遊戯王GX~もしも万丈目兄弟の仲が良かったら~   作:カイナ

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第二話 新しい出会い

 万丈目準がデュエルアカデミア中等部に入学し、取巻太陽と慕谷雷蔵という友人が出来てから三年の月日が経つ。

 準はデュエルアカデミア高等部への編入試験を前に、デュエルアカデミアとは関係のない外部の大会に出場していた。デュエリストの単純な実力ならデュエルアカデミア内部の大会の方が安定して高い、しかし三年も大会に出場していれば出場デュエリストの顔ぶれも変わらず、既に相手の手の内は知り尽くすまではいかずとも知れたもの。その環境に慣れてしまえば予想外の事態に即座に対応するための勘が鈍ってしまうと考えている彼は、時々こうやって外部のデュエル大会にも出場しているのだ。当然学校から許可は取っている。

 もちろんデュエルアカデミアでデュエルを専門に学んでいる自分達と比べれば、大抵の場合そもそも実力自体が低い。だが未来のプロとなるべく勉強していた自分達とは異なる道を進んでいるデュエルを見る事が彼にとっては新たな学びとなる上に……。

 

(ああ。これだから、こういう場は面白い……)

 

「バトルです! ブラキオレイドスでエメラルド・ドラゴンを攻撃します!」

 

「くっ……」LP4000→3400

 

 準が笑う中、対戦相手の場にいる巨大な恐竜が、準の場のエメラルド・ドラゴンを踏み潰して粉砕。その際に発生した衝撃波が準のライフを削る。

 

 [決まったー! 今まで無傷で決勝まで進んできた万丈目選手のライフがついに削られました!]

 

 実況の青年が叫び、辺りから「おぉー!」と歓声が響く。このデュエル大会において準は僅かなライフを削ることすらなく決勝まで勝ち上がり、今回の戦闘ダメージがこの大会初となるダメージ。

 

(こういう手合いがいるからこそ、外部の大会に参加する価値があるというものだ!)

 

 準がニヤリと笑いながら心の中で呟く。デュエルアカデミアに入らず、しかしその才能を開花させるデュエリストは大勢おり、そういった者は高等部への外部入学を行う事も多い。将来デュエル界を行く、若く芽の出ていない才能を前もって探し出す。そのために準は外部の大会に出場していた。

 準の対戦相手である、青髪ショートヘアの準と同い年くらいだろう女性はほっと一息ついている。彼女の場にいる、先ほどエメラルド・ドラゴンを倒したモンスター[ブラキオレイドス]の攻撃力は2200。本来ならエメラルド・ドラゴンの攻撃力に僅かに届かないが、彼女の場には[一族の結束]という永続魔法があり、その効果によって攻撃力が3000に上がっている。その上昇した攻撃力によってエメラルド・ドラゴンの戦闘破壊を可能にしたのだ。

 だが万丈目もただでは終わらない。それを示すかのように彼の場の伏せカードが翻った。

 

「トラップ発動[レベル・レジストウォール]! 自分フィールドのモンスターが戦闘または相手の効果で破壊された場合、そのモンスター一体を対象として発動し、レベルの合計がそのモンスターと同じになるようにデッキからモンスターを任意の数だけ選んで守備表示で特殊召喚する。俺はレベル6のエメラルド・ドラゴンが破壊されたことで、レベル2の[プチリュウ]、[ミンゲイドラゴン]、レベル1の[輪廻竜サンサーラ]、[守護竜プロミネンス]を守備表示で特殊召喚! ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」

 プチリュウ 守備力:700

 ミンゲイドラゴン 守備力:200

 輪廻竜サンサーラ 守備力:0

 守護竜プロミネンス 守備力:200

 

 

「出た! 万丈目さんのローレベルドラゴン展開コンボだ!」

 

「これを生贄にした上級ドラゴン展開が万丈目さんの必勝パターン!」

 

 万丈目の場に続々と出現する低レベルのドラゴン達。その姿を見た取巻と慕谷が歓声を上げた。

 

「わ、私はカードを一枚セットして、ターンを終了します」

 

「俺のターン、ドロー! 魔法カード[馬の骨の対価]を発動、通常モンスターであるプチリュウを墓地に送り、デッキから二枚ドローする」

 

 ターンの回ってきた準はまずプチリュウを使った手札交換からスタート。四枚になった手札を確認しながら相手の場を見据えた。

 

(彼女の場にいるモンスターはブラキオレイドスのみ、伏せカードはさっきのターンに伏せられた一枚。手札は三枚。さらに彼女の場にはさっきブラキオレイドスを融合召喚するために使用したフィールド魔法[フュージョン・ゲート]……攻めてみるか)

 

 準はそう考え、手札を取る。

 

「俺はフィールド魔法[フュージョン・ゲート]の効果を発動! 手札の[暗黒騎士ガイアオリジン]と場の[守護竜プロミネンス]を除外融合し、[天翔の竜騎士ガイア]を融合召喚! そして天翔の竜騎士ガイアの特殊召喚に成功した事で効果発動! デッキから[螺旋槍殺(スパイラル・シェイパー)]を手札に加える!」

 天翔の竜騎士ガイア 攻撃力:2600

 

 少女が先程のターンにブラキオレイドスの融合召喚に利用したフィールド魔法を利用し、こちらも融合召喚を行う準。さらにその効果によりデッキから新たなカードを手札に加えた次に、彼の場の二体のドラゴンを指さした。

 

「さらに、ミンゲイドラゴンと輪廻竜サンサーラを生贄に捧げ、[フェルグラントドラゴン]を召喚!!」

 フェルグラントドラゴン 攻撃力:2800

 

 低級ドラゴンを贄に呼び出されるのは巨大な体躯を誇る最上級ドラゴン。

 一気に準の場に二体の高攻撃力モンスターが出現したがその攻撃力は一族の結束で強化されたブラキオレイドスにはまだ及ばず、少女はほっと息をついている。

 

「永続魔法[螺旋槍殺]を発動し……バトルだ」

 

「えっ?」

 

「天翔の竜騎士ガイアでブラキオレイドスを攻撃!」

 

 しかし準は先程手札に加えた永続魔法を発動すると攻撃を宣言。攻撃力の劣るモンスターによる攻撃、本来あり得ない事に少女が困惑していると、赤き呪いの竜を駆る竜騎士が高速で動き出した。

 

「この攻撃宣言時に天翔の竜騎士ガイアの効果発動! このカードが相手モンスターに攻撃宣言した時に発動でき、その相手モンスターの表示形式を変更する!」

 

「えぇっ!?」

 ブラキオレイドス 攻撃力:3000→2000

 

「くらえ、天翔のドラグーン・チャージ!!」

 

 空中を高速移動する竜騎士に翻弄されるブラキオレイドスはバランスを崩して倒れ込んでしまう。その隙を狙ったかのように竜騎士は一気に突撃、その槍による突進攻撃でブラキオレイドスを貫き、その余波が衝撃波となって少女へと襲い来る。

 

「え、きゃああぁぁっ!? そんな、守備表示ならダメージは受けないはず……」LP2000→1400

 

「螺旋槍殺の効果。自分の「暗黒騎士ガイア」「疾風の暗黒騎士ガイア」「竜騎士ガイア」が守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える」

 

「で、でも……」

 

「天翔の竜騎士ガイアは、モンスターゾーンに存在する限りカード名を「竜騎士ガイア」として扱う。よって螺旋槍殺の効果の範疇となったわけだ。さらに螺旋槍殺の効果を発動。螺旋槍殺の貫通効果を適用した事で「竜騎士ガイア」が相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動。俺はデッキから二枚ドローし、その後手札を一枚選んで捨てる」

 

 少々ややこしいがそういうわけだ。少女も困惑しつつも納得したように頷いており、準は聡明な相手で助かると、中等部での実技試験中にこの効果を適用した時に説明を理解できなかったのか言いがかりをつけてきた、既に名も忘れる程度の相手を思い出しながらさらに手札の交換も行った後に少女を指した。

 

「これが決まれば終わりだ。フェルグラントドラゴンでダイレクトアタック!」

 

 あのリバースカードが攻撃に反応し自分やモンスターを守るタイプのトラップカードでない事は推測できる。ダイレクトアタックにピンポイントで反応するカードの可能性もなくはないが、それを気にして躊躇するほど甘くはない。

 フェルグラントドラゴンが主の指示を受けてその巨体を活かしたボディプレスで少女に襲い掛かり、凄まじい地響きの音と大量の砂埃が辺りに舞い散る。それを見る準の後ろで、取巻と慕谷が「これで万丈目さんの勝ちだ!」と歓声を上げていた。

 

「あ……危ないところでした……」LP600

 

 その時、砂埃の中から少女の声が聞こえる。そして砂煙が晴れた時、準や観客達は彼女のライフがギリギリで残っていること、そして場のさっきのターン彼女が伏せたカードが翻っていたのを見た。

 

「わ、私はフェルグラントドラゴンの攻撃に合わせてトラップカード[生存本能]を発動しました……自分の墓地に存在する恐竜族モンスターを任意の枚数選択しゲームから除外して、除外した恐竜族モンスター一体につき、私は400ライフポイント回復する……私は墓地の[ベビケラサウルス]三枚と[ワイルド・ラプター]、[ブラキオレイドス]の五枚の恐竜族を除外して2000ポイント回復しました……」

 

 つまりダメージを軽減したわけではなく、フェルグラントドラゴンの攻撃力以上になるようにライフを回復した後改めてライフが削られた。というわけだ。

 

「ふん、少しはやるようだ。俺はリバースカードを一枚セットし、ターンエンド」

 

 準は相手の思った以上のしぶとさに微笑を浮かべつつ、手札の一枚を伏せてターンエンドを宣言。少女は気合いを入れたかのようにむんと強く息をしてカードをドローする。そして既にやる事は決まっているというように、既に手札にあるカードを取った。

 

「私は[ディノインフィニティ]を召喚します!」

 ディノインフィニティ 攻撃力:?

 

「「攻撃力が決まってないカード!?」」

 

(あれは、たしかベビケラサウルスを破壊した時にサーチしたカードの一枚……)

 

 少女の出したモンスターは攻撃力不定。珍しいモンスターに取巻と慕谷が困惑の声を上げ、準はこのデュエル中に彼女がベビケラサウルスを連鎖破壊(チェーン・デストラクション)とのコンボでデッキから同名カード二枚を破壊し、ベビケラサウルスの効果によってレベル4以下の恐竜族モンスターを合計二体サーチする、デッキ圧縮とサーチを兼ねたなかなかに実践的なコンボによってサーチしたモンスターの内の一枚だと思い出す。

 

「ディノインフィニティの元々の攻撃力は、除外されている自分の恐竜族モンスターの数×1000になります! 私の除外されている恐竜族モンスターは、さっきのターンに生存本能で除外した五体と、フュージョン・ゲートの効果で融合素材にした、[二頭を持つキングレックス]と[屍を貪る竜]の二体、合計七体。よって元々の攻撃力は――」

 ディノインフィニティ 攻撃力:?→7000→7800

 

「「攻撃力7800!?」」

 

 元々の攻撃力だけでも凄まじい上昇の上に、一族の結束の効果によりさらにその攻撃力が上昇。ダイレクトアタックを受ければ初期ライフからでも即死する上に、仮にあの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)程の攻撃力があったとしてもまともに戦えばその余波で即死するほどの攻撃力となっていた。

 

(こいつ、最初からそれを狙っていたか!)

 

 準も少女の狙いをそこで看破。真の切り札であるディノインフィニティを保持しつつフュージョン・ゲートや生存本能によって地道に除外ゾーンの恐竜族モンスターを増やし、除外ゾーンが肥えたところでディノインフィニティを出してカウンターを決める。

 仮にディノインフィニティを出せずとも恐竜族の融合モンスターを一族の結束のような強化カードで強化したパワーで攻める。正直に言って出してくるモンスターは自力不足なところはあるが、戦術そのものは徹底したパワーデッキのそれだった。

 

(見た目は慎重でおとなしいように見えるが、なんという大胆な戦術……(デュエリスト)は見た目によらないものだな)

 

 地道に積み重ねて派手に逆転、それが出来なくても力押し。見た目によらない大胆な戦術に準は微笑を浮かべていた。

 

「さらに装備魔法[(ディファレント)(ディメンション)(リバイバル)]を、手札を一枚捨てて発動します! 除外されている自分のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備します。ただし、このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊されます。私はブラキオレイドスを攻撃表示で特殊召喚し、D・D・Rを装備します」

 ブラキオレイドス 攻撃力:2200→3000

 ディノインフィニティ 攻撃力:7800→6800

 

(慎重だな……)

 

 準の場の二体のドラゴンの攻撃力は少女の場の二体の恐竜の攻撃力を下回っている。仮にダメージを防がれたとしても、ドラゴンだけでも全滅させてボードアドバンテージを取るという意気込みが伺えた。

 

(いや……天翔の竜騎士ガイアを警戒しているのか……)

 

 だがその意気込みの中に何か違うものがあると、準は少女が天翔の竜騎士ガイアをちらちらと見ている事から気づく。

 たしかに螺旋槍殺の貫通効果がある以上、既に風前の灯火となっている彼女のライフを踏まえればその貫通効果の付与対象であり、なおかつ表示形式変更効果を持つ天翔の竜騎士ガイアを警戒するのも当然だ。仮に一度攻撃を防がれても二段構えの攻撃でせめて天翔の竜騎士ガイアだけでも破壊したいと思っているのだろう。

 

(……いや)

 

 だがそこに何かある。万丈目はそう直感した。

 

「バトルです! ディノインフィニティで天翔の竜騎士ガイアを攻撃します!」

 

 少女が攻撃を宣言、同時にディノインフィニティが牙を剥いて天翔の竜騎士ガイアへと襲い掛かる。この攻撃が通り、ダメージが入れば万丈目の逆転負け。取巻と慕谷が「嘘だろ!?」「万丈目さんが逆転負け!?」と悲鳴を上げた。

 

「トラップ発動[バーストブレス]!!!」

 

 だがそこに万丈目の雄叫びが挟まり、少女がぎょっとした顔をすると万丈目も不敵な笑みで返す。

 

「高い攻撃力に惑わされるところだった……バーストブレスは自分フィールドのドラゴン族モンスター一体を生贄に捧げ、生贄としたモンスターの攻撃力以下の守備力を持つフィールドのモンスターを全て破壊する。俺はフェルグラントドラゴンを生贄に捧げ、その攻撃力2800以下の守備力のモンスターを全て破壊する!」

 

「あぁっ!?」

 

 準の宣言に少女が驚愕の声を上げ、準もこくりと頷いた。

 

「いかに元々の攻撃力が高くなろうと関係ない。ディノインフィニティの守備力は0! お前が天翔の竜騎士ガイアを警戒していた最大の理由もそこだ!」

 

 準の指摘に少女は言い返せずに口ごもる。ただ貫通効果を警戒していただけではない。仮に戦闘ダメージを防げたとしても、表示形式を変更されてしまえばディノインフィニティの高い攻撃力を活かせないどころか易々と戦闘破壊される隙を晒してしまう。少女はそこを気にしていたのだ。

 

「ブラキオレイドスの守備力は2000。天翔の竜騎士ガイアの守備力は2100! 全てを焼き尽くせ、バーストブレス!!」

 

「そんな……」

 

 フェルグラントドラゴンがその生命をかけた強力なブレスを放ち、フィールドを焼き尽くす。そしてフェルグラントドラゴンが力尽きて倒れた時、フィールドから全てのモンスターが消え去っていた。

 

「……わ、私はカードを一枚セットして……ターンエンドです……」

 

 逆転勝利の手を防がれた少女に出来た事は、どうやら魔法・罠カードだったらしい残る一枚の手札を伏せてターンエンドを宣言する事だけだった。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 そして万丈目にターンが移り、彼は静かにカードをドロー。

 

「スタンバイフェイズに墓地の[ミンゲイドラゴン]の効果発動。スタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。ただし、この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できず、この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される」

 ミンゲイドラゴン 攻撃力:400

 

 実はフェルグラントドラゴンの守備力は2800。攻撃力2600の天翔の竜騎士ガイアをバーストブレスの生贄にすればフェルグラントドラゴンは生き残る事が出来た。

 敢えてそれをしなかったのはフィールドを空にする事でミンゲイドラゴンの自己再生効果を発動するため。そしてそれを狙った理由は――

 

「さらに俺は墓地の[輪廻竜サンサーラ]の効果発動! 墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のレベル5以上のドラゴン族モンスター一体を手札に加え、その後、そのモンスターをアドバンス召喚できる!」

 

「フェルグラントドラゴンを手札に……?」

 

「いや、俺が手札に加えるのは――[光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)]! そしてミンゲイドラゴンはドラゴン族モンスターを生贄召喚する場合、二体分の生贄とする事ができる!」

 

 ――彼の切り札を、万が一自分の場のドラゴンが全滅した時にこのコンボで切り返すため、敢えて螺旋槍殺の効果によって墓地に送っていた相棒を召喚するためだ!

 

「ミンゲイドラゴンを二体分の生贄とし、現れろ! [光と闇の竜]!!」

 光と闇の竜 攻撃力:2800

 

 ミンゲイドラゴンを贄として出現するのは彼の相棒――光と闇の竜。

 

「きれい……」

 

 その輝きに少女はつい、ぼんやりとそう呟いていた。

 

「攻撃だ! 光と闇の竜! シャイニングブレス!!」

 

「はっ! そ、そうはいきません! トラップカード[攻撃の無敵化]を発動します! バトルフェイズにのみ発動する事ができ、このバトルフェイズ中、私への戦闘ダメージを0にします!」

 

 準の攻撃宣言を聞いて我に返った少女が伏せカードを発動、光と闇の竜のブレスを伏せがんと半透明の障壁が出現する。

 

「無駄だ! 光と闇の竜の効果発動! 光と闇の竜は己の攻撃力・守備力500ポイントと引き換えに、効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にする!」

 光と闇の竜 攻撃力:2800→2300

 

「そんな!?」

 

 光と闇の竜の放つ威光のオーラによって、少女の攻撃の無敵化が無効化されて障壁が消滅する。これで光と闇の竜の攻撃力も下がったが少女のライフを削るには未だ充分過ぎる。

 

「きゃあああぁぁぁぁっ!!」」LP600→0

 

 光のブレスが一気に少女のライフを削り取り、このデュエルの決着を示すブザーが響くのであった。

 

 

 

 

 

「いいデュエルだった……ええと、名前はなんだったか?」

 

「あ、う、宇佐美(うさみ)彰子(しょうこ)です!」

 

「宇佐美か。俺は万丈目準、お前の名前、覚えておいてやろう」

 

「は、はぁ……?」

 

 実況の青年が万丈目準の優勝を高らかに宣言し、観客達も大盛り上がりで声援を上げたり拍手を送る中、準は健闘を称えるために少女の元へと歩み寄り、少女――宇佐美彰子の名前を確認。将来有望なデュエリストとして名前を覚えておくことを誓う。

 そんな準の言葉に対して彰子はきょとんとしながらこてんと首を傾げているが、準はそんな不可解な様子を気にせずに話し出した。

 

「一瞬とはいえ俺を追い詰める程のデュエルタクティクスだ。デュエルアカデミア高等部を受けるのだろう? もし受けるのがデュエルアカデミア中央校ならば、合格後はオベリスクブルーの万丈目準を訪ねるがいい。力になってやろう」

 

「へ……?」

 

「え?」

 

 準の言葉にきょとんとする彰子とそれを見てきょとんとする準。

 だが直後彼は何かに納得したように頷いた。

 

「あ、ああ、そうか。デュエルアカデミアには行かず、普通の高校に進学してデュエルは趣味で続けるつもりだったか。それは先走ってしまったな。失礼した……だがお前程の才能が失われるのは惜しいな……」

 

「あ、いえ、そうではなくて……」

 

 準はデュエルアカデミアを受けるつもりがないのならきっと普通の高校に進学するんだろうと勝手に納得しながらも彰子程の才能あるデュエリストが、デュエル以外の道に進んでそのデュエルの才能が埋もれてしまう事を惜しむ。だがそれも宇佐美は否定して、困ったような笑顔を浮かべる。

 

「うち、貧乏でして。私は中学校を卒業したら、高校には行かず家業を手伝う予定なんです」

 

「…………は?」

 

 その言葉に、準は予想だにしなかったというように呆けた声を出す。

 高校に行ける経済事情ではない、そういう者もいるのだと兄達から教えられてはいたが、名家の生まれである彼にとっては想像だに出来ないもの。実際目の当たりにするのは初めてで、準は唖然とした顔を隠せていなかった。

 

「ま、待て。つまり中卒で働くということか?」

 

「はい……」

 

 準の言葉に別に隠すわけでもないのかこくんと首肯する彰子。それに対し万丈目は僅かに押し黙った後、意を決したように口を開いた。

 

「……このような事を聞くのは失礼と承知の上で聞かせてもらいたいが。その家業とやらはお前が手伝って事態が好転するようなものなのか?」

 

「い、いえ。ですが、うちには弟や妹がたくさんいるので。高校に行く学費を払っていたら皆の生活が苦しくなっちゃうし、それなら私が働いて、少しでも皆のためにお金を残してあげたらって……」

 

「っ~……」

 

 彰子の言葉に準が頭を抱える。言いたい事は分かる、さらに余所様の経済的な事情ともなると赤の他人である自分が易々と口を挟んでいいものではない。だがそれよりも大切なものがあった。

 

(こんな才能あるデュエリストを見逃していいのか!!??)

 

 つまり準にとってはこれに尽きる。せっかく見つけた金の卵、かつて自分が兄にデュエルの才能を見出されたように、彼女も自分がデュエルの才能を見出した相手。そんな優れたデュエリストの卵が経済的な事情などという理由で埋もれてしまっていいのか……。

 

「……あっ」

 

 そう考えた時、準は何か思いついたように声を出す。

 

「おい、宇佐美彰子」

 

「は、はい?」

 

「お前、自分の学費さえなんとかなるのなら。高校へ進学出来るんだな?」

 

「え? あ、はい、一応……」

 

「よし」

 

 彰子の言葉を聞いて、万丈目はすぐさま携帯を取り出すと電話をかける。

 

[もしもし、準か? 電話など珍しいな、どうしたんだ?]

 

「正司兄さん。相談がある……前に話していた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の件についてなんだが」

 

 電話相手は彼の兄にして現在は万丈目グループ傘下の会社の社長を務めている正司。準は彼が今度行おうとしている事業の事を口にし、相談を持ち掛けるのだった。

 それから事態はトントン拍子に進んでいく。万丈目グループの金融関係の会社がデュエル界の進出への一環として進めようとしている「将来有望ながら経済的な事情により進学できない生徒への援助」という奨学金、デュエルアカデミアへの進学を希望する生徒を対象とするそれの対象に彰子を、準が一応意思確認取ったという建前で半ば無理やり放り込んだのだ。

 実際に彰子は数少ない趣味で色々なデュエル大会に参加しては好成績を残している実績があり、学業も優秀で真面目な優等生。さらに宇佐美家の両親にも正司が直々に説明及び説得に向かう気合いの入りよう。

 デュエルアカデミアは基本的にプロデュエリストを目指す者が多いが、プロ以外にもカードデザイナーや幼い子供を対象としたデュエルスクールの講師という道も切り拓かれ始めている。

 未だ発展途上とはいえ将来に向けて様々な選択肢が用意されるというのが決め手となり、両親も奨学金への賛同を行ったのだ。

 曰く、元々両親も彰子の進学を望んでいたが家庭の経済的な事情で難しいのは確か、さらに彰子自身も望んで家業の手伝いに入ろうとしていたから強く言い切れなかった。だけど彰子には自分の人生を歩むためにも色々な選択肢を用意してあげたかったということだ。

 そんな両親からの説得を受けた彰子もついにデュエルアカデミアの受験を決意、細かい契約についてはまた後日改めて行うと約束して、準は正司と共に帰路についていた。

 

「正司兄さん、ありがとうございます」

 

「ふっ。気にするな、準。言ったはずだ、俺達は万丈目グループを発展させる同志である前にたった三人の兄弟。その末っ子でなかなか我儘を言わんお前の珍しい我儘、兄として力になってやるのは当然だ。お前が才能を見極めたという相手ならば、これから万丈目グループの力になってくれるやもしれんからな」

 

 頭を下げてお礼を言う準に対して正司は「ははは」と笑って答え、続けてからかうような笑みを彼に向ける。

 

「それに、その相手がなかなか可愛いご息女だ。お前の新たな出会いを手助けしたいと思うのも兄心というものだ」

 

「はぁ……?」

 

 だが正司の言葉に対する準の反応は困惑したもの。どうやら準は本当の本気で彰子のデュエルの腕を見込んだだけでそこに下心は一切入っていない様子であり、正司は準に気づかれないように内心で頭を抱えため息をつくのだった。




《後書き》
 なんとかヒロイン登場話が書けたので投稿する事にしました。
 はい、本作のヒロインは遊戯王タッグフォースの登場キャラの一人、恐竜族使いの宇佐美彰子ちゃんです。ゲーム内で家庭やおそらく経済的に何か事情がある様子の描写があったので、家が裕福な万丈目と対比したり実質的に万丈目家の支援(実際は奨学金)でデュエルアカデミアへの進学みたいな感じになりました。
 デッキイメージ的には作中で万丈目が考えた通り、恐竜族をメインにモンスター達の自力は低いのを一族の結束とかの強化カードでカバー。あとはフュージョン・ゲートで除外ゾーンを肥やしつつ恐竜族融合でビートダウン。除外ゾーンが肥えてきたらディノインフィニティで仕留めるとことんパワーデッキです。

 ちなみに次の話はどうするかは決定してるし、デュエルの構想も完了しています。台詞とか描写とか置いといて流れだけは決まりました。今回は途中から始まったみたいな感じになりましたが今度は最初から最後までやります。あとは小説としての話の中身さえ詳細決まればなんとかなります。(問題がそこ)

 それでは今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。



PS)実は今回の話、1月13日に完成しました。ただ完成した日時的に「これいっそ1月15日の22:37に投稿したら面白くね?と思って予約投稿しましたw
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