「「デュエル!!!」」
十代とクロノスの声が響き、今年度のデュエルアカデミア高等部入学実技試験、最後のデュエルがスタート。
「俺のターン!」
そして受験生である十代が先攻を取り、デッキからカードをドロー。六枚の手札を見て「よし」と頷くとその内の一枚を取った。
「[E・HERO フェザーマン]を守備表示で召喚! カードを二枚セットしてターンエンドだ」
E・HERO フェザーマン 守備力:1000
十代の場に出て守りを取るのは風の属性を司る英雄。さらに二枚のカードがその後ろに伏せられ、守りを固めた状態で彼はターンエンドを宣言する。
「私のターンでぇす。ドロー」
クロノスがターン開始を宣言し、デュエルコートにセットされているデッキからカードをドロー。こちらも六枚になった手札をちらりと一瞥してから彼の場のフェザーマンへと視線を向ける。
(E・HERO……今は病気で長期療養している、かつて世界チャンピオンにもなった響紅葉が使用していたカテゴリーナノーネ……)
それは世界一のチャンピオンにもなったプロデュエリスト――響紅葉が使っていたカード群。だがクロノスは厳しい目で十代を見据えた。
(フン。デスーガ、だからってそれを使ってるデュエリストが強いとは限らないノーネ)
所詮は一次試験である筆記試験で110番の劣等生。そのくらいの受験番号の受験生の実技試験はとうに終わっていたのだが、遅刻の理由が電車の遅延である事や受付時間ギリギリとはいえ時間内に到着したのだから試験を受けさせないのはまずいという教員の声や校長からも電話で釘を刺されたから相手をしているが、クロノスにとっては試験を受けさせるだけ時間の無駄だから即刻失格にしようとした程度の相手だ。
「(実力の違いを見せつケーテ、さっさと終わらせてやルーノデス…)…私は[
古代の機械兵士 攻撃力:1300
クロノスの場に出てくるのは歯車が目立つ機械兵士。その歯車が稼働して銃となっている右腕がフェザーマンへと向けられた。
「バトルナノーネ! 古代の機械兵士でフェザーマンを攻撃! プレシャス・ブリット!」
「くっ……」
クロノスの攻撃宣言と共にけたたましい銃撃音と共に放たれる弾丸がフェザーマンを貫き、破壊。その際に発生した立体映像の煙から反射的に腕で顔を庇いつつ、十代はニヤリと笑う。
「だけど! フェザーマンが破壊された瞬間トラップ発動!」
十代が高らかに宣言する。そして彼が前のターンに伏せたリバースカードの内一枚が翻る……はずだった。
「あ、あれ? どうなってんだ?」
しかしリバースカードは沈黙しており、十代が思わずといった様子で呆けた声を出すとクロノスが「ブラブラブラ」と個性的な笑い声をあげる。
「私が愛用するアンティーク・ギア達にはこういう効果があるーノデス。“このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない”。あなたのリバースカードが何か知りまセーンが、どうやらこの効果によって発動を封じられてしまったようナノーネ!」
「な、なんだってー!?」
クロノスのニヤリと意地の悪い笑みを浮かべながらの指摘に十代が驚きの声を上げる。
「あれは入試用のデッキじゃない……クロノス教諭自身の暗黒の中世デッキ!」
「あのデッキに勝てる受験生なんて……いないよなぁ……」
そのモンスターとクロノスの言動から気づいたか、取巻はクロノスが使用しているデッキが入試用に組まれたデッキではなくクロノス教諭自身のデッキだと叫び、慕谷は外部受験生レベルのデュエリストが勝てる相手じゃないよなと十代に憐れむような視線を向けていた。
「まあ、クロノス教諭に目をつけられた彼は少しばかり気の毒に思うが……入試用の手加減されたデッキに手加減したプレイングではなく、クロノス教諭の本気のデッキでの本気のプレイングを見られるとなればまたとないチャンスだと思って感謝させてもらうとしよう」
そんな中準は十代がどうしてクロノスに目の敵にされているかは知らないが、またとないチャンスだと思い勉強させてもらう様子を見せていた。
「私はリバースカードを一枚セットし、ターンエンドナノーネ!」
「くっ、俺のターンドロー!」
本来の作戦ではフェザーマンが破壊された事をトリガーに、トラップカード[ヒーロー・シグナル]を発動して後続のヒーローを呼ぶ予定だった十代は、その作戦が崩れた事に苦しい顔を見せながらカードをドロー。
しかし彼はドローカードを見ると「ラッキー」と短く呟き、それを手札に入れると別の手札を手に取った。
「いくぜ! ヒーロー達の真の力を見せてやる! 魔法カード発動[融合]!」
(やはり融合。E・HEROの得意技ナノーネ……)
融合、それはE・HEROの戦法の根幹と言っていい。E・HEROはそのカードによって多種多彩な姿へと変身し、柔軟な戦術をこなすのだから。
「俺は手札の[E・HERO クレイマン]と[E・HERO バーストレディ]を融合! 現れろ! [E・HERO ランパートガンナー]!!」
E・HERO ランパートガンナー 攻撃力:2000
炎の属性を司る英雄と地の属性を司る英雄が神秘の渦に巻き込まれて融合。新たな力を持つ英雄として生まれ変わり、十代の場に立つとその武器である右手のミサイルランチャーを古代の機械兵士へと向ける。同時に十代が「バトルだ!」と宣言した。
「ランパートガンナーで古代の機械兵士を攻撃! ランパート・ショット!」
十代の指示を受け、ミサイルランチャーの狙いを定めてミサイルを放つランパートガンナー。古代の機械兵士も銃を撃って応戦するも、その弾幕をミサイルは超えていく。
「これで先制ダメージはいただきだ!」
「甘いノーネ! トラップ発動[重力解除]!」
「なに!?」
先制攻撃こそ取られたがライフへの先制ダメージで先手は取った。そう確信した十代だったがクロノスが声を上げると同時に彼の場のカードが翻ると突如フィールドに重力場が発生、その影響を受けたミサイルが地面に着弾したり逆に何もない方向に逸れてミサイル同士が直撃して誤爆といった現象を起こすと共に、重力場の影響を受けたランパートガンナーと古代の機械兵士も態勢を崩していた。
「重力解除によってフィールドの全ての表側表示モンスターは表示形式が変更されマース。これでランパートガンナーは守備表示となり、古代の機械兵士への攻撃は中止されたノーネ」
古代の機械兵士 攻撃力:1300→守備力:1300
「くっ……俺はこれでターンエンドだ」
ランパートガンナー 攻撃力:2000→守備力:2500
全てのミサイルが誤爆によって処理され、クロノスやそのフィールドの古代の機械兵士は無傷。十代は悔しそうに唸ってターンエンドを宣言、クロノスが「私のターンでぇす」と宣言してカードをドローすると、既にやる事は決まっているといわんばかりにニヤリと笑う。
「私は古代の機械兵士を生贄に捧げ、[
古代の機械工兵 攻撃力:1500
機械兵士が生贄となって出現するのは機械兵士と同じようなデザインながら右手にドリルを装備した機械工兵。しかしモンスターを一体生贄にしたにも関わらずその攻撃力は低く、さらにその左手に巨大な手のような装備が装着されたがそのステータスに変化はない。
「バトルナノーネ! 古代の機械工兵でランパートガンナーを攻撃!」
しかしクロノスは守備力で上回るランパートガンナーへの攻撃を指示、十代が「えっ?」と驚きの声を上げ、機械工兵が右手のドリルを回転させてランパートガンナーへと突撃、ランパートガンナーも左手の盾でそのドリルを受け止めると逆に弾き返す。それを見て十代がにやりと笑った。
「先生、ランパートガンナーの方が守備力は上だ。反射ダメージを受けてもらうぜ!」
「フフフ、この程度必要経費として受け取っておくノーネ……このダメージステップ終了時、古代の機械掌の効果発動! 装備モンスターと戦闘を行ったモンスターを、そのダメージステップ終了時に破壊するノーネ!」LP4000→3000
「なんだって!?」
古代の機械工兵の攻撃力とランパートガンナーの守備力の差は1000、その分のライフがクロノスから引かれるが彼は気にも止めずにそう宣言、十代がまたも驚きの声を上げると同時に古代の機械工兵に装備されていた巨大な手がまるでロケットパンチのように撃ち出され、ランパートガンナーに直撃すると同時に大爆発を引き起こす。
「くっ……」
「同時に古代の機械工兵の効果発動! このカードが攻撃したダメージステップ終了時、相手フィールドの魔法・罠カード一枚を対象とし、その相手の魔法・罠カードを破壊するノーネ!」
「なにっ!?」
爆発によって発生した煙に怯む十代だがそこに続くクロノスの宣言と共に煙の中から古代の機械工兵が出現、十代の場の魔法・罠をそのドリルで突き刺して粉砕してしまう。
(ヒーロー・シグナルが……)
それは最初のターン発動しようと狙っていたトラップカード。こっちの戦略を尽く粉砕されていく様を十代は何も出来ず見ているしか出来なかった。
「古代の機械工兵、攻撃力こそ低いが攻撃宣言時からダメージステップ終了時まで相手の魔法・罠の発動を封じるアンティーク・ギア特有の効果に加え、自身を対象とする罠カードの効果を無効化し破壊する耐性、そして攻撃したダメージステップ終了時に相手の魔法・罠カードを一枚破壊する破壊効果と様々な特殊能力を持つ……」
「前のターンの重力解除はこのコンボの布石というわけね……守備表示のモンスターとのバトルなら、たとえ戦闘で負けたとしても
観客席で入学試験デュエルを見物している亮が、クロノスがこの一連のコンボで使った古代の機械工兵を評価し、明日香も前のターンからそのコンボを狙って布石を打っていたのだと分析すると亮は静かに首肯した。
「さらに受験生の場にはまだ魔法・罠カードが一枚残っている。古代の機械掌の破壊効果は装備モンスターが戦闘破壊された場合は適用できないが、古代の機械工兵の魔法・罠破壊効果は戦闘破壊された場合も発動される……」
「仮にあの受験生が次のターンに古代の機械工兵の戦闘破壊を狙ったとしても、その時点でこのターンと合わせて最低でもモンスター一体と魔法・罠二枚の破壊が確定、効果破壊を狙うとしても逆にいえば効果で除去するためのリソースを相手に使わせる事になる。中堅として最低限の仕事はこなしたと言えるわけか……流石はクロノス教諭、見事なプレイングだ」
続けての亮の言葉を今度は準が引き取って解説。前のターンの防御からこのターンの攻撃の布石として繋げていたプレイングに取巻達も舌を巻く中、クロノスはリバースカードを一枚伏せてターンエンドを宣言していた。
(フフン。ここまで全くいいとこナーシ、所詮はドロップアウトボーイナノーネ。これなら筆記試験の成績と合わせて不合格にしたって誰にも文句言われまセーンノ……)
魔法・罠は発動を封じられ、モンスターを出して攻撃しようとしてもいなされ、逆にいなされて無防備になったモンスターや魔法・罠を効果破壊されて場はボロボロ。クロノスの方も多少のダメージこそ受けているがこれは元々作戦の内、ここまで何も出来ていなければデュエルアカデミアの門を潜るに相応しくないと不合格の烙印を押しても文句は言われまいと、クロノスは内心笑みを浮かべていた。
(俺の手札には[
対する十代も今の手札を見ながら作戦を考え、少なくとも壁モンスターを出してしのぐ事は出来ると考える。
だがそれではさっきのターンの焼き直し。古代の機械工兵と古代の機械掌のコンボで、僅かな反射ダメージと引き換えにまたこっちの場を荒らされて終わるだけ。それは十代にも分かっていた。しかしだからこそ分かる事もある。
(ここから俺の本当の力が試される時だ!)
最高責任者の先生が本気でデュエルしてくれている。その結果生まれたこの劣勢をひっくり返す。それこそが十代が彼に見せる己の本当の力だと信じ、十代はデッキトップに指をかけた。
[クリクリクリー]
(え? 誰だ、俺を呼ぶのは……)
その時デッキから己を呼ぶ声が聞こえ、十代はなんの気負いも力む事もなく自然にカードをドロー。そのカードを目に映す。
(あ、お前さっきの──)
思い出すのは電車の遅延事故によって遅刻しそうになって大慌てで走っていた時、うっかりぶつかってしまった人から託されたカード。
ラッキーカード、とその時に言われた言葉を思い出し、十代はふっと微笑んだ。手札に逆転のカードは揃ってなく、今は守りを固めるしかない。
「(よし、お前を信じるぜ…)…手札より、[ハネクリボー]を守備表示で召喚! 俺はこれでターンエンドだ!」
[クリー!]
ハネクリボー 守備力:200
十代の場に姿を現す、茶色い毛で全身を覆った丸い体に純白の羽を生やすモンスタ──―ハネクリボー。心なしかやる気満々に見えるその姿を見ながら十代はターンエンドを宣言した。
「ブラブラブラブラブラ! 羽の生えたクリボー、珍しいカードを持っているデスネ! しかし所詮は低級モンスターデショウ? 雑魚には雑魚モンスターがお似合いデスーネ!」
クロノスは笑いながら十代と彼の場のハネクリボーを雑魚と罵り、自分のターンを宣言してカードをドロー。ドローカードを見ると「フフン」と得意げに笑う。
「ドロップアウトボーイには勿体ないデスーガ、せっかくナノーネ。このカードに負けたことを思い出にして帰りナサーイ」
「へえ、今度は何を見せてくれるんだ? 先生」
「まずは魔法カード[
古代の歯車 守備力:800
古代の機械兵士 攻撃力:1300
「一気にモンスターが二体!」
「しかもクロノス教諭は召喚権を使ってない!」
「もしや、あの伝説のカードを出すつもりか……?」
クロノスの場に出現する二体のモンスターの姿に取巻と慕谷が声を上げると、亮もどこか楽しみそうな声色で声を漏らす。
「さらに古代の歯車と古代の機械兵士を生贄にして――」
クロノスの宣言と共に二体の機械が光りに包まれ、その二つの光が一つとなって膨張――
「
古代の機械巨人 攻撃力:3000
――その光の中から彼の言葉通り古めかしい機械の巨人が出現した。
「このターンで終わりにしてあげマース! 古代の機械巨人! ハネクリボーにアルティメット・パウンド!!」
[クリー!]
「ぐううぅぅぅっ!!!」LP4000→1200
その命令で動き出す古代の機械巨人、その巨大な拳によるパンチにハネクリボーはなすすべなく粉砕され、一気に十代のライフも削られる。
「え、守備表示だったのになんで……?」
「恐らく貫通効果持ちだったのだろう。だがアンティーク・ギア特有の効果も加えてとなると攻撃に回られると厄介なモンスターだな……」
宇佐美の困惑の言葉に準が答えた後、そこから推測できる巨人の能力を、高い攻撃力に加えて攻撃時に相手の魔法・罠を封じる。さらには本来戦闘ダメージが通らない守備表示でもダメージを押し通す貫通効果。攻撃に徹されればそのまま押し切られかねない強力なモンスターだと評価する。
そしてその攻撃によって壁となるモンスターが消えた十代に向け、古代の機械工兵が動き出した。
「これでトドメデース! 古代の機械工兵でダイレクトアタック!」
古代の機械工兵でがドリルを起動させて十代に突進、そのまま十代の足元辺りにドリルを叩きつけて辺りに土煙を撒き散らす。
古代の機械工兵の攻撃力は十代のライフポイントを超えている。これで勝負は決まったと観客席の生徒と受験生は一様に静まり返り、徐々に土煙が晴れていく。その中からはライフが尽き、敗北の絶望に打ちひしがれている十代の姿が現れる……
「助かったぜ、ハネクリボー」LP1200
……はずだった。
「ん、んん? 何故ライフが減らないのデス?」
「ハネクリボーが破壊されたターン、俺が受けるダメージは0になる」
「なぁ!?」
困惑するクロノスに十代が説明、驚愕するクロノスの姿を見て生徒達もざわめくがクロノスは嫌味な笑みを十代に向ける。
「フフ、その雑魚モンスターの特殊能力でしたか」
「命を賭けて俺を守ってくれた友達を雑魚呼ばわりは許さないぜ!」
「小賢しい! その場しのぎのモンスターを雑魚と言って悪いデスカー!? それにダメージは通らなかっただけで、戦闘自体は行われた! よって古代の機械工兵の効果発動! その伏せカードを破壊するノーネ!」
クロノスの嫌味な言葉に怒りを露わにする十代だがクロノスはお構いなしに古代の機械工兵の効果を発動、その指示を受けた古代の機械工兵がそのドリルで十代の場に唯一残る伏せカードを粉砕した。
「これであなたの場はがら空き! これ以上やっても無駄ナノーネ!」
「……それはどうかな?」
高笑いするクロノスだがその言葉に十代は不敵な笑みで応える。それと共に先ほど破壊されたカードが彼の場に出現した。
「破壊された[ヒーロー・メダル]の効果発動! 相手がコントロールするカードの効果によってセットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、このカードをデッキに加えてシャッフル。その後、自分のデッキからカードを一枚ドローする!」
「チッ、私はこれでターンエンド。ですが次のターン今度こそ終わりデース!」
どうやら破壊された時に発動する特殊な罠を仕掛けていたらしく、十代はカードの効果発動に成功してデッキからカードをドロー。クロノスはしぶとく抗う
「いや、ハネクリボーが稼いでくれた時間。俺は絶対に無駄にはしない!! 俺のターン、ドロー!!!」
クロノスのターンエンド宣言を聞き、十代は勢いよくカードをドロー。ドローカードを見てよしと頷くとそれを一旦手札に入れ、別のカードを取る。
「俺は魔法カード[
「フフン、バーストレディ。血迷ったノーネ? クレイマンの方を戻せば多少の壁にはなったノーニ? もっともその程度の壁、我が古代の機械巨人の攻撃で打ち破れるしその余波で充分ライフを削りきれマスがねー!」
「いいやまだだ! さらに俺は魔法カード[O-オーバーソウル]を発動! 自分の墓地に存在する通常モンスターのE・HERO一体を特殊召喚する! 来い、[E・HERO フェザーマン]! そして[融合]を発動! フェザーマンとバーストレディを融合!」
E・HERO フェザーマン 守備力:1000
渦巻いた旋風と共に再び場に現れた風の属性を司る英雄と、ランパートガンナーの融合素材となった炎の属性を司る英雄が神秘の渦に巻き込まれて融合する。
「マイフェイバリットカード! [E・HERO フレイム・ウィングマン]!!」
E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力:2100
そしてその渦の中から新たな英雄が姿を現す。だがそれを見たクロノスの表情は未だ冷ややかなものだった。
「フフン、攻撃力2100。古代の機械工兵なら倒せマースガ、次のターンの古代の機械巨人の攻撃で終わりナノーネ。ま、せめて一矢報いようという気概だけは褒めてあげるノーネ」
「じゃあ先生に教えてやるぜ。ヒーローにはヒーローに相応しい、戦う舞台があるんだ! フィールド魔法[摩天楼-スカイスクレイパー-]!!」
十代はドローカードを展開したデュエルディスクのフィールド魔法ゾーンに差し込む。それと共に一気にビル群が生えるように建っていき、あっという間にフィールドが月夜に照らされる摩天楼へと変貌する。
「こ、これは!?」
「さあ舞台は整った! 行け、フレイム・ウィングマン! 古代の機械巨人に攻撃!!」
クロノスがここでようやくしまったと言わんばかりの驚愕の声を上げると共に十代が巨人への攻撃を指示。同時にいつの間にか摩天楼の中でも特に目立つ巨大ビルの屋上でポーズを決めていたフレイム・ウィングマンがまるでそこから落下するように巨人へと突撃。
「攻撃だって!? フレイム・ウィングマンの攻撃力は2100、攻撃力1500の古代の機械工兵ならともかく攻撃力3000の古代の機械巨人に!?」
「……いや、響紅葉のデュエルで見たことがある……摩天楼-スカイスクレイパー-、あれはヒーローが己より強大な巨悪に立ち向かい勝利するための逆転のフィールド」
その本来デュエルでは余程の戦術や理由がない限りあり得ざる光景に取巻が驚きの声を上げると、準は昔見たあるプロデュエリストのデュエルの記憶を思い返す。
「スカイスクレイパーの効果! E・HEROが自分より攻撃力の高いモンスターとバトルする場合、その攻撃力は1000ポイントアップする!」
E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力:2100→3100
古代の機械巨人目掛けて突進し、炎を纏うフレイム・ウィングマン。その時摩天楼から彼を応援するかのように風が吹き、それが追い風となってフレイム・ウィングマンの勢いがさらに増すと共にその炎もさらに燃え上がる。
「いけ! スカイスクレイパー・シュート!!」
そしてその勢いのまま古代の機械巨人に突撃、その燃え上がった炎の突進の勢いで生み出された爆発が古代の機械巨人を一撃で粉砕する。
「くううぅぅぅっ……」LP3000→2900
その攻撃力の差は100、その分がクロノスのライフから削られる……だが、それで終わりではない。
「フレイム・ウィングマンの効果により、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ。先生」
十代が人差し指と中指を立てた右手をこっちに向ける独特のガッツポーズを向けると、クロノスは言葉を失って上を向く。そこには部品が飛び散った事でバランスが取れなくなった古代の機械巨人がこちら目掛けて崩れ落ちてくる光景があった。
それに巻き込まれた形でクロノスは倒れ込み、そのライフは0を示す。即ちクロノスの敗北だった。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ、先生!」
「ぐぬぬ……何故ナーノ? 何故私があんなドロップアウトボーイに~……」
楽しそうに決めポーズと決め台詞を決める
観客席の特に生徒はその構図が信じられないのかそのほとんどが驚愕に目を見開いたり言葉を失ったりと様々な反応を見せていた。
「フッ。なかなかいいデュエルを見せてもらった」
そんな中準はメモ帳をぱたりと閉じる。デュエルに魅入ってしまって途中から取るのを忘れていたが問題はない、しっかり目に焼き付けているのだから今日帰ってからそれを思い返して書けばいいと準はメモ帳をカバンにしまうと席を立つ。
「二度会うか分からないが、彼には感謝の意を示させてもらうとしよう。おかげでクロノス教諭の本気の戦いを拝見出来たとね。俺は周囲のカードショップを少し散策してから帰る、お前達は好きにするといい」
せっかくデュエルの聖地である童実野町に来たのだからそこのカードを見て必要なものがあれば購入するとしよう。そう今後の予定を考えて席を立つ準に、取巻と慕谷は「「一緒に行きます」」と当たり前のように随伴、宇佐美も少し考えるような様子を見せた後に「よければご一緒に」と声をかけると準は好きにしろといわんばかりに僅かに首肯、それを見た宇佐美が嬉しそうに頬をほころばせて彼と一緒に歩き出したのを見た百合も面白そうににやつきながら後を追う。
それらの光景を見送った亮と明日香も帰るつもりなのか彼らとは別方向に歩き出すのだった。
《後書き》
今回は前回言った通り十代の入学試験デュエル。「アニメでいう押収のライフコスト1000ポイント分がフレイム・ウィングマンとスカイスクレイパーのコンボによる勝利の決め手になったんだし、当然そこは再現したいんだけどどうやってライフを削るかな……」って考えて、ふと「攻撃表示の古代の機械工兵を守備表示のランパートガンナーに自爆特攻させればライフ丁度いい感じに削れるな」って思いついたのをきっかけに色々思いついて、もうめちゃめちゃ改変というか盛って書きましたw
でもってクロノスがアニメでも使用した描写のある重力解除がめっちゃ便利でした。アニメでやったような表示形式変更対策や守備表示を強制して低守備力を晒させて巨人の貫通効果が活かす運用の他、作中で説明した「守備表示相手なら自爆特攻でも攻撃モンスターが戦闘破壊されないから掌の破壊効果を活かせる」とかその布石として防御にも使えるとか、分かっちゃいたけど使いようによっては汎用性高いわこれって実感した。そりゃクロノス先生も採用する。
多分次回からはデュエルアカデミア編に入ると思いますけど、さてそこからどうするか……っていうのは今から考えます。(行き当たりばったり)
それでは今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。