遊戯王×プリキュアオールスターズ 世界を超えた絆 作:風森斗真
遊里がほのかと
素人相手に大人げないといえば大人げないのかもしれないが、仮に自分がいないときに目の前の少女が決闘で戦うとなった場合、素人相手だから手加減する、という心が相手にあるとは限らない。
そもそもこの世界を侵略しようとしているのだから、手加減をしてくれることは、そもそも考えてはいけないことだろう。
ほのかもそのことはわかっているようで。
「う~ん……やっぱり、リトマスの死の剣士か、ウォータードラゴンに絞ったほうがいいかしら?」
負けたことを悔しがったり落ち込んたりするよりも、自分のデッキを見直すことに注力していた。
もっとも、その瞳には悔しさがにじんでいたため、負けたことを悔しく思っていることに変わりはないようだ。
だが、遊里はその悔しさを刺激するよりも、デッキの見直しに注力できるよう、言葉を選んで声をかける。
「そうだな。リトマスの死の剣士は確かに罠カードの影響を受けないし、罠カードが表側で存在していれば、戦闘破壊されない攻撃力3000の強力なモンスターだ。けど、儀式モンスターは手札の消費が激しいから、そこをどうカバーするかが課題になるな」
「本当は、『オキシゲドン』と『ハイドロゲドン』をコストにして墓地に送ってから、『ボンディング―DHO』で『ウォーター・ドラゴン―クラスター』を特殊召喚するのが理想のコンボなんですけど」
「う~ん……遅いんじゃないか? 展開が」
「そうですか?」
「そうだな……たとえば」
遊里がさきほど決闘したときに感じたことをほのかに伝えると、ほのかは自分の理想を口にする。
その展開方法に遊里は疑問を口にし、自分が考え付く構成をほのかに伝え、ほのかも実際にそのカードと想定しうる盤面を再現しながら、その対処法や遊里が伝えていないコンボの可能性を返してきた。
ほのかが示した可能性に気づかなかった遊里は目を丸くしする。
「すごいな、俺もこの可能性は気付かなかった」
「ふふふ。遊里さんでも気付かないことってあるんですね」
「あぁ。デュエルモンスターズは奥が深いからな。プロの知人はいまでも「そんなコンボが存在したのか」って驚かされることが多いらしい」
「そうなんですか?」
遊里の言葉に、ほのかは首をかしげながら聞き返す。
たとえ、過去に使用されたことのあるコンボでも、一万種近いカードが生み出された遊里たちの生きる時代では、そのコンボを発生させる安定性を高めたり、新たなコンボへの派生させたり、コンボそのものの狙いをさらに大きくさせたりすることができるようになった。
おそらく、これから先もそのようなことが起きるのだろう。
「デュエルモンスターズには無限の可能性がある。だから、デッキも『これが正解』なんてものがない」
「じゃあ、このままでも」
「大丈夫と言えば大丈夫だろう。だが、狙ったコンボを使ったり、キーカードを呼び込むための工夫はしないとな」
「はいっ!」
遊里の言葉に、ほのかは力強く返事をして、自分のデッキともう一度、向き合うことにした。
しばらくの間、その部屋にいた全員が自分のデッキの弱点や改善点をあぶり出し、デッキを再構築したり、実際に決闘をして、デッキの回し方や説明されたルールが実際にどのように作用するのか、確認作業が続いた。
だが、さすがに精神的な疲労は出てきたらしい。
ちらほらと部屋を出て気分転換をしに行ったり、別室に用意された喫茶スペースでプチお茶会を開いたりしている姿が見られるようになる。
そのプチお茶会の参加者の中には、遊里といち早く決闘をしていたほのかと、同じタイミングで未来と決闘をしたなぎさの姿があった。
二人はティーカップを手に持ち、優雅に紅茶を飲んでいるのだが、その顔には疲れがにじみ出ている。
「
「そうね……けど、少し楽しかったわ」
「わたしも楽しかったけど……さすがにちょっと頭使いすぎたかも」
「うふふ、なぎさったら」
疲れた表情を浮かべながら、なぎさは目の前の器に盛られているチョコレートを口にする。
その様子に、ほのかは苦笑を浮かべるが、決し軽蔑の色はなく、どちらかというと困った弟や妹を見るような温かさが感じられた。
「ほのかは疲れなかったの?」
「ほんの少しね。けれど、なんだから楽しくなってきちゃったの。まるで科学の実験をしているみたいで」
「えぇ?……そうかなぁ? わたしは勉強みたいでちょっと苦手」
ほのかの言葉になぎさは疑問符を浮かべる。
運動神経抜群であり、ラクロス部のキャプテンを務めるなぎさは、やはりというべきか、勉強は苦手な性格をしているようだ。
デッキの構築はコンボやカード同士の組み合わせ、魔法、罠のバランスを考える必要があるため、勉強と同じかそれ以上の疲労が脳や精神にのしかかってきたのだろう。
「そういえば、ほのか。遊里さんとけっこう楽しそうに話してたけど、遊里さんってどんな感じの人だった?」
「そうね……ちょっと冷たい感じのする人だったけど、いい人だと思う」
「そうかなぁ? わたし、ちょっと苦手かも……こう、寄らばきりたんぽみたいな感じの雰囲気がしてて」
「それを言うなら、寄らば斬る、ね? でも、話してみたらそんなことはなかったわよ?」
なぎさは遊里とはまだ話したことがない。
彼女の言うように、遊里がこれまでの生活の中で持たざるを得なかった周囲にまき散らす敵意を察知し、避けてしまっていたということが大きな要因だ。
だが、ほのかはその敵意に負けず、遊里と決闘し、会話もした。
そのため、抱く印象に少しばかり違いがあるようだ。
だが、なぎさは自分が抱いた印象がすべて、という考えを持つような頑なな頭をしていなかった。
「でも、ほのかがそういうなら、そうなのかも……デュエルモンスターズのこと以外のことも、ちょっと聞いてみようかな」
「ラクロスのこととか?」
「うん。それに、どんなチョコがあるのかとかさ」
「もう、なぎさったら……」
色気より食い気な態度にほのかは苦笑を浮かべる。
だが、それもまたなぎさらしいと思っているため、それ以上追及することはせず、紅茶をゆっくり楽しむことに気持ちを切り替えたのだった。