そして、タイトルの通りハクアがあの人と邂逅を果たします。
それでは、どうぞご覧ください。
side:ハクア
舞台『東京ブレイド』の初日公演を終えた。メイクを落として衣装も着替えて、僕は自分の楽屋へと戻ってきていた……が、
「はぁ……はぁ……」
……感情演技をしたまま、あそこまでの動きをしたのが原因だろうか……息も荒くなってしまっている。それに……
「……もう……あいつはいないだろ……」
母上の敵はいないというのに……自分の手で決着をつけたはずなのに……あそこまで感情を出してしまうとは、思っていなかった。……結果オーライだったみたいだけど。
……まだ、あの時のことが思い出される。最後の刃が鞘姫と刀鬼を抱きしめるシーン……あれが無かったら、今頃もっと酷かったかもしれない……舞台の演出を利用したみたいで罪悪感があるけど。そんなことを考えていると……
「ハクア君、いる?」
あかね先輩が僕の楽屋に訪ねてきた。
「……入っていいよ」
元々、ドアは開いているのであかね先輩に入るように促す。
「う、うん。じゃあ、入るよ」
そして、あかね先輩が入ってきた。
「ハクア君、大丈夫?」
「うん、大丈夫……このくらいは、なんてこと……!?」
あかね先輩は、本番での感情演技を心配して様子を見に来てくれたのだろう。その言葉に、大丈夫だと答えると……
「……心配した。あんな風にやるなんて聞いてないよ……」
そう言って、抱きしめてきた。やっぱり、やり過ぎたか……。
「……僕もあそこまでやれるとは、思ってなかったよ。本当に……」
「あの演技、これからもやる気なの……?」
あかね先輩が不安そうに言う。
「……うん、そうしようとは思ってるよ」
「っ……!」
そう言う僕に、驚くあかね先輩……
「あれがないと、舞台を成功させることはできない……」
「だからって……ハクア君が毎回傷つかなくても……!」
「……お願い、あかね先輩。僕に……全力の『刃』を演じさせて」
僕は、あかね先輩の目を真っ直ぐ見てそう言う。そして……
「そんな風にお願いされたら、何も言えないよ……」
「!」
「分かった。私も全力で『鞘姫』を演じるから……思いっ切りきてね!」
「……ありがとう」
こうして、あの演技を続けることを認めてもらえたのだった……。
「それはそれとして……」
「?」
そう言うと、あかね先輩は抱きしめたまま僕の頭に手を置いて……
「あ、あかね先輩……」
「今は……こうさせて」
「誰かくるかも……」
「少しだけ」
「……うん」
膝枕をしてもらった時のように、頭を撫でてきたのだった……心配をかけたんだから、このくらいは……ね。
「気持ちいい?」
「うん……」
正直言って、少し辛かったからなぁ……そうして、されるがままでいた。すると……
「ハクア、いるか?」
「「!?」」
兄さんが僕の楽屋を訪ねてきたのだ。僕らはすぐに、今の体制をといた。
「う、うん……いるけど……どうしたの?」
「あぁ……そろそろ、打ち上げいくから呼びにきた」
「ありがとう」
どうやら、呼びにきただけらしい。そうして、僕たちは楽屋を後にした。
「ハクア……お前、本当に大丈夫か?」
「流石に大丈夫だよ……」
そんな会話をしながら、外に出ようとすると……
「やぁ」
「「「?」」」
その声のした方を見ると……黒と白の服装をして、黒髪の一部にメッシュが入った人がいた。
「えっと……何か用ですか?」
僕がそう訊くと……
「感動したよ!ハクア!」
「え、あ、はい……」
「刃の優しさと冷酷さの二面性を表す表現力!それに加え、盟刀・雷刃が本当に存在しているかのような動き!」
「あ、ありがとうございま「そして!」……」
なんか、この人グイグイくるなぁ……評価してもらえるのはありがたいけど。
「復讐に駆られ、ブレイドに立ち向かっていく時の演技……いや!リアリティーは素晴らしいものだったよ!今日は感動をありがとう
フォルス!流石は俺の推しだ!」
「「!?」」
……何で、その名前を!?僕と兄さんはこの名前を知っている目の前の人に対して、警戒心を引き上げる。
「……フォルスって?……何のこと?」
あかね先輩は、なんのことか分からずに首を傾げている。
「……あかね先輩と兄さんは先に行っててよ。この人と少し話をしてから行くよ」
「う、うん……分かった」
あかね先輩は納得するが、兄さんは違い僕に小声で話してくる。
「……こいつ、どう見ても怪しいぞ」
「でも、僕のことを推しって……悪意はないと思うけど……」
僕は兄さんにそう言う……そして……
「……分かった。気を付けてな」
「うん」
「……じゃあ、先行ってるね」
そうして、兄さんとあかね先輩はこの場から去っていった。
「そんなに警戒しないでくれよ」
「急に仮面ライダーの名前を出されたんだ……そりゃ警戒もすると思うけど?」
「まぁ……それもそうか。無関係な君の彼女もいたしね」
僕は目の前の人を警戒しながら話していく。
「それじゃあ質問………君は、誰?」
「あぁ……そう言えば初めましてだね。俺の名前はジーン……君のサポーターさ。よろしくね」
「サポーター……」
僕のサポーター……ジーンって言うのか……。そう言って、ジーンは握手を求めてきたので、僕もそれに応える。
「不敗のデザ神の戦い……いつも楽しませてもらっているよ」
「……どうも」
「あぁ、ちなみに君のお兄さんとお姉さんにもサポーターはいるよ」
なんと、僕のサポーターのジーン以外にも兄さんと姉さんのサポーターもいるみたいだ。
「じゃあ、二つ目……今日はなんでここに?」
「そりゃあ、単純に観たいと思ったからさ……君のデザグラ以外での姿もね」
……本当に僕を推してくれているみたいだ。そして、僕はあることを訊く。
「最後に三つ目……本当に君たちは何者なの?」
「うーん……強いて言うなら……」
「言うなら……?」
「……次元を旅する観光客だよ」
「……」
次元を旅する観光客……か。すると、ジーンは……
「俺からもいいかな?」
「うん、それはいいけど……」
逆に僕に聞きたいことがあるみたいだ。
「俺も三つ質問しよう……まずは、君は誰を探しているんだい?」
「僕が生きてきた中で……大切な人だよ」
「君の彼女よりもかい?」
「それとは別ベクトルで……だよ」
「なるほどねー……」
いきなりそれを聞いてくるのか……。
「じゃあ、二つ目……なんでそんなに強いの?」
いきなり普通の質問がきたなぁ……。
「うーん……経験と、努力かな。ジャマトと戦っている時の格闘術は全部独学で身につけたし……」
「へぇ……さすがだねぇ~」
「……褒めてもなにも出ないけど?」
「分かってるよ」
そして、ジーンから最後の質問がされたのだが……
「最後に三つ目……なんで……
君のお兄さんのシリウスと、スポンサーの一人がほとんど同じ顔をしているんだい?」
…………え?
「……同じって、どういう……?」
「あぁ、俺も驚いたよ……君のお兄さんが初めてデザグラに参加する前から付き合いはあったけど、まさかあんなに似ているとはね……」
……スポンサーの一人が、兄さんとほとんど同じ顔……?
「そうそう、前にゲームマスターの不正を密告したのも、君のお姉さんのマーゴを追加エントリーさせたのも……そのスポンサーなんだってさ」
「そう……なんだ……」
僕は、動揺しながらもジーンの話から……ある可能性を考えた。そのスポンサーは……
僕たちの父親なのではないか……
と。兄さんと顔が似ているのも、姉さんをわざわざ追加エントリーさせたのも……考え過ぎだと言われてしまえばそれまでだが、僕は浮かび上がったその可能性を捨てることが出来なくなっていた……。そんなふうに考えている僕を余所に、ジーンは満足したのか……
「とにかくありがとう……いいことを聞けたよ」
「……そう」
「じゃあ、僕はこれで……次のデザグラも期待しているよ、仮面ライダーフォルス…星野ハクア」
そう言って、ジーンはこの場を去っていった……。
「……」
僕は、ジーンが去った後のその場で動けずにいた。
……デザイアグランプリに、僕たちの父親らしき人物が関わっている……かもしれない。
……一体、なんのためにデザグラの支援なんかをしているんだろう。これに関しては今考えても分からないと思う。
「……このことは、話さないでおこう」
そう呟き、僕は先に行ったあかね先輩と兄さんの元に向かうのだった……。
デザイアグランプリで、そのスポンサーが何もしないならいい……ただ、観ているだけなら。ゲームをどうこうする権限はないと思うけど……。
でも……僕の家族に何かするようなら、その時は……。
side:アクア
「二人共、お待たせ……」
「あ!ハクア君!」
ハクアが話を終えてこっちに来たみたいだ。
「……どうだった?」
俺は、あの人物との会話がどのようなものだったか訊いた。
「……昔からの僕のファンだってさ。今回の舞台も楽しんでくれたって」
「そっか……良かったね!」
「うん……」
何だか反応がおかしい気が……?
「さ、行こ?」
「分かった」
これは……後で詳しく訊いてみるとしよう。
そして今、俺たちは打ち上げを楽しんでいる訳だが……
「だからね!?役者も一人の作家であるべきなのよ!その場その場でミスをしないように演じていくんじゃなくて……作劇的な盛り上げに加担しろって話!!」
「何あれ?……有馬先輩まさか」
「いや、雰囲気で酔っているだけだろう」
「……ホントかなぁ?」
有馬が雰囲気で酔っていた……もちろん、未成年なのでアルコールは飲んでいない。そんな会話をしていると……
「はい、お肉焼けたよ?」
「うん、ありがとう」
あかねがハクアに肉を焼いていた……なんだか今ガチで打ち上げをした時を思い出すな……。
「あ、兄さんも…はい」
「あぁ……ありがとう」
ハクアが焼いた肉を俺が食べる。
「……どう?」
緊張した面持ちで俺にそう尋ねてくる。
「もちろん、美味いよ」
「良かった……」
それに対して、俺はもちろんそう返した。ハクアは料理が上手いのに、わざわざ尋ねてくるなんてな。そんなことを考えていると……
「良かったね。前からハクア君、自分はいつも焼かれる側だから、家族に焼いてあげたいって言ってたもんね?」
へぇ……ハクアがそんなことを……そんなこと気にしないでもいいのにな。
「ちょ、あかね先輩!それは言わないって……」
……なんか俺の弟が可愛いんだが。
「そうか……ありがとな」
そう言って、俺はハクアの頭を撫でる。
「ちょ、頭撫でないで……!」
「そんなに照れなくても~」
あかねもそれに便乗してハクアの頭を撫でる。
「あかね先輩まで………ん?」
そんな風にしていると、周りが静かなのに気付いた。そして、周りを見渡すと……
『……』
「「「……」」」
周りが俺たちを見て、黙り込んでいたのだ……。
「えっと……その……」
ハクアが何かを言おうとするが……
「いやぁ~、いいもん見たな」
「こりゃ、イジりがいがありそうだな!」
「まさか……普段はあんな風だとは……」
「あの刃を演じていたとは思えないな……」
「ごちそうさまです!」
酒が入っているのか、金田一さんや姫川さんも含めて、この様な反応をしているので……
「……」
ハクアが黙り込んでしまった……。
「……とりあえず、食べる?」
「……うん」
あかねが肉を差し出すと、ハクアは気を紛らわせるようにして再び食べ始めた。
それから、しばらくして打ち上げは解散となったのだった……。
読んで下さりありがとうございました。
次回は、いよいよムービーバトルロワイヤル編…………をやる前に、一つ話を挟みたいと思います。
良ければ、感想や評価の方をよろしくお願いします。
それでは、次回もよろしくお願いします。