遊戯王GX~もしも万丈目兄弟の仲が良かったら~   作:カイナ

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第八話 ダイナソーVSインセクト

「アタシの先攻、ドロー!」

 

 デュエルの幕が上がると共に先攻を取った桐香が勢いよくカードをドローし、合計六枚になった手札をチラリと見るとニヤリと笑みを見せる。

 

「私はモンスターをセット! カードを二枚セットしてターンエンドよ!」

 

 通常召喚権を使ってモンスターをセットし、五つまで使える魔法・罠ゾーンの二つを使って魔法・罠カードをセットして相手の出方を伺う。

 相手に情報を渡さずに守りを固める、先攻ワンターン目としては無難な一手と準は分析した。

 

「わ、私のターンです。ドロー!」

 

 ターンを渡された彰子もまずはカードをドローし、六枚の手札を確認。

 

「私は[ワイルド・ラプター]を攻撃表示で召喚!」

 ワイルド・ラプター 攻撃力:1500

 

 彰子の場に出現するのは下級としては攻撃力はそこそこというか平均よりちょっと低い程度の通常モンスター。その姿に翔が困惑を見せた。

 

「こ、攻撃力1500? しかも通常モンスター? 効果モンスターならあのステータスも分かるけど……」

 

「フン! 何言ってるのよオシリスレッドの変態男! きっと少しばかり引きが悪かっただけよ! けどここからリカバリーしてくるに決まってるわ!」

 

「……いや」

 

 翔の言葉にジュンコが強気に言い返す。変態男という言葉が気にかかるが、準は少し言いにくそうに声を漏らした。

 

「宇佐美のデッキの下級モンスターは、あれがまだマシな方だ」

 

「「「……え?」」」

 

 その言葉に言い争いをしていた翔とジュンコだけではなく、ももえまで困惑の声を準に向けた。

 攻撃力1500の通常モンスター、それがまだマシと言われれば無理もないだろう。すると百合が後方理解者面しているような腕組みをしながらうんうんと頷いた。

 

「うむ。初手[トラコドン]じゃないだけ引きは良いの」

 

「「「ト、トラコドン……」」」

 

 レベル3、攻撃力1300の通常モンスター。それを採用しているらしいデッキ構成に翔達は困惑気味に彰子を見るのだった。

 

「永続魔法[補給部隊]を発動します。このカードがある限り一ターンに一度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動し、私はデッキから一枚ドローします。バトルです! ワイルド・ラプターで守備モンスターを攻撃! ワイルド・バイト!」

 

 モンスターがやられた時の保険としてドローが出来るようになる永続魔法を発動し、彰子はバトルに入って攻撃を宣言。それを受けたワイルド・ラプターが桐香の場の守備モンスターに突進、出現したモンスターをその牙で噛み砕き破壊する。しかし桐香は痛くも痒くもないという様子でニヤリと笑った。

 

「戦闘によって破壊され墓地に送られた[ドラゴンフライ]の効果発動! 自分のデッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター一体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる! 来なさい、[プレイング・マンティス]!!」

 プレイング・マンティス 攻撃力:1500

 

 桐香の場に新たにカマキリのような昆虫のモンスターが出現。その攻撃力はワイルド・ラプターに並んでおり、彰子は「うぅ」と僅かに声を漏らす。

 

「リ、リバースカードを二枚セットしてターンを終了します」

 

「アタシのターン、ドロー!」

 

 モンスターを撃破したものの後続を呼び出されたため実質被害はゼロ、むしろ目当てのモンスターを呼び出された分不利になったと言ってもいい。

 彰子は先のターンの桐香と同じく魔法・罠ゾーンにカードをセットしてターンエンドを宣言、続けて桐香がカードをドローする。

 

「スタンバイフェイズにプレイング・マンティスの効果発動! アタシのフィールドに[ベビーカマキリトークン]一体を特殊召喚する! そしてメインフェイズに入り、[フライングマンティス]を召喚!」

 ベビーカマキリトークン 攻撃力:500

 フライングマンティス 攻撃力:1500

 

 プレイング・マンティスの効果と通常召喚、一気に二体のモンスターが出現するもその攻撃力は良くてワイルド・ラプターと同等。

 

「フライングマンティスでワイルド・ラプターと相討ちして、プレイング・マンティスとベビーカマキリトークンでダイレクトアタック……ってとこッスかね? っていうかあの子も通常モンスターで攻撃力1500……」

 

 翔がこの先の動きを自分なりに考えて推測した後、これまた攻撃力1500程度の通常モンスターを出している事にちょっと反応に困る。

 

「うっわ、これまさか加間さんもうあのコンボ決まる……?」

「加間さんの引きが良いのか、宇佐美さんの運が悪いのか……」

 

「え?」

 

 しかしその隣でジュンコとももえが困惑した様子で呟いており、それを聞いた翔が困惑顔で二人を見る。

 

「バトル! ベビーカマキリトークンでワイルド・ラプターに攻撃!」

 

「え、えっ!?」

 

 相討ちになるとはいえフライングマンティスというモンスターがいたにもかかわらず攻撃力で劣るベビーカマキリトークンで攻撃を狙う事に慌てる彰子だが、それを見た桐香がニヤリと笑った。

 

「自爆特攻と思った? 残念だったわね、リバースカードオープン! 永続罠[暴走闘君]! このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、攻撃表示のトークンは、攻撃力が1000アップし、戦闘では破壊されない!」

 ベビーカマキリトークン 攻撃力:500→1500

 

「えぇっ!?」

 

 一気にベビーカマキリトークンの攻撃力が数値的には三倍にまで引き上がる。しかも戦闘破壊耐性が追加され、彰子は困惑の間にワイルド・ラプターが小さなベビーカマキリトークンになすすべなく斬り倒されるのを見ているしか出来なかった。

 

「で、でも、補給部隊の効果でカードを一枚ドローします……」

 

「構わないわよ。続けてプレイング・マンティスとフライングマンティスでダイレクトアタック!!」

 

「きゃああぁぁぁっ!!」LP4000→1000

 

 彰子はドローこそ出来たが追撃の二体のカマキリによるカマの斬撃を受け、一気にライフが大きく削られる。

 

「うぅっ、リ、リバースカードオープン、[ダメージ・ゲート]! 自分が戦闘ダメージを受けた時に発動でき、その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ自分の墓地のモンスター一体を選択して特殊召喚します。私が受けた戦闘ダメージは1500、なので攻撃力1500の[ワイルド・ラプター]を特殊召喚します!」

 ワイルド・ラプター 攻撃力:1500

 

「フン、ダメージを受けてまで残すのがそんなノーマルモンスターなんてね。私はメインフェイズ2に入るわ」

 

 斬り倒されたものと同一のモンスターを呼び出す彰子。それに対して桐香は嫌味な笑みを浮かべて答えた後、メインフェイズ2への移行を宣言し、手札の一枚――このターンにドローしたカードを魔法・罠ゾーンに差し込んだ。

 

「永続魔法発動[フィールドバリア]! このカードがフィールド上に存在する限り、お互いにフィールド魔法カードを破壊できず、フィールド魔法カードの発動もできない!」

 

「……え?」

 

 桐香の発動したカードを見た彰子の戸惑いの声と共に、観客からも困惑からのざわめきが走る。

 フィールドバリア、そのカード名からも想像がつくようにフィールド魔法を守る役目がメインとなるカード。しかし当の桐香の場にフィールド魔法は存在しない。

 

「これじゃあただフィールド魔法の発動を邪魔してるだけ…………あぁっ!?」

 

 そう呟いた直後、彰子は気づいたように自分のデッキを見て慌てだす。

 

「ど、どうしたんスか宇佐美さん!?」

 

「うえー、性格悪いのぉあやつ……」

 

「え?」

 

 慌てだした彰子を見た翔が驚いたように声をかけ、百合がげんなりとした顔でぼやく。翔がそのぼやきに反応すると百合は彼に説明するように話し出した。

 

「ウサミンのデッキ、フュージョン・ゲートっていうフィールド魔法による連続融合が持ち味なのよ。それで恐竜族を除外して、ディノインフィニティっていう除外されている恐竜族の数だけ攻撃力を上げていくモンスターでフィニッシュに持っていくのが得意パターン。だけど、フィールドバリアは()()()()()()()()()()()()()も妨害する」

 

「……そ、そっか! あれがある限り、そのフュージョン・ゲートが発動できないから戦術が根本的に……」

 

「加間さんがフィールド魔法を使ってるとこなんて見た事ないわよ……」

 

「ええ、絶対あてつけですわ……」

 

 百合の説明を受けた翔が理解したように結論を出すとジュンコとももえが頭を抱えた。

 

「オーホホホ! あてつけなんて何の事? アタシはただ自分がフィールド魔法を使わないけど、相手が強力なフィールド魔法を使ってくることを想定したメタカードとして投入しているだけよ! リバースカードを一枚セットしてターンエンド!」

 

 ももえ達のぼやきが聞こえたのか、しかし桐香は平然と笑いながらそう答えてカードをセットしターンを終える。周囲からの「白々しい」「フィールド魔法対策なら普通にサイクロンとか砂塵の大竜巻とかの魔法・罠破壊カードの方が汎用性あるだろ」という冷たい視線はガン無視だった。

 

(加間の言う通り、プレイング・マンティスの攻撃によるダメージに合わせてダメージ・ゲートを発動し、フライングマンティスの攻撃を牽制するのではなく、ダメージを増やしてでもワイルド・ラプターを場に残すのを選んだこと。そして得意技であるフュージョン・ゲートを封じられたこと……これがどう出るか)

 

 そんな中、準も彼女達のプレイングがこの後の行動にどう繋がるかと見定めるような目を向けていた。

 

「わ、私のターン、ドロー!……私は魔法カード[馬の骨の対価]を発動します。フィールドの通常モンスター[ワイルド・ラプター]を墓地に送り、デッキからカードを二枚ドローします」

 

 このターンの初めの行動として行うのは、準もよく使う通常モンスターを利用したドロー加速。それによって五枚に増えた手札を彰子は念入りに確認した後、彼女の場の伏せカードが翻る。

 

「私は永続罠[化石発掘]を発動します。手札を一枚捨て、自分の墓地の恐竜族モンスター一体を特殊召喚します。私は墓地から[屍を貪る竜]を特殊召喚!」

 屍を貪る竜 攻撃力:1600

 

「出たのじゃ! ウサミンの持つ下級モンスターではトップレベルの攻撃力のモンスターが!」

 

「「「あれが!?」」」

 

 彰子の出した通常モンスターを見た百合がぐっと拳を握ってガッツポーズと共に合いの手を入れると、翔、ジュンコ、ももえの三人が驚愕の声を上げる。攻撃力がワイルド・ラプターより100上がっただけでその評価なら仕方がないが。

 しかし化石発掘の特徴は「手札コストにした恐竜族モンスターも蘇生対象に出来る」ことであり、それを利用して上級モンスターを出すのが定石にも関わらず彼女が出したのは所詮攻撃力そこそこの下級モンスター。そこまで手がないのかと鼻で笑う桐香に対し、彰子はプレイングで答えるとばかりに手札を取った。

 

「さらに永続魔法[一族の結束]を発動します。自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。私の墓地のモンスターは恐竜族の[ワイルド・ラプター]のみ、よって恐竜族である屍を貪る竜の攻撃力が800ポイントアップします!」

 屍を貪る竜 攻撃力:1600→2400

 

 一気に攻撃力が上級モンスターレベルにまでアップ。翔はもちろんこのデュエルの見学で分析班となっている生徒達も「おー!」と声を上げる。

 

「うーん、でもあの伏せカードがあれだったら……」

「厄介ですわよねぇ……」

 

 そんな中、ジュンコとももえがそう呟いていた。

 

「バ、バトルに入ります!」

 

「残念だったわね! リバースカードオープン!」

 

 彰子がバトルに入る事を宣言すると同時、桐香の場の伏せカードが翻る。

 

「永続罠[ガリトラップ-ピクシーの輪-]! 自分フィールド上にモンスターが表側攻撃表示で二体以上存在する場合、相手は攻撃力の一番低いモンスターを攻撃対象に選択する事ができない!」

 

「えっ!? 加間さんの場のモンスターは全部攻撃力1500……この場合は……」

 

「アンタはアタシの場のモンスターを攻撃対象に選べなくなる。つまり攻撃が封じられたってわけよ。どれだけ攻撃力を上げようと攻撃が出来なきゃ意味がないわね!」

 

 桐香の場の三体のカマキリが全て不思議な輪から発生した障壁に包まれ守られる。

 このコンボによって相手の攻撃を封じるため、攻撃力を強化値まで計算して厳選している。まさしくデッキ構築の時点で戦略を考えて組まれていると言って過言ではないだろう。

 

「うぅ……モンスターをセット、リバースカードを一枚セットしてターンを終了します……」

 

 そもそもこっちの地力が低いとはいえ、戦闘破壊耐性付与を利用して相討ちのところを一方的に戦闘破壊され、次は攻撃力を揃えたコンボを利用して攻撃そのものを封じられる。

 彰子は上手く戦えてないと思いつつ、カードを伏せてターンエンドを宣言した。

 

「くふふ。アンタが準様に似合わないって事が分かってきたかしら? アタシのターン、ドロー」

 

 意気消沈し始めた彰子を見た桐香はニヤニヤと笑いながらカードをドロー。これで手札は二枚、

 

「スタンバイフェイズにプレイング・マンティスの効果発動! ベビーカマキリトークンを特殊召喚! 当然暴走闘君の効果でパワーアップ!」

 ベビーカマキリトークン 攻撃力:500→1500

 

 しかも手札消費なしにモンスターが一体ずつ着実に増えていく。

 このままではボードアドバンテージに大きな差が出てくるのは時間の問題。それは分かるのか彰子は苦しそうな表情を見せており、その顔を見た翔がこちらも不安げな顔になる。

 

「で、でも、あのカードの効果で攻撃を封じるんなら攻撃力は揃えなきゃいけない。つまりあのカマキリ達の攻撃力はいいとこ1500、攻撃を封じられてても攻撃力2400になってる屍を貪る竜を超える事は出来ないから、このまま睨み合いになればいずれ宇佐美さんにチャンスが……」

 

「そう上手くいけばいいんだけどね……」

 

「宇佐美さんの残りライフはもう1000、もしあのカードがあれば致命傷に……いいえ、下手をすればそのまま負けるかも……」

 

「え?」

 

 面識ありと初対面ならまだ面識のある方を応援したいのが心情か、翔は彰子にまだチャンスがあると信じるが、ジュンコとももえは険しい顔になっていた。

 そして桐香が手札から一枚のカードを取った。

 

「さっさと終わらせてやるわ。魔法カード発動[トークン復活祭]! 自分フィールド上に存在するトークンを全て破壊し、この効果で破壊したトークンの数まで、フィールド上に存在するカードを破壊する! 私の場のトークンはベビーカマキリトークン二体! この二体を破壊し、二枚までフィールドに存在するカードを破壊する!」

 

「そ、そんな!?」

 

 ベビーカマキリトークンが不思議な光に包まれ、その効力によって興奮し始めたのか特攻体勢を取る。

 

(アイツの場のモンスターは二体、あとは補給部隊、一族の結束、化石発掘、そして伏せカードが一枚……)

 

 化石発掘は無視していいだろう。伏せカードこそ多少気になるが、それよりも優先すべきものがある。と、桐香は彼女の場のセットモンスターに目を向ける。

 彼女のデッキは攻撃力を揃える事によってガリトラップ-ピクシーの輪-により相手の攻撃をロックする事で防御を賄っている。つまりさっき翔が言っていた事だが、彼女が基準点としているプレイング・マンティスの攻撃力1500程度で並んでしまいやすく、ちょっとした壁モンスターが出てきただけで硬直状態になりやすい。だからこそ――

 

「(いつも通りモンスターを全滅させて物量で押し潰す!)私はアンタのモンスター二体を破壊する!」

 

 どうせ相手のライフは残り1000、ベビーカマキリトークンが全滅しても残るフライングマンティスとプレイング・マンティスのどちらかの攻撃が通れば終わり。いつも通り物量で押し潰せばいい。

 桐香はそう判断して破壊対象のカードを宣言、同時に興奮したベビーカマキリトークンが自分の身も顧みない特攻を仕掛けて彼女の場の二体のモンスターを粉砕。その際にフィールドに煙が巻き上がった。

 

「っ、うぅ……補給部隊の効果で一枚ドローします……そして……

 

 彰子の僅かな悲鳴と悪あがきのような声が漏れ聞こえる。これで彰子のモンスターは全滅、あとはゆっくり料理すればいい。

 

(所詮あんな庶民が準様に認められたのが何かの間違いだったのよ……)

 

 何も出来ないまま倒される憐れな庶民の絶望した顔を見てやろうと、桐香はニヤニヤと笑いながら煙が晴れるのを待つ。

 

「た……助かりましたぁ……」

 二頭を持つキング・レックス 攻撃力:1600→2400

 

「……はぁ!?

 

 そこには彼女を守るかのように、二つの頭を持つ恐竜が彼女の場に出現している姿があった。

 思わず桐香が大声を上げると、彰子はほっと一息ついた後、にこりと微笑みを向ける。

 

「私はセットモンスター[ベビケラサウルス]の効果を発動しました。このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動でき、デッキからレベル4以下の恐竜族モンスター一体を特殊召喚する。私はレベル4の[二頭を持つキング・レックス]を特殊召喚したんです」

 

「か、壁モンスターどころか効果破壊をトリガーにしたリクルーター!? ちぃ、アタシは[吸血ノミ]を召喚してターンエンドよ!」

 吸血ノミ 攻撃力:1500

 

 桐香は自分の読みが外れてこのターンで決める事が出来なくなった事に舌打ちを叩き、最後の手札、これまた攻撃力1500のモンスターを出して守りを固めながらターンを終えた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 ターンが移った彰子がカードをドロー、これで手札は三枚。

 

「……私はカードを一枚セットして、ターンエンドです」

 

 しかし彰子はその中の一枚を伏せるだけでターンを終了した。

 

「フフン、万策尽きたのかしら? アタシのターン、ドロー。スタンバイフェイズにベビーカマキリトークンを特殊召喚。言うまでもないけど暴走闘君でパワーアップよ。そしてメインフェイズに入って魔法カード[馬の骨の対価]を発動。吸血ノミを墓地に送って二枚ドローするわ」

 ベビーカマキリトークン 攻撃力:500→1500

 

 さっきのターンに召喚したモンスターを墓地に送ってドローを加速。とはいえそれでもまだモンスターは三体、ボードアドバンテージは圧倒的と言えるだろう。

 

「なんかあの二人、使ってるカード似てるッスね」

 

「ま、色々と限界はあるわけじゃよ」

 

 それを観戦する翔と百合がそんな事をぼやいていた。

 そんな事はさておき二枚のカードをドローした桐香は破顔。その内の一枚を手に取った。

 

「魔法カード発動[アリの増殖]! 自分フィールド上の昆虫族モンスター一体を生け贄に捧げて発動し、自分フィールド上に[兵隊アリトークン]を二体特殊召喚する! 私はフライングマンティスを生贄に捧げ、兵隊アリトークンを特殊召喚! 当然暴走闘君でパワーアップ!」

 兵隊アリトークン ×2 攻撃力:500→1500

 

 攻撃力1500のモンスターを生贄にしたはずなのに、同じく攻撃力1500でさらに戦闘破壊耐性持ちのモンスターが二体出てくる。

 まるで手品か何かを見ているようだなとぼぉっと思った翔はしかし首を横に振って気を取り直す。

 

「で、でも結局攻撃力1500なら、一族の結束の効果で攻撃力2400になってる二頭を持つキング・レックスは超えられないッス!」

 

 

「オーッホッホッホ! それが所詮オシリスレッド、そして庶民の浅知恵の限界! リバースカードオープン! 永続罠[DNA改造手術]! 種族を一つ宣言して発動し、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは宣言した種族になる! 私が宣言するのは昆虫族! さあ、そうなればどうなるか分かるわよね?」

 

「二頭を持つキング・レックスが昆虫族になった事で、一族の結束の効果を受けなくなっちゃう……」

 二頭を持つキング・レックス 攻撃力:2400→1600 種族:恐竜族→昆虫族

 

 

「また加間さんが使ってるとこ見た事ないカード……」

 

「あのデッキ、種族操作する利点ほとんどないはずですし、またあてつけでは……?」

 

「フュージョン・ゲート封じのフィールドバリア、一族の結束封じのDNA改造手術……露骨すぎじゃのお。そこまでウサミンが気に入らんか……?」

 

「万丈目君、これ流石にずるくない……?」

 

 ジュンコ、ももえ、百合がぼそぼそと喋り、翔も露骨すぎるくらいピンポイントに彰子の戦術を妨害する桐香の戦い方に嫌悪感があるのか準にぼやく。

 

「対策を取るなんて当然のことだ。ルールの範囲内である以上、加間を責める謂れはない」

 

 しかしその準は一切取り合う様子を見せず、むしろ相手の対策を取るのは当然でありルール違反を犯しているわけでもない以上は桐香を責めるのはお門違いと答えていた。

 

「フフ、これで二頭を持つキング・レックスの攻撃力は1600。でも最高攻撃力1500のアタシの昆虫達じゃあ超えられない……なんて都合のいい事思ってないわよね?」

 

 桐香はそう言うと、さっきドローした二枚のカードの内一枚、つまり最後の手札を、最後の魔法・罠ゾーンに差し込んだ。

 

「永続魔法[一族の結束]を発動!」

 

「!?」

 

「アタシの墓地のモンスターは全て昆虫族! よってアタシの昆虫達の攻撃力は800ポイントアップする!」

 プレイング・マンティス 攻撃力:1500→2300

 ベビーカマキリトークン 攻撃力:1500→2300

 兵隊アリトークン ×2 攻撃力:1500→2300

 

 それはついさっきまで宇佐美の場の恐竜達を強化していた強化カードであり、パワー不足である彼女のデッキを支えるある種のキーカード。

 それが宇佐美に牙を剥き、彼女の場の昆虫達に力を与えていた。

 

「これで終わりよ! バトル! ベビーカマキリトークンで二頭を持つキング・レックスを攻撃!」

 

 この攻撃が通り、二頭を持つキング・レックスが破壊されれば彰子を守るモンスターはない。

 

「トラップ発動[攻撃の無敵化]! このカードはバトルフェイズにのみ発動する事ができ、このバトルフェイズ中、私への戦闘ダメージを0にします!」

 

「けど二頭を持つキング・レックスは破壊される!」

 

「で、でも、二頭を持つキング・レックスが破壊された事で補給部隊の効果! デッキから一枚ドローします!」

 

「フン、往生際の悪い」

 

 ギリギリで持ちこたえながらカードをドローして希望を繋げる彰子。

 しかし場は圧倒的に不利、手札こそこれで三枚、次のドローフェイズのドローも合わせれば四枚になるが彼女の場にモンスターはいない。しかも彼女のキーカードである一族の結束はDNA改造手術で封じられ、切り札である融合モンスターを出すために採用しているフュージョン・ゲートもフィールドバリアがある以上発動も許されない。

 そして彼女の得意とする戦闘も、桐香のモンスターの攻撃力調整とガリトラップ-ピクシーの輪-のコンボによって封じられている。よしんばガリトラップ-ピクシーの輪-を除去したとしても暴走闘君がある限り彼女の場に三体いるモンスタートークンは強化され続け、戦闘破壊耐性によって戦闘破壊から守られる。

 

(さらにプレイング・マンティスには相手の攻撃宣言時、自分の魔法&罠ゾーンのカード一枚を墓地へ送る事でその相手モンスターを持ち主の手札に戻す効果がある。たとえ暴走闘君が除去され、相手がガリトラップ-ピクシーの輪-の呪縛を解いたと油断して攻撃してきたとしても、プレイング・マンティスの効果でバウンスして対処できる。私の防御コンボに隙はない……そう、アタシは強い……なのに……)

 

 桐香はそこで中等部の記憶を思い返す。

 

 彼女は加間グループの令嬢として生まれ育ち、デュエルモンスターズに出会ってデュエリストとして頂点に立つためデュエルアカデミア中等部へと入学。

 そこで彼女は万丈目準に出会った。万丈目グループの三男、社交界のパーティに出た時に会ったことはあるし、同い年として挨拶や会話くらいはこなした覚えがある相手。「万丈目グループはいずれデュエル界に進出するつもりだ」という噂は界隈には広まっており、彼はその先陣を切るためにデュエルアカデミアに入学し腕を磨いているのだと。

 

 それから同じ中等部で過ごしている中でいつの間にか、桐香は準に魅了されていた。何者も寄せ付けぬ圧倒的なパワー、それを支える洗練されたタクティクス。上流階級の生まれゆえの見事な立ち振る舞い。

 そんな彼と一緒にいたいと願った桐香は中等部一年の終わり頃、準にこう直談判したのだ。

 

「準様! 私をあなたの側に、右腕として置いてください! 加間グループの令嬢たる私と万丈目グループ御曹司であるあなたが共にいればそれだけで逆らうものなどいない圧倒的な力になる! そう、私がいれば、あんなあなたの力欲しさに下にいるだけの取り巻きなんて必要ありません!」

 

 桐香が語るのは準が中等部に入ってから出会ったという彼の取り巻き、取巻太陽と慕谷雷蔵。だが中等部の実技授業で行われたデュエルで見た二人の実力はお粗末なものだった。

 

「魔法カード発動[トークン復活祭]! 自分フィールド上に存在するトークンを全て破壊し、この効果で破壊したトークンの数まで、フィールド上に存在するカードを破壊する! 私の場のトークンはベビーカマキリトークン三体! この三体を破壊し、三枚までフィールドに存在するカードを破壊する!」

 

「まずい……」

 

「さらに[アリの増殖]を発動! 吸血ノミを生贄に兵隊アリトークンを二体特殊召喚! この二体も暴走闘君の効果で攻撃力がアップ! これで終わりよ! プレイング・マンティスと兵隊アリトークン二体でダイレクトアタック!」

 

「うわああぁぁぁっ!!」

 

 慕谷雷蔵は彼女の前に敗北した。

 

「魔法カード[アリの増殖]を発動! フライングマンティスを生贄に兵隊アリトークンを二体特殊召喚! 暴走闘君の効果でこの二体の攻撃力がアップ!」

 

「くっ!?」

 

「バトル! ベビーカマキリトークンでシャインエンジェルを攻撃!」

 

「くっ! だがシャインエンジェルの効果発動! このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた事で、デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター[Y-ドラゴン・ヘッド]を特殊召喚だ!」

 Y-ドラゴン・ヘッド 攻撃力:1500

 

「フン、それがどうしたのよ。二体の兵隊アリトークンで[Y-ドラゴン・ヘッド]と[Z-メタル・キャタピラー]を攻撃! 攻撃力は同等だけど、暴走闘君の効果で戦闘破壊耐性があるため破壊されるのはそっちだけ! これでトドメよ! プレイング・マンティスでダイレクトアタック!!」

 

「うわああぁぁぁっ!!」

 

 取巻太陽も彼女の前に敗北した。

 中等部に入ってから一年間の勝率は自分が圧倒的に上、後半になるにつれて負ける事も多くなってきたものの最終的な勝率は自分の方が上なのは分からない。その自分すら勝てない準との実力など比べるのもおこがましい。そんな奴らなど必要ない、と桐香は確信しての直談判の言葉。

 しかし、

 

「……あいつらの努力を軽んじるような奴、俺には必要ない」

 

 準はそう一蹴して桐香の前から去っていく。

 

「万丈目さん! 今日の加間とのデュエル見ててどうでしたか!?」

 

「Y-ドラゴン・ヘッドとZ-メタル・キャタピラーに繋ぐ手段としてシャインエンジェルを採用したのは悪くないだろう。だが戦闘を介する関係上バトルフェイズ中の特殊召喚になりやすく、相手ターンだと今回のように追撃でせっかく呼び出したモンスターが破壊される可能性やメインフェイズ2での効果破壊の的になる可能性、自分のターンのバトルフェイズで自爆特攻させたとしてもいざ融合召喚出来るのはメインフェイズ2になるため攻めとしては一歩遅れる。それにシャインエンジェルは天使族のため、当然機械族のサポートカードを使えないのは無視できない。その問題点をどうクリアするかだ」

 

「やっぱそうですよね……俺ちょっとデッキ構成考え直してみます」

 

「万丈目さん! 新しいコンボを思いついたのでちょっと見てもらいたいんですが!」

 

「分かった」

 

 その去っていく先で取巻や慕谷に声をかけられて相手をしている準の姿を桐香は見ている事しか出来なかった。

 それからも準は桐香と所謂ちょっとした友人程度の相手の交友はしていた。しかし理由もなく一緒にいる程親交を深めていたといえば彼女が必要ないと思っていた取巻と慕谷、あとは彼を慕っている後輩くらいだった。

 

(だというのに……)

 

 高等部に入学してから彼の交友関係に入ってきた女子、それが宇佐美彰子。

 曰く「彼が趣味で出場している校外のデュエル大会で戦った相手」「それをきっかけにデュエルアカデミア高等部に入学してはどうかと勧められる程の傑物」。

 

(所詮は中等部にも入れなかった庶民、そんな相手を準様が認めるなんて……)

 

 実際に戦ってみれば使っているモンスターは貧弱、自分の防御コンボが完璧であるとはいえまともに攻撃も通せず防戦一方。

 このままトークンを供給し続けボードアドバンテージを維持して押し潰す。中等部に入学してから三年間、そして高等部に入学してからも変わらずやっているいつものパターンで充分に倒せる。

 

「アンタみたいな所詮遊びでデュエルしてたようなヤツ如きを準様が認めたなんて何かの間違いなのよ! アタシはこれでターンエンド! とっととサレンダーしなさい!」

 

「ひっ……」

 

 吊り目を吊り上げて睨みつけ怒号を飛ばす桐香。今までしてきたデュエルでは感じもしなかった、もはや殺気にも似た圧力に彰子は怯み、思わず準に目を向ける。

 

「……」

 

 その準は腕を組み、静かに目を閉じ、俺は何も言わんとばかりに沈黙を守っていた。

 それをどう解釈したのか桐香はフンと鼻を鳴らす。

 

「どうよ! 準様もアンタを見限ったようね! やっぱり準様に相応しいのはアンタじゃなくてアタシなのよ!」

 

「そ、そんな、そんな事……」

 

 桐香の言葉を受けた彰子は怯み、身体を震わせる。

 

 ――お前は俺が実力を認めたデュエリストだ。ならば俺が認めたに相応しいカードの一枚でも受け取り、俺の力になってみせるという気概を見せてみろ

 

 その時、彰子の頭の中で一つの言葉が走る。

 それはデュエルアカデミア高等部に入学した時、万丈目グループから奨学金を借りている生徒への入学祝いとして送られたというカードを渡された時の準の言葉。

 

(そうだ。私、万丈目さんに力を認められて、ここにいる……)

 

 あのデュエル大会で準に出会わず、デュエルしていなければ、きっと今頃中学を卒業して実家の家業を手伝いながら、中学生の頃と同じように時々デュエル大会に出場して趣味でデュエルを楽しんでいただろう。きっとそれも家族と共に過ごしながら楽しくデュエルをしていた幸せな道だっただろう。しかし――

 

(万丈目さんに認めてもらって、それに相応しいってカードも貰ったんだもん……なら、私も万丈目さんの力になるって。万丈目さんの力になれるって! 証明しなきゃ!)

 

 ――ここ(デュエルアカデミア)に来た以上、その道はなくなった。

 それなら自分の力を認めてこの道を示してくれた準の力になるために、負けるわけにはいかない。そう己を鼓舞する彰子は闘志を取り戻していた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 状況は圧倒的、もはやこちらから戦いを挑む事すら許さない鉄壁の防御でありそれでいて毎ターン上級レベルのモンスターを安定供給して一方的に攻撃を仕掛けてくる攻防一体のコンボ。

 だがそのコンボには穴がある。そしてその穴を突き鉄壁の防御を崩すカードは自分のデッキにある。彰子はそれを引き当てんと気合いを入れてデッキからカードを引き抜いた。

 

(来た!)

 

 そのドローカードこそ彼女が望むキーカード。彰子はそれをモンスターゾーンへと置いた。

 

「私は[ヘルカイトプテラ]を攻撃表示で召喚!」

 ヘルカイトプテラ 攻撃力:1400 種族:恐竜族→昆虫族

 

 

「ヘルカイトプテラ!? そんなカードウサミン持ってたっけ!?」

 

「……フ、この土壇場でそれを引き当てたか。流石だな」

 

 百合はデュエルアカデミア入学前からの親友である自分ですら知らない彰子のカードに仰天、その驚愕の言葉を聞きながら、準は静かに笑って呟いていた。

 

「ヘルカイトプテラの効果発動! 一ターンに一度自分メインフェイズに発動でき、デッキから[融合]一枚を手札に加えます! そして[融合]を発動! 私はフィールドのヘルカイトプテラと手札の恐竜族[トラコドン]を融合! 来て、[ヘルホーンドザウルス]!!」

 ヘルホーンドザウルス 攻撃力:2000 種族:恐竜族→昆虫族

 

 

「融合!? さらにヘルホーンドザウルス!? なにあれ!?」

 

 彰子の場に次々と出てくるカードは百合が彼女のデッキに入っていないと認識していたカード達。混乱する百合をしり目に彰子のコンボは続く。

 

「ヘルホーンドザウルスの効果を発動します! このカードが融合召喚した場合に発動でき、自分のデッキ・墓地からフィールド魔法カード一枚を自分のフィールドゾーンに表側表示で置く!」

 

「バカね、忘れたの!? フィールドバリアがある限り、フィールド魔法は発動できない!」

 

「いいえ、これは発動ではなく置く効果! よってフィールドバリアの障害は受けつけません! 私はデッキから[フュージョン・ゲート]を設置!」

 

「っ!?」

 

 ヘルホーンドザウルスの咆哮と共に空間が変化する。そこに展開されるのはモンスターを融合する神秘のエネルギーに満ちたフィールド。

 

「魔法カード[闇の量産工場]を発動! 墓地の通常モンスター[二頭を持つキング・レックス]と[屍を貪る竜]を手札に加えます。そしてフュージョン・ゲートの効果発動! 自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外して、その融合モンスター一体を融合召します。私は二頭を持つキング・レックスと屍を貪る竜を除外融合し、[ブラキオレイドス]を融合召喚!」

 ブラキオレイドス 攻撃力:2200 種族:恐竜族→昆虫族

 

 彰子はこのデュエルで封じられたと思われていたフュージョン・ゲートを用い、彼女の得意とする融合召喚を行ってみせる。しかしそれを見た桐香はフンと鼻を鳴らして余裕な様子を見せていた。

 

「フン、そんなモンスターを並べたところで。アンタのモンスターの攻撃力は、もはや一族の結束の力を得たアタシの昆虫達の敵じゃない!」

 

「いいえ、これで! 魔法カード発動[受け継がれる力]! 自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送り、自分フィールド上のモンスター一体の攻撃力は発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送ったモンスターカードの攻撃力分アップします! 私はブラキオレイドスを墓地に送り、ヘルホーンドザウルスの攻撃力をその攻撃力2200ポイントアップ! ヘルホーンドザウルスに力を託して、ブラキオレイドス!」

 ヘルホーンドザウルス 攻撃力:2000→4200

 

 彼女のエースであるブラキオレイドスが光の粒子となって消滅。しかしその粒子がヘルホーンドザウルスを包み込み、ブラキオレイドスの力を受け継がせる。それによって一気にヘルホーンドザウルスの攻撃力が跳ね上がった。

 

「で、でも、いくら攻撃力を高くしてもガリトラップ-ピクシーの輪-の効果で攻撃出来ないんじゃ……」

 

「いや、ガリトラップ-ピクシーの輪―。あのロックコンボには弱点がある。その一つに気づいたか」

 

 翔の不安げな呟きに準はニヤリと笑って答える。

 

「ヘルホーンドザウルスは特殊召喚したターン、直接攻撃できます!」

 

 

「そっか。ガリトラップ-ピクシーの輪―は、モンスターへの攻撃対象の選択を制限するカード。直接攻撃には対応しない!」

 

「この攻撃が通れば宇佐美さんの勝利ですわ!」

 

 攻撃力4200のダイレクトアタック。掟破りにも程がある上にこれが通れば逆転勝利、観戦しているジュンコとももえ始め分析組が一気に盛り上がった。

 

「バトルです! ヘルホーンドザウルスでダイレクトアタック!!」

 

「……ダイレクトアタック、つまり()()()()()()わね?」

 

 彰子の言葉を聞いたその時、桐香の口角が持ち上がった。

 

「この瞬間! プレイング・マンティスの効果発動! 一ターンに一度、相手モンスターの攻撃宣言時に自分の魔法&罠ゾーンのカード一枚を墓地へ送って発動でき、その相手モンスターを持ち主の手札に戻す! 私はフィールドバリアを墓地に送ってこの効果を発動! これでヘルホーンドザウルスには手札に、いえ、融合デッキに戻ってもらうわ!」

 

 もはや妨害の役には立たず、むしろフュージョン・ゲートの破壊を防ぎ相手に塩を送るだけのフィールドバリアが消滅すると共にフィールドに渦が巻き、ヘルホーンドザウルス目掛けて飛んでいく。それに巻き込まれればヘルホーンドザウルスはひとたまりもないだろう。

 

「も、もう終わりッスー!?」

 

 翔が頭を抱えて悲鳴を上げる。しかし彰子の顔は諦めていない意思を見せており、同時に彼女の伏せカードが翻る。

 

「リバースカードオープン! [ブレイクスルー・スキル]! 相手フィールドの効果モンスター一体の効果をターン終了時まで無効にする! これでプレイング・マンティスの効果を無効にします!」

 

「っ!?」

 

 翻ったカードから光が放たれると共にフィールドに発生した渦が消え去っていく。これで桐香を守るものはない。

 飛行するヘルホーンドザウルスが地を這うカマキリ達を飛び越えて桐香の頭上に接近、その口から超音波のようなブレスが放たれる。

 

「きゃあああぁぁぁぁっ!!!」LP4000→0

 

 そのブレスが一発で桐香のライフを削り切り、このデュエルを終わらせたのだった。

 

「そ、そんな、馬鹿な……あり得ない……」

 

 桐香はガクリと膝をつき、まるで自分の敗北が信じられないといわんばかりの顔を見せる。

 

「いいデュエルだった」

 

 すると準がいつの間にかデュエルフィールドに上がり、二人のデュエルをまずは賞賛する。

 

「万丈目さん……」

 

「流石だ、宇佐美。兄さん達が、そして俺が託したカードを使いこなす様、しっかりと見せてもらった。今までの戦い方に固執せず、新たな戦術も取り入れたその努力。見事と言わせてもらおう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「だが、やはりそろそろ既存の恐竜族モンスターだけだと力不足が目立ってくる頃合いだ。デュエルアカデミアでは授業の出席や授業態度が評価されればDPのボーナス付与が入る。それで新たなカードを入手し、デッキを強化しろ。そうでなければ今回のような()()でもない限り、こんなラッキーはないだろう」

 

「ら、らっきー?」

 

「ああ。今回のお前の勝利は、無論お前の実力もあるが、それより大きな要因がある」

 

 準は宇佐美に優しく評価しつつも厳しい批評も行い、桐香の方を見る。

 

「桐香、お前の敗因の大きな要因、それは――宇佐美を侮った事だ」

 

「あ、侮ったなんて、そんな!? アタシはこんな女が準様に認められたなんておかしいと証明しようとしただけです!」

 

 準の評価が気に入らなかったのか、桐香は立ち上がると声を上げて準に抗議。しかし準はフンと鼻を鳴らした。

 

「フィールドバリアとDNA改造手術。もっともらしい事を言っていたが、宇佐美の戦術を妨害する以上のアドバンテージをお前に与えていたとは到底思えん。この二枚に使ったリソースをもっと上手く使えていれば戦術にも幅は広がっただろう。その二枚分のリソースがなくても宇佐美に勝てるとお前が宇佐美を侮っていた証拠だ。そもそも対策としても範囲が狭すぎて実戦的ではないだろ」

 

「うぐ……」

 

「さらに言えばお前の戦術は中等部の頃からワンパターンだ。プレイング・マンティスを出してベビーカマキリトークンを増やし、暴走闘君で強化して叩く。攻撃はガリトラップ-ピクシーの輪―で防ぎ、硬直状態になればトークン復活祭で突破。完成しているといえば聞こえがいいが、これ以外の戦術がほとんどない」

 

 

「まあ、初見だと対応に戸惑うしハマったら厄介だけど。俺ならXY-ドラゴン・キャノンでガリトラップや暴走闘君を破壊するとか、硬直状態になりやすいから手札増やしながらXYZに繋げて纏めて破壊とか、トークン復活祭も要は効果破壊だからこっちも効果破壊耐性持たせるとか、戦術に慣れさえすればやりようはあったしな……」

 

 準の言葉を聞いた取巻がぼやき、心当たりがあるのか桐香はぐぬぬと唸る。

 

「だが、今回のデュエルはいいきっかけになったはずだ」

 

 しかし準は構わずに話を続ける。

 

「一族の結束。あれをお前がデッキに入れていたのは見たことがない、おそらくあれも宇佐美が使っているのを見て意趣返しにでも入れたのだろう? だがデッキのモンスターを昆虫族で統一し、キーカードであるプレイング・マンティスに少しでも早く繋げるために昆虫族リクルーターを多数採用、つまり墓地に昆虫族が溜まりやすくなおかつベビーカマキリトークンを並べやすいお前のデッキとは相性がいいはずだ。あれと暴走闘君を組み合わせれば毎ターン攻撃力2300戦闘破壊耐性持ちトークンが生み出されるなど、相手からすればたまったものではないだろう」

 

「あ……」

 

「あとはモンスターの永続強化は一つ計算を間違えればガリトラップ-ピクシーの輪―の防御コンボを破綻させかねないが、それなら一騎加勢のような自分のターンだけ続く程度の一時的な強化や、逆に相手を弱体化させるカードを使えば戦闘破壊もしやすくなる。トークン復活祭はモンスタートークンを強制的に全て消費するから、モンスターの除去までそれに頼るよりはトークンの強化や相手モンスターを弱体化させての戦闘破壊を狙った方がボードアドバンテージも維持しやすいだろう」

 

 準はそうすらすらと桐香のデッキについて所感を述べる。それに桐香が唖然とした顔を順に向けた。

 

「準様……そんなにアタシのデッキを、アタシの事を見ていたんですか……?」

 

「当然だろう? 優秀なデュエリストには目星をつけているからな……もっとも、実力に胡坐をかいて努力を怠り成長しないような奴にかけるリソースはない。それならば今は実力がなくとも成長しようとする努力を怠らない方を重用するのは当然だ」

 

 桐香の言葉に準は軽くそう答えた後、彰子、続けて今は別の班にいる取巻や慕谷に視線を向ける。そして最後に桐香を再び見据えた。

 

「お前のデッキにはまだ可能性がある。お前がそれを掴もうともがくのであれば、俺もその力となるのは吝かではない。無論宇佐美もだ、この勝利に驕らず努力するといい。それでこそ俺の認めたデュエリストだ」

 

 桐香と、そして彰子に心なしか優しく微笑み、準はそう告げる。

 

 

 

 

 

「万丈目君……今回の授業、僕達は批評や分析のレポート提出するんだからここで話すのは違うんじゃないかな……?」

 

 そんな二人のデュエルを称えアドバイスを送る準を見て、翔は額に汗マークをつけたような苦笑いでぼそりとそう呟くのだった。




《後書き》
 さて今回は前回の続き、宇佐美VSオリジナルの昆虫族使いこと加間桐香です。言うまでもないと思いますが名前の由来は「カマキリ」、短編に出てくるゲスト敵キャラをイメージして作りました。昆虫族使いの理由?さあなんででしょうネー?
 デュエルに関しても見れば分かる通りですが「プレイング・マンティスを主体とし、プレイング・マンティスの効果やアリの増殖等でモンスタートークンを展開、暴走闘君等で強化して物量で押し潰す。相手の攻撃は多少はプレイング・マンティスの効果で防いだりガリトラップ-ピクシーの輪-による抑制を狙う」というコンボデッキです。偶然プレイング・マンティスを見つけた時に「暴走闘君でベビーカマキリトークンや兵隊アリトークンを強化すればプレイング・マンティス含め全部攻撃力1500になるからガリトラップで相手の攻撃を封じる事が出来る」というコンボを思いついて考案しました。
 それに今回の宇佐美側の決めは「デュエルアカデミア高等部入学時に実質万丈目三兄弟から貰ったカード[ヘルホーンドザウルス]セット(実は兄から名目上は奨学金利用者への入学祝いとして[ヘルホーンドザウルス]を、準からその融合素材の一つである[ヘルカイトプテラ]及びその効果を使いこなすための[融合]を受け取った)という裏設定があります)を使ったコンボ」と決めていたので、基本的には攻撃を抑制しつつも直接攻撃なら穴を突けるガリトラップコンボはめっちゃ適任だったですよ。あとはプレイング・マンティスの強制回収効果をどうにかする手段さえ思いつけば割となんとかなりました。暴走闘君、ガリトラップ、一族の結束、そして今回は宇佐美への嫌がらせで使ったという設定のDNA改造手術(一族の結束封じ)やフィールドバリア(フュージョン・ゲート封じ)で魔法・罠ゾーン勝手に圧迫してくれるから守りが薄くなる説明もつくしw

 とまあデュエルが終わった後は準にちょっと話してもらいました。
 本作の準は「強さに胡坐をかいて強くなるための努力忘れてる奴」より「今は弱くても強くなろうと努力する奴」を重用しています。そこはもう将来性重視です、今努力するの忘れてる奴とか努力してる奴にすぐ抜かれるだろみたいなうさぎとかめみたいな理屈です。(ちなみに強い弱いはあくまで準の主観的な基準であり、取巻達についても「(自分よりは)弱い」判定は容赦なくつけてますがブルー編入相応の実力はあるつもりです。念のため)
 で、実は過去回想で桐香に妙に塩対応だったのは「こいつ強いけど努力忘れてる(戦術ワンパターン過ぎるとこから推測)どころか、強くなろうと努力してる取巻達馬鹿にしてんな」とちょっとカチンときてたからですwまあそもそも友達貶されたら普通に怒りますよね。

 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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