「「デュエル!!!」」
月一試験の実技テストを行う体育館。少しばかり予想だにしない対戦カードが組まれて呆然としているクロノス置いてけぼりで、十代と取巻が実技テストを勝手に開始する。
いやたしかに実技テスト開始予定時刻より少し早くはあるが既にテストを受ける生徒同士で始める合意は取れているし、そうなれば開始予定時刻を多少前後する事はよくある事。デュエルが長引いて後の実技テスト開始予定時刻にずれこむ等が起きるくらいなら時間の余裕が持てる分マシという考え方もあるだろう。
「俺の先攻、ドロー!」
それはともかく。先攻を取った十代が勢いよくカードをドローし、六枚の手札を確認。まずはその内一枚を魔法・罠ゾーンに差し込んだ。
「永続魔法[強欲なカケラ]を発動! このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、俺が自分ドローフェイズに通常のドローをする度に、このカードに強欲カウンターを一つ置く。そして強欲カウンターが2つ以上置かれているこのカードを墓地へ送る事で、俺はデッキから二枚ドローできる。続けて俺は[カードガンナー]を守備表示で召喚! カードガンナーの効果発動! 一ターンに一度、自分のデッキの上からカードを三枚まで墓地へ送って発動でき、このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するために墓地へ送ったカードの数×500アップする! 俺はデッキの上からカードを三枚送り、攻撃力を1500ポイントアップさせる! カードを二枚セットしてターンエンド! この瞬間、カードガンナーの攻撃力は元に戻るぜ」
カードガンナー 守備力:400
まずは今後の追加ドローの下準備。続けて十代の場で腕部分らしき砲台を胴体の前でクロスさせ身を守る格好を取るロボットが出現。その効果によって彼のデッキの上から三枚のカードが墓地に送られ、さらに二枚のカードが伏せて十代はターンエンドを宣言。
それを見たラーイエローの生徒の一人が眉をひそめた。
「なんだあのオシリスレッド、守備表示で攻撃力を上げたって何の意味もないし、ターン終了時に戻るんならなおさら意味ないじゃないか」
「ま、所詮はオシリスレッドって事だろ。戦略も何もなし、効果が使えるなら使いたくなるってだけだろうさ」
(ラーイエローの人も、少し前の僕と同じ事思ってる……)
ラーイエローの生徒がひそひそと喋るのを聞きながら翔は十代のプレイングを見る。これも意味のある事だと思えば見方も変わるものだなと思いながら。
「僕のターン、ドロー!」
その間に取巻のターンが開始され、まずはデッキからカードをドロー。六枚の手札を見てよしと頷くと、まずは一枚の手札をデュエルディスクに差し込んだ。
「魔法カード発動[予見通帳]! 自分のデッキの上からカード三枚を裏側表示で除外し、このカードの発動後三回目の自分スタンバイフェイズにこの効果で除外したカード三枚を手札に加える!」
「くっ、三ターンかかるとはいえ一気に手札を三枚も増やすのか……」
十代も強欲なカケラを使っているし、そっちと比べればワンターン遅いとはいえその分増やせる手札も多く、しかも永続魔法である強欲なカケラは魔法・罠ゾーンを圧迫する他破壊されたらドローが出来ないという弱点を抱えているのに対して通常魔法である予見通帳は既に未来に手札が増えるのが確約されたも同然。
手札を増やすまでにターンがかかる以外は増える枚数も確実性も相手に軍配が上がるカードに十代が警戒を向けると取巻はフッと笑って肩をすくめた。
「ま、それまでデュエルが続けばの話だけどさ……続けて僕は[V-タイガー・ジェット]を攻撃表示で召喚!」
V-タイガー・ジェット 攻撃力:1600
続けて彼の場に出てきたのはその名前通り虎を模したデザインのジェット機。だがそれだけでは終わらないとばかりに取巻はさらに手札を取る。
「魔法カード[融合派兵]を発動! 融合デッキの融合モンスター一体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記された融合素材モンスター一体を手札・デッキから特殊召喚する。俺は[VW-タイガー・カタパルト]を見せて、その融合素材である[W-ウィング・カタパルト]をデッキから特殊召喚!」
W-ウィング・カタパルト 守備力:1500
「VWの融合モンスター、そしてVとWのモンスター……まさか!?」
取巻が見せてきた融合モンスターと彼の場に並ぶ二体のモンスター。その共通項から何かに気づいた十代が声を上げると同時に取巻が不敵に笑う。
「その通り! 僕はV-タイガー・ジェットとW-ウィング・カタパルトを除外し、融合デッキの[VW-タイガー・カタパルト]を特殊召喚!!」
VW-タイガー・カタパルト 攻撃力:2000
取巻の宣言と共に二体のモンスターがジェットを吹かして飛行、空中で合体すると彼の場に降り立った。
「融合を使わずに融合モンスターを……!?」
「VW-タイガー・カタパルトは通常の融合召喚を行わず、素材となる二体のモンスターをフィールドから除外する事で特殊召喚できる特殊な融合モンスターなのさ。
そしてタイガー・カタパルトの効果発動! 手札を一枚捨てて相手フィールドのモンスター一体を対象とし、その相手モンスターの表示形式を変更する! 僕はカードガンナーの表示形式を変更する!」
「なっ!?」
カードガンナー 守備力:400→攻撃力:400
「そんな! 攻撃力400しかないカードガンナーが攻撃表示になったら!?」
不敵に笑う取巻が手札を一枚捨てると共にタイガー・カタパルトが謎の電波を発し始め、その電波の影響かカードガンナーが攻撃態勢を取る。その状況に十代が驚き、翔が悲鳴を上げた。
「さらに装備魔法[ブレイク・ドロー]をタイガー・カタパルトに装備! この装備魔法は機械族モンスターにのみ装備可能。そして装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、僕はデッキからカードを一枚ドローする! ただしこのカードは発動後三回目の自分のエンドフェイズ時に破壊される」
さらに取巻は装備カードを使ってタイガー・カタパルトを強化し、「バトル!」と宣言してカードガンナーを指さした。
「VW-タイガー・カタパルトでカードガンナーを攻撃! タイガー・ミサイル!」
攻撃指示を受けたタイガー・カタパルトの下部――ウィング・カタパルトの部分のハッチが開き、上部――タイガー・ジェットの部分と同時にミサイルが一斉掃射、その弾幕にカードガンナーは両腕のキャノン砲で迎撃を試みるも威力と手数の差になすすべなく飲み込まれ、
「ぐあああぁぁぁぁっ!」LP4000→2400
そのミサイルの余波を受けた十代のライフも一気に削られる。が、そこで彼の場の伏せカードが翻った。
「トラップ発動! [ダメージ・ゲート]! 自分が戦闘ダメージを受けた時に発動でき、その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ、自分の墓地のモンスター一体を選択して特殊召喚する!」
(カードガンナーを蘇生……いや、このタイミングではまだカードガンナーは戦闘破壊が確定しただけでまだ墓地には送られていないはず……カードガンナーの効果で墓地に送られた三枚のカードの中に攻撃力1600以下のモンスターがいるのか……)
「俺は攻撃力300の[ヒーロー・キッズ]を特殊召喚! さらにヒーロー・キッズが特殊召喚に成功した時、デッキからヒーロー・キッズを任意の枚数特殊召喚する事ができる!」
ヒーロー・キッズ ×3 守備力:600
ダメージ・ゲートによって出現したヒーロー・キッズに導かれ、さらに二体のヒーロー・キッズが現れて十代の場で守りを固める。
「成程。だがカードガンナーを戦闘破壊し墓地に送った事でブレイク・ドローの効果発動! デッキからカードを一枚ドローする!」
「こっちもカードガンナーが破壊された事で効果発動! デッキから一枚ドローする!」
そしてこの戦闘の結果の一つとして、異なるカードの処理とはいえ互いにカードを一枚ドローする。
「僕はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ!」
取巻はそのドローカードをそのまま魔法・罠ゾーンにセットするとターンエンドを宣言した。
「俺のターン、ドロー! 通常のドローを行った事で強欲なカケラに強欲カウンターを一つ置く!」
ターンが回った十代がまずはドローし、強欲なカケラに一つ光が灯る。
そして十代がドローカードを見てうんと頷き手札に入れると同時、三体いるヒーロー・キッズの内二体が立ち上がった。
「俺はヒーロー・キッズ二体を生贄に捧げ、[E・HERO エッジマン]を召喚!」
E・HERO エッジマン 攻撃力:2600
二体の子供のヒーローに導かれ、姿を現すのは刃の力を宿すヒーロー。その攻撃力はタイガー・カタパルトを上回る数値を誇っている。
「バトルだ! エッジマンでVW-タイガー・カタパルトを攻撃! パワー・エッジ・アタック!」
そしてそのままバトルに移行。攻撃指示を受けたエッジマンが刃に力を込めてタイガー・カタパルトへと突撃。だがその時取巻がニヤリと笑い、同時に彼の場の伏せカードが翻る。
「この瞬間! リバースマジックオープン[武装再生]! このカードは自分フィールドの表側表示モンスター一体を対象とし、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする効果と、自分または相手の墓地の装備魔法カード一枚を対象としそのカードを自分フィールドにセットするか、そのカードを装備可能な自分フィールドのモンスター一体に装備する効果。この二つの効果の内一つを選択して発動する!」
「これでVW-タイガー・カタパルトの攻撃力は2800……エッジマンの攻撃力を僅かに上回る……!?」
「いや、違うね。僕は墓地の装備魔法[フュージョン・ウェポン]を対象とし、武装再生を発動! この装備魔法はレベル6以下の融合モンスターのみ装備可能。そして装備モンスターの攻撃力と守備力は1500ポイントアップする! VW-タイガー・カタパルトのレベルは6! よってフュージョン・ウェポンを装備!!」
VW-タイガー・カタパルト 攻撃力:2000→3500
「こ、攻撃力3500!? エッジマンをあっさり上回っちゃったッス!?」
VW-タイガー・カタパルトが神秘の光に包まれ、攻撃力を一気に引き上げる。だが突撃しているエッジマンは既にVW-タイガー・カタパルトの射程範囲内に入っていた。
「迎撃だ! VW-タイガー・カタパルト! フュージョニック・タイガー・ミサイル!!」
取巻の指示と共に放たれるさっきよりも威力も速度も上昇しているミサイル。突撃態勢のエッジマンにそれを回避するすべはなく、どうにか刃で弾いたり斬り裂いたりで迎撃しようと試みるも間に合う事はなく弾幕に飲み込まれる。
「ぐあああぁぁぁぁっ!」LP2400→1500
「エッジマンを戦闘で破壊し墓地に送った事でブレイク・ドローの効果発動! デッキから一枚ドロー!」
そしてまたもミサイルの余波を受けた十代のライフもまた一気に削られ、しかも迎撃という形で戦闘破壊が成立。取巻にブレイク・ドローによるさらなるドローを許してしまったのだった。
「VW-タイガー・カタパルトの効果コストで捨てたフュージョン・ウェポンを武装再生で再利用。無駄がないな……」
「取巻の動きからして武装再生はブレイク・ドローの効果で引いたようだがな……だが怪我の功名。これで遊城は二体の生贄で召喚したエッジマンを失った事で三枚分のディスアドバンテージ、対して取巻はフュージョン・ウェポンを出してタイガー・カタパルトを強化しながらブレイク・ドローの効果で一枚ドロー。二枚分のアドバンテージを得たと言っていいだろう」
観客にいる三沢が分析し、準がこのターン発生したアドバンテージを纏める。
取巻の方は武装再生という一枚分の消費を考えたとしても結果的に戦闘一個で発生したカードアドバンテージの差は四枚。圧倒的に十代が不利な状況に追い込まれていた。
「く……俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ……」
十代もそれは理解しているのか、苦しい表情でカードを一枚伏せるとターンを終了した。
(……ふぅ。一時はどうなる事かと思いマシターガ、流石はシニョール取巻太陽。シニョール万丈目が実力を認め、側に置いているだけはあるノーネ)
そして観客の一人であるクロノスも心の中で安堵する。十代に万丈目をぶつけるはずが間違えて取巻をぶつけた時はどうなる事かと思ったが、これなら十代を倒して自分の留飲を下げる目的は充分果たせそうだと。
「僕のターン、ドロー」
取巻は静かにカードをドロー。そのドローカードを見てニヤリと笑うと三枚の手札の内一枚を取った。
「僕は永続魔法[X・Y・Zコンバイン]を発動! 続けて[Y-ドラゴン・ヘッド]を攻撃表示で召喚し、速攻魔法[
一気に三枚の手札を使い切る取巻。だが、まだ終わらないとばかりに彼は動き出す。
「続けてユニオン・ドライバーの効果発動! 装備状態のこのカードを除外する事で、このカードを装備していたモンスターに、装備可能なレベル4以下のユニオンモンスター一体をその効果による装備魔法カード扱いでデッキから装備する! 僕はユニオン・ドライバーを除外し、[Z-メタル・キャタピラー]をデッキからY-ドラゴン・ヘッドに装備! Z-メタル・キャタピラーをユニオン装備したY-ドラゴン・ヘッドの攻撃力は600ポイントアップする!
さらにユニオン・ドライバーが除外された事でX・Y・Zコンバインの効果発動! 自分の機械族・光属性のユニオンモンスターカードが除外された場合に発動でき、デッキから「X-ヘッド・キャノン」「Y-ドラゴン・ヘッド」「Z-メタル・キャタピラー」の内一体を特殊召喚する! 僕は[X-ヘッド・キャノン]を特殊召喚!」
X-ヘッド・キャノン 攻撃力:1800
Y-ドラゴン・ヘッド 攻撃力:1500→2100
「今度はX、Y、Z……!?」
ユニオン・ドライバーとX・Y・Zコンバインのコンボによって取巻の場に並ぶX、Y、Zの名を冠する三体のモンスター。その姿に十代が嫌な予感がするとばかりに声を出すと取巻も静かに頷いた。
「その通り! 僕はこの三体のモンスターをゲームから除外し! [XYZ-ドラゴン・キャノン]を特殊召喚!!」
XYZ-ドラゴン・キャノン 攻撃力:2800
そして三体のモンスターが融合合体、一気に攻撃力2800のモンスターとなって十代の前に立ちはだかった。
「攻撃力2000と2800……」
「……いや、これだけじゃ終わらない!」
十代がぼそりと呟くがその目に闘志が消えていないのを見た取巻はさらにそう宣言。
「僕はVW-タイガー・カタパルトとXYZ-ドラゴン・キャノンをゲームから除外!」
その宣言と同時に二体の合体モンスターが分離、フィールドを飛び回りながら合体していく。
「VW、XYZ……ま、まさか!? 僕が渡したあのカードを!?」
そのカード名と今までの彼の行動、そして彼が探していたというカード名。それらが頭の中で繋がった翔が声を上げ、その言葉が聞こえたのか取巻が笑う。
「その通り! 見せてやるよ遊城! これが僕の新たな切り札! [VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン]だ!!」
VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻撃力:3000
そして彼の場にまさしく近代的な機械の巨人と言えるロボットが降り立ったのだった。
「攻撃力――3000……!?」
「それだけだと思うなよ! VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンの効果発動! 一ターンに一度、相手フィールドのカード一枚を対象とし、その相手のカードを除外する! お前がさっきのターン伏せたカードを除外させてもらう! VWXYZ-ディメンジョン・デストラクション!」
ドラゴン・カタパルトキャノンから放たれた次元砲が十代がさっきのターン伏せたカード――聖なるバリア-ミラーフォース-を撃ち抜き次元の彼方へと消し去る。
「危ない、無暗に攻撃してたら返り討ちだったな……だがこれで終わりだ! バトル! VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンでヒーロー・キッズを攻撃!」
「で、でもヒーロー・キッズは守備表示! これなら戦闘ダメージは受けないはずッス!」
そしてこれで憂いはないとばかりに攻撃を宣言、それを聞いた翔が声を上げるも、
「甘い!!」
取巻がその言葉に一喝を入れた。
「VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンのさらなる効果発動! このカードが相手モンスターに攻撃宣言した時、その攻撃対象モンスター一体を対象として発動でき、その攻撃対象モンスターの表示形式を変更する! つまりヒーロー・キッズは守備表示から攻撃表示に強制変更! これで戦闘ダメージが通る! くらえ、VWXYZ-アルティメット・デストラクション!!」
ヒーロー・キッズの攻撃力は300、そんなもので攻撃力3000のVWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンとバトルを行えば結果は知れたもの。
「待った! トラップ発動[キッズ・ガード]!!」
しかしそうはさせないとばかりに十代の声が挟まった。
「自分フィールド上に存在するヒーロー・キッズ一体を生け贄に捧げ、相手モンスターの攻撃を無効にし、自分のデッキからE・HEROと名のついたモンスター一体を手札に加える!」
十代の叫びに応えるようにヒーロー・キッズがビームシールドを展開、ドラゴン・カタパルトキャノンから放たれるエネルギーレーザーに受けて立つ。
そしてレーザーを防ぎきると同時にシールドのエネルギーも尽き、戦闘続行不可能になったのかヒーロー・キッズは静かに退却していった。
「ありがとう、ヒーロー・キッズ……俺はキッズ・ガードの効果によりデッキから[E・HERO スパークマン]を手札に加えるぜ!」
「やるな……僕はこれでターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー! そしてこの通常のドローによって永続魔法[強欲なカケラ]に強欲カウンターが一つ乗った事で、強欲なカケラの効果発動! 強欲カウンターが二つ以上乗ったこのカードを墓地に送り、デッキからカードを二枚ドロー!」
さっきのターンにキッズ・ガードの効果でサーチしたスパークマンも含め、これで一気に手札は六枚にまで膨れ上がる。
(このカードは!)
しかもその中にあるカードを使えば逆転も可能だと十代は直感する。
(いや、でも……)
しかし十代は取巻の場に立ちはだかるドラゴン・カタパルトキャノンを見上げる。あの圧倒的な除去、そして攻撃補助能力を持つモンスターをこのターンで倒せるカードや効果を防ぐカードは手札にはない。
つまり今彼が考えついた作戦を遂行するにはドラゴン・カタパルトキャノンの除去能力をやり過ごす必要がある。
「(イチかバチかだな…)…俺は[E・HERO スパークマン]を守備表示で召喚! リバースカードを二枚セットしてターンエンドだ!」
E・HERO スパークマン 守備力:1400
「守備表示、でもドラゴン・カタパルトキャノンの効果で……」
「そうだとしても、最初から攻撃表示で出す程彼は諦めていないという事だろう。あの伏せカードが相手の効果を無効にするタイプのカードである可能性は否定できないからね」
十代はさっきのターンにサーチしたヒーローで守りを固め、伏せカードを出してターンエンド。
その光景に翔が不安げに呟くと三沢は十代がまだ諦めていないのだと彼を諭した。
「僕のターン、ドロー」
ターンの移った取巻がカードをドローし、確認。
(モンスターじゃないか……)
そのカードはこの状況で出せるモンスターカードではなく、取巻は落ち着いて状況を分析する。
十代の場のスパークマン、攻撃力は1600。仮に表示形式を変更して戦闘ダメージを与えたとしてもライフはギリギリで残る。
そして取巻は以前の彼と準のデュエルを思い出す。自分がリスペクトする準が圧倒的に有利な状況になってなお一気に逆転してくる引きの強さと爆発力。
(長引かせるのは危険だよな……)
今手札にあるカードはこの状況では使えないとはいえ万一の時のリカバリーとしては有用。
彼の場の伏せカードも気になるとはいえ、このターンで決めるなら選択肢は一つだ。
「VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンの効果発動! スパークマンを除外する! VWXYZ-ディメンジョン・デストラクション!」
「くっ……」
放たれる次元砲がスパークマンを消滅させる。これで十代の場からモンスターが消えた。
「バトル! VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンでダイレクトアタック! VWXYZ-アルティメット・デストラクション!!」
「も、もう終わりッスー!?」
ドラゴン・カタパルトキャノンの砲身が十代へと向けられ、エネルギーがチャージされていくかのようにキャノン砲の頭から光が漏れだす。その光景を見た翔が頭を抱えて悲鳴を上げた。
「待った! リバーストラップオープン!」
しかし十代は諦めないとばかりに宣言、同時に彼の場の伏せカードの一枚が翻る。
「[ヒーロー見参]! このカードにより相手に選ばせた一枚のカードがモンスターカードだったら、それをこの場に召喚する事が出来る! さあ、選んでもらうぜ取巻!」
十代はそう言い、三枚の手札を突きつけるように提示する。このカードを壁に使う関係上恐らく魔法・罠カードは前のターンに軒並み伏せて手札にはモンスターカードだけを残しているのだろう。
「なら……一番右だ!」
だが何を出してきてもドラゴン・カタパルトキャノンなら粉砕できる。取巻はそう信じて手札を選び、その宣言を聞いた十代は
「ラッキー!」
十代は小さくそう呟き、そのカードをモンスターゾーンへと置いた。
「俺はこのカード――[ハネクリボー]を守備表示で召喚!!」
ハネクリボー 守備力:200
出現するのは茶色い毛で覆われた丸っこい身体に一対の天使のような羽を生やしたモンスター――ハネクリボー。
『可愛いー!』
その姿を見た観客の女子生徒達が一気に色めきたつ。
「(……VWXYZの表示形式変更効果は攻撃宣言時のみ発動する。バトルステップの巻き戻しが発生した時には既に攻撃宣言が終わってるから、この攻撃で
「ダメだ、あれじゃハネクリボーはひとたまりもない……」
色めきたつ女子達に気を取られる事なく取巻は冷静に状況を判断し、行動を決める。その指示に従ったドラゴン・カタパルトキャノンの砲身が十代からハネクリボーへと向き直し、エネルギーレーザーが放たれる。それを見た翔が諦めたように萎んだ声を漏らした。
「来たぜ相棒!」
だが十代は諦めていなかった。いや、むしろ十代はこの千載一遇のチャンスを待ち望んでいた。
「俺は手札二枚をコストに[進化する翼]を始動!!」
「あれは遊城が欲しがってたカード!?」
十代が残る二枚の手札――ヒーロー・マスクと
その小さな羽は翼となって大きく広がり、その身体もまるでドラゴンのような、いや、金色のドラゴンがハネクリボーを抱えているような姿になっていた。
「どういう事だ!?」
「進化する翼により、ハネクリボーが進化! ハネクリボーは今LV10!」
ハネクリボー LV10 守備力:200
進化する翼。それはフィールドのハネクリボーと手札二枚をコストとして墓地に送る事で手札またはデッキからハネクリボーLV10を特殊召喚する速攻魔法。
取巻が(間接的に)翔から受け取った新たな切り札と、十代が(間接的に)慕谷から受け取ったカードによって呼び出された切り札が今ここでぶつかり合う。
「こいつの効果はその身を犠牲に攻撃表示モンスターを全て破壊し、その攻撃力と同じダメージを相手プレイヤーへ与える!」
十代はこの強力無比な効果に賭けていた。
もしこのターン、取巻が伏せカードを警戒してこのターンでの勝利を諦め、ドラゴン・カタパルトキャノンの効果によって伏せカードの除去を選び、ヒーロー見参か進化する翼のどちらかでも失えば、十代は相手ターンにハネクリボーを出す手段、もしくはハネクリボーLV10を呼び出す手段を失っていた。
もしドラゴン・カタパルトキャノンの直接攻撃宣言時に発動したヒーロー見参でハネクリボーが選ばれなければ、ハネクリボーを出すことが出来ずにドラゴン・カタパルトキャノンのダイレクトアタックを受けて敗北していた。
この綱渡りとも言える賭けに成功した今、反撃のチャンスが生まれていた。
「ハネクリボー! 全エネルギーをあいつに返してやれ!!」
[クリクリー!!!]
十代の声とともにハネクリボーも吠え、その身で受け止めたエネルギーレーザーをドラゴン・カタパルトキャノンに跳ね返す。
[グオオオオオオオ!!!]
「ぐあああぁぁぁぁっ!!」LP4000→1000
それを受けたドラゴン・カタパルトキャノンが悲鳴のような音を上げて破壊され、そのエネルギーを浴びた取巻のライフも大幅に削られる。
「くっ! 俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ!」
取巻は悔しそうに唸りつつ、最後の手札を伏せるとターンエンドを宣言した。
「やった! アニキが一気に逆転ッス!」
「いや、まだ油断は出来ない……」
翔が両腕を振り上げて歓喜の声を上げるが、隣に立つ三沢は厳しい顔を見せていた。
「たしかにハネクリボーLV10の効果でVWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンを撃破、さらにライフも大幅に削った。しかしその代償として彼のフィールドも丸裸になり、そして彼の手札は次のドローカード一枚のみ……」
「で、でも取巻君の手札もないし場のカードもあの伏せカード一枚だし、そこは……」
「いいえ。次のターンは取巻君が予見通帳を発動してから三ターン目。そのスタンバイフェイズ、彼の手札には予見通帳の効果で除外した三枚のカードが加えられる」
三沢の言葉に弱々しく反論しようとした翔に明日香が告げる。つまり次のターンのスタンバイフェイズ、取巻の手札はドローカードを含めて合計四枚に増える。ここに来てさらに三枚のハンドアドバンテージは相当な差をつけるだろう。
勝負が長引けば十代の不利は変わらない。三沢達はそう分析していた。
(けれど、万丈目君が言っていたドローの強さ。あれが万丈目君や私と戦った時のたまたまではない、彼の本当の力なら……)
その中で、明日香は十代を試すかのような目を彼に向けていた。
「いくぜ、俺のターン――ドロー!」
十代もこのチャンスを逃さないとばかりに、そして本能的に長引かせては危険だと察しているのか気合いを込めてカードをドロー。そのカードを見て彼はよしと頷いた。
「俺は[E・HERO ワイルドマン]を攻撃表示で召喚!」
E・HERO ワイルドマン 攻撃力:1500
「っ……」
そのモンスターを見た取巻が僅かに怯み、しかし顔に出さないように必死でポーカーフェイスを保つ。
「バトルだ! ワイルドマンでプレイヤーにダイレクトアタック!」
十代が攻撃を宣言し、それを聞いたワイルドマンも背負っていた大剣を抜き地面を蹴って走り出す。
「くそおおおぉぉぉぉっ!! トラップカードオープン[
その宣言を聞いた取巻が悔しそうに吠え、同時に彼の場の唯一の伏せカードが翻る。
「あああぁぁぁぁっ! あれは相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター一体を対象として発動でき、その攻撃モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを相手に与えるカード! ワイルドマンの攻撃力は1500、それを跳ね返されたらアニキのライフが丁度0になっちゃうー! もうダメだー!!」
「……惜しかったな――」
そのカードを見た翔がやけに説明口調で悲鳴を上げて頭を抱え、準が腕を組み顔を伏せて目を閉じ呟く。
「――取巻」
「……え? なんで? 取巻君は魔法の筒を発動してワイルドマンの攻撃を無効に――」
「いや、違うんだ丸藤」
準の呟きを疑問に思ったのか、翔は頭を抱えながらもきょとんとした顔で準を見ると、その彼の言葉をこちらもまた悔しそうに顔を歪めていた慕谷が首を横に振って遮る。
しかし友人の辛い未来を想像した二人の気持ちを慮ったのか三沢が口を開いた。
「E・HEROワイルドマンには、モンスターゾーンに存在する限り罠カードの効果を受けない効果がある」
「……つ、つまり、魔法の筒の効果は……」
「ワイルドマンには関係ない」
あの魔法の筒は何の意味もない。三沢はそう真実を告げる。だが取巻が魔法の筒を発動したのは、彼もまたワイルドマンの耐性を知っており、己の敗北を理解し、それでもなお最後まで抗おうという気概の発露だったのだろう。彼の慟哭がそれを物語っていた。
ワイルドマンの目の前に出現した魔法の筒をワイルドマンは踏みつけ、むしろ足場に利用して大きくジャンプ。取巻を標的に捉えて大剣を上段に構える。
「テヤアアアァァァァッ!!!」
「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!!」LP1000→0
その振り下ろした大剣による斬撃のダメージが、このデュエルを終わらせる一撃となるのだった。
「く……」
取巻が悔しそうに項垂れつつ、だがどうしても気になるのか次のターンに予見通帳で手札に加わる三枚のカードを確認。
「!」
すると彼は愕然とした顔になり、それを見た十代が気になったのか彼に駆け寄った。
「取巻、それ次のターンで手札に加わるはずだったカードだろ? なんだったんだ?」
「ああ、これだよ」
隠すわけでもないのか取巻は三枚のカードを十代に向け、十代もそれらを覗き込んだ。
「[予想GUY]、[オプション]、[強化支援メカ・ヘビーウェポン]……これがどうしたんだ? あんな顔見せたんだし、きっと何かあったんだろ?」
「僕のデッキには[超時空戦闘機ビック・バイパー]がある……これだ」
反省会でも始めたつもりだろうか。十代と取巻は揃ってフィールドに座り込み、取巻はデッキから一枚のモンスターカードを十代に見せる。
「攻撃力1200、守備力800の通常モンスター……なんか普通だな。凄い融合モンスターの素材なのか?」
低ステータスの通常モンスターと見てそう考察するのは、自分がそう言ったモンスターを融合して強力な融合モンスターに繋げるE・HERO使い故か、あるいは今回VWXYZを出すまでのプレイングを見ていたからか。そんな十代の言葉に取巻は「あいにくとこいつは融合素材じゃないよ」と告げた。
「光属性・機械族としてVWXYZシリーズとサポートカードを共有できるから採用してるんだけど。次のターン、予想GUYでビッグ・バイパーを特殊召喚するだろ? で、通常召喚権を使ってヘビー・ウェポンを召喚してビッグ・バイパーとユニオンし攻撃力・守備力を500アップさせる。さらにオプションは自分フィールド上に超時空戦闘機ビック・バイパーが表側表示で存在する場合に超時空戦闘機ビック・バイパー一体を選択し特殊召喚ができる。そしてオプションの攻撃力・守備力は常に選択したモンスターと同じになる……ここまで言えば分かるな?」
「……攻撃力1700のモンスターが二体並ぶってことか……」
つまりもし次のターン、ワイルドマンを出したはいいものの攻撃を渋ったりして次のターンに回ればワイルドマンを上回るステータスのモンスターが一気に二体出てきて逆転負け。
そこでさらに気になったのか取巻は何気ない様子でデッキの一番上のカードを確認、それを見てフッと笑ってドローカードを十代に見せた。
「おっと、おまけにドローカードは[ビッグバン・シュート]だ。これがあればビッグ・バイパーは貫通効果を得る上に攻撃力は2100になる。もちろんオプションの攻撃力も一緒になる」
「うげ、クレイマンを出しても耐え切れねえ……」
「ついでに言えばヘビー・ウェポンは装備モンスターに自身の破壊と引き換えに戦闘・効果に対する破壊耐性を与える」
取巻が次のターンで手札に加える四枚のカードの詳細を聞いた十代が顔を歪める。
あの時点ではどれも分からなかったとはいえ、もし攻撃を渋ったり守備を固めたりしたら次のターン一気に展開されて物量と貫通効果で押し切られていた。仮にミラーフォースのような防御を兼ねた除去カードを引いていたとしてもヘビー・ウェポンで破壊耐性を付与されたビッグ・バイパーはゴリ押しでそれを突破してトドメを刺してくるだろう。
そしてワイルドマン以外のモンスターを出して攻撃を仕掛けていた場合は魔法の筒で攻撃を防がれた上にバーンダメージを受けていた事になるしそのモンスターの攻撃力によってはそのバーンダメージで負けていた可能性がある。
つまり十代はある意味、あそこでワイルドマンを引いた上で攻撃を仕掛けたからこそギリギリで勝てたというわけだった。
「はー……ギリギリ、紙一重って事か……あっぶねー」
「ま、ギリギリとはいえ勝ちは勝ちだ。クロノス教諭も言ってたけど、昇格も期待しといた方がいい」
そう言って取巻は十代を期待してこのデュエルを間近で観戦していたクロノスを見る。
「あれ? クロノス教諭がいない?」
「あ、ホントだ。いつの間に?……ま、別にいいだろ」
しかしそのクロノスはいつの間にか姿を消しており、二人は顔を見合わせて首を傾げるが「まあいいか」と結論づけると揃ってデュエルフィールドを降り、そして十代は翔から勝利を祝う言葉を、取巻は準達から労いの言葉を受けながら二人の実技テストは幕を閉じるのだった。
それから月一試験実技テストは進んでいき、ついに最終組の番となる。
そしてそのデュエルフィールドの一つで今回実技テストを行う二人のデュエリストが相対した。
「まったく。クロノス教諭も随分と俺を過大評価してくれたものだ」
「どういう事だい?」
実技テストを受ける一人――準の言葉に対戦相手が問いかける。
「クロノス教諭が、俺が君の相手をする時にこう言ったんだ。“俺には役不足だろうが是非とも頑張ってほしい”とな。まったく……外部入学試験主席合格者の相手が役不足とは」
「ははは。まあ、そう言われてこそ
準の言葉に対戦相手――三沢大地は爽やかに笑いながら答えた後、不敵な笑みを準に向けた。
「もちろん。俺もやるからには勝つつもりで行かせてもらうけどね」
「当然だ」
実質中等部からの編入組のトップと外部入学組のトップの戦い。
周囲も気になるのか試験が終わった生徒達も次々と集まる中、二人は堂々とデュエルディスクを構える。
「「デュエル!!!」」
そして二人の
《後書き》
ニコニコ動画がサイバー攻撃で長期間ダウンしていましたが、実は遊戯王GXはdアニメニコニコ動画支店で視聴し内容確認してたのでニコニコ動画がダウンした結果当然遊戯王GXを視聴できなくなり、内容の確認等ができなくなったため執筆が滞っておりました。
投稿が遅れたのはぶっちゃけそれだけです。より厳密に言うならそれによってモチベが下がって書く気を失ってました。ぶっちゃけここ数ヶ月執筆活動まともにしてませんでした。
さて話を変えて今回は十代VS取巻。なるべく原作みたいな展開を作りつつ、「安定感ではブルーである取巻が上だけどここぞというところでの爆発力や引きの強さで十代が上回る」な感じを意識しました。
そしてあとワンターン猶予があればまず取巻の方が勝ち確だった感じです。そのワンターンが生死を分けたわけですが。
そして次回は万丈目VS三沢です。つまり本来クロノスの想定では「万丈目VS十代」「取巻VS三沢」になる予定でした。それがこんな事になっちゃいましたねw
まあこっちに関してはガチでこれから構成考えるんですけど……流石に万丈目がドラゴン使いである以上アニメの万丈目VS三沢を流用は出来ないし……一応締めだけは決めてるんですけど、さてそこにどうやって持っていくかという感じです。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。