遊戯王GX~もしも万丈目兄弟の仲が良かったら~   作:カイナ

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第五話 デュエルアカデミア高等部入学

 デュエルアカデミア。次代のプロデュエリストはもちろんカードデザイナーやカード研究者にデュエルスクールの講師といったデュエルに関連する様々なプロフェッショナルの育成を目的とした教育機関。

 その高等部の中でも、中等部で優秀な成績を残したもののみが入学時からの所属を認められるエリート寮オベリスクブルー。まるで豪華な城のような外見に恥じない一室の中で、準は小さくとも大仰なアタッシュケースにしまわれていたカードを見ながら携帯電話で連絡を取っていた。誰か、など言うまでもない。

 

[[準! デュエルアカデミア高等部主席編入おめでとう!!]]

 

「ありがとうございます。兄さん達」

 

 彼の兄、長作と正司だ。兄からの祝いの言葉にお礼を言った後に準はさっさと本題に入る。

 

「それで、入寮の時に俺宛ての配達物だと言われて渡されたアタッシュケースに入っていたカードは一体……?」

 

[それは高等部入学の入学祝いだ]

 

[無論準だけではない。今年のデュエルアカデミアに入学した、万丈目グループから奨学金を借りた者達全員に送っている。やはり人心を掴むには最初が肝心だからな]

 

「なるほど……」

 

 長作と正司からの祝いの品らしいカードに準はなるほどとぼやいた後、アタッシュケースに入っていた二枚のカードの内一枚を見る。

 

「だがこのカードは……俺のデッキに合わないと思うんですが?」

 

[ああ。それは準ではなく宇佐美嬢への入学祝いだ]

 

「……何故それが俺に?」

 

 宇佐美への入学祝いが準に送られていると語る正司に準が困った顔を見せると、長作がフッと笑う。

 

[準、お前はいずれ万丈目グループがデュエル界に進出する際にはその先陣を切り、大勢の部下を率いる立場となる。その時には部下の士気を上げる言葉の一つでもかける事は上に立つ者の義務だ。その練習がてら、このカードを宇佐美嬢に渡す際に宇佐美嬢のやる気が出るような言葉を送ってやるといい]

 

「あ、ああ……」

 

 なんか妙に言いくるめられているような違和感がある、と首を傾げる準だが長作の言葉は確か。いずれ人の上に立つ身なれば下の者を動かすための人心掌握は必須事項、皆を率いるリーダーが皆から信頼されていないのでは話にならない。今から人心掌握術の実践を考えておくのも悪くはないだろう。

 そう納得した準は「分かった。ありがとう兄さん達」とお礼の言葉を送ると通信を切り、それから改めて兄二人曰く「高等部入学祝い」であるカードを見る。

 

「うん、まあ。たしかに兄さん達も少しはカードの勉強をしたみたいだな」

 

 中等部に入学した時のお祝いにと渡されたカードは約二枚を除いてお世辞にも実戦的とは言い辛いカードだった。しかし今回用意されたカードは少なくとも実戦には充分耐えうるカードと言えるだろう。

 

(だがまだ少し分かってない部分があるようだな……)

 

 しかしまだ穴がある。このままでは宇佐美では使い辛いというかあるいは使えないだろうな、と考えた準は兄に恥をかかせるわけにもいかないし少しフォローをしてやろう。と思いながら、デュエルアカデミアに持ってきた予備のカードの束を探り出したのだった。

 

 

 

 

 

「フッ。我ながらうまい事を考えたものだ」

 

「流石だな、兄者」

 

 一方長作と正司。準との電話を切った二人は意味深な笑みを浮かべながら頷き合う。

 事の始まりは数ヶ月前、準が宇佐美と出会った大会後に遡る。準から奨学金の相談を受けた庄司はその相手が可愛らしい女の子だと知り、さらに話を聞いたところ真面目な優等生だという事まで分かって「準が可愛いご息女を見初めた!」と長作に報告した事、だがその後準が本気で「宇佐美彰子は将来万丈目グループの力になる素質がある将来有望なデュエリスト」としてしか見ていなかった事に始まる。

 

「たしかに私は宇佐美嬢とは少々会って話を聞いた程度だがそれでも彼女が真面目で聡明、それでいて謙虚で心優しいご息女だという事はよく分かる」

 

 正司が宇佐美について評価を述べる。これでも万丈目グループを背負い、次代を担うという自負から勉強を重ねると共に様々な人脈を作る中で様々な人間を見てきた。宇佐美彰子はその自分が自信を持って将来有望だと太鼓判を押せる相手であると。

 

「うむ。準には万丈目グループとは関係なく愛する女性を作ってもらいたいと思っているが、その相手が優秀であるに越したことはない」

 

 長作も頷く。自分達は万丈目グループが権力をつけるべく、様々な良家との縁故を結ぶためのいわば政略結婚を前提として日々の業務や勉強の合間に見合いの場に参加したりもしている。

 実を言うと準もそれは例外ではなく、今は将来のため勉学に専念すべき時だと父を説き伏せてはいるがそれでも日本有数の大富豪海野財閥の令嬢である海野幸子、長い歴史と伝統を持つ老舗和服問屋紬屋の一人娘である紬紫などのまさに良家のご令嬢といえる相手と準とのお見合いが打診されているのをどうにか抑えるのが限界だ。

 しかしそんな家のための結婚など長男と次男である自分達だけで充分、可愛い弟である準くらいは万丈目グループの思惑とは関係なく自分の意思で愛する人を見つけてほしい。それが兄二人の願いだった。その相手が万丈目グループの力になるくらい優秀ならば言うことはない、と付け加えてはいるが。

 

「今回の高等部入学祝いとしてカードを送るのもその一環!」

 

「流石に宇佐美嬢だけに送るのでは不公平だからと対象となる者全員に送るためには時間も金もかかったが、これも準のためだ!」

 

 実は高等部入学祝いとしてのカードプレゼントも、要するに「準と彰子の距離を近づけよう」という作戦の一環。

 しかし自分達から、準に彰子へカードを送らせるにも準に不審がられないための理由付けが必要であり、それに利用したのが「万丈目グループから奨学金を借りている学生への高等部入学祝い」であり「準が部下の士気を上げるための人心掌握術となる言葉かけの練習」。これで二人の距離を縮めようというわけだ。

 だがそのためには対象となった学生にカードを送るという建前をしっかり通す必要があり、まずはその企画を通してそのための予算を正々堂々会社から取ったり、奨学金の対象となる学生の使用デッキを秘密裏に調査したり、信用できる筋からカードアドバイザーを紹介してもらって送るカードの選定をしたり、最終的に予算が少し足りなくなりそうだったので二人のポケットマネーを使って裏で補填したり、と様々な苦労があった。しかしこれも準の恋路のためだと二人は奮い立っていた。

 

「宇佐美嬢ならばきっと、家庭では準を支える良き妻となり、仕事でも準と共に歩める良きパートナーとなり得るだろう」

 

「兄者の言う通りだ。準、兄達はお前を応援しているからな!」

 

 なんか色々と話が飛躍しているというか考えが早い兄二人は、それでも弟の事を純粋に想いながら「はーっはっはっは!」と高笑いをしているのだった。

 そんな兄の思いなどつゆ知らず、準は彰子を女子寮の外に来てくれと呼び出すと女子寮へと向かっていた。女子寮は原則男子立ち入り禁止だし、入寮日という忙しい時にこちらが用事があるのに彰子をブルー男子寮まで呼びつけるのは不躾と思ったからである。

 

「突然呼び出してすまないな、宇佐美」

 

「い、いえ! 私は荷物も少なかったですし、もう荷解きも終わってゆりっぺのお手伝いに行こうとしてたくらいですから」

 

 百合は家から色々持ち込んだらしく大量の荷物の荷解きにてんてこ舞いらしく、なんとなく想像がつくなと準は呆れた溜息をつきつつ話を切り出した。

 

「宇佐美、兄さん達からデュエルアカデミア高等部に入学した祝いのカードだ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 とりあえず兄から聞いた事を伝えて入学祝いにと託されたカードを彰子に渡し、それを聞いた彰子も嬉しそうに微笑んでぺこりと頭を下げた後に受け取ったカードを見る。

 

「これって……融合モンスター?」

 

「ああ」

 

 彰子の呟きに準が首肯。兄から彰子へと託されたカードは融合モンスター、彼女が融合召喚を主軸としている戦法を考えれば使いやすいカードであると言えるだろう。しかしそのカードを見る彰子はどこか渋い顔だった。

 

「万丈目さん……私、このモンスターの融合素材のモンスター……持ってません……」

 

 融合モンスター、それは多少の例外こそあるが根本として融合素材となるモンスターが必要になるのが前提であり、逆に言えば融合素材となるモンスターを持っていなければどれだけ強力なモンスターでも宝の持ち腐れ。

 どうやら兄さん達(長作と正司)もそこまで気が回っていなかったらしいなと、準は自分の入学祝いにと送られてきたカードのことも思い出しながら嘆息して別のカードを取り出した。

 

「そうだろうと思ってな。そいつの融合素材なら俺が持っていたからお前に譲ろう」

 

「えっ!? そ、そんな悪いです! い、今トレードに使えるカードを持ってきますので……」

 

「構わん。兄さん達と一緒で、俺からの入学祝いだとでも思っておけ」

 

 準の申し出を聞いた彰子は途端に驚いてわたわたとトレード用のカードを持ってこようとするが、準はそれを制して自分からの入学祝いだと答えておく。それに彰子は「でも」と及び腰になるが準はふんと鼻を鳴らした。

 

「お前は俺が実力を認めたデュエリストだ。ならば俺が認めたに相応しいカードの一枚でも受け取り、俺の力になってみせるという気概を見せてみろ」

 

「あ……は、はい! 頑張ります! こ、これ、大切にしますね……」

 

 兄から言われた通りに発破をかける準に宇佐美もこくりと頷いた後、実質的に万丈目三兄弟全員から送られたに等しいカードを恐る恐る受け取って柔らかく微笑む。

 

「あ、あの、それで、万丈目さんはこれから……」

 

「ついでと言ってはなんだがイエロー寮に向かう。実技試験中に目をつけた相手に少し挨拶をと思ってな。ああ、取巻と慕谷が荷物の整理が終わったらオベリスクブルー専用のデュエルフィールドを見に行くと言っていたから、よければ宇佐美も行ってみるといい。俺も後で行くつもりだ」

 

「はい! ぜひ!」

 

 とりあえず今後の予定を伝え合ってから準は女子寮を後にし、彰子もどこか嬉しそうに鼻歌を歌って寮内に戻っていったのだった。

 

 それから万丈目は素朴なペンションといった様子の寮にやってくる。ここはラーイエロー、入学時には中等部からの編入希望が認められた中でオベリスクブルーに至れなかった成績の者と高等部から入学した中でも優秀な成績で入試をクリアした生徒が所属する寮だ。

 準は流石に先生や他の生徒も入学でバタバタしているだろう中で勝手に寮内に入るわけにもいかないと、少し周りを見回して中等部からの編入組である顔見知りを見つけ、ある相手を呼んでほしいと頼んで外で待つ。そんな彼に一人の青年が歩み寄ってきた。

 

「……君が俺を呼んだのかい?」

 

「少々挨拶をしたくてな。実技試験では見事なデュエルだった。ああ、忙しいだろう時にアポも取らず、挙句不躾に呼びつけてしまって申し訳ない。俺は――」

 

「万丈目準だろう? 俺を呼びに来た彼から名前は聞かせてもらったよ。こちらこそ名乗らせてもらうよ。三沢大地だ」

 

 彼が呼んだラーイエロー生徒――三沢大地にまずは軽く会釈をして非礼を詫び、名前を名乗ろうとする準だがそれくらいは呼ばれた際に聞いたのか三沢は軽くそう答えて自分の名を名乗る。

 

「まあ、名前を聞かされなくても君の名前は知っていたけどね」

 

「ほう? お前と会った覚えはないんだが……」

 

「たしかに面識はないさ。だが、ジュニア時代に君が参加していた公式大会にはいくつか俺も参加していたんだ」

 

「なるほど」

 

 同じ大会に出ていたのなら面識はなくとも優勝者の顔と名前くらいなら一方的に知っていても不思議ではない。準はそう納得し、三沢も笑みを向ける。

 

「君が幾度となく優勝を飾った大会では、俺は君に名を覚えられる程度の成績も残せなかった。そんな実力ではデュエルアカデミア中等部に入ってもやっていけないと思い、中等部への入学は諦めたが中学ではがむしゃらに頑張った。そして俺は今ここにいる」

 

「その努力に敬意を表する。その実力ならば遠からずオベリスクブルーへの道も開けるだろう。馴染みの先輩からの情報だが、入学してからすぐの月一試験は入学試験の成績も大きく参考にされるらしい。ラーイエローからオベリスクブルーへの昇格はなかなか基準が厳しくなっているそうだが、入学試験トップ合格の一番ともなればその試験で余程のミスをしない限りは難しくはないだろう」

 

「その情報はありがたく受け取っておくよ。だが一つだけ訂正させてくれ」

 

 己の実力を冷静に見定めて中等部への入学を諦めつつも努力を重ねて高等部への入学試験ではトップ合格を飾った三沢の努力に準は敬意を示しつつ、ここだけの話だという様子で昇格についての噂を話す。三沢はそれをありがたく受け取ると答えた後、人差し指を立てて訂正を口にする。

 

「俺は二番だ」

 

「二番だと?」

 

「実技試験を見学していたのなら知っているだろう? 入学試験であのクロノス教諭を倒した受験生がいる」

 

「ああ、E・HERO使いの彼か」

 

 三沢の不敵な笑みでの言葉を聞いた準はそこで入学試験でクロノスとデュエルした件の受験生を思い出す。とはいえデッキを口にする辺りどうやら名前までは記憶していないらしく、三沢はそれを察したように僅かに頷いた。

 

「遊城十代。彼が一番だ」

 

「なるほど、そう言いたくなる気持ちも分かる。あの劇的な大逆転はそれほどまでのインパクトだった……あれがあの時の偶々だった。という事でなければな」

 

「それもいずれ分かるだろう。君の話の通りなら、彼だってラーイエローに上がるチャンスは充分にある」

 

 デュエルアカデミア高等部実技担当最高責任者であるクロノス・デ・メディチを倒したというインパクトは、入学試験の成績も大きく参考にするらしい入学すぐの月一試験においてはきっと大きなウェイトを占めるだろう。

 言外にそう語る三沢に準も「確かにな」と頷くと、三沢は近くにある時計をちらりと確認した。

 

「そろそろいいかな? 荷解きの途中なんだ」

 

「ああ。俺も失礼させてもらう……オベリスクブルーで待っているよ」

 

 荷解きに戻ろうとする三沢に準も踵を返した後、言い忘れていたというように言葉を残す。それに三沢は曖昧な笑みを浮かべながら寮に戻っていった。

 

(さて……宇佐美にああ言った事だし、デュエルフィールドに向かうとするか)

 

 簡単な挨拶だけのつもりだったが思っていた以上に三沢と話し込んでしまい、準は少し遅くなったがデュエルフィールドに行くかと、それがある学校に足を向けるのだった。

 

 

 一方取巻と慕谷は万丈目が言っていた通りデュエルフィールドの見学に訪れており、万丈目に言われてやってきた宇佐美や百合、これまた偶然見学に来ていた明日香と合流していた。

 

「すっげえなあ! このデュエルフィールド、音響も体感システムも最新型!」

「流石オベリスクブルー専用って銘打たれただけはあるぜ!」

 

 中等部からデュエルアカデミアに通っていた取巻と慕谷は話に聞いていたのだろうか出入り口付近でデュエルフィールドを見上げながら大はしゃぎしており、それを宇佐美は不思議そうに見ながら首を傾げる。

 

「あ、あの、オベリスクブルー専用って……?」

 

「ああ、宇佐美さんや山本さんは知らないっけ? まずこのデュエルアカデミア高等部の生徒は三つの寮の内一つに所属する事になってるのは知ってるよね?」

 

 彰子の疑問の言葉に取巻が説明を開始する。オベリスクブルーは自分達や万丈目さんのような中等部で優秀な成績を残して高等部に編入した生徒が所属し、ラーイエローはオベリスクブルーには至らないものの高等部への編入が許されるだけの成績を残した中等部の生徒や、宇佐美さん達みたいに外部試験を受けた中で優秀な成績で合格した生徒が所属する。そしてオシリスレッドは外部試験を受けた中で合格はしたもののラーイエローには至らなかった成績の生徒が所属する。と。

 

「もっともそれは男子だけの枠組みで、女子は一律オベリスクブルー所属だけどね」

 

 一応明日香がそう補足。恐らく学校側も防犯とかセキュリティとかあるから女子は一まとめにしておいた方が安心だという女子生徒の心境面、さらに言えば女子寮のセキュリティ用の予算を三つの寮に分けるよりは一つの寮に集中させた方がいいという予算的な都合もあるのだろうという世知辛い事情が推測された。

 

「そしてこのデュエルフィールドはオベリスクブルー所属の生徒だけが普段使用を認められた場所ってことなんだ。まあ正確には学校行事とかで行われる特別なデュエルとかでも使用されるらしいけど」

 

 そして慕谷がそう締める。もちろん生徒が共用で使えるデュエルフィールドもあるが音響などの設備はこっちの方が数段上だし、そもそも共用ならば当然三つの寮の生徒全員の取り合いになる。それが多少緩和されるだけでもオベリスクブルーという最上位層所属の特権といえるだろう。

 

「より良い待遇を受けたければより努力して結果を残して上の寮に這い上がれ、ってわけさ。こういうデュエルフィールドの優先使用権以外にも、成績優秀者は住む場所一つとっても優遇されてるからね」

 

 そう語る取巻とその言葉に頷く慕谷の顔は自分達がそうやって努力して結果を残したが故に今オベリスクブルーというデュエルアカデミアのエリートの地位にいるんだ。という自負に輝いていた。

 

「ふ~ん……それじゃあ質問なんじゃが」

 

 そこで百合が口を開いてデュエルフィールドの入り口を指さす。

 

「あそこにブルー以外の生徒が入ってるの、問題ないのかの?」

 

「「え?」」

 

 そう言って百合が指さす先、丁度彼らが入ってきた出入口とは反対の出入り口付近には確かにブルーの制服以外の服、より言えばレッドの制服を着た生徒二人が「うおーすげー!」とか「これ最新設備のデュエルフィールドだよ!」とか言っている光景があった。

 

「……あーまあ見学くらいなら大丈夫だろうけど……一応声かけてくるよ」

 

「宇佐美さん達はここで待っててくれ」

 

 相手は学校から成績劣等生で問題児の烙印を押されたオシリスレッド。所属寮だけで決めるのもどうかと思うとはいえ、相手が不良で因縁をつけられる可能性もあるため女子を残して男子二人だけで声をかけにいく事を決めた。

 

「いいなぁ、こんなところでデュエルやってみたいなぁ」

 

「よし、やろうぜ!」

 

 一方そのオシリスレッドの二人組の一人、水色髪に眼鏡の少年の言葉にもう一人の茶髪の少年がと乗り気な顔を見せる。

 

「え、いいのかな?」

 

「何言ってんだよ。俺達ここの生徒だぜ?」

 

 眼鏡の少年の不安げな声に茶髪の少年が軽いノリで笑ってデュエルフィールドに上がる階段に足を進めようとした時だった。

 

「おーいそこの君達! 勝手にデュエルフィールドに上がられちゃ困るよ!」

 

 取巻がそれを制止して慕谷と共に二人に駆け寄り、慕谷が二人の前に立って話しかけた。

 

「ここはオベリスクブルー所属生徒専用のデュエルフィールドなんだ。見学くらいなら構わないだろうけど、勝手にデュエルされちゃあこっちも困るんだ」

 

「そ、そうなの? ごめん、知らなかったんだ」

 

「知らなかったなら仕方ないけど、オシリスレッドは設備使用してデュエルしたいなら全寮共用のデュエルフィールドに行ってくれないかな? 生徒全員に配布された通信端末にマップデータも入ってるはずだからさ」

 

 慕谷の注意を受けた眼鏡の少年が申し訳なさそうに謝ると取巻は「知らなかったなら仕方ない」と片付けて、生徒用に配布された通信端末通称PDAを取り出してオシリスレッドに所属している彼らが学校の設備を使ってデュエルしたいのなら行くべき場所を教え、それを聞いた眼鏡の少年が「そうしようよ」と連れに声をかける。

 

「な~んかしっくりこないなぁ」

 

「しっくりこないって……そういう規則だから我儘言われても困るんだって」

 

 だがその茶髪の少年はどこか不満げで、それを聞いた取巻が呆れ顔で説得を続ける。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

 そこに取巻達の後ろから声をかける相手がいた。

 

「「万丈目さん!」」

 

「デュエルフィールドの見学に来たら宇佐美達が、お前達がオシリスレッドと揉めていると言ってきてな。何があった?」

 

「あーいえ、俺達と同じデュエルフィールドの見学に来た新入生なんですけど。間違えて入ってきただけみたいです。別にどうって事もないですよ」

 

 声をかけてきた相手――彰子達から軽く話を聞いた程度のため状況を把握していない様子の準に取巻が苦笑しながら答える。

 

「おっそうだ。じゃああんたら俺達とデュエルしないか? それならいいだろ?」

 

 すると茶髪の少年が名案を思いついたとでも言いたげな表情で提案、横の眼鏡の少年が「え? なんか僕も巻き込まれてる?」と呟いているがスルーされている。

 

「そういう問題じゃないと思うんだけど……いやいいのかな……?」

 

 取巻も困った様子でぼやく。そんな彼の後ろに立つ準は、茶髪の少年の顔を見て「ん?」と唸った。

 

「おいお前」

 

「ん? 俺か?」

 

「お前もしや、遊城十代か?」

 

「え? なんで俺の名前知ってんだ?」

 

 準の質問に茶髪の少年――遊城十代が呆けた声を出す。どうやら当たりらしい、と考える準に慕谷が訝しげな顔で声をかけた。

 

「万丈目さんの知り合いだったんですか? どこかの校外のデュエル大会で戦った相手とか?」

 

「いや、戦った事はないがデュエルしたところはお前達も見ている。こいつは入学実技試験でクロノス教諭に勝ったやつだ」

 

「「ええっ!?」」

 

 オシリスレッド所属という事は少なくとも中等部以外の外部なのは確定、そんな中で準の知り合いとなると彰子のように校外のデュエル大会で会った相手かと考える慕谷に準は入学実技試験の件を説明、すると十代の顔までは覚えていなかったのか二人が驚いた声を上げて十代を見る。それに対し十代は二ッと笑ってみせた。

 

「実力さ」

 

「そう思いたいものだ……ここでデュエルしたいんだったな? それなら俺がお前に挑戦しよう。受けてくれるな?」

 

 十代の不敵な笑みでの言葉に準もフッとクールに笑って答えた後、彼にデュエルを挑む。それを聞いた十代が目を輝かせた。

 

「いいのか!? お前話が分かるな!」

 

「ま、万丈目さん!? いいんですか!?」

 

「俺がこいつに挑戦し、デュエルのためにここの設備を使用するという形ならば恐らく問題あるまい……それに彼には、暗黒の中世デッキを使用したクロノス教諭のデュエルを見せてもらった礼をしたいと思っていたからな。俺の自分勝手な礼をここでさせてもらうさ」

 

 目を輝かせる十代に対して規則的に大丈夫なのかと慌てる取巻だが準は軽く屁理屈をこねながら流した後、クロノスの戦いを見せてくれた彼への礼だと告げながらデュエルフィールドに上がる。

 その向かいに十代が「ひゃっほー!」とはしゃぎながら上がって二人が対面。

 

「そういえば名乗っていなかったな、失礼。俺は万丈目準だ」

 

「改めて、遊城十代だ。さあ、楽しいデュエルをしようぜ!」

 

 そこに来てまだ自分の名前を名乗っていなかった事に気づいた準は名を名乗り、それを聞いた十代も改めて自分の名前を名乗ってお互いにデュエルディスクを展開。

 

「「デュエル!!!」」

 

 そして二人の声が重なり合った。




《後書き》
 今回は本編の舞台であるデュエルアカデミア高等部入学。でもってちょっと思いついたのでまた兄貴達に気ぶってもらいましたw気ぶり兄貴達書くのおもろいw

 んで準にあちこち挨拶回りさせつつ、最後は原作でもあったように十代と出会って、今回はアンティとかその辺は無し&万丈目の方から紳士的に挑戦という形で、流石に長くなりすぎたと思うのでデュエルは次回にします。なおどういう終わり方にさせるかは決めてますがそこにどうやって持っていくかは今から考えます。(行き当たりばったり)

 ちなみに言うまでもないと思いますが、万丈目が三沢に語った「入学してからすぐの月一試験は入学試験の成績も大きく参考にされる」という件はアニメ中に一切出なかったはずのオリジナル設定です。もしこれが正しいもしくは間違っていると確定できる原作設定があったらごめんなさい。
 これに関しては「学園中から実力を認められる十代が卒業時までずっとオシリスレッド所属」に対する自分なりの考察が含まれています。まあ要するに「こいつ実技はトップクラスだけど座学が落第寸前のワーストクラス(卒業直前の時点でクロノスがマンツーマンで山のような課題をこなさせるレベル)だから、そもそもラーイエローに昇格できるだけの成績になってない」だと考えました。
 その十代が唯一ラーイエローへの昇格を認められた事について「まだ入学したばかりだから学校として成績等の判断材料が少なく、その判断材料として入学試験の結果(=暗黒の中世デッキを使ったクロノスを倒した)を大きく評価された」と自分なりに考察をした結果思いついた設定です。
 ……まあ、実は何度かイエロー昇格の話は出てるけどオシリスレッドが好きで別に寮の格差とか気にしてないから、本人的には昇格の旨味がない十代がずっと辞退してる。とか言われたらそれまでなんですが。もしその辺も明言されてたらごめんなさい。普通に見逃してます。

 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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