遊戯王GX~もしも万丈目兄弟の仲が良かったら~   作:カイナ

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第十六話 ノース校からの留学生

 デュエルアカデミアの特設デュエルフィールド。一年生は今日特別なイベント等が行われる際にも使用されるここで特別集会が行われるという事で一年生は今日朝一に集合が言い渡されており、十代達もノース校への短期留学に出発した準を見送った後に大急ぎでやってきていた。

 そして準達を見送っていた関係上到着が遅かった十代達が到着した頃には既に他の一年生はほぼ集合済み。赤、黄、青の三種類の制服がまばらになっている辺り前もっての席決め等はされておらず空いている席に早い者勝ちで座ったのが伺える状況である。

 

「お、十代。それに皆も、ちょうどここ四人分空いてるぞ」

 

「三沢! サンキューな。皆、あそこ行こうぜ」

 

 十代達を見つけたらしい青年――三沢が手を挙げて四人を呼び、それに応えた十代始め翔、取巻、慕谷は三沢のすぐ後ろの席、ちょうど前後で二席ずつ合計四席空いている場所に着席する。

 なお彰子と百合はいくら早い者勝ちとはいえ男女で別れるくらいは出来ているらしく女子が多い席の方に移動していた。

 

 

 

 

 

「おい聞いたか? さっきのノース校との交換短期留学の話」

 

 十代達が着席した時、周囲からそんな囁き声が聞こえてくる。どうやら近くの席に座っているブルー男子のようだ。

 

「ああ。ノース校から短期の留学生が来る代わりに、こっちからも短期の留学生を出すって話だろ?」

 

「そうそう。それでうちからノース校に短期留学する奴なんだけどさ、どうやら万丈目らしいぜ。しかももう出発してるんだとよ」

 

 そう話すブルー男子の口調の中にクスクスと、どこか嘲笑のような調子が加わる。

 

「留学だなんだって言ってるけどさ。要は逃げ出したに違いないぜ」

 

「三沢に負けたんだもんな。留学なんて格好の口実があるとはいえだっせえよなぁ」

 

「ま。負け犬は出ていけって感じ?」

 

 三人のブルー男子が、当人がその場にいないとはいえ好き勝手な事を言う。その言葉に十代が表情を歪め、自分の後ろの席に陣取った取巻の方に振り向いた。

 

「いいのかよ取巻、万丈目の事あんな好き勝手に言わせといて。俺からガツンと言ってやろうか?」

 

「ほっとけ。万丈目さんがいないと分かってなけりゃあんな口も叩けない小物だよ」

 

「そうそう。相手する価値もないってやつだ」

 

「そうかぁ?……ま、二人がそう言うならいいけどさ」

 

 十代の言葉も、なんならブルー男子の陰口もどこ吹く風。というように取巻と慕谷が肩をすくめ、十代は準の友人という意味では自分より付き合いの深い二人がそう言うのなら自分がどうこう口を挟むのは違うと思ったのか言葉を飲み込んで前を向く。

 

「まったく、俺に負けたからなどと勘違いも甚だしい。彼がその程度で逃げるはずがないだろう。むしろ己の力を試し、さらに鍛え上げるための武者修行に向かったに違いない」

 

 そして三沢もブルー男子達の心ない嘲笑に対して勘違いと断じたその時、特設デュエルフィールドに鮫島が入場。クロノスを引き連れ、さらにその後ろには先ほど十代達が埠頭で会った男子――江戸川が続く。

 

「皆さん揃っているようですね」

 

 デュエルフィールドの中央に鮫島が立ち、辺りを見回しながらマイクを手に声を出す。

 

「先ほどクロノス教諭に説明していただいたと思いますが。我が校は姉妹校の一つであるノース校との交換留学が定期的に行われています。本校からは万丈目準君が、本人の希望によって皆さんには伏せていましたが既にノース校に出発しています。そしてこちらがノース校からの短期留学生の江戸川君です。では一言お願いします」

 

 鮫島は軽く説明をした後、江戸川に自己紹介をとマイクを手渡す。江戸川もマイクを受け取ると「あーあー」と軽くマイクテストを行った。

 

「先ほど紹介に与った、ノース校の江戸川遊離だ。ノース校では一年生のランキングトップを飾っている。腕に覚えのある奴は遠慮なくかかってこい」

 

「アーット、ノース校は本校と比べて実技を重視した校風になっているノーネ。そしてその実技の結果がランキング形式になっていて、彼はそのトップという事ナノーネ」

 

 要はノース校の実力トップ。つまり本校でいえばオベリスクブルー級でその中でもトップの実力者という事だとクロノスが江戸川の自己紹介を受けて補足説明。

 そして「腕に覚えがある奴は遠慮なくかかってこい」というマイクアピールに、主にオベリスクブルー辺りの生徒達が好戦的にざわつく。その間に鮫島が江戸川からマイクを受け取って再び口を開いた。

 

「さて。皆さんも江戸川君の実力は気になっている事でしょう。そこで、これよりクロノス教諭とのエキシビジョンマッチをしていただきたいと思います」

 

 そこまで予定の内なのだろう。クロノスは恭しく頷くと用意されていたデュエルコートを装着、江戸川もデュエルディスクを筋骨隆々な左腕に装着する。そして鮫島がデュエルフィールドを降り、二人は所定の位置に移動すると向かい合う。

 

「「デュエル!!!」」

 

 二人の声が重なり合い、デュエルの幕が開くのだった。

 

「シニョール江戸川、先攻は譲るノーネ」

 

「ありがたく! 俺の先攻、ドロー!」

 

 教師としての余裕かハンディか、他校とはいえ生徒である江戸川に先攻を譲るクロノスに江戸川は会釈で応えた後、勢いよくカードをドロー。六枚の手札を吟味すると、初手を決めたかのように淀みなく動き出す。

 

「俺は魔法カード[簡易融合(インスタントフュージョン)]を発動! ライフを1000ポイント払い、レベル5以下の融合モンスター一体を融合召喚扱いとして融合デッキから特殊召喚する! ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、エンドフェイズに破壊される。俺はレベル5の[音楽家の帝王(ミュージシャン・キング)]を特殊召喚(融合召喚)!」LP:4000→3000

 音楽家の帝王 攻撃力:1750

 

 江戸川の場に現れるのは金髪を逆立てた上半身裸のミュージシャン。しかしその姿はすぐに光の渦に巻き込まれ消え去った。

 

「俺は音楽家の帝王を生贄に捧げ、[タン・ツイスター]を召喚! 続けて魔法カード[トランスターン]を発動! 自分フィールドの表側表示モンスター一体を墓地に送り、種族・属性が墓地のそのモンスターと同じでレベルが一つ高いモンスター一体をデッキから特殊召喚する! タン・ツイスターはレベル6・闇属性・悪魔族! よって俺はレベル7・闇属性・悪魔族の――」

 

 呼び出されたタン・ツイスターもまた闇の渦に巻き込まれ、その闇がさらに膨張する。

 

「――[デビルゾア]を攻撃表示で特殊召喚!!!」

 デビルゾア 攻撃力:2600

 

 その闇の渦の中から巨大な悪魔がその姿を現した。

 

「そしてこの瞬間タン・ツイスターの効果発動! 召喚したこのカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを二枚ドロー! そしてこの効果を発動した場合、このカードをゲームから除外する」

 

 そしてタン・ツイスターは己の身が異次元へと消え去る事を条件に江戸川に二枚の新たな手札を与え、江戸川はさらに手札から三枚のカードを伏せるとターン終了を宣言した。

 

「あいつ、なかなかやるな……」

 

 江戸川のワンターン目のプレイングを見た取巻が彼を賞賛。どういう事だと振り返る十代と翔に対して腕組みをした慕谷が口を開く。

 

「タン・ツイスターは生贄召喚した後に墓地に送る事で二枚のカードをドローできる。あいつは簡易融合で生贄用のモンスター(音楽家の帝王)を出してタン・ツイスターを生贄召喚。トランスターンでデビルゾアに繋げつつタン・ツイスターの効果でドローした。つまり手札消費三枚でデビルゾアを出しつつ二枚ドローしたって事は……」

 

「そっか! 彼は実質手札一枚でデビルゾアを出したようなものなんだ!」

 

 実際は簡易融合の発動コストであるライフポイントの消費もあるとはいえ、手札消費だけで単純に考えれば彼は最上級モンスターであるデビルゾアを手札から直接出したも同然。

 そのプレイングを解説する慕谷に翔が合いの手を入れ、十代も「流石はランキングトップ……」と江戸川を見る。

 

「だけど、生贄用のモンスターを出したいだけなら[デビルズ・サンクチュアリ]とかあるよな? なんでライフコストが必要な簡易融合なんて使ったんだ? それにトランスターンで出すモンスターだって他にいるだろうに……」

 

「トランスターンの方はともかく、デビルズ・サンクチュアリは単に持ってないとかじゃないか? あるいはあのカード達(音楽家の帝王やデビルゾア)に愛着があるとか?」

 

 だが色々と不可解な部分があるのもまた事実。そこに首を捻る取巻だが慕谷があっさりと答えると「そうなのかなぁ」と呟き、しかし真実が分からない以上どうしようもないのか口を閉じるのだった。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 一方後攻のクロノスがカードをドローして六枚の手札を見る。と彼は口角を持ち上げてフフンと得意気に鼻を鳴らした。

 

「私は[ブンボーグ003]を攻撃表示で召喚し、効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキからブンボーグ003以外のブンボーグモンスター一体を特殊召喚する。私は[ブンボーグ002]を守備表示で特殊召喚するノーネ!」

 ブンボーグ003 攻撃力:500

 ブンボーグ002 守備力:500

 

 クロノスの場に現れるのは文房具を思わせる武装を装備したサイボーグ。その攻撃力こそ低いものの、クロノスは手札消費一枚で二体のモンスターを呼び出していた。

 

「ん? 本校のクロノス先生は古代の機械(アンティーク・ギア)使いだって聞いてたんだが?」

 

「ニョッホホホ。流石に留学生相手のエキシビジョン、言わばデモンストレーションにそれはちょっと大人気ないノーネ」

 

 お前入学試験で試験生(十代)相手にその大人気ない真似しただろうが。という視線がどこかからクロノスに飛ぶが、クロノスは全く気にせずにブンボーグ002を手で指し示した。

 

「続けて特殊召喚に成功したブンボーグ002の効果発動ナノーネ! このカードが特殊召喚に成功した場合にデッキからブンボーグカード一枚を手札に加える。これにチェーンして[ブンボーグ003]の効果発動! 一ターンに一度、自分フィールドのブンボーグモンスター一体の攻撃力・守備力をターン終了時まで、自分フィールドのブンボーグカードの数×500アップするノーネ! 私はブンボーグ003の攻撃力をアップ。さらにこれにチェーンして――」

 

 クロノスは一気にブンボーグの効果発動コンボを決めつつ手札を取る。

 

「――速攻魔法[サモンチェーン]を発動! このカードは同一チェーン上で複数回同名カードの効果が発動していない場合、そのチェーン3以降に発動でき、このターン私は通常召喚を三回まで行う事ができるノーネ!」

 

 既にブンボーグ003の通常召喚を行っているため、実質の通常召喚権は残り二回。しかし本来一ターンに一度である通常召喚権を三倍に増やす。その脅威が分からない程ここにいる者達は未熟ではないらしく、観客席は一気にざわつき始めていた。

 

「チェーン処理によってブンボーグ003の効果により003の攻撃力は1000ポイントアップ、そしてブンボーグ002の効果により[ブンボーグ004]を手札に加えマース。さらに、ブンボーグ002がモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップするノーネ! そして二回目の召喚権を使い、ブンボーグ004を召喚!」

 ブンボーグ003 攻撃力:500→1000→2000

 ブンボーグ004 攻撃力:500→1000

 

 三体のモンスターを出し、内一体の攻撃力は下級モンスターとしてはトップに並ぶまで上昇。ここまでやってクロノスの手札はまだ四枚。いや――

 

「魔法カード[機械複製術]を発動! 自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター一体と同名モンスターを二体までデッキから特殊召喚する!」

 

 

「クロノス教諭の場に攻撃力500以下の機械族モンスターは一体だけ!?」

 

「ま、まさか!?」

 

 

「私は[ブンボーグ002]二体を守備表示で特殊召喚! そして特殊召喚成功時にそれぞれの効果発動! デッキからブンボーグカードを一枚ずつ手札に加えるノーネ!」

 

 ――ブンボーグカード、ブンボーグ003とブンボーグ004を手札に加える事で、クロノスは相手に既知のカードを加えてとはいえ手札五枚にしてモンスター五体を場に出す事に成功。

 

「そしてブンボーグ002の効果により、私の場のブンボーグ達の攻撃力・守備力がアップ!」

 ブンボーグ002 ×3 守備力:500→1500

 ブンボーグ003 攻撃力:2000→3000

 ブンボーグ004 攻撃力:1000→2000

 

 そしてその攻撃力アップの相乗効果により、ブンボーグ003の攻撃力がデビルゾアを上回る。

 

「ヌフフ。まだ終わらないノーネ」

 

 しかしクロノスは不敵な笑みを浮かべて手札から一枚のカードを手に取る。その時ブンボーグ003と004が光に包まれる。観客の誰かが「まさか」と声を漏らした。

 

「私は三度目の召喚権を使い、ブンボーグ003と004を生贄に捧げ、[パーフェクト機械王]を攻撃表示で召喚!」

 パーフェクト機械王 攻撃力:2700

 

 そしてその光の中から白い装甲に赤い差し色を着色した巨大なロボットが出現した。

 

「パーフェクト機械王はフィールド上に存在するこのカード以外の機械族モンスター一体につき攻撃力は500ポイントアップする! そしてブンボーグ002が三体存在する事により、002の効果も加わってさらに攻撃力はアップするノーネ!」

 パーフェクト機械王 攻撃力:2700→5700

 

 クロノスの場にはブンボーグ002が三体、よってパーフェクト機械王自身の効果により攻撃力が1500ポイントアップ。そして三体のブンボーグ002の効果によりパーフェクト機械王の攻撃力はさらに1500ポイントアップ。合計3000ポイントアップという破格の攻撃力上昇に観客は驚き絶句していた。

 

「そして手札の[マシンナーズ・フォートレス]の効果発動。このカードはレベルの合計が8以上になるように手札の機械族モンスターを捨てる事で手札・墓地から特殊召喚できるノーネ。私はマシンナーズ・フォートレス自身とブンボーグ004を捨て、墓地からマシンナーズ・フォートレスを特殊召喚! もちろんこのカードも002の効果で攻撃力がアップし、機械族が増えた事でパーフェクト機械王の攻撃力もアップするノーネ!」

 マシンナーズ・フォートレス 攻撃力:2500→4000

 パーフェクト機械王 攻撃力:5700→6200

 

 攻撃力6200と攻撃力4000。圧倒的な攻撃力のモンスターを二体ワンターンで呼び出した上にリクルーターの攻撃を防げる程度の守備力はある守備モンスター三体で守りも万全。

 正に完璧な布陣。クロノスは自信に満ちた笑みを浮かべ、「バトルナノーネ!」と宣言した。

 

「パーフェクト機械王! デビルゾアを攻撃するノーネ!」

 

 クロノスの攻撃指示を受けたパーフェクト機械王の両肩のハッチがオープン。そこから無数のミサイルが発射されてデビルゾア目掛け宙を駆ける。その戦闘ダメージだけでも前のターンにライフを削った彼のライフでは即死になる大ダメージ。この攻撃が通れば決まる――

 

「リバースカードオープン!」

 

 ――そう生徒達が思ったその時、江戸川が吠えた。

 

「トラップカード[ジャスティブレイク]を発動! 自分フィールド上の通常モンスターを

 攻撃対象とした相手モンスターの攻撃宣言時に発動でき、表側攻撃表示で存在する通常モンスター以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する!」

 

「ナァッ!?」

 

 突如デビルゾアの身体が発光したかと思いきやその身体からエネルギーが雷のように放出。フィールド全体に降り注ぐとクロノスの場の機械族モンスター達に次々直撃、一気に全てのモンスターが破壊されていく。

 

「ノンノノノーン!? 私のパーフェクト機械王、マシンナーズ・フォートレス、ブンボーグ達がー!?」

 

 クロノスも聖なるバリア-ミラーフォースのようなトラップでパーフェクト機械王とマシンナーズ・フォートレスという攻撃表示モンスターがやられるまでなら予想はしていただろう。故にブンボーグ002には全員守備を取らせてカウンターの攻撃に備えていたのだから。

 しかしそのブンボーグ達すらも全滅。五体のモンスターが一気に破壊させられた光景にクロノスは頭を抱えて悲鳴を上げる。

 

「……そうか。だからデビルゾアを採用していたのか」

 

「どういう事だ、三沢?」

 

 合点がいったという様子で三沢が呟き、その言葉を十代が拾うと彼は険しい顔をしながら解説を始める。

 

「タン・ツイスターとトランスターンのコンボ。あれはデッキからレベル7・闇属性・悪魔族のモンスターを特殊召喚しながらデッキから二枚のカードをドローできる強力なコンボ。それに先程のジャスティブレイクを絡めるには通常モンスターを採用した方がいい……そしてこの条件をすべて満たすモンスターは現状デビルゾアのみなんだ」

 

 単体では少々見劣るする性能のデビルゾアを採用しているのにも計算しつくした合理があった。と三沢は結論づける。

 その合理の結果が示す光景に、観客の生徒達もざわめきが抑えられないでいた。

 

「ククク、どうしたんだクロノス先生? ターンエンドか?」

 

「グヌヌ……私はカードを一枚セットし、ターンエンドナノーネ」

 

 不敵に笑う江戸川の言葉にクロノスは唸りつつカードを一枚伏せてターンを終える。しかし彼の最後の手札はブンボーグ002でサーチした003。情報アドバンテージを握られた状態でターンを渡す事を余儀なくされていた。

 

「ワ、ワンターン目からなんてハイレベルなデュエルだ……江戸川は実質手札消費一枚でデビルゾア(最上級モンスター)を出してクロノス教諭を牽制……」

 

「だがクロノス教諭もデビルゾアどころじゃない攻撃力のモンスターを二体揃えつつ守備モンスター三体で守りを固めて攻撃……」

 

「これで決まりかと思ったらそいつらが一気に全滅……」

 

「そして恐らく彼はこの全てを計算していた……」

 

「ぼ、僕もう何がなんだか……」

 

 取巻、慕谷、十代、三沢、翔が次々にぼやく。しかしその言葉はまさしくこのデュエルを見ている生徒達全員の代弁と言えるだろう。生徒達の唖然としたような顔がそこから見て取れるようだった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 江戸川が勢いよくカードをドロー。ここまでの攻防の結果においても彼の手札は三枚、さらにフィールドにはデビルゾアと正体不明の伏せカードが二枚。伏せカードが一枚のみ、たった一枚の手札の情報アドバンテージも握られているクロノスと比べると圧倒的に優位な状況。

 そこからさらに攻めるといわんばかりの好戦的な笑みを浮かべながら、江戸川は一枚の手札を取った。

 

「魔法カード[スター・ブラスト」を発動! 500の倍数のライフポイントを払う事で自分の手札または自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター一体のレベルをエンドフェイズ時まで、払ったライフポイント500ポイントにつき一つ下げる! 俺はライフを1500ポイント払い、手札の[デビルゾア]のレベルを3下げる!」LP3000→1500

 

「デビルゾアのレベルは7、ツマーリ!?」

 

「そう! これでこのデビルゾアのレベルは4! 俺はレベル4になった[デビルゾア]を攻撃表示で召喚! さらにリバースカードオープン[メタル化・魔法反射装甲]! このカードを攻撃力・守備力300アップの装備カード扱いでレベル4のデビルゾアに装備する!」

 デビルゾア 攻撃力:2600→2900 レベル7→4

 

 現在のライフからさらに半分を犠牲にして召喚された悪魔の身体に装甲が装着され、攻撃力が僅かに上がる――だがそれだけでは終わらない。

 

「そして、魔法反射装甲を装着したデビルゾアを生贄に、[メタル・デビルゾア]を特殊召喚!!」

 メタル・デビルゾア 攻撃力:3000

 

 江戸川の宣言と共に青き悪魔の身体を覆う装甲が悪魔の身体を浸食し、融合。悪魔の身を完全に機械化し、真の力を目覚めさせた。

 

 

「攻撃力2600と攻撃力3000!」

 

「あの二体からダイレクトアタックを受けたらクロノス教諭は終わりだ!」

 

 

「バトルだ! デビルゾアでダイレクトアタック! デビル・エックス・シザース!!」

 

「ぬぐううぅぅぅっ!!」LP4000→1400

 

 取巻と慕谷の言葉に続いたかのような江戸川の攻撃指示を受け、デビルゾアが両腕をクロスさせるように構えて力を溜めるとX字を描くように勢いよく振り下ろす。その際に発生した衝撃波がクロノスを襲い、一気にライフを半分以上削り取った。

 

「これでトドメだ! メタル・デビルゾアでダイレクトアタック!!」

 

 命令を受けたメタル・デビルゾアがその巨体に見合う巨大な足でフィールドを踏みしめ、ゆっくりとクロノスに近づいていく。

 

「……ふふん♪」

 

 その時、クロノスの口角が持ち上がった。

 

「この瞬間トラップ発動[串刺しの落とし穴]! このターンに召喚・特殊召喚された相手モンスターの攻撃宣言時に発動でき、その攻撃モンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与えるノーネ!」

 

 

「メタル・デビルゾアの元々の攻撃力の半分は1500! 彼のライフと丁度同じッス!」

 

「すげーぜクロノス先生!」

 

 あの状況からギリギリまで待ち構え、逆転のチャンスを狙っていた。その強かな姿とそれによる逆転劇に翔が歓声を上げ、十代もクロノスに賞賛の声を向ける。

 メタル・デビルゾアが踏み出そうとする地面に突然大穴が開く。既にメタル・デビルゾアの足は止まらず、このままでは大穴に落ち、その底に立てられている幾本もの棘に突き刺さる事は止められない。

 

「……ククク」

 

 その時、今度は江戸川が喉を鳴らすような笑い声を漏らす。

 

「串刺しの落とし穴の発動にチェーンしてカウンタートラップ発動!」

 

「ナ!? カウンタートラップ!?」

 

「そう! リバース・カウンタートラップ[王者の看破]! 自分フィールドにレベル7以上の通常モンスターが存在する場合、魔法・罠カードが発動した時に発動! その発動を無効にし破壊する!!」

 

 江戸川の宣言にクロノスが声を上げ、江戸川の場の最後の伏せカードが翻り、その内容が示される。

 

「あいつの場にはレベル7の通常モンスター、デビルゾアがいる!」

 

「つまり串刺しの落とし穴の発動は無効にされる!」

 

 十代と三沢の声が重なると共にデビルゾアが咆哮し、その際に発生した衝撃波によってクロノスの場の串刺しの落とし穴のカードが破砕。同時に大穴も塞がるかのように消滅していった。

 先程まで串刺しの落とし穴のあった場所をしかと踏みしめて足を進めるメタル・デビルゾアを止めるものはもはやなく、クロノスの元に辿り着いたメタル・デビルゾアは大きく両手を振りかぶった。

 

「叩き落とせ! メタル・デビル・ハンマー!!」

 

 江戸川の咆哮と共にその両手がハンマーのように振り下ろされ、ずどぉんという音と共に周囲に煙が舞い散る。

 

「や、やられたノ~ネ~……」LP1600→0

 

 その煙が晴れた時、メタル・デビルゾアの両手に押し潰されたように倒れているクロノスのライフが0を示し、デュエル終了を示すブザーが鳴り響く。

 

「う……嘘でしょ……」

 

 その光景を見た翔が呆然とした顔で声を漏らす。その周囲もざわめきを隠せていなかった。

 

「クロノス教諭は暗黒の中世デッキじゃなく、今回用の手加減したデッキで戦っていた……とはいえ、結果としては江戸川君が三ターン目でのワンターンキル……」

 

「あれが、ノース校トップ……」

 

 クロノスも実技担当最高責任者の名は伊達ではなく、そのタクティクスはデュエルアカデミアでもトップレベルに位置すると目されている。手加減したデッキを使っていたとはいえそんな彼を相手に江戸川は豪快なワンターンキル、いや、先攻一ターン目はルール上バトルフェイズに入れず攻撃できない。つまり攻撃可能になった最初のターンでワンターンキルを決めてみせた。

 そんな江戸川の底知れない実力に三沢が息を飲み、十代も硬く拳を握りしめながらそう呟くのであった。




《後書き》
 作者は音楽家の帝王がメタル化したモンスターであるヘヴィメタル・キングがメタル化・強化反射装甲関連モンスターとしてOCG化する事を諦めていません!(挨拶)

 という訳で皆様お久しぶりです。なんか色々ありました内にいつの間にか最終投稿から半年過ぎてて驚いていますw
 さて今回は江戸川遊離VSクロノス先生です。そして江戸川のデッキは【メタル化】だと思った?残念、普通にリメイク前のデビルゾアがメインのアニメ版デッキを自分なりにアレンジしたものとなっています。
 いやなんか普通にこっちの方を使いたかった。それ以上の理由は特にありません。
 対するクロノスのデッキはパーフェクト機械王を切り札に据えた地属性・機械族デッキ。ぶっちゃけ暗黒の中世デッキを江戸川の噛ませ犬にするわけにはいかないので、代わりの噛ませ犬にするため&なんとなくパーフェクト機械王使いたかったという趣味に走って考案したデッキなんですがパーフェクト機械王の攻撃力アップ効果をある程度活かさせつつワンキルに持ち込みつつ結果的に全滅に持ち込む手段を考えるのに苦労しました……ぶっちゃけ最後は若干自棄になってブンボーグまで持ち出しました……。(最初は無理やり墓地肥やしをさせてバニラローレベル機械族を展開する方向で構想を練っていた)
 なお本作の世界観は遊戯王GXである以上、チューナーモンスターである001及びペンデュラムモンスターである005~008及びシンクロモンスターであるジェットは存在しません。多分この作品のブンボーグは「002~004、009だけが歯抜けで存在する変なシリーズ」扱いです。あと多分このデッキ009は入ってません。(クッソ雑な言い訳)

 一応次の話をどうするのかは決めてますし、頭の中でデュエル構成は済んでいますが……カード効果うろ覚えの状態で構成したので細かい処理の部分間違ってる可能性もあるからちゃんと調べての精査も必要とか、結構オリジナルになる部分があるのでいつになるかは自信がありません。気長にお待ちいただければ幸いです。
 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。 
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