遊戯王×プリキュアオールスターズ 世界を超えた絆 作:風森斗真
てか、このあたりはしっかりしておきたいので、その辺はご了承いただければ……
……どうでもいいけど、早く映画観に行きてぇ……
事情を説明するため、ソラとましろ、さらに二人の知人と思しき少女と少年についていった遊里は、町から少し離れた丘の上にある一軒家に到着した。
門の前にD-ホイールを停車させ、ソラたちに案内され、リビングに入ると。
「あら、いらっしゃい」
「あ、どうも。お邪魔します」
眼鏡をかけた柔らかな雰囲気をまとう老婆が笑みを浮かべながら声をかけてきた。
その雰囲気に警戒心が薄れたのか、遊里は軽く会釈をしながら返す。
「わたしはヨヨ。よろしくね」
「風原遊里です」
「遊里くんね……」
ヨヨと名乗った老婆に自分も名乗ると、ヨヨはじっと遊里を見つめる。
何かを見透かそうとしているその視線に、遊里は少しばかり居心地の悪さを覚えたが。
「ふふ。ごめんなさいね。ちょっとソラちゃんが初めて来たときのことを思い出しちゃって」
「初めて来た? ソラ――さんもあなたのお孫さんではないんですか?」
「えぇ。あの子とツバサくん、それとエルちゃんは、言ってみればあなたと似たような境遇、かしらね」
似たような境遇、という言葉に、遊里の眉がひくりと動く。
――同じ境遇? あいつらも孤児だってことか?……いや、そんな感じではないな。てことは、俺が別の場所から転移してきたことを知ってる?
そこまで考えを巡らせ、それこそまさか、と思いはしたが、それを完全否定することができない。
この家に来るまでの間、何台か通り過ぎた車を見て確信した。
D-ホイールのような小型モーメントを使用したエンジンを搭載したものではなく、何百年も前に使用されていたというガソリンを燃料にするエンジンであった。
むろん、ネオ童実野シティの外にもガソリン車が存在しないわけではない。
だが、その数は圧倒的に少なく、都市整備があまりされていないような場所で使用されている。
それなりに都市開発がされたこの街で、大気汚染の一因となってしまうガソリン車を使用することは、遊里がいた場所ではありえないことだった。
となれば、ここは自分がいた世界とは別の世界かもしれない、という推理と呼ぶには乱暴かもしれないが、そんな予測を立てることができる。
仮に、この予測が正しかったとして。
――この世界は、俺がいた時代じゃない。過去、それも
だとすれば、自分が元居た時代に帰ることは可能なのだろうか。
いや、なぜこの時代に自分がいるのか。そもそもどうやって、誰が自分たちをこの時代に呼び出したのか。
何より、自分たちは元居た時代に戻ることができるのか。
そんな疑問がぐるぐると頭の中を回り始める。
そのことに気づいたのかヨヨが、大丈夫、と遊里に声をかけてきた。
「あなたがどんな世界から来たのか、わたしは知らない。けれど、きっと帰ることはできるわ……あなたが果たすべきことを果たせば」
「果たすべきこと?」
「それが何かは、わたしもわからない。けれど、あなたがここにいることは、何か意味があるはずよ」
「俺が来た意味、ですか」
「えぇ……」
遊里の言葉にヨヨがうなずくと、まるでタイミングを計っていたかのようにソラたちがティーカップとティーポットが乗ったお盆を手に、キッチンから顔をのぞかせてきた。
「あ、あのぉ……そろそろ入ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ。ソラさんたちも、遊里さんに聞きたいことがあるみたいだし」
「し、失礼します」
ヨヨから許可をもらい、ソラたちがリビングに入り、席に着く。
人数分の紅茶を用意し終わると、ソラが早速。
「あの、先ほどはありがとうございました!」
「先ほど?」
「あの不気味な化け物を退治してくれたことです」
「あたしたちじゃどうにもできなかったみたいだしね」
「……ちょっと待て。まさか『フォーチュンレディ』や『マジシャンガール』みたいな格好してたのって」
「『フォーチュンレディ』というのが何なのかはわかりませんが、あの化け物と戦っていたのはわたしたちです」
ソラはあっけらかんとした様子でそう返し、まず自分たちが何者なのか、ざっくりとした内容ではあるが、自分たちのことを話してくれた。
その話によると、ソラは元々、『スカイランド』と呼ばれる世界に住んでおり、王国騎士団の部隊である『青の護衛隊』に入隊するため、王都へ向かっていた際、スカイランドの幼姫エルの誘拐現場に遭遇。
エルを取り戻すために奮闘する中で、ここ『ソラシド市』にやってきてしまったそうだ。
そして、エルを誘拐しようとした存在、『アンダーグ帝国』が操る化け物『ランボーグ』からエルを守りたいという願いが、『プリキュア』という戦士に変身する力を与えてくれたのだという。
ましろ、ツバサ、あげはもそれぞれ経緯は異なるものの、エルや大切なものを守りたいという想いから『プリキュア』に変身することができるようになったそうだ。
「……なんというか、荒唐無稽でファンタジーみたいな話だな」
「あ、あははは……」
「まぁ、そう思っちゃいますよね」
「だが、全部が全部、否定することはできないし、それを言ったら、俺自身も似たような境遇だ。理解できたかどうかはともかく、信じることにする」
そう返し、今度は遊里が自分の事情を説明し始めた。
自分が住んでいるネオ童実野シティという町のこと。自分が乗っているD-ホイールのこと。
さらには、自分の出自と親友とともにこの世界に迷い込んだいきさつまで、そのすべてを説明するが。
「なんというか……わたしたちが言えた義理じゃないけど、そっちもそっちでファンタジーなことになってるわね」
あげはと名乗った長髪の少女が苦笑を浮かべながら、率直な感想を口にした。
その感想に、そっちには言われたくない、とでも言いたそうな表情を遊里は浮かべる。
「と、ともかく、いま何が起きているのかを調査する必要がありますよね」
「そ、そうね」
「それに、遊里さんが寝泊まりする場所も必要ですよね」
「そうね。まぁ、しばらくの間なら空いてる部屋を使って構わないわ。何が起きているかについては……スカイランドのほうも含めて、調査の方は任せてちょうだい」
ヨヨの口からそんな提案がされ、遊里は眉をひそめる。
いくらなんでも、人が好過ぎるのではないかと感じたのだ。
育ての親であるマーサからの教えということもあるが、自身の持つ特異な能力のせいで大人たちから受けてきた差別の影響もあり、ヨヨの善意の裏に何かあるのではないかと勘繰ってしまっているのだ。
だが。
「だいじょーぶ」
それまで一言も話さなかったエルが声を出してきた。
エルは満面の笑みを浮かべ、遊里の方に顔を向け。
「ショリャ、ましお、チュバシャ、あげは、ヨヨ。みんにゃ、やさしい。だから、だいじょーぶ」
どうやら、ここにいるみんなは優しい人たちだから、警戒する必要はないと、遊里に伝えたいようだ。
幼子の言葉だから信用できる、というわけではないが、同年代以上の人間の言葉よりは信用できる。
何より。
《マスター。この方の言葉、信用しても大丈夫だと思います》
遊里が親友たち以外に信頼を寄せる唯一の他者であり、家族である、普通の人間には見えない翡翠の長髪を持つ少女がそう言っているのだ。
ひとまず、信じてみてもいいかもしれない。
そう判断し。
「……では、しばらくの間、お世話になります」
ヨヨの厚意を受け入れることにするのだった。