分かりました。ご武運を」

 

 「うん、ありがとう」

 

 そうして、匁は撤退していった。

 

 「なっ…待て!」

 

 撤退する匁を追おうとするが……

 

 「……」

 

 そこに、刃が立ちはだかる。

 

 「「っ……」」

 

 ……あれは、ハクアなの?観客席まで伝わってくるこの……殺気、なのかな?完全に刃になっている……。

 

 「アンタが相手してくれるの?」

 

 「……もう一度言う……退いて」

 

 刃は最後の警告の意味を込めて、そう言った。だが……

 

 「あぁ、もう!うるさい!速攻で斬り倒してやるわ!」

 

 つるぎはそう答えたのだ。その言葉を聞いた刃は……

 

 「……」

 

 黙ったまま、盟刀を腰から抜き、鞘を左手で持って、刀の柄を右で掴んだまま構えていた……。

 

 刃のその動きに、観客席にまで緊張感が伝わってくる……そして……

 

 「そっちから来ないなら!」

 

 しびれを切らしたつるぎが、刃に向かって突っ込んでいく……だが、

 

 

 

 

 盟刀・雷刃 一の刃『閃刃』

 

 

 

 

 「え?………ぐあっ!」

 

 「……!?」

 

 突っ込んできたところを、刃が一瞬のうちに刀を抜いて斬ったのだ。そして、刀を収めると同時につるぎは倒れてしまった。

 

 「死んではいない……急所は外した」

 

 「お前……!」

 

 「次……」

 

 そう言っている刃は、先ほどまで匁と話していた時の優しそうな様子とは違い……ただ冷酷に敵を倒す、一人の剣主だったのだ……。

 

 「はぁぁぁ!!」

 

 ブレイドは、刃に向かって斬りかかるが……

 

 「遅い」

 

 「なっ……くっ!」

 

 おそろしい速さで、接近してきた刃に攻撃することも出来ず、自身の盟刀で防ぐのでやっとだった。それもその筈、刃の盟刀『雷刃』は剣主自身の身体能力を強化する力がある。それに加え、刃自身の本来の身体能力もあるため、常人では反応することも出来ない速度を出すことが出来るのだ。

 

 「ぐあっ!」

 

 ブレイドは、その速度と剣技に押されてしまう。そして……

 

 「……そろそろか」

 

 「?」

 

 刃は渋谷クラスタの本拠地の方を向きながら、そう呟いた。

 

 「元々、僕は仲間を逃がして情報を届けさせることが目的……それにこの戦いも成り行き、君たちに恨みもない……だから、ここまでだ」

 

 そう言って、盟刀を収める刃……

 

 「逃げる気か?」

 

 「どう思ってもらっても構わない……けど……」

 

 そう言うと刃は、ブレイドに対して……

 

 「次なにかしたら……その時は全員、僕が斬る」

 

 こちらも震えて、底冷えのするような声でそう言って、渋谷クラスタの本拠地へと去っていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、渋谷クラスタの本拠地。そこでは、あかねお姉ちゃん演じる鞘姫と、お兄ちゃん演じる刀鬼が匁と刃の帰りを待っていた。すると……

 

 「鞘姫様!ご報告がございます!」

 

 「どうしました?そんなに慌てて……あなたらしくもない」

 

 いつもと違う匁の様子に、疑問を覚える鞘姫。刀鬼も喋ってはいないが、同じことを考えているのが分かる。

 

 「……申し訳ありません。報告というのは……哨戒任務中に剣主と遭遇しました」

  

 「剣主に、ですか……それで?」

 

 鞘姫は続きを促した。

 

 「その者は新宿クラスタなる組織の一員と見られ、私を配下に引き入れようと持ち掛けてきましたが、拒否したところ戦闘になりました。確認しただけでも剣主が三名、戦闘の続行は不能と判断し、撤退した次第です」

 

 「よろしい。よくぞ無事に戻った……ん?」

 

 ここで、鞘姫はあることに気付く。

 

 「今の報告だと、あなたが慌てるようなことは何もないように思えるのですが……?」

 

 剣主が現れたのは無視できない事態だが、匁が慌てている理由になりえるとは思えない。

 

 「……それが……私が撤退するために、刃が剣主二人を相手に……」

 

 「「!?」」

 

 匁がそう言うと、鞘姫と刀鬼は驚いたような表情をする。

 

 「私は、情報を伝えるようにと言われ……刃は応援を呼ぶのはなしだと言い……」

 

 匁はその時の様子を二人に伝える。すると……

 

 「僕がどうかしましたか?」

 

 「「「!」」」

 

 剣主たちを相手にしていた刃が戻ってきたのだ。

 

 「鞘姫様、兄上。刃、只今帰還いたしました」

 

 そう言って、刃は鞘姫の前に跪いた。

 

 「……よくぞ、無事に戻った」 

 

 「良かった、無事で……」

 

 「……ご迷惑をお掛けしました。鞘姫様、兄上」

 

 「……匁、報告は?」

 

 「えぇ……あなたのおかげで」

 

 「そっか……」

 

 匁も刃が傷一つなく戻ってきたことに安堵していた。

 

 「……匁、報告は先ほどのもので終わりか?」

 

 「はい……私からは以上です」

 

 「あなたもよくぞ無事に戻った。下がってもよい」

 

 「はっ。失礼します」

 

 そうして、匁は去っていった。

 

 「僕からの報告は何も……辺りに不穏な動きもありませんでした。強いて言えば、剣主と戦闘になったくらいですが……」

 

 「……そうか、とにかく無事で良かった」

 

 「では、僕もこれで…「待って」……?」

 

 刃も一度下がろうとしたが、いつもの口調とは違う鞘姫に引き止められてしまう。

 

 「……なんで、一人で二人を相手するようなことを?」

 

 鞘姫はそう訊いた。

 

 「……匁に情報を届けさせた方が早いと思ったからだよ」

 

 刃も先程よりも砕けた口調でそう言った。

 

 「それに……あのまま侵入される訳にはいかないでしょ?」

 

 しかし、鞘姫は納得せず……

 

 「……それで無理して倒れでもしたら、どうするの」

 

 「そうだぞ……俺も同感だ」

 

 「……」

 

 刀鬼も刃に向かってそう言った。刃は二人に対して困ったような表情を向ける。

 

 二人がこんなにも刃のことを気に掛けるのには訳がある。刃は元々、戦いに向いた性格ではないのだ。匁と同じで……できることなら穏便に事を済ませようとする人物だ。

 

 しかし、刃は盟刀に選ばれた。周りが喜んでいるのに対して、まだ子供だった刃は……震えていたのだった。

 

 盟刀に選ばれたからと言って、戦いの才が必ずしもあるわけではない。だが、何の因果か刃はその才能まで持ち合わせていた。盟刀に選ばれてからというもの、刃は兄である刀鬼以上に鍛錬に励んだ。気付けば、渋谷クラスタで鞘姫の『弐の太刀』と呼ばれるまでに成長していた……自分の本心とは反対に。

 

 強くなることは、刃本人にとっても望んだことだった。でも、それが誰かを守る強さならともかく……相手を傷つけるための強さを刃は望んでいなかった。実際、初めて盟刀を使って戦った時も勝利したのだが、刃の顔に笑顔は無かったのだ。寧ろ、その後に精神が参ってしまい倒れてしまったのだ……。

 

 

 

 

 それから、刃は戦う時……仮面を被った。ただ、感情もなく、冷酷に敵を倒そうとする剣主の仮面を……。

 

 

 

 

 そんなこともあって、昔から刃を見てきた鞘姫も、兄である刀鬼も刃のことを……強いとはいえ、心配しているのだ。

 

 「大丈夫……無理する気はないよ。それに、ここまで強くなったんだから」

 

 刃は鞘姫と刀鬼を安心させるように言った。

 

 「それよりも……どうするの?」

 

 「……私も……戦いたくはないよ。でも……」

 

 「話から聞くに、穏便に済むようには思えないが……」

 

 話を変え、これからどうするのかを鞘姫に訊く刃。

 

 「やっぱり、戦うしか……」

 

 「だろうな」

 

 「また……戦うのか……」

 

 刀鬼の言葉に刃がそう呟いた。

 

 「でも……やるしかないか」

 

 「あぁ……心配することはない。お前は強い。そして……俺もいる」

 

 「……うん、それに約束もしたしね」

 

 刀鬼と刃は昔、ある約束をしていた……

 

 

 

 

 二人で鞘姫を守る……どちらかが欠けることなく。

 

 

 

 

 という約束を。この約束を守るために、今までお互い鍛錬を積んできたのだ。

 

 「被害をこれ以上大きくするわけには……仲間もどんどん殺されていく。何もしないわけにはいかない」

 

 「うん、最善なのは新宿クラスタを今のうちに叩くこと……」

 

 「分かってる。でも、私の命令で多くの人が死んでしまう……どうしたら……」

 

 鞘姫もここで戦うことが、最善策だと分かっているがなかなか決断できずにいた。すると……

 

 「鞘姫……俺たちは、君の剣であり盾だ。君の意志が俺たちの意志だ」

 

 「どんな決断でも、僕たちは君についていくよ」

 

 「二人とも……」

 

 「それに、この命……簡単にくれてやるつもりはない」

 

 「僕も、兄上と同じ気持ちだよ」

 

 そんな二人の言葉を聞いた鞘姫は……

 

 「……今すぐ配下たちを集めて」

 

 「「はっ」」

 

 二人に配下たちを集めるように言った。そして……

 

 「刀を抜けば、たちまち血が流れる……ですが、戦わなければ守れないものもあるでしょう……ならば、私は刀を抜きましょう。合戦です

 

 新宿クラスタと戦うことを決めたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 




 読んで下さりありがとうございました。

 今回は、ここまでです。刃の技のモデルは……ご想像にお任せします。

 良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。

 それでは、次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。