女神の子   作:アキ1113

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 今回は、前回から続きです。

 いよいよ、舞台もクライマックスです。

 それでは、どうぞご覧ください。


演舞Ⅷ:合戦と幕引き

 side:ルビー

 

 舞台では、新宿クラスタと渋谷クラスタとで大規模な合戦が始まっていた。7人の剣主とそれぞれの配下たちが集まり、戦いを繰り広げていた。

 

 鞘姫が舞台上で、階段の上から戦いを見守っている。

 

 この時、鞘姫は自身の盟刀の能力である『傷移しの鞘』でこの場の剣士たちの傷をその身に移して、少しでも死傷者が出ないようにしていた。すると……

 

 「アンタが渋谷の親玉?刀を抜きなさい!」

 

 そこに、つるぎがやってきたのだ。つるぎは鞘姫に対して、挑発するが……

 

 「貴方には……これで十分です」

 

 鞘に納めたままの刀を手に取り、そう答えたのだった。

 

 「舐めて……くれて!」

 

 そして、つるぎは鞘姫に斬りかかる。このシーンは、作品の中でも名シーンとして語られている。

 

 斬りかかってくる剣を受け止めて、鍔迫り合いになった。鞘姫はそれを弾き返して、刀を振り抜く勢いで鞘から刀を引き抜いた。

 

 

 

 ……綺麗だ。私は、そう思った。まるで舞を踊っているように……美しいと思った。

 

 

 

 そして、二人は斬り結んでいった。鞘姫の強さはつるぎよりも上だろう。けど、敵味方関係なく傷を一身に引き受けているためか、本当の実力を出せないでいて、徐々に追い詰められていく……。

 

 すると……

 

 

 

 

 盟刀・雷刃 二の刃『雷華』 

 

 

 

 

 「っ!……お前は!」

 

 「ご無事ですか、鞘姫様」

 

 刃が二人の間に入り、つるぎに攻撃を加えたのだ……。

 

 

 

 

 side:あかね

 

 「兄上」

 

 「あぁ……鞘姫様。城の中に撤退を」

 

 鞘姫は二人とともに城の中へと退いていき、ブレイドとつるぎがそれを追いかけていく。

 

 ここでシーンは変わり、舞台の上ではキザミと匁の戦いが繰り広げられる。

 

 それにしても……やっぱり、すごいなぁ……かなちゃんは。それに……ハクア君も……。

 

 「……」

 

 私は、ハクア君に目を向けてそう思った。本人はこれからのシーンに向けて、集中力を切らさないように一人でいるのが見えた。

 

 ……あの刃の演技……あれって、ハクア君のことを言っているように聞こえた。

 

 

 『それに、ここまで強くなったんだから』

 

 

 強くなった?何のために……?ほんの少しのセリフのはずなのに……なんで、こんなに現実味があるのだろうか。そして……

 

 「……行くよ」

 

 「うん」

 

 「あぁ」

 

 私たちは、ラストシーンへと向けて、舞台に立つのだった……。

 

 

 

 

 side:ルビー

 

 舞台はラストシーンへと近づいている。ブレイドとつるぎが三人を追いかけていると、刀鬼と刃が鞘姫を庇うようにして対峙した。

 

 「下がっていろ、鞘姫……こいつらは俺が始末する」

 

 「『俺』じゃなくて、『俺たち』でしょ?」

 

 「……そうだったな」

 

 「へぇ……面白いわね!二人まとめて掛かって来なさい!特にそっちは、この前の借りを返したいからね!」

 

 つるぎは刃に向かって斬りかかるが、

 

 「っ!」

 

 「お前の相手は俺だ」

 

 「くっ!どけぇ!」

 

 刀鬼がつるぎの相手をしていく。それを見たブレイドは……

 

 「さて……俺たちもやるか!」

 

 自身の盟刀・風丸を構えた。それを見た刃も……

 

 「お前たちはここで斬る……覚悟しろ……」

 

 そう言い、盟刀・雷刃を構える。そして……

 

 「ハァァァーー!!」

 

 ブレイドが刃に斬りかかる。だが、易々と受け止められてしまう。それから幾度も斬り結んでいき……

 

 「やっぱ強いな……!」

 

 「……」

 

 そう言うブレイドに対して、言葉を返そうともしない刃……彼は今、ただ目の前の剣主を……自身の大切な人たちを傷つけようとしている奴を仕留めることしか考えていない。すると……

 

 「なぁ!アンタは何で戦っている?」

 

 「……?」

 

 ブレイドが突然、そんなことを訊いたのだ。

 

 「初めて会った時は互いに退こうとか言っていたのに、戦いになったら冷たくなりやがって……一体、なんなんだ?」

 

 その言葉に対して、刃は……

 

 「……僕は、王の座になんか興味はない」

 

 「何?」

 

 「ただ、戦いを終わらせたいから……戦うだけだ!」

 

 「ぐっ!」

 

 そう言って刃はブレイドに斬りかかる。

 

 「そして、それを邪魔する奴は……家族を傷つける奴は……誰であろうと容赦しない!」

 

 「ぐあっ!」

 

 ブレイドは刃の剣に押されて、飛ばされてしまう。

 

 「……終わりだ」

 

 刃は盟刀を納刀して、腰を低くして構えた。すると……ブレイドは、

 

 「絶対に……俺が!……この國の王になる!」

 

 立ち上がり、盟刀を構えてそう言った。そして……

 

 「ハァァァーー!!」

 

 

 

 

 

 盟刀・風丸 一の刃『疾風刃雷』

 

 

 盟刀・雷刃 一の刃『閃刃』

 

 

 

 

 

 ブレイドが刃に向かって突っ込んでいき、刃もそれを迎撃しようとした……

 

 「あああああ!!」

 

 そして……

 

 「くっ……」

 

 「!?」

 

 ブレイドは、攻撃を喰らったものの軽傷で済んでいた。刃はそれに対して驚きを隠せなかったが、すぐにブレイドに斬りかかろうとする……だが、

 

 「ブレイド!今よ!」

 

 「!」

 

 つるぎのその言葉に反応し、ブレイドは刀鬼へと突進していった。

 

 「待て!」

 

 刃も反応し、そのスピードでブレイドに追いついた……が、

 

 「はぁ!!」

 

 「!?」

 

 つるぎが刃の前に立ちふさがり、盟刀で斬りかかってきた。

 

 「ここは通さない!」

 

 「くっ……!」

 

 刃はつるぎの攻撃を受け止めたことで、脚を止めてしまう。そして、ブレイドが刀鬼にとどめを刺そうとした。

 

 刀鬼は死を覚悟した……その時、

 

 

 

 

 「姫!!」

 

 

 

 

 鞘姫は刀鬼を庇って、ブレイドの攻撃を受けてしまったのだ……。

 

 大量の血が鞘姫から流れ、そのまま力なく倒れてしまう。

 

 「……え?」

 

 刃もその光景を見て、戦いを止めて呆然としてしまう……。

 

 刀鬼も鞘姫の横に崩れ落ち……その顔は絶望に染まっていた。

 

 「……」

 

 刃も有り得ないものを見るように、鞘姫の元に近づく……。

 

 その光景を見ている観客たちは、静まり返っていた……あまりにも、二人の様子が痛々しかったからだろう……。

 

 そして、沈黙が支配している中……

 

 

 

 

 

 「お前は……」

 

 「……?」

 

 「お前だけはぁぁーー!!」

 

 「……!」

 

 突然として、刃がブレイドに斬りかかったのだ……。

 

 「ハァァァーーー!!!」

 

 「ぐっ!こいつ……!」

 

 

 

 

 ……あぁ……あの時と一緒だ……デザイアグランプリで、異常に倒そうとしていたあの敵に向けていた目と一緒の目を……ハクアはしていた。

 

 「殺す!お前だけは……絶対に!」

 

 そこにいたのは、復讐に駆られた……一人の剣士だった……。

 

 圧倒的な戦いぶりで、ブレイドを押している刃……すると……

 

 「ああああああ!!」

 

 「なっ!」

 

 今まで鞘姫の傍にいた刀鬼もブレイドに向かって斬りかかった。

 

 「あぁ、そうだ!お前は……俺たちで殺す!

 

 「やっとお前もやる気になったか……来いよ!」

 

 そして、最後の戦いが始まったのだった……。

 

 

 

 side:ハクア

 

 僕の目の前には、ブレイドに斬られた鞘姫(あかね先輩)が倒れている。

 

 ……あの日、ジャマトから僕を庇って倒れた母上しか見えていなかった。そして、目線を向けた先にいるのは鞘姫(母上)の仇……。

 

 あの時、もう倒したはずなのに……。

 

 

 

 「お前は……」

 

 「……?」

 

 「お前だけはぁぁーー!!」

 

 「……!」

 

 

 

 僕は、あの時のことを思い出し……ブレイドに向かって斬りかかっていく。

 

 「ハァァァーーー!!!」

 

 「ぐっ!こいつ……!」

 

 「殺す!お前だけは……絶対に!」

 

 もう、僕の中には……ただ仇を殺すことしかなかった。盟刀を逆手に持ち、太刀筋もいつもとは違って荒々しい。すると……

 

 「ああああああ!!」

 

 「なっ!」

 

 刀鬼もブレイドに向かって斬りかかってきたのだ。

 

 「あぁ、そうだ!お前は……俺たちで殺す!

 

 そんな刀鬼を見て、ブレイドは、

 

 「やっとお前もやる気になったか……来いよ!」

 

 そして、僕たちは二人でブレイドに攻撃を仕掛ける……だが、

 

 「おい?もうお終いか?つまんね「はぁぁぁーー!!」……っ!」

 

 刀鬼の攻撃を全て捌いたブレイドだが、僕が今まで以上の速度で攻撃を加える。

 

 「ああああああ!!」

 

 僕は間髪入れずに、斬り込んでいく……だが、

 

 「はぁ!!」

 

 「くっ!」

 

 いつもの戦いが出来ていないのか、ブレイドに大きく後ろに弾き飛ばされてしまう。

 

 「どうした!そんなもんか!」

 

 ブレイドが僕に突っ込んでとどめを刺そうとしてくる……今だ!

 

 「はぁ!」

 

 「なっ!」

 

 僕は、ブレイドの盟刀の柄の部分を狙い、バク転をしながら蹴り上げ、ブレイドの体制を大きく後ろにのけぞらせる。……その行動にブレイドも……演者も、観客も驚いていた。そして、隙が出来たブレイドに……

 

 「はぁぁぁーーー!!!」

 

 刀鬼が斬りかかっていく……だが、一瞬遅かった。

 

 「ブレイド!!」

 

 「っ!」

  

 ブレイドは後ろにのけぞった勢いを利用し、バク転で距離を取ったのだ。

 

 「はぁ!!」

 

 そして、ブレイドが風丸で刀鬼の盟刀を弾き飛ばしたのだ。

 

 「ぐっ!!」

 

 「どうした?それで終わりか?」

 

 地面へと音を立てて落ちる盟刀……ブレイドが刀鬼に向かってそう言うが、

 

 「はぁぁぁーー!!」

 

 「っ……まだくるか!!」

 

 僕は、刀鬼の盟刀を素早く拾い上げ左手に持ち、二つの盟刀で立ち向かっていく。僕はもう、止まらない……。

 

 「はぁぁぁぁーーー!!」

 

 「この野郎……いい加減にしろ!!」

 

 「止まって……たまるかぁ!!」

 

 ブレイドの盟刀と僕たちの盟刀がぶつかり合う。

 

 「鞘姫がいない世界で戦っても意味はない!約束も果たせなかった……だから!お前だけでも……殺す!!

 

 僕と刀鬼にとって、鞘姫は全てだった……だから、せめてブレイドだけでも殺そうとしているのだ。

 

 「ああああああ!!」

 

 刀鬼も得物がないながらも、ブレイドへと向かっていく。

 

 「お前は……邪魔だ!」

 

 「ぐうぅ……」

 

 僕と鍔迫り合いをしながら、ブレイドは刀鬼に蹴りを入れた。

 

 「っ!兄上!」

 

 僕も一瞬刀鬼の方を見て、隙が出来てしまう。

 

 「はぁ!!」

 

 「ぐっ!」

 

 僕は、ブレイドに押し返されてしまい体制が崩れてしまった……。

 

 「もう、諦めたらどうだ?これ以上やっても意味ないだろ?」

 

 「ふざ……けるな……僕は…僕は!」

 

 止まることを考えていない僕は、その言葉に反発する。その様に、観客は静まり返ってしまった………あんなに優しかった刃が、復讐に駆られた姿を見て……。すると……

 

 「もういい……」

 

 「……え?」

 

 刀鬼が鞘姫を大事に抱きかかえ、僕に向かってそう言ったのだ……。 

 

 「鞘姫のいない世界に意味などない……姫と共に、俺も逝く……」

 

 「な……何を言って……!」

 

 僕は、刀鬼のその言葉に驚いた。

 

 「例えここで、あいつを殺しても……意味はない」

 

 「っ……」

 

 ……そうだ、ここでブレイドを殺しても意味はない。それは、僕も分かっている……けど!

 

 「それでも!僕は……鞘姫の『弐の太刀』として……!」

 

 ここでやられたら、残った仲間がどうなるか分からない……自身の配下たちを大切にしていた鞘姫ならそう思うだろう……。

 

 あの約束の「守る」という言葉は、何も鞘姫の身だけじゃない……心や理想もだ……だから、例え鞘姫が死んでも……

 

 「諦めて……たまるか!」

 

 僕は……僕の役目を果たす!!

 

 

 

 

 

 side:アクア

 

 セリフは、たったの一行程度にも満たないものだろう……でも、ハクアはそれだけで観客の心を震わせ……この場にいる俺たち演者を圧倒して見せた。

 

 刃はその言葉と共に、再びブレイドに向かっていこうとする……その時、

 

 「そうね。まだ、諦めるには早いわ」

 

 刀鬼と刃の視線が、つるぎへと向けられた。

 

 「この子の剣は、『傷移しの鞘』……自分が負った傷を仲間へと移すことが出来る支配者の力。だけど、この子は逆に仲間の傷を自分に移し替えるために使っていた」

 

 つるぎは、続いてこう言った。

 

 「二人共、心当たりはあるでしょう?私にもある。戦いが終わって体がどこも痛くないのは初めて……今まで、敵にここまで情けを掛けれらたことはないわ」

 

 つるぎのその言葉に、ブレイドは鞘を拾い上げ、つるぎと二人でそれを握りしめた。

 

 「この鞘の本当の使い方は……こうだろ!」

 

 すると、鞘が光って盟刀が力を発揮し始めた。ブレイドとつるぎが傷を負っていく。それから、少しして……

 

 「……あれ?私は……」

 

 「「……!」」

 

 傷が癒えたことで、鞘姫が息を吹き返したのだ。

 

 さぁ……ここからだ。鞘姫に母さんを投影し……もし、死んでしまった母さんが生き返ったらという状況を自分の中に作り出す。こうすることで、喜びの感情を最大まで引き出す……。もちろん、母さんが本当に死んでいるわけではない……あの時、もし母さんが刺されて、死んでしまっていたらと思うと……想像するだけで耐えられない……ハクアが死んでしまったとしてもだ。

 

 「鞘姫……俺が、分かるか?」

 

 「刀鬼……?」

 

 鞘姫が、だんだんと目を開けていく。その姿を見て、俺は……

 

 

 

 

 

 「うああああああああああああああ!!!」

 

 鞘姫を抱きしめて、号泣した……。その様子に、その場にいる全ての人間が圧倒され……言葉を発することもなく、俺と鞘姫を見ていた。

 

 「あぁ……本当に……良かった……」

 

 刃も自身の盟刀を納め、静かに涙を流しながら、そう言葉を発した。そして……

 

 「鞘姫。俺たち新宿クラスタの勝ちだ……俺の軍門に下るというなら悪いようにはしないと約束するが、どうする?」

 

 「それで配下の命を見逃していただけるのなら是非もない……私たち渋谷クラスタは貴方様に忠誠を誓いましょう」

 

 こうして、鞘姫は新宿クラスタの軍門に下ることを決めた。

 

 「お前らはどうだ?」

 

 ブレイドが、そう刀鬼と刃に訊く。

 

 「俺は、鞘姫に従うのみだ」

 

 「……そうか、お前……刃と言ったか?」

 

 「……そうだけど」

 

 「お前はどうする?」

 

 「僕も同じだよ。仲間に何もされないなら、それでいい……けど」

 

 「?」

 

 刃も鞘姫の決断に異論はないようだ……が、

 

 「さっきの約束……違えるなよ」

 

 「っ……あぁ、もちろんだ!」

 

 約束を破ったら許さない……その意味も込めて、そう言ったのだった。そして……

 

 「刃……おいで?」

 

 「……うん」

 

 鞘姫にそう言われて、刃は俺たちのもとに来て……

 

 「うっ…うあぁぁ……!」

 

 今まで、我慢していたものを吐き出すように泣き、俺たちを抱きしめたのだった。その光景を見てから、ブレイドは城の外へと出て……

 

 「皆聞け!この戦いは俺たち新宿クラスタの勝利だ!」

 

 盟刀を高々と掲げて、新宿クラスタの勝利宣言をした。

 

 

 

 こうして、舞台は幕引きとなった……。

 

 

 

 

 

 




 読んで下さりありがとうございました。

 今回で、舞台の本番の話は終わりです。次回で演舞編の最終回です。本番の後の話をやろうと思います。

 良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。

 それでは、次回もよろしくお願いします。
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