遊戯王GX~もしも万丈目兄弟の仲が良かったら~   作:カイナ

7 / 18
第六話 ドラゴンVSHERO

「「デュエル!!!」」

 

 デュエルアカデミアのオベリスクブルー専用(兼式典などの特別な場合に使われる)デュエルフィールドで万丈目準と遊城十代の声が重なり合う。そして準は余裕を示すように腕を組んだ。

 

「先攻は譲ろう」

 

「んじゃ遠慮なく。俺のターン、ドロー!」

 

 準の言葉を素直に受け入れて十代がカードをドローし、六枚の手札を確認。少し考えると手札の一枚を取った。

 

「俺は[カードガンナー]を守備表示で召喚し、カードガンナーの効果発動! 一ターンに一度、自分のデッキの上からカードを三枚まで墓地へ送って発動でき、このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するために墓地へ送ったカードの数×500アップする! 俺はデッキの上からカードを三枚送り、攻撃力を1500ポイントアップさせる! カードを二枚セットしてターンエンド! この瞬間、カードガンナーの攻撃力は元に戻るぜ」

 カードガンナー 守備力:400

 

 十代の場で腕部分らしき砲台を胴体の前でクロスさせ身を守る格好を取るロボット。その後ろにさらに二枚のカードが伏せられ、十代はターンエンドを宣言した。

 

「ア、アニキ!? ワンターン目で攻撃力を上げたって何の意味もないし、そもそも守備表示でなんで攻撃力を……!?」

 

「へえ。あいつオシリスレッドにしちゃカードの使い方分かってるじゃないか」

 

 十代のプレイングを見た眼鏡の少年が困惑したように十代に呼びかけるも、隣でそれを観戦する慕谷が感心したように腕を組んで呟くのを聞き、「え?」とまたも困惑顔で彼の方を見る眼鏡の少年に気づいた取巻がしたり顔で話し出した。

 

「あのオシリスレッドはカードガンナーの攻撃力を上げるのが目的じゃないってことさ。カードガンナーは攻撃力アップ効果を発動するためのコストとしてデッキの上から最大三枚のカードを墓地に遅れる。つまり実質なんのデメリットも無しにデッキを圧縮し、墓地を肥やせるってわけさ。ま、下準備しない限り墓地に送るカードはランダムになるから運任せにはなるけどね」

 

「へー……」

 

 つまりデッキ圧縮と墓地肥しの重要性が分かっている様子の十代を称賛しているわけだ。とはいえひょいと肩をすくめて「運任せ」と締める取巻に、眼鏡の少年は「へー」と呟いた後やっぱり十代のアニキは凄いなぁと内心そう思いながらデュエルフィールドを見上げるのだった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ターンプレイヤーとなった準もまずはカードをドローしてから状況分析を開始する。

 先攻ワンターン目としては堅実というか基本に忠実な守りの手。守備モンスターで自分のライフを守りながら相手の出方を伺い、迂闊に攻めようものなら二枚の伏せカードで迎撃ないし防御。次のターンまで守備モンスターが生き延びればそいつを生贄に上級モンスターに繋げてくる事も考えられる。

 おまけにワンターン目からしっかり墓地を肥やして次のターンの準備もしており、おまけにカードガンナーは破壊された場合プレイヤーへの一枚ドローによる補助を行う優秀なカードだ。

 

(……まあ、それで怖じ気づくなど話にもならんがな)

 

 もっともその程度の罠や次のターンへの布石くらい、乗り越えるなり引っかかってもリカバリーするなり出来て当然だが。と準は僅かに笑みを見せ、手札を取った。

 

「俺は魔法カード[融合]を発動!」

 

「おお! お前も融合使いなのか!?」

 

「ああ……まあな。俺は手札の[暗黒騎士ガイアオリジン]とドラゴン族[エメラルド・ドラゴン]を融合! 現れろ、[天翔の竜騎士ガイア]!」

 天翔の竜騎士ガイア 攻撃力:2600

 

 準が初っ端から発動したカードを見た十代が目を輝かせる。

 準の場に出現した、青い鎧をまとって馬に乗り朱槍を構える若き騎士が、同じく現れたエメラルドのような輝きを持ちながらその身体を虹色に煌めかせるドラゴンと融合。竜騎士へと転生し準の場を駆ける。

 

「天翔の竜騎士ガイアの特殊召喚に成功した事で効果発動! 自分のデッキから[螺旋槍殺(スパイラル・シェイパー)]一枚を選んで手札に加える! そしてさっき手札に加えた永続魔法[螺旋槍殺]を発動し、バトル! 天翔の竜騎士ガイアでカードガンナーを攻撃!」

 

 準の攻撃命令を受けると同時に天翔の竜騎士が騎竜へと合図を送り、それを受けた竜も一気に翼をはためかせて飛行し加速。その勢いに乗って突進する騎士も朱槍をカードガンナーへと向けた。

 

「天翔のドラグーン・チャージ!!」

 

「ぐああぁぁぁっ!?」LP4000→1800

 

 そしてその朱槍がカードガンナーを貫き、爆発と共に発生した衝撃波が十代まで届いてそのライフを一気に削る。しかし十代は何故だとばかりに準を見た。

 

「カードガンナーは守備表示だったはず……!?」

 

「螺旋槍殺の効果。自分の「暗黒騎士ガイア」「疾風の暗黒騎士ガイア」「竜騎士ガイア」が守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。そして天翔の竜騎士ガイアはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「竜騎士ガイア」として扱う」

 

「なっ!?」

 

「さらに螺旋槍殺の効果を発動。螺旋槍殺の貫通効果を適用した事で「竜騎士ガイア」が相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動。俺はデッキから二枚ドローし、その後手札を一枚選んで捨てる」

 

 一気に守備を貫いてダメージを与えるだけでなく、手札を交換して次の一手の可能性を広げる準。しかし十代も負けてはいない。

 

「こっちもいくぜ! カードガンナーが戦闘によって破壊され墓地に送られた事でリバースカードオープン[ヒーロー・シグナル]! 手札・デッキからレベル4以下のE・HERO一体を特殊召喚する! 来い、[E・HERO スパークマン]! さらにカードガンナーが破壊され墓地へ送られた事で効果発動! 俺はデッキから一枚ドローする!」

 E・HERO スパークマン 攻撃力:1600

 

 カードガンナーがやられた事がトリガーとなってシグナルが宙に浮かび、それに導かれるように雷の属性を宿すE・HEROが十代の場に出動し守備を固める。さらにカードガンナーの効果によるドローで手札もささやかながら補充できていた。

 

「俺はリバースカードを二枚セットし、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 それを見届けた準は手札から一枚カードを伏せてターンエンドを宣言し、続けてターンプレイヤーとなった十代がカードをドローし、やる事は決まっているというように手札を取る。

 

「魔法カード[融合]を発動! 場のスパークマンと手札のエッジマンを融合! 現れろ、[E・HERO プラズマヴァイスマン]!!」

 E・HERO プラズマヴァイスマン 攻撃力:2600

 

 彼の場の雷のヒーローと手札から現れた刃のヒーローが神秘の渦により融合、新たにその二つの力を宿す巨人が彼の場に登場し、その身に雷を漲らせる。

 しかしその攻撃力は天翔の竜騎士ガイアと互角、さてどうするのかと全員が見守る中、十代が宣言した。

 

「プラズマヴァイスマンの効果発動! 手札を一枚捨てる事で、相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター一体を選択して破壊する! 天翔の竜騎士ガイアを破壊するぜ!!」

 

 漲らせる雷を球体にし、天翔の竜騎士ガイア目掛けて発射するプラズマヴァイスマン。それを受ければ天翔の竜騎士ガイアはひとたまりもないだろう。

 

「……破壊する。と言ったな?」

 

「なにっ!?」

 

 しかし準は余裕そうに笑みを湛え、まるで確認するようにそう告げていた。そして準が動き出す。

 

「俺はこの瞬間、手札の[竜の騎士(ドラゴン・ナイト)]の効果発動! 自分フィールド上のカードを破壊する効果を相手モンスターが発動した時、対象となった自分のカードを全て墓地へ送る事で発動し、このカードを手札から特殊召喚する! 俺はプラズマヴァイスマンの破壊効果の対象となった天翔の竜騎士ガイアを墓地へ送り、竜の騎士を守備表示で特殊召喚!!」

 竜の騎士 守備力:2300

 

「なっ!?」

 

 天翔の竜騎士ガイアが突如燃え上がった火柱に包まれて消え去ったかと思うとその火の中からずしんずしんと足音を立て、巨大な剣と盾を装備して鎧をまとった竜、まさしく竜の騎士が現れてプラズマヴァイスマンが放った雷球を盾で防ぐ。

 

「そ、そんな……アニキの攻撃を上手くいなすどころか、それを利用してさらに強力なモンスターを呼ぶなんて……」

 

 まるで相手の破壊効果を読んでいたかのような動きに、眼鏡の少年もわなわなと震えながらそう呟いていた。

 

「ならバトルだ! プラズマヴァイスマンで竜の騎士を攻撃!」

 

「待った! バトルフェイズに入る前、メインフェイズ終了時にリバースカードオープン[威嚇する咆哮]! このターン相手は攻撃宣言できない!!」

 

破壊が防がれても攻撃力は上回っているため戦闘破壊を狙おうとするも、竜の騎士が咆哮を上げて威嚇し十代の攻撃宣言を封じてみせる。

 

「く……俺はモンスターをセット、カードを一枚セットしてターンエンドだ……」

 

 天翔の竜騎士ガイアを破壊してアドバンテージと流れを取ろうとしたにも関わらず、結果は無意味に手札を失っただけではなくさらに強力なモンスターを出される始末。さらにピンチになった状況に十代は悔しそうに唸ると残る手札であるモンスターを正体不明の守備表示モンスターとして召喚し、さらに一枚のカードを魔法・罠ゾーンに伏せてターンエンドを宣言した。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 対する準は余裕そうに、しかし油断はしまいという様子を見せながらカードをドローする。これで手札は二枚、準はその内の一枚の手札をすぐに取った。

 

「魔法カード[トレード・イン]を発動! 手札からレベル8モンスター一枚を捨て、デッキから二枚ドローする。俺は[フェルグラントドラゴン]を捨ててデッキから二枚ドロー!」

 

 どうやら上手く噛み合う手札交換カードとそのコストとなるモンスターを持ち合わせていたらしく、それを使って手札を交換。交換した手札を吟味して一枚を取った。

 

「俺は[ワイバーンの戦士]を召喚し、竜の騎士を攻撃表示に変更! バトルだ! 竜の騎士でプラズマヴァイスマンを攻撃!」

 竜の騎士 守備力:2300→攻撃力:2800

 ワイバーンの戦士 攻撃力:1500

 

「く……」LP1800→1600

 

 竜の騎士の叩きつけるように振るう大剣(竜の騎士の巨体の前ではそのサイズでなお片手剣のようだが)の一撃を受けたプラズマヴァイスマンはなすすべなく両断され、その際に生じた衝撃波で十代のライフがさらに削られる。

 

「続けて攻撃だ、ワイバーンの戦士! アリゲーターソード!」

 

 さらにトカゲ人間の音の速さで振るう剣が十代の守備モンスターを切り裂き、破壊。

 これで十代の場のモンスターは全滅。やはり為す術ないか、入学試験の時は上手くデッキが回っただけのたまたまだったかと取巻と慕谷が結論を出そうとする中、十代はニヤリと笑う。

 

「戦闘で破壊された[フレンドッグ]の効果発動! このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地からE・HEROと名のついたカード一枚と[融合]一枚を手札に加える! 俺は[E・HERO エッジマン]と[融合]を手札に加えるぜ!」

 

 先程プラズマヴァイスマンの融合素材となった刃の英雄と融合魔法カードを手札に加えて手札を補充する十代に準は「ほう」と小さく声を漏らすとそのままターンエンドを宣言した。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 続いてターンプレイヤーになった十代がカードをドローし、ドローカードを見るとよしと頷いてそれを一旦手札に入れ、同時に彼の場の伏せカードが翻る。

 

「トラップ発動[融合準備(フュージョン・リザーブ)]! 融合デッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター一体をデッキから手札に加える。その後、自分の墓地の[融合]一枚を選んで手札に加える事ができる。俺は融合デッキの[E・HERO ワイルドジャギーマン]を見せてデッキからその融合素材である[E・HERO ワイルドマン]を手札に加える!」

 

 墓地に融合はないのかサルベージは行わずに融合素材モンスターのサーチのみを行い、十代はまた別の手札を取った。

 

「魔法カード[融合]を発動! 手札の[E・HERO ワイルドマン]と[E・HERO エッジマン]を融合! 来い、[E・HERO ワイルドジャギーマン]!」

 E・HERO ワイルドジャギーマン 攻撃力:2600

 

 野生の力持つ英雄と刃の力宿す英雄が神秘の渦で掛け合わさり登場した新たなヒーロー。しかしそれだけでは終わらないとばかりに、十代はドローカードをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「フィールド魔法[摩天楼-スカイスクレイパー-]!」

 

 

「出たぞ! クロノス教諭を倒すのに使ったフィールド魔法!」

 

 一気に場が摩天楼へと移り変わり、それを見た取巻も声を上げる。

 

「ワイルドジャギーマンは相手フィールド上の全てのモンスターに一回ずつ攻撃をする事ができる。いけ、ワイルドジャギーマン! ワイバーンの戦士に攻撃! インフィニティ・エッジ・スライサー!!」

 

 ワイルドジャギーマンの左腕の装備から無数の刃が飛んでワイバーンの戦士を切り倒し、ワイバーンの戦士の抵抗によって多少威力が下がったもののその刃は万丈目にも襲い掛かる。

 

「ぐううぅぅぅっ」LP4000→2900

 

「続けて竜の騎士に攻撃! この瞬間スカイスクレイパーの効果により、ワイルドジャギーマンの攻撃力は、その攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターに攻撃するダメージ計算時のみ1000アップする!」

 E・HERO ワイルドジャギーマン 攻撃力:2600→3600

 

さらに放たれた刃が竜の騎士にも襲い掛かる。その瞬間摩天楼から風が吹き、その風を受けた刃は突如高速回転を始めて威力を高める。

 

「ぐああぁぁぁっ!」LP2900→→2100

 

その回転によって威力を増した刃が竜の騎士を切り刻み、万丈目のライフをさらに削っていった。

 

「やったッス! アニキが一気に逆転ッス!」

 

「万丈目さん……」

 

 まだライフ逆転には至らないがフィールドの状況はほぼ逆転。眼鏡の少年が右手を振り上げて喜び、彰子がおろおろと心配そうに胸の前て両手を組む。しかし準は笑みを見せていた。

 

「竜の騎士が破壊された瞬間、トラップ発動[レベル・レジストウォール]! 自分フィールドのモンスターが戦闘または相手の効果で破壊された場合、そのモンスター一体を対象として発動! レベルの合計がそのモンスターと同じになるように、デッキからモンスターを任意の数だけ選んで守備表示で特殊召喚する! ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される」

 

「へへ! 何が来ようと同じ事だ! 全部ワイルドジャギーマンでぶった斬ってやるぜ!」

 

 準の発動したカードの効果を聞いた十代は自信満々に切り返す。低レベル・低ステータスのモンスターを展開してきたとしてもワイルドジャギーマンなら全滅させることはたやすい。仮に攻撃力の高いモンスターを出してきてもスカイスクレイパーの効果により対応可能。

 そんな自信に満ちた十代の言葉に対し、準も自信に満ちた笑みで応えた。

 

「ならば斬り崩してみせるがいい! 竜の騎士のレベルは7! よって俺は――」

 

 準はデッキから()()のカードを抜き取り、デュエルディスクに叩きつける。同時に彼の場に虹色の光が走った。

 

「――レベル7の[ダイヤモンド・ドラゴン]を守備表示で特殊召喚!!」

 ダイヤモンド・ドラゴン 守備力:2800

 

 準の場に出現するのは文字通り全身がダイヤモンドで出来たドラゴン。その眩い光は虹色に煌めいており、その姿を見た眼鏡の少年がひぃっと声を上げた。

 

「ま、ままままさかあれ!? パラレルレアカード!?」

 

「ああ! 万丈目さんが昔から愛用しているスペシャルカードさ!」

 

 超激レアであるパラレルレアカードを見たことないらしい眼鏡の少年の慄く声に取巻がガッツポーズを取って答える。

 

「く……」

 

「さあどうだ? このダイヤモンドの壁を斬り崩せるか?」

 

 パラレルレアカードの圧もあるのだろう、しかしそのステータスにたじろぐ十代に準がニヤリと笑う。

 ダイヤモンド・ドラゴンのステータスは攻撃力2100、守備力2800。ワイルドジャギーマンの攻撃力はダイヤモンド・ドラゴンの守備力を下回っており、攻撃力を強化しようにもスカイスクレイパーの効果は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()場合にしか適用できない。

 低ステータスのモンスターなら何体並んでも纏めて切り崩せる。高攻撃力のモンスターが出てくるならスカイスクレイパーの効果で強化して倒せる。だが攻撃力がワイルドジャギーマンの攻撃力より低く、尚且つ守備力がワイルドジャギーマンの攻撃力を上回っているモンスターが相手だと突破出来ない。準はそれを瞬時に見切り、それを行える壁としてダイヤモンド・ドラゴンを呼び出したのだ。

 

「俺はこれでターンエンドだ……」

 

 一枚残った伏せカードもこの状況で使えるものではないのか、十代は悔しそうにターンエンドを宣言した。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 しかし準も手札一枚のみという状況、睨み合いを脱するのはこのドローカードにかかっている。準はそのドローカードを見ると僅かに渋い顔をしつつそれをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「魔法カード[闇の量産工場]を発動。墓地から通常モンスター二体を手札に加える。俺は[エメラルド・ドラゴン]と[ワイバーンの戦士]を手札に加える」

 

 ドローカードは単純なサルベージカードであり、彼の墓地に眠る二体の通常モンスターが彼の手に戻る。しかしそれでワイルドジャギーマンを除去するのは不可能、どうくるかと構える十代に対し、準はさらに手札を取った。

 

「魔法カード[手札抹殺]を発動。互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分新たにドローする。もっともお前の手札は零枚、俺はこの二枚の手札(エメラルド・ドラゴンとワイバーンの戦士)を捨てて二枚ドローする」

 

 サルベージした二枚の通常モンスターを二枚のドローに変換。そして準はドローカードを見てまた渋い顔を見せるが、意を決したようにその一枚をデュエルディスクに差し込んだ。

 

「魔法カード[巨竜の羽ばたき]を発動! 自分フィールドのレベル5以上のドラゴン族モンスター一体を選んで持ち主の手札に戻し、フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。俺はダイヤモンド・ドラゴンを手札に戻す!」

 

「ダイヤモンド・ドラゴンを!?」

 

 ダイヤモンド・ドラゴンが翼を広げて準の手札向けて飛び立つ。その羽ばたきだけでもすさまじい猛風を生み出して十代の場の伏せカードと摩天楼、そしてついでに準の場に残っていた螺旋槍殺を吹き飛ばしていった。

 しかしそれは自分を守る壁を自ら崩したも同義。十代が驚いたように声を上げるが、準はさらに残る手札を取った。

 

「魔法カード[七星の宝札]を発動! 手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、レベル7モンスター一体を除外し、自分はデッキから二枚ドローする。俺は手札の[ダイヤモンド・ドラゴン]を除外し、カードを二枚ドロー!」

 

 魔法・罠の全破壊のために手札に戻したダイヤモンド・ドラゴンをコストにしてさらなるドローに繋げる準。

 睨み合いを脱するためとはいえまるで背水の陣を自らに強いた動きの末のドローに全員がごくりと息を飲み、準はドローした二枚の手札を見てフッと笑みを零した。

 

「俺は[ミンゲイドラゴン]を召喚し、墓地の[輪廻竜サンサーラ]の効果発動! 墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のレベル5以上のドラゴン族モンスター一体を手札に加える。その後、そのモンスターを生贄召喚できる! 俺はサンサーラを除外して墓地のレベル8ドラゴン[フェルグラントドラゴン]を手札に加える! さらにミンゲイドラゴンはドラゴン族モンスターを生贄召喚する場合、二体分の生贄とする事ができる! ミンゲイドラゴンを二体分の生贄とし、出でよ[フェルグラントドラゴン]!!」

 フェルグラントドラゴン 攻撃力:2800

 

「く……」

 

 自ら壁を崩した背水の陣の末、さっき倒した竜の騎士に並ぶステータスの最上級ドラゴンをこうも容易く召喚してくる準の度胸とタクティクスに十代は再びたじろぐ。

 

「バトルだ! フェルグラントドラゴンでワイルドジャギーマンに攻撃! フェルグラント・ボディプレス!!」

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!」LP1600→1400

 

 準の攻撃指示を受けたフェルグラントドラゴンがその巨体でワイルドジャギーマンに飛び掛かって押し潰し、発生した衝撃波が十代のライフを削る。これで十代の場にモンスターはもちろん伏せカードの一枚すらなくなった。

 

「俺はリバースカードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 

 そして準は最後の手札を伏せてターンエンドを宣言する。とはいえ十代の場はがら空き、手札は次にドローする一枚のみ。

 ダイヤモンド・ドラゴンの守備力とワイルドジャギーマンの攻撃力及び全体攻撃能力による睨み合いになるかと思われた状況からの劇的な逆転。この状況から逆転はないだろう、と取巻達は当然とはいえ万丈目さんの勝ちだなと準の勝利を確信し、唯一この場で心から十代の味方である眼鏡の少年すら諦めたように項垂れる。

 

「へへ、すげえ。すげえなアンタ。只者じゃねえ……」

 

「当然だ。オベリスクブルー、それはデュエルアカデミア中等部を優秀な成績で卒業したエリートの証」

 

 

「その通り! しかも万丈目さんはその中でもトップなのさ!」

「中等部を主席で卒業した超エリート! それが万丈目さんだ!」

 

 準の強さを認めた十代の言葉に準はそれこそがオベリスクブルー、自分の努力の結果を証明するものだと自負。取巻と慕谷が、準はそのエリートの中でもトップなのが万丈目さんなのだと合いの手を入れる。

 

「あわわ、僕達入学初日に凄い人に会って、そしてアニキは凄い人に勝負挑んじゃったんだ……」

 

 眼鏡の少年もまさか偶然会った相手がそんな凄い相手だったとは思っていなかったのか困惑していた。

 

「へへ、そんな凄い相手と入学初日から偶然出会って、こうして勝負が出来るなんて超ラッキーだぜ!」

 

 しかし十代は眼鏡の少年の困惑と裏腹に楽しそうに笑っていた。

 

「だがお前のフィールドはゼロ、手札は次のドローカード一枚だけだ。それでこの状況を逆転できるとでも?」

 

「やってみせるさ。さっきアンタがやってみせたように! 俺のターン! ドロー!!」

 

 準の言葉に対し、十代は勇ましく笑ってカードをドロー。その時この場にいた全員が、そのドローの軌跡に光が走ったように見えた。そしてそのドローカードを見た十代がニッと笑う。

 

「魔法カード発動[ホープ・オブ・フィフス]! 自分の墓地のE・HEROと名のついたカードを五枚選択し、デッキに加えてシャッフル。その後、デッキからカードを二枚ドローする。さらに! このカードの発動時に自分の手札・フィールド上に他のカードが存在しない場合はカードを二枚ではなく三枚ドローする!!」

 

「なにぃ!?」

 

 まさにこの状況でこそ真価を発揮すると言っても過言ではない逆転のドローカード。

 それを引き当てる豪運に準も思わず大声を上げていた。

 

「俺は墓地のE・HERO、スパークマン、クレイマン、フェザーマン、バーストレディ、バブルマンをデッキに戻してシャッフル。カードを三枚ドロー!」

 

 見た覚えのないE・HEROがいるが、恐らくカードガンナーかプラズマヴァイスマンの効果コストで墓地に送られたのだろう。

 そして一気に三枚に増えた手札を見た十代は「ラッキー!」と声を上げてさらに手札を取る。

 

「魔法カード[HEROの遺産]! 俺はHEROモンスターを融合素材とする融合モンスター二体を墓地から融合デッキに戻し、デッキから三枚ドローする! 俺はプラズマヴァイスマンとワイルドジャギーマンを融合デッキに戻してカードを三枚ドロー!!」

 

「なんだと!?」

 

 また大声を上げてしまう準。無理もないだろう、ドローフェイズ時には一枚しかなかった手札が一気に五枚にまで膨れ上がったのだから。

 その圧倒的なドロー力に準のみならず観客達でさえポカンとなっていた。

 

「魔法カード[融合回収(フュージョン・リカバリー)]を発動! 自分の墓地の[融合]一枚と融合召喚に使用した融合素材モンスター一体を手札に加える。俺は[融合]とワイルドジャギーマンの融合に使用した[E・HERO ワイルドマン]を手札に加え、[融合]を発動! 手札の[E・HERO ワイルドマン]と[E・HERO ネクロダークマン]を融合! 来い、[E・HERO ネクロイド・シャーマン]!!」

 E・HERO ネクロイド・シャーマン 攻撃力:1900

 

 またも融合召喚が行われ、十代の場に現れるのは歌舞伎のようなポーズを取って見得を切るシャーマン。十代はその姿を見て心強そうに頷くと拳を握った。

 

「ネクロイド・シャーマンの効果発動! このカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター一体を破壊! その後、相手の墓地からモンスター一体を選び、相手フィールドに特殊召喚する! 俺が破壊するのは当然フェルグラントドラゴン!」

 

「ちっ……」

 

 ネクロイド・シャーマンが錫杖を構えて呪文を唱えると、発動した呪術によってフェルグラントドラゴンの魂が抜かれてしまう。

 そしてその魂を贄とした呪術によって準の場に呼び出されるモンスター――彼の墓地に眠るモンスターの情報が十代の目の前にソリッドビジョンで出現する。

 

([暗黒騎士ガイアオリジン]、[天翔の竜騎士ガイア]、[竜の騎士]、[エメラルド・ドラゴン]、[ワイバーンの戦士]、[ミンゲイドラゴン]、そしてさっき破壊した[フェルグラントドラゴン]……)

 

 まず攻守共にネクロイド・シャーマンの攻撃力を上回るステータスを持つ竜の騎士と天翔の竜騎士ガイア、フェルグラントドラゴンは論外、エメラルド・ドラゴンなら守備表示なら倒せるがそうするぐらいなら暗黒騎士ガイアオリジンやワイバーンの戦士、ミンゲイドラゴンなら攻撃表示でも倒せるしそうすれば戦闘ダメージも与えられる。実質この三体のどれかだろう。

 

(戦闘ダメージを多く与えるならミンゲイドラゴン、だけど……)

 

 十代はそこで思考を働かせる。準の場に伏せられたカード、あれがもし攻撃を防ぐタイプのカードであれば、ドラゴン族を生贄召喚する際に二体分の生贄となるミンゲイドラゴンを彼の場に残すことになる。

 今彼の手札はゼロ枚とはいえ、次のターンで上級ないし最上級ドラゴンを引き当ててくるかもしれない。あの背水の陣からの逆転となるドローはそれほどまでの危惧を十代に植えつけていた。

 

「(いや…)…俺は[ミンゲイドラゴン]を特殊召喚!」

 

「ほう」

 ミンゲイドラゴン 攻撃力:400

 

 フェルグラントドラゴンの魂を贄に呼び出されるのはミンゲイドラゴン。今彼の墓地の中で一番ステータスの低い、しかし一発逆転の力を秘めるモンスターを呼び出す度胸に準が微笑した。

 

「来い、[E・HERO フェザーマン]!」

 E・HERO フェザーマン 攻撃力:1000

 

 さらに十代は風の力宿す英雄を呼び出す。

 

「このターンで終わらせる! ネクロイド・シャーマンでミンゲイドラゴンを攻撃!」

 

 伏せカード一枚に臆して攻めのチャンスを逃すなんて自分らしくない。十代は己のデッキと力を信じて攻撃を選択し、ネクロイド・シャーマンも主の判断に頷いて錫杖を振り被りミンゲイドラゴンに殴りかかる。

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!」LP2100→600

 

 その攻撃が通ってミンゲイドラゴンが粉砕され、準のライフが大きく削られる。

 通った、と十代は拳を握りしめてその拳を前に突き出した。

 

「これでトドメだ! フェザーマン! フェザーブレイク!!」

 

 追撃の指示を受けたフェザーマンが翼を広げ、そこから羽根を弾丸のように射出して準を狙う。

 この攻撃が通れば準のライフは尽きる。まさかの逆転負けかと息を飲んだ時、準の場の伏せカードが翻った。

 

「トラップ発動[ピンポイント・ガード]! 相手モンスターの攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター一体を守備表示で特殊召喚する! そしてこの効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない!! 俺は[ミンゲイドラゴン]を守備表示で特殊召喚!」

 ミンゲイドラゴン 守備力:200

 

 準の場に再びミンゲイドラゴンが蘇生され、フェザーマンのフェザーブレイクをその身を盾にして防ぎきる。

 ギリギリで持ちこたえられた上に、予想とはちょっと違う形とはいえ十代の危惧通りドラゴン族の生贄として有用なミンゲイドラゴンが場に残ってしまっていた。

 

「俺の伏せカードが防御カードではないかと臆さず、戦闘ダメージを重視した攻めの姿勢は見事。だが甘かったな」

 

「くっ。俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

 準の称賛の言葉に対して十代は悔しそうに唸ってカードを伏せるとターンエンドを宣言。

 準が「俺のターン」と宣言してカードをドローし、ドローカードを確認すると面白そうに笑って魔法・罠ゾーンに差し込んだ。

 

「魔法カード[壺の中の魔術書]を発動。互いのプレイヤーはデッキからカードを三枚までドローする。俺は三枚ドローする、お前も遠慮しなくて構わないぞ」

 

「んじゃ遠慮なく。俺も三枚ドローだ」

 

 互いにデッキからカードを三枚という破格のドロー。そしてそのドローカードの一枚を見た準はニヤリと笑った。

 

(来るか!?)

 

 その笑みを見た十代が直感、同時にミンゲイドラゴンが光に包まれる。

 

「俺はミンゲイドラゴンを二体分の生贄に捧げる!」

 

 

「この光……間違いない! 来るぞ! 万丈目さん最大の切り札が!!」

 

「さ、最大の切り札!?」

 

 その光を見た取巻が歓喜の声を上げると、隣で眼鏡の少年が悲鳴を上げる。

 天翔の竜騎士ガイア、龍の騎士、ダイヤモンド・ドラゴン、フェルグラントドラゴン。数々の最上級モンスターをいとも容易く使いこなしていた彼の「最大の切り札」、聞いただけでも恐ろしい響きだといわんばかりの悲鳴だった。

 

「来い、[光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)]!!!」

 光と闇の竜 攻撃力:2800

 

 そして眩い光がフィールド内に爆発。その中心では彼の相棒にして切り札である光と闇の竜が羽ばたいていた。

 

「バトルだ! 光と闇の竜でフェザーマンを攻撃! ダークパプティズム!!」

 

 光と闇の竜が闇の波動を放ってフェザーマンに攻撃を仕掛ける。このダメージを受ければ十代の敗北、そうはいくかとばかりに十代の場の伏せカードが翻った。

 

「トラップ発動[ヒーローバリア]! 自分フィールド上にE・HEROが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効に――」

「無駄だ」

「――え?」

 

 フェザーマンの目の前に盾が出現して闇の波動を防ごうとするも、その時光と闇の竜から闇の波動とは別の雷が走って盾に直撃する。

 

「なんだ!?」

 

「ヒーローバリアの発動にチェーンして光と闇の竜の効果発動。モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動し、このカードの攻撃力・守備力が500ポイント以上の場合、その発動を無効にする。そしてこのカードの攻撃力と守備力は500ポイントダウンする」

 光と闇の竜 攻撃力:2800→2300 守備力:2400→1900

 

「なに!?」

 

「これはおまけだ。さらに光と闇の竜の効果発動にチェーンして手札から速攻魔法発動[融合解除]。フィールドの融合モンスター一体を対象として発動でき、その融合モンスターを持ち主の融合デッキに戻す。ネクロイド・シャーマンの融合は解除させてもらう」

 

「うげえ!?」

 

 十代のヒーローバリアを無効化する事に便乗し、準は融合解除を発動。その対象となるのは現状フィールドで唯一の融合モンスターであるネクロイド・シャーマンであり、十代は何度も悲鳴を上げていた。

 

「……あれ? あの融合解除も光と闇の竜の効果で無効化されるんじゃないの?」

 

「いや、光と闇の竜の無効化効果は同一チェーン上一回しか発動しない。万丈目さんは光と闇の竜の無効効果が発動するのに乗じて本命のカードを通してくるからさ……」

 

「たまったもんじゃないよなぁ……」

 

 その光景を見た眼鏡の少年の素朴な疑問に付き合いの長い取巻と慕谷が補足説明。見事なコンビネーションだ。

 

「チェーン処理を開始させてもらう。融合解除の効果によってネクロイド・シャーマンは融合デッキに戻り、光と闇の竜の効果によって攻撃力・守備力のダウンと引き換えにヒーローバリアの発動を無効にする。よって、光と闇の竜のフェザーマンへの攻撃は有効となる」

 

 ネクロイド・シャーマンの姿がぐにゃあと歪んで渦巻いて揺らめくと消え去り、ヒーローバリアは雷に撃たれて力を失うと消滅。

 

「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!」LP1400→100

 

 守りを失ったフェザーマンが闇の波動に飲み込まれて破壊されると共に十代のライフも大きく削られたのだった。

 

「けど、光と闇の竜の攻撃力がダウンしたおかげで彼のライフはギリギリ残った……」

 

「不幸中の幸いじゃのう」

 

 明日香が呟く。ヒーローバリアによってフェザーマンと己の身を守る事こそ叶わなかったが、攻撃力がダウンした影響でギリギリ踏みとどまれた。百合も不幸中の幸いと漏らす。

 

「あれ? 融合解除って融合デッキに戻したモンスターの融合素材を特殊召喚する効果もなかったっけ?」

 

「あー、それよく勘違いされてるけどな。今回の場合はあくまで融合解除を使用した万丈目さんの墓地に融合素材モンスターが揃ってないと特殊召喚は出来ないんだ。だから融合解除は自分のモンスターの融合を解除して追撃や相手の対象を取るタイプの除去からの防御の他、融合使い同士だと相手の融合モンスターをああやって除去する運用もできるってわけだな」

 

「え? そうなんですか!?」

 

「……宇佐美さん、一応融合使いだよね……?」

 

 妙に気安く疑問を飛ばすようになってきた眼鏡の少年の再び素朴な疑問に慕谷が答えると彰子が仰天、取巻が額に汗マークがついているかのような表情でツッコミを入れた。

 

「ウサミンはフュージョン・ゲートで除外するからのう。融合解除は墓地からの蘇生だから使わんのじゃろ」

 

「い、今は違うもん!」

 

 失言に対する百合のニヤニヤイジリに、彰子は顔を赤くしてそう叫ぶのだった。

 

「カードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 そんな観客達の談話を知るか知らずか、準は残る最後の手札を伏せてターンエンドを宣言し、十代がターン開始を宣言してカードをドローする。

 しかしまたフィールドががら空きで手札は五枚。さっきのターンのホープ・オブ・フィフスとHEROの遺産を使った直後の焼き直しのような状態になっていた。

 だが状況はそれよりも悪い。準の場には伏せカードが一枚、さらに彼の最大の切り札である光と闇の竜はステータスを確認する限りあと三回、全てのモンスター効果・魔法・罠の発動を封じてくる。

 

「(……ん?…)…なあ万丈目。ちょっと確認したいんだけどさ」

 

「なんだ?」

 

 そう考えた十代はふと気になった事を思いついて準に尋ねる。

 

「光と闇の竜の無効化効果って、あんたがモンスター効果・魔法・罠を発動した時にも強制発動してその発動を無効にするのか?」

 

「そうだ」

 

「そっか。サンキュ」

 

 気になった事の確認も終えて十代は五枚の手札を改めて確認する。

 

(O-オーバーソウル、ヒーロー・マスク、スパークマン、戦士の生還、ドレインシールド……スパークマンを出して、三枚の魔法カードを全部発動すればゴリ押しで光と闇の竜の攻撃力を800まで下げられる。そうしたらスパークマンの攻撃が通れば俺の勝ちだけど……)

 

 速攻魔法があるわけでもないのでさっきのターンの準のように囮のカードにチェーン発動する事で速攻魔法を通すことは不可能。

 十代はいっその事単純に魔法カードのゴリ押しで光と闇の竜のステータスを限界まで下げて突破を試みようとするが、そこで彼の場の伏せカードに目を見やる。

 

(あの伏せカードがそれを読んでの防御系のカードだったらヤバいよなぁ……)

 

 エースカードである以上、準はその効果をしっかり把握して戦術を組んでいるはず。そう考えた十代はまた少し思考し、意を決したように頷いた。

 

「俺は[E・HERO スパークマン]を召喚!!」

 E・HERO スパークマン 攻撃力:1600

 

 まず召喚するのは彼の手札唯一のモンスターカード。さらに続けて十代は手札を取る。

 

「魔法カード[ヒーロー・マスク]を発動! デッキからE・HERO一体を墓地へ送り、自分フィールドの表側表示モンスター一体はエンドフェイズまで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う!」

 

「光と闇の竜の効果を発動。その発動を無効にする」

 光と闇の竜 攻撃力:2300→1800 守備力:1900→1400

 

「なら続けて[O-オーバーソウル]を発動! 自分の墓地の通常モンスターのE・HERO一体を特殊召喚する! 俺はフェザーマンを復活させる!」

 

「その発動も光と闇の竜の効果で無効となる」

 光と闇の竜 攻撃力:1800→1300 守備力:1400→900

 

 十代の発動した二枚の魔法カードの発動が、光と闇の竜のステータスと引き換えに無効にされる。

 しかしこれで光と闇の竜の攻撃力はスパークマンを下回った。

 

(ここは戦士の生還を温存してスパークマンで攻撃して光と闇の竜を破壊! 次のターンの攻撃はドレインシールドでしのいで、その次の俺のターン、戦士の生還で墓地のエッジマンを手札に加えてネクロダークマンの効果で生贄無しで召喚。そのままスパークマンとエッジマンの連続攻撃で決める! 俺はそれに賭ける!)

 

 ここで攻撃を仕掛ければ準の伏せカードは光と闇の竜によって邪魔され発動できない。光と闇の竜さえ破壊すれば魔法・罠の発動が再びできるようになるので、次のターンの防御とさらに次のターンに場を整えての一斉攻撃。そう作戦を決めた十代はスパークマンに目を向けた。

 

「バトルだ! スパークマンで光と闇の竜を攻撃! スパークフラッシュ!!」

 

 十代の指示を受けたスパークマンが気合いを込めてジャンプし、右手を光と闇の竜に向けるとその手の平から電撃を放射して攻撃。それを見た準がふっと笑った。

 

「その()()()()()にトラップ発動、永続罠[竜魂の城]。ただし、この発動は光と闇の竜の効果によって無効となる」

 光と闇の竜 攻撃力:1300→800 守備力:900→400

 

「え!?」

 

 何故か準が自ら光と闇の竜の効果を発動し、弱体化を行う。それに十代が驚いたように声を上げると準もクククと喉を鳴らすように笑った。

 

「俺の伏せカードを警戒して敢えて魔法カードの発動を二回に抑えたのか、単純にもう無効化に使える囮のカードがないのかは知らないが。悪くない読みだった」

 

「お、おう……」

 

「だが読みが一つ抜けていたようだな……俺は墓地の[暗黒騎士ガイアオリジン]を除外して効果を発動する!」

 

「あれは!? 最初のターン天翔の竜騎士ガイアの融合素材になったモンスター!?」

 

「そしてこれにチェーンして光と闇の竜の効果が発動するが、効果処理時に攻撃力・守備力を下げる事ができないため効果は不発となる」

 

 準がデュエルディスクを構えて宣言すると同時、その墓地ゾーンから一枚のモンスターカードが吐き出され、そのカードを見た十代が驚きの声を上げる中で準は律儀に光と闇の竜の効果が不発になるとはいえ発動する旨を説明した。

 

「暗黒騎士ガイアオリジンの効果により、元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つフィールドのモンスター一体の攻撃力は元々の数値になる!」

 

「……って、つまり!?」

 

「そう! 光と闇の竜の攻撃力は元に戻る! 守備力は戻らないため無効化効果は使えないままだが――攻撃モンスターを返り討ちにするには充分だ」

 光と闇の竜 攻撃力:800→2800

 

 若き騎士がその若き活力に満ちた声を上げ、それを受けた光と闇の竜が力を取り戻していく。

 

「まさか……最初のターンからここまで計算してたのか……!?」

 

 最初のターンに切り込み役のように出てきた天翔の竜騎士ガイアの融合素材となったモンスター。それが最大の切り札に力を取り戻させるキーカードとしてここで活躍する。

 まるで狙ったかのような戦術に十代は歯噛みする。これがオベリスクブルー、デュエルアカデミア高等部、自分と同じ新入生のトップなのかと。

 

「迎撃しろ! 光と闇の竜!! シャイニングブレス!!!」

 

 攻撃力だけとはいえ力を取り戻した光と闇の竜が、その口から光属性のブレスを吐き出してスパークマンを迎撃。そのブレスが彼が放射した電撃ごとスパークマンを飲み込んだ。

 

「おもしれえ……」LP100→0

 

 そのブレスの余波に巻き込まれる中、十代は笑っていたのだった。

 

 

 

 

 

 デュエル終了後、そろそろ寮で新入生歓迎会が始まるからと解散する事になった面々。

 オシリスレッドである二人はオベリスクブルー男子寮と女子寮と全く別方向のため二人だけで帰っていた。

 

「……」

 

「ア、アニキ、元気出して……」

 

 帰る間ずっと無言の十代を心配したか、眼鏡の少年が元気づけるように十代に声をかける。

 

「おもしれえ……」

 

 すると十代が突然、楽しそうに笑いながら呟く。

 

「え?」

 

「あれが俺達と同じ一年生で、中学校の頃はトップだった奴って事だろ。だったらまずはあいつを超える! いい目標が出来たってもんだぜ!」

 

 翔の呆けた声に対して十代は爽やかな笑みを浮かべ、デュエルアカデミアでの目標を定めると突然走り出した。

 

「行こうぜ翔! 歓迎会が始まっちまう!」

 

「あ、ま、待ってよアニキ―!」

 

 そして自分を置いていかんばかりの勢いで走り出した十代を、眼鏡の少年――翔は慌てて追いかけ始めるのだった。

 

 一方オベリスクブルー男子寮と女子寮のメンバーは帰り道が途中まで一緒のため、別れる場所までは一緒に帰っていた。

 

「それで、どうかしら万丈目君? クロノス教諭を倒した受験生君の実力は」

 

「一度戦っただけで言い切れるものでもないが、デュエルの実力だけならばオシリスレッドどころではない。ラーイエローでもトップクラス、下手をすればオベリスクブルーでも通用するレベルだろうな。次の月一試験、筆記試験で落第レベルの結果を出さない限り、そして実技試験で今回や入学試験でクロノス教諭を倒した実力を発揮できればラーイエローへの昇格もおかしな話ではない」

 

 唐突に尋ねてくる明日香に対し、準は腕を組みながら所感を述べる。しかしそれを述べ終えた後で首を横に振った。

 

「だが、実技試験の受験番号110番、即ち筆記試験110位の成績が筆記試験の日に調子を崩していて悪い成績になってしまったなどという事がない、本人が実力を発揮した結果だったとすれば。筆記への意識がそのままなら万年ラーイエローかオシリスレッドとラーイエローを行ったり来たりというレベルが関の山だろうな。デュエルの実力一点突破で上がれる程オベリスクブルーは甘くない」

 

「ふぅん……筆記も実力をつければオベリスクブルー行きも可能ってとこかしら?」

 

「夢ではないだろう。デュエルの実力なら既に充分だ」

 

「へぇ……」

 

 準にそこまで言わせるくらいに実力があると認められたデュエリスト、遊城十代。

 

(面白いかも……)

 

 彼についての所感を聞いた明日香は不敵に笑う。

 

 

 

 

 

「……というよりもだ。なんなんだあいつは」

 

 すると準が突然、腕を組んだまま、まるで愚痴るように話し出した。

 

「ワイルドジャギーマンを倒した辺りで正直俺は内心勝利を確信したぞ。だというのにあいつ、次のターンで手札ゼロ、フィールド空の状態から手札を五枚に増やすまでドローカードを引き当て続けて逆にこっちを追い詰めるなんてどんな引きの強さだ。どれだけ盤面を整えてもドロー一つでひっくり返されるなどやってられんぞ」

 

「え、えーと……」

 

 準の愚痴に明日香の頬が引きつる。

 

「……正直、引きの強さなら万丈目さんも大概なんだよな」

 

「自分の事だから自覚ないんだろ……」

 

 ぶつくさと愚痴る準の後ろで、取巻と慕谷が顔を寄せ合ってぼそぼそと喋り合う。彰子もフォロー出来ないのか首を軽く傾けながら愛想笑いを返すのがやっと、百合もにゃははと笑っているのだった。




 実は本作の準のデッキ、もちろんパーツはいくつか強化されてますけど根本的に「ドラゴン族と戦士族(主に暗黒騎士ガイア系列)を主体とした種族混合」って部分は幼少期からほとんど変わっていないという設定です。なんならワイバーンの戦士も未だに投入してて詰めの部分で相手が隙を見せてくればドラゴンに乗るワイバーンで奇襲を仕掛けます……もちろん種族の比率は違うけど、こいつデッキの種族構成ほとんど城之内だな……?(切り札はドラゴン族と戦士族主体、後は別の種族をまばらに投入)

 さて今回は準VS十代。一進一退の攻防って感じにしつつ、まあ普通に準に勝たせました。ただ途中で「あれ?これちょっと展開いじればホープ・オブ・フィフスの三枚ドローいけなくね?」とか思った結果、ちょっと場を無理矢理荒らしてでもやらせましたwやっぱやらせたいじゃん!!(なおそのため準にはちょっと手札事故というか「これやったら逆転のチャンスにもなるけど逆にミスったら即死じゃね?」みたいな状況にさせましたw)
 そして今回のデュエル、漫画版GXで使用されていた「自分も相手も最大三枚出来る」トンデモドローカード[壺の中の魔術書]を止むを得ず解禁しました。いやぶっちゃけ単純にデュエル書くだけなら別に使わなくてもいいんですけどね。なんか……盛り上がらねえな……盛り上げるには双方手札足りねえな……って思ったので使わせました。(笑)
 まあこれでも最初に思いついていた展開
 ・十代が複数のカードを使って光と闇の竜を最大限弱体化させて本命のカードを通そうとしたけど、準が無効化効果が使えなくなるギリギリで十代のカード発動にチェーンして[シールドスピア]を発動し、光と闇の竜の攻撃力・守備力をアップさせて無効化回数を増やす事で十代の本命のカードすら封殺する
 ・封殺した返しのターンで巨竜の羽ばたきで光と闇の竜をバウンスしつつ十代の魔法・罠を全破壊及び準は竜魂の城を巻き込んで破壊する事で破壊時効果で除外されている輪廻竜サンサーラを特殊召喚→サンサーラを二体分の生贄にして再び光と闇の竜を出して締める
 っていう
 ・強化カードとしてはどっちつかずなシールドスピアを、攻撃力・守備力を同時にアップさせられる=相手のモンスター効果・魔法・罠発動にチェーンする前提とはいえ光と闇の竜の効果無効化回数を一回増やせる点に着目したという形で準の着眼点を表現する
 ・十代のバックを破壊しつつ光と闇の竜をステータスリセット状態で出すことで勝利目前でも最後まで油断しない準の隙の無さを見せる
 展開は没になりましたけども……うん、流石にんなもんカードがいくらあっても足りねえわw(実は巨竜の羽ばたきをダイヤモンド・ドラゴンに使ったり竜魂の城をわざと光と闇の竜の効果で無効にしてたのはその展開を思いついていた名残り)

 それでは今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。


 PS)螺旋槍殺の処理について間違いを指摘されたのでいくつかデュエル内容の修正を行いました。
 多分これで矛盾はないはず……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。